「翼…………」
リディアン音楽院の地下深くにある、【特異災害対策機動部二課】の本部。集中治療室の近くにあるソファーで、天羽奏は俯いていた。
雪音クリスと名乗る少女との激戦。絶唱と呼ばれる最後の決め手を使い、何とか倒した彼女だったが、このように集中治療室送りとされていた。
しかし彼女──────天羽奏は、自身が見ているだけだったことに関して、自分への怒りと情けなさに襲われていた。
「な〜に、暗い顔して俯いているんだよ嬢ちゃん」
「…………信さん」
そんな彼女に近付いてきたのは、片手にミルクコーヒーが入ったアルミ缶を持ち、顔にサングラスを掛け、髪は七三、黒の蝶ネクタイに赤のベストを着用し、ヨレヨレの白衣を肩掛けする男──────────影山信彦だった。
「よっ!元気にしてたか?」
「…………そう言えば、スタークと何か関係があるかで疑われて…………結局どうなんだ?信さん」
「…………そのことも合わして…………少し話でもするか嬢ちゃん」
「だから!あたしを嬢ちゃんっt「俺はな…………ブラッドスタークと一緒にライダーシステムを作ってたんだよ」…………は?ど、どういう事だよ…………」
「…………元々ライダーシステムってのは、ブラッドスタークが開発したものなんだ。ブラッドスターク…………本名は知らねえが、あいつは自分のことをスターク博士って名乗っててな?スターク博士と初めて出会ったのが、四年前…………しがない大学卒業生だった俺は、あの人に拾われたんだ」
「拾われた…………」
「そう、拾われたんだ。国大理系出身だった俺は、就職もろくに出来ず、途方に暮れてた所をスターク博士に拾われて、一緒にライダーシステムを開発したんだ。始めは怪しい人だな〜って思ってたんだが、結構優しくてな…………」
「優しい…………」
「今のスターク博士とは、全く別モンだよ。…………それで、突然スターク博士がノイズを倒せるライダーシステムを作ろうって言い出して、早速一番初めに作ったのが【エボルドライバー】…………」
「…………確か、あたしが使ってるビルドライバーってそのエボルドライバーの海賊版なんだっけか?」
「そう、スターク博士が目標として掲げる何かを防ぐ為に、俺が開発した新たなライダーシステムが仮面ライダービルド──────────」
──────────Evolution(進化)に対抗する為にBuild(形成)した物だ。
──────────…………だが、俺達人間はあの人の進化(Evolution)に対抗出来ない。
──────────だからこそ、それに対抗出来る物、対抗出来る者を形成(Build)した。
──────────つまり、何が言いたいかと言うとな?
──────────天羽奏、お前が唯一ライダーシステムの中であの人に…………
──────────スターク博士に対抗出来るって事だよ。
「そう、だったのか…………」
「それと俺は虫けらのように人を殺すスターク博士が許せない…………だから嬢ちゃん』
「…………」
「頼んだぞ?」
呪いの言葉を残し、影山信彦は手に持っていたミルクコーヒーを飲み干して去っていく。
彼女はそんな彼の背中を、居なくなるまで見ていた。