主人公の前に初期で現れて圧倒的な強さを見せつけて終盤で味方になってすごくかっこよくなる悪役になります『リメイク』   作:??????

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第9話

俺が家を出てから三年。翡翠を回収してから二年が経った。うまいこと根回しが進んだこともあれば、そうでないこともある。

 

確かなことは様々なことが原作から乖離しているものの、大きな流れは何一つ変わっていないということだ。主人公君はヒロインと出会って学園に入学したし、今後のイベントの伏線でもある魔物の大量発生と東京湾での魔物の目撃情報も確認した。

 

大きく変わったことと言えば、やはり俺に関することだろう。ここ数年で俺は必要最低限の仲間を集めきった。仲間にする条件は二つ。物語終盤まで大きな動きをしない、または原作開始前に死亡するはずの人物である。もう一つの条件は、比較的いうことを聞いてくれそうかつ共通の敵を持っていることだ。

 

翡翠を除けば、四人ほど集まった。厳密にいえばあと数人ほど候補はいるが、接触自体が現段階では困難な人物ばかりだ。

 

「それで?東京湾沖の事件はどういう決着になった?」

 

「『黒狼』が出てきてからはあっという間でした。五分もかからずにその場にいる魔物を制圧。今は極秘で周辺の調査を行っているようですね」

 

正面でコーヒーを片手に事件報告をしてくれるのは、原作開始時にはすでに死んでいたはずの男、和藤圭壱だ。和藤は本来であれば、原作開始の三か月前に殺害される予定だった。———日本魔法軍によって。この男は特有魔法を活かし、フリーの情報屋をしていた。和藤の特有魔法である『壁に耳あり障子に目あり(シークレットエクスポーズ)』は自身の触れた場所に『眼』を…分かりやすく言えば、視認が不可能な監視カメラを設置する能力である。この能力は敵対者にとってはかなり厄介だ。

別に和藤自体が軍と敵対関係にあったわけではない。ただ、意図せず魔法軍の見てはならない秘密を見てしまったが故に殺されるはずだったのだ。いや、一応殺されたことになっているはずだ。

 

「しかし、死人というのはいいものですね。何にも縛られない」

 

眼鏡をはずし、ネクタイを緩めながら和藤は心底楽しそうに笑う。こうしてみるとただのサラリーマンだ。

 

「色々不便の方が多いと思うがな。身分証の偽造には限界がある」

 

「ハハハ、貴方がそれを言うんですか?僕を利用するために助けたあなたが?」

 

「事実お前は助けられた。そしてそのおかげでお前を嵌めたやつの調査ができる」

 

「まあ、助けられたのは事実ですし。恩義もありますから、契約は守りますよ」

 

底を見せない張り付けた笑みではあるが、この男は裏切るという行為をしないと断言できる。それは前世の知識からくる確信ではなく実際にこの男と過ごして出した結論だ。

 

「それでいい、お前に契約以上のことを求めようとは思わない」

 

「…では僕はこの辺で」

 

「もう帰るのか?」

 

「ええ、まだ仕事が残っていますし。それに、そろそろお姫様が帰ってくる時間なのでは?」

 

時計の針を見れば7時30を指していた。

 

「『黒狼』のデータをそろえたらまた来ますよ」

 

「ああ、ご苦労だった」

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

和藤が帰ってからしばらくして玄関からドアが開いた音と共に鈴がなったようなソプラノボイスが聞こえた。

 

「ああ」

 

部屋に入ってくる翡翠を見ながら時の流れを感じた。2年が経った。だが、翡翠にとっては短い二年だったはずだ。よくもまあ、ここまでメンタルが盛り返したものだ。まじで年の近い世話役をつけておいて正解だった。特別明るいわけでもないが、暗くもない。

宝石のような曇りのない瞳に長いまつげ。高い鼻筋に引き締まった唇。サイドでまとめられた黒髪は今どきの女子高生らしい。やはり、心の底では傷はいえきってないだろうが、表面的には普通の女子高生だ。

 

「最近学校はどうだ?」

 

「なんですかその不器用な父親みたいなセリフ」

 

「一応お前の保護者みたいなものだからな」

 

「歳は1つしか違わないのに?」

 

「あと数か月で2つ違いになる」

 

「またくだらない屁理屈を……まあ、緋色に拾ってもらったのは本当ですし感謝もしてますけど」

 

「ハハハ。お前ほんとに遠慮がなくなってきたな」

 

昔は俺のことも緋色さんっと敬称をつけて呼んでいた礼儀正しい子だったのに…っていうか原作でもそんなに砕けた口調で話すタイプじゃなかったはずなのに。どうしてこうなったのか?

