菜月スバルに直死の魔眼とか色々組み込んでみた。 作:繭原杏(繭原安理)
「よう、兄ちゃん。随分良いモン持ってんじゃねーか。一寸金分けてくれぇか?なぁに、有り金全部でいいぜ?」
「ああ、言っとくが断るなんて言ったら……分かるよな?」
「安心しろよ、ちょーっとばかし恵むだけだろう?へへ、そんだけだよ。俺たち友達だろ?」
デブ、ガリ、チビ。安定の三人組。
……一応頑張れば倒せるけれど、それをすると最初の流れから外れてしまう。
しかし完全に同じ流れをなぞるのもな……
「お?びびってんのか?」
そうだ。いい案がある。
冷静になったからこそ思いついた策。そう、禁じ手で在り、そのくせこういう状況にふさわしい決定打。
リスクは唯、プライドのみ。
「あ゛ー、あっ、んっ、んん」
声の高さを調節。大丈夫、声真似は得意技なんだ。
昔に良くせがまれた、とある友人の声をマネする。
破落戸達はそんな俺を見て不審に思ったのか、立ち止まった。
そして、息を吸い込んで――――――
「きゃー!(裏声) 衛兵さーん!(裏声)」
助けを求めた。可愛い声で。可愛い声で!
これぞ秘儀「おまわりさーん」異世界verだ。
可愛い声にしたのは、男の声だとふざけてると思われる可能性があるからだ。
「おい待てそれは反則だろ!? つか今どうやって声出した!? 明らかに女声……お前、そのなりで女だったのか……!?」
「なわけねぇだろぶっ飛ばすぞおい」
「お、おお……ってこうしちゃいられねぇ! お前ら! ここじゃあすぐに衛兵が来ちまう! ずらかるぞ!」
「へい兄貴! ったく、てめぇにはプライドがねぇのか!?」
無いな。
「了解です! 糞っ、貴族連中は無駄にプライドが高いから良いカモなのに……」
さてはこいつら、常習犯だな?
すったこらさっさーと逃げていく彼らを見て、そろそろあいつ等の呼び名でも決めるべきかな? なんて頓珍漢なことを考える。案外余裕あるんだな、俺。
ん、頓珍漢……うん、三人合わせてトンチンカンでいいか。
良かったな、お前ら。ネームドに進化したぞ。
そんなバカなことを考えつつ、フェルトもエミリアも来ていない路地裏で一人佇む。
……これからどうしよう。
エミリアと出会え無いから同行ができない。ならばこのまま盗品蔵へ向かうべきだが……それじゃあ戦力が足りずにエルザに殺される。運よくロムの説得が上手くいっても、それじゃあ片手落ちだ。
何か一つ、決定打が欲しい。
そう考えつつ表通りに戻ろうと身をひるがえした時、さっきまでいなかった一人の男を視界に捉える。
「えーと、ははは……」
どう反応していいのかわからないかのように苦笑いし、こめかみを人差し指で掻いている赤髪のイケメン。
前週で失意の俺を立ち直らせた、自称『剣聖』の痛い奴。
ラインハルトだった。
体幹がピッシリとしていて、唯立っているだけでも周囲への警戒を怠っていない。
腰に下げた剣の重みを感じていないように重心のブレもなく、それだけでも修練の跡がうかがえる。
ふむ、さっきは分からなかったけど、こいつ、改めてみると強そうだな。剣聖っていうのは言い過ぎだけど、まあ、剣の才能はありそうだな。
少なくとも俺よりは強そ……
はっ。
「あー、女の子の悲鳴を聞いたんだけれど……君、何か知らない?」
「あ、あたしのこと?」
「ん? んん……??」
男にしか見えない男の口から出る、滑らかな女性の声。
違和感しかないその状況に、ラインハルトは混乱に頭を抱え込む。
まあ、それはそれとして。
「とりあえず、ちょっと手助けしてくんねぇか?」
地声に戻して、そう言った。
ラインハルトはこの時真っ先に、あ、ちゃんと普通の男だった、と安心したそうな。
場所を移して盗品蔵への道を行く二人。
「おいおい、そこまで面白いもんか? ただの声帯模写だぞ?」
「いや、こんな技術は見たことが無い。凄いよ」
「と言いつつ、サラッと習得してるのを見るとあまりうれしくねぇんだよなぁ……俺はコツを掴むのに軽く半月かかったのに……」
そうスバルの声で話すラインハルトと、ラインハルトのような声でしゃべる姿がそこにはあった。
何とか協力を取り付けることができたスバル。
腸狩りエルザの名前を出せば一発だった。こいつは警戒心とかないんだろうか?
