主人公の前に初期で現れて圧倒的な強さを見せつけて終盤で味方になってすごくかっこよくなる悪役になります『リメイク』 作:??????
七星———この国の魔法関連を中心に大きな影響力を持つ七つの家を総称し、七星と呼ぶ。
藤風、白百合、空菊、萩野、莇、柊、夜桜。この七つの家こそが七星と呼ばれる名家であり、現在の日本の最大戦力である。
魔法評議会。それは、日本において魔法関係の事案を扱う組織の名称だ。魔法に関する事案の精査、魔物に対する対策、国外とのパワーバランス、魔法師の育成、様々なことを議論し決定する機関だ。数百年前、七星が作り上げた組織であり、現在行われているのは一年間で議論されてきた問題に対する最終決定を行う会議である。
「白百合はどうした?」
それほど広くない室内に夜桜森厳の挙げた疑問は不思議とよく響く。
「彼は病欠だそうです」
「まあ、仕方がないでしょう。彼も引退を考える年ですし」
夜桜の質問に返答したのは萩野家の現当主、萩野国近だ。それに追随するように言葉を続けたのは莇家の当主。
「代役が後から来るって話ですよ」
莇家の当主、莇草月は灰色の髪を撫でながら続ける。
「それより、問題は柊でしょう?生き残りの柊雪花を早く当主に据えたらどうなんです?七星が一つ欠けたままでは話にならない」
「それについては会議で話すべきことでしょう。短気は損気ですよ?草月君」
「そういうあんたこそ、いつまでも当主の椅子に噛り付いてないで息子に譲ったらどうだ?大層優秀らしいじゃないか?」
「……」
「……」
莇と萩野の間に見えない火花が散りだしたのを見て、夜桜森厳が介入しようとした瞬間、第三者の声が二人の間を通り抜けた。
「あら、会議の開始にはまだ早いはずだけどもう白熱しているのかしら?」
二人の視線が自然と介入してきた主に向く。曇りのない翡翠色の髪。老いを感じさせない魔女の姿がそこにはあった。
「あまり見っとも無い姿は見せないでちょうだい?腐っても、七星の一員でしょう?」
皮肉交じりの藤風の言葉に渋々といった調子で、自分を押さえ席に座り直す二人。
「まったく…藤風が介入しなければわしが黙らせるところだったんだがな」
「だから止めに入ったんですよ」
藤風は夜桜の発言を聞いて冷や汗をかきまくる萩野と不満そうにそっぽを向く莇を見ながら、ため息を吐く。夜桜森厳が発する覇気は、この場にいる誰よりも重く鋭かった。通常、引退を考えるであろうこの老人が未だに当主の席に居座り、軍事関連に大きな影響力を持っているのは、ひとえに彼以上の魔法師が日本に存在しないからだ。
「後ろにいるのが白百合の代理か?」
ここまで一言も話さなかった空菊家の当主が初めて口を開いた。空菊の質問に吸い寄せられるように全員が彼と同じ人物に目を向ける。
「はい、お初目にお目にかかります。白百合夏葉と言います。以後お見知りおきください、空菊様」
低くもなく高くもなく威厳があるわけでもなく、かといって矮小さも感じない。表現のしようのないか気を含んだ声が部屋に響く。優雅にお辞儀をしたその少女は、その場にいたものの視線を独り占めにした。
儚い…その少女を見ればきっとほとんどの人物がそういう類の感想を抱くはずだ。しかし、空菊はその少女に対してそういった感情は抱かなかった。確かに美しい造形をしている。純白の白髪は汚れなく、琥珀色の瞳は理知的かつ優雅な印象を抱かせる。だが、空菊は彼女を受け入れる気にはならなかった。本能が、拒絶したのだ。
「……七星家の当主は原則平等な関係だ。当主の代理できたというのなら、謙るのはやめろ」
「失礼しました」
空菊の灰色の鋭い視線が夏葉を貫く。しかし、夏葉はまるで動揺することなく丁寧に言葉を返した。
「これで、六人そろったな」
六人全員が円卓を囲み席に着く。
「では、決定議会を始めよう」
(朝天気予報を見た時は、晴れの予報だったが存外天気予報は当てにならないな)
柊緋色は雨雲に覆われた空を見上げてため息をついた。
(まあ、悪天候の方が好都合だ)
緋色は眼下に広がる警備網を見下ろしながら、自嘲気味に嗤う。必要なこととはいえ、人を殺めるのはやはり得意になれない。名家ゆえに幼いころに自分を殺そうとする暗殺者と戦ったことはある。だが、あれは自分の中で自衛するためだと納得していたからこそ、できたことだ。
(まったく…自分に嘘をつくのはこんなにも難しい)
緋色はキツネのお面をかぶりながら覚悟を決めると、詠唱を紡いだ。
「『氷剣時雨』」
空中に、40個の氷製の剣が生成される。緋色は、一拍置きその氷の剣を一気に放つ。上空から、振ってくる氷剣は容赦なく命を刈り取る雨と化した。