 

「それを言うなら緋色だって私の前だとキャラを演じてないじゃないですか」

 

「……」

 

痛いところを突かれた。まあ、確かに作ったキャラじゃあ翡翠は心を開いてくれそうにもなかったからな…。

 

「えーと。なんでしたっけ?学校生活ですか?順調ですよ、おかげさまで。なんでしたら、恋バナでもします?」

 

順調、ね…。

 

「それは面白そうだな」

 

「あ、もちろん緋色からしてください」

 

「……昨日髪の長い女にめった刺しにされる夢を見た」

 

「わぁ~全米も号泣の大作ラブコメですねー」

 

「だろ?」

 

などとくだらない話をしている間に翡翠はテキパキと準備を進め、食事の用意のためキッチンに入っていく。

 

「この前お前が言っていた転校生。どうなった?」

 

「佐々木礼音君ですか?友達作りに苦戦してましたよ。時期も時期ですし、それに七星の一族の推薦となると訳ありなのは確定ですから。みんな近付きづらいんですよ」

 

「そういうお前はどうなんだ?」

 

「何がですか?」

 

「友達はいるのか?」

 

「…………い、いますヨ?」

 

すげー長い間が開いたけどな。絶対出来てないだろ。原作でもそうだったけど、実際攫われてからまともに学校生活を送っていないんだから、そんなに簡単に同世代とのコミュニケーションがうまくいくわけないんだよな。

 

「友達…いないんだな」

 

「い、いますよ!?友達くらいッ!」

 

「名前を挙げてみろよ」

 

「きょ、きょうちゃんとか?」

 

眼が泳いでますよ翡翠さん?

 

「それは学園外の人間だろ?」

 

「う、うぅ~。ひ、緋色だって友達なんかいないじゃん!」

 

この女涙目でとんでもない爆弾をぶち込んできやがった。俺に友達がいないだと?……こっちに来てからは忙しかったからしょうがないんだ!生き残るのに必死だったし!

 

「俺の話はどうでもいいんだよ」

 

「なんですかそれ!」

 

「……友達がいないんなら、その転校生と翡翠が仲良くしてやればいいんじゃないか?」

 

「どうしたんですか緋色さん?ついに頭がおかしくなったんですか?」

 

翡翠はキッチンからヒョイっと顔を出し、心配そうに俺の顔を見つめる。この女真面目に俺の頭がどうかしたと思ってるのか?

 

「喧嘩売ってんのか」

 

「だって、七星の関係者ですよ?私経由で緋色のことがばれたら終わりですよ?」

 

「そんなへまをしないで仲良くなればいいだろ」

 

「えー、私そんなにコミュ力高くないですよ」

 

「だが、いずれはお前も普通の生活を送ることになる。俺らが何時までも面倒を見てやれるとも限らない。人脈は必要だぞ」

 

「……緋色さんについていくと決めたのは私。緋色が死ぬなら私も———死ぬよ?」

 

重い思い重い。マジでどうしてこうなったし

 

「誰も俺が死ぬとは言ってないだろ?ただ、『あいつら』と事を構える以上仲間たちが一緒にいられるとは限らないんだ。雲隠れをしないといけない可能性もある」

 

「……そこまで言うなら、話しかけてはみるけど…」

 

渋々といた様子で頷く翡翠を見ながらこれからの動きについて考える。なるべく、原作を壊さないように動いてきたが、俺が存在している時点で原作を壊さないで進むのは不可能に近いだろう。まあ、原作が多少変わろうが最後にラスボスを主人公が華麗に倒してさえくれれば問題ない。ようは主人公のパワーアップイベントさえ原作通りにいけばいいのだ。そのためには翡翠には主人公君に関わってもらわないといけない。

 

「……差し出された少女(翡翠)の親愛に対しての返答が利用するための言葉()とか…俺もだいぶクズになってきたなー」

 

そんなつぶやきは誰の耳にも入ることなく虚空に消えていた。

 

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