まさか嘘だと疑う素振りすらなかったとは……と、スムーズすぎて逆に心配になる。
今、スバルの中でラインハルトは「疑い知らずの純真無垢な少年」の認識である。実力は上とは言え、どことなく守ってやらないとという気がしてきた。何からと言われれば、まあ、何だろう?
そのまま特に何事もなく歩き、大した騒ぎもなく盗品蔵に着く。
定められたリズムで戸を叩き、内側からの声にふざけつつ適切に返す。
この男、全く学習していない。
途中からあ、やべ、とは思ったものの、まあいいかと開き直ってそのまま続けた。
「余計な枕詞つけんと合言葉も言えんのか! 余計に腹立たしいわ!」
中から出てきたのはお馴染み、巨漢禿、ロム爺さんである。
「まあまあ、そんなにキレてっと毛際の後退が激しくなるぞ? 牛乳でも飲んで落ち着けよ。あ、牛乳ある? 俺も飲みたい」
「やかましい! これは禿じゃなくて剃ってるだけじゃ! つかどんだけ図々しいんじゃ!」
「じゃ、失礼しまーす」
「おいこらだれが入っていいと……け、剣聖様!?」
「あはは……安心していいよ、今日は非番だから。ただ、此処にとある賞金首が襲撃を掛けるって聞いてね」
「はぁ……ではこいつが?」
「うん、彼の案内で来たんだ」
既に盗品蔵内に入ったスバル。壁に立てかけられた棍棒を見て軽く身が竦むが、すぐさま視線を外して樽の並ぶ方に目を向ける。
ワイン樽のような樽が山積みになっている。こんな貧民街でどうやってここまで掻き集めたのだろうか?
因みにここは貧民街で、スラムではないらしい。さっき聞いた。
渋々といった感じでロムが奥の方で何かをコップに注いでいる、それを三つ分持ってくる。中身は白濁した液。すわアレか?と思うも、においで牛乳と判断する。
ぐびりと一口。
あれ?なんか思ってたのと違う。
「ああ、これ薄めてねぇか?」
「はっ、図々しい坊主にはそれで十分じゃろうが!」
成程、言い返せない。
会話が続かず、天使が通り過ぎる。
何か話題を、と思って携帯を取り出す。
「なあ、あんたがこれを買い取るならいくらで買い取る?」
「ああ? なんだこれ?」
「んー、何だと思う?」
そう、挑発気味に問いかけるスバル。ニヤニヤしている。
パカパカ開いていろんな角度から見るが、なんか光るという事しか分からないロム爺。
唐突に手を伸ばし、携帯を受け取ったラインハルト。
「ちょっと貸してくれないかい?」
「はぁ? どうぞ」
「お、分かるか?」
手に取ってしげしげと見つめる。
前週では使い方が分からずに聞きに来たのだから、恐らく今週でも分からないに違いない。
そういえばあの会話を皮切りに話しやすい雰囲気ができたが……成程、リア充は会話が上手いとあるが、こういう小技も身に着けているのか。
まずは相手の所持品から話を始め、そこから話題を広げる。
こういうことができれば俺もリア充に成れるのかな?
何なバカなことを考えつつ、ラインハルトを見守る。
まあ、剣聖何て呼ばれる奴に見守るというのも変な話だが、なんか放っておけないんだよなぁ。
なんでだろ?
なんか他とは違う雰囲気がするけど、別に遠い世界の住人と感じる事は無い。
なんか強そうとは思うものの、不思議と劣等感が募ることは無い。
明らかに優れた存在なのに、常に抱いてきた劣等感をまるで感じず、むしろ穏やかな心境。それが、違和感。
ロムの背の高さにも嫉妬しない。普段ならいいなぁ、十センチくらい分けてくんねぇかなと思うところが、まるでそういう気配が湧かない。
かつてないほど安らかで、うたたねしているように心地よい。
まあ、嫌じゃないなら別にいいか。
そう考えて、自己分析を中止する。
ラインハルトはポチポチボタンを押したりして画面の変化を見て、レンズの所を覗いてみたりする。いろいろやっている。
そして暫くして、こういった。
「恐らく光景を切り取って保存したり、対になる道具と遠距離での通信を可能とするミーティアだね。対となるものがここにない以上、転写の加護の代用品の機能しか使えないだろうけど……中々の逸品だ。惜しむべきは消耗が早い、という点だろうかな?」
「ほう、ならばわしなら……そうだな、聖金貨二十枚ぐらいで流せるな」
「へぇ、なかなかいい伝手があるんだね」
え?なんで使い方わかんの?