「うああああああ」
警備の者たちの足や腕、腹部をめがけて氷の剣が襲う。
「応援が来るまで、20分ってところだろうな」
緋色は魔法で強化した腕で、氷の槍を投擲する。槍は、門に吸い込まれていき、いとも簡単に鉄の門を貫き破壊した。
轟音を挙げて、崩れていく門を見ながら口角を上げ緋色は叫んだ。
「さあ、タイムアタックといこう!」
「何者だ!」
警備兵の一人が、警戒しながら緋色に問いかける。
「お前らにとっての悪魔だよ」
緋色はそう言って、再び背後に氷の剣を展開する。
「うまくかわせよ?『一斉掃射』」
次の瞬間、鮮血が氷を濡らした。空中から掃射される氷の剣は確実に警備兵を刈り取っていく。
「ぐわあああああああッ!」
「痛ぇぇ!!!!」
「『強化』」
うまくかわして生き残った相手に、緋色は身体強化魔法を使い肉薄する。身体強化魔法は、魔法使いの中ではもっとも簡単で使い勝手のいい魔法である。しかし、それゆえ鍛えていない人間と鍛えている人間とでは差が大きい。
結果として、肉薄された警備兵は緋色を視認することなく緋色の蹴りを食らい消し飛んだ。
「もう終わりそうだな」
「クソッ!何が起こってる!!!!」
「一気に半数以上やられたぞ!?」
「残りは、10人。七星の管轄にしては警備が薄いな」
「と、とめろぉぉぉ」
「『氷陣の杭』」
警備の人間が放った魔力弾は全て氷の杭に阻まれ撃ち落とされる。それだけにとどまることなく、氷の杭は警備の人間を刺し穿つ。
「…悪いな」
緋色は、傷口が凍り付き出血が止まっている警備の人間を確認してから、悲鳴と苦悶の声を背に施設内部に入って行った。
突入から五分、研究所は地獄となっていた。辺り一面が、銀世界。氷の彫刻と思われるのは人間が凍っているものだ。外にいた、警備のものは一人残らず氷の杭で貫かれ行動不能、中にいる警備兵は氷の置物になり果ててしまっている。この時間わずか三分。この制圧時間が、緋色とその他の魔法師との技量を明確に表していると言えた。
「才能に感謝だな。魔力制御のコツを知っていたとはいえ、常人にはたどり着けない領域までこれた。終盤で出てくる敵並みにはなれたかな」
自身の成果と生存のために必要不可欠な力を着実に手に入れつつあることに、達成感を感じつつ緋色は廊下を進む。少し歩いていくと、地下への階段があった。
緋色は階段を飛び降り、一番大きな扉の前で止まる。緋色は一歩、扉から引いて強化した拳で扉を蹴り破った。
緋色は、簡単に扉が吹っ飛んでいく扉を眺めながら悠然と部屋に入りつぶやいた。
「ごきげんよう。
『今■■被検■■人潰た。素■し■■では■るが■■■■■法の■は惜しいことをした。成■■■■ったはずなのにな。■■■次の手配■に』
声が聞こえる。いつもの声だ…目を開けると、最初に見えるのは液体の中に浸された自分の姿。そして、次に見えるのはたくさんの容器に入れられた人間の被検体…もうここに来てからずいぶん長い時が経つ…いや、正確な時間など思い出せないのだが…それでも長いこといるのは分かった。
「おう、起きたか。7000番。喜べ、今日をもってお前は生まれ変わるんだ。ひひひひひひひ」
研究員の一人が声を掛けてくる。だが、もう何も感じない。特に怖いなどという感情は持ち合わせていない。そんなもの、とっくの昔に壊れてしまったのだろう。
「さあ…」
ドォォォォッン!!!!!
轟音とともに、研究室の扉が消し飛んだ。
「何事だ!!!」
研究員の男が叫ぶ。周りの男たちもうろたえている。そして、その男は、現れた。
「見つからないためとはいえ、外部の情報を遮断したのは失態だったな。確かに見つかりにくい場所ではあるが、見つかりさえすれば、こうもたやすく食い破られる…」
夜の空を想起させる黒い髪に仮面中から覗く碧い瞳。
高校生くらいの少年が、入ってきているのが見えた。少年は、まるで、街道を悠然と歩いていくように…自然に、違和感なく研究室の中を歩く。そして私を見て、悲しそうな、うれしそうな、悔しそうな、ぐちゃぐちゃな感情が混ざり合った複雑な顔をしていた。そしてすぐに視線をそらし、研究者に言い放った。
「ほんとに助かるぜ…お前らみたいやつは、殺しても罪悪感に苛まれないからな」
ゾッと底冷えするほど、冷淡な声で彼は言い放つ。
「…『氷結世界』」
少年がつぶやいた瞬間、少年が立つ足元を中心として氷が吹き荒れる。廊下一面が薄氷によって覆われていく。この場にあるもの全てが圧倒的な魔力に支配されていく。
たった数秒で私を除いた部屋のすべてが停まった。