「ああ、僕は仕様の加護というものを持っていてね、握った道具の使い方が分かり使いこなせるんだ」
心を読んだようにそう答えた。そんなに分かり易かっただろうか。
にしても、そうか、そんな力があるのか。
それじゃあ前週の時の説明は、気を紛らわせる為の雑談だったのか?
にしても……
「加護ってなんだ?」
「え、知らないの?」
「はぁ!? 知らんのか!?」
驚かれた。どうやら一般常識の様な物らしい。
それから説明を受けた。
つまりまぁ、世界から受けた何とかって言ってたけど、要は超能力みたいなもんだろ?
似たような物なら俺も持っている。
こっちでは超能力の事を加護と呼ぶのか。
「ふーん、なんかすげーんだな」
「うん、もうその認識でいいよ……」
ラインハルトは苦笑いでそう返してきた。
そんなに大層なものなのだろうか?確かに超能力は凄い物だが、事前に分かればそれなりの対策ぐらいは取れる。それこそ封印指定の物でも、ある程度の実力と罠があれば殺せる。
……なんで俺は戦闘思考で考えてるんだろうか。
「なんか面白い加護とかあんのか?砂糖と塩を間違えないとか」
「あるよ」
「あんの!?」
「まあ、加護にはいろいろあるからね例えば煮物の加護とか寝技の加護とか」
「ちょっと待って今の詳しく、あ、ロム爺ミルクお替り」
「そいつは良いがなぁ、お前もなんかだせんのか?」
「んー、じゃあ、これはどうだ? おそらく世界に一つしかない、貴重なスナック菓子!」
自身のビニール袋からそれを取り出し、開封。
「ほう! こりゃ旨そうじゃな!」
「だろ? 自慢の一品だ」
そうやってワイワイ過ごしていると、いつの間にか扉が叩かれる。
「案外しつこい相手で巻くのに手間取っちまったぜ、ん?どうしたんだ?ロム爺」
「ああ、実はな……」
「って、なんでこんなに人が居んだ? って剣聖様ぁ!?」
「何でもここを賞金首が襲うそうでな」
「はぁ!? まじかよ!」
「おう、暫くここにいるぞ。まあ、もう直ぐ来そうだけど」
「やめろよそういうの! あーもー、早く取引終わらせねーと」
フェルトの驚きを肯定してやりながら考える。ていうか剣聖って自称じゃないんだ。驚き。
ああ、そういえば徽章も取り返さないといけないな。
……まあ、まずはエルザをどうにかできるかの確認からしよう。二兎を追うものは一兎も得ず。いざとなれば死ねばいい。
死への抵抗感が消えている自分の感情を自覚し、やはり愛は偉大だなぁなんてことを考えつつ話を続ける。
「どうだ、もしあんたの盗品を買い取るってなったらこれで買い取れんのか?」
「はぁ? なんだその箱。こっちは依頼主から聖金貨十枚出されてんだ。比べ物になるわけないだろうが」
「コレ聖金貨二十枚ぐらいで捌けるんだってさ」
「……ならまぁ、こっちに異論はねぇな。まあ、依頼主の出方次第だが、あっちがそれ以上出せなきゃ兄ちゃんに譲るぞ?」
「ほぉー、なんか勝った気分」
よし、これでいざというとき合法的に徽章を取り返す手段は手に入れた。最悪、日本の貨幣とか好事家に売れるだろうし、技術提供ていう形ならジャージや靴なんかも高値で行けそうだ。これならまあ、取り返す手段はあると安心できるな。
そうして今ある問題を解決する手段を全て得て、俺は目先の脅威に意識を尖らせ始めた。
敵は殺人鬼。実力は遥か上。
俺個人の勝ち目は奇襲のみ。ガンドで動きを止めたところに弱点を一撃くらいか?それでも勝てる可能性は、低い。いくら身体強化ができたところで、俺の練度じゃあたかが知れている。そもそも俺のガンドが利くかどうかすら分からない。故に、勝利への鍵は、戦力は他から持ってくるしかない。
道は整った。後は剣聖と呼ばれるラインハルトがどれほどやれるか、それのみ。
さあ、どうなる?
握りしめた手は白く、奥歯は砕けんばかりに噛み締められる。
まだ来ない敵を射抜くようにボロ臭い扉を見据え、スバルはその目を細める。
そして、朽ちた扉が開き――――――
夕日の差し込む薄暗い室内。
血のような赤に染まる空の下、少女は証を求めて駆け、殺人鬼は宝を求めて刃を振るう。
あり得ざる規則違反を起こした末に、少年は物語を区切るために動き、そして至る。
剣聖は友を手にし、灰被りの盗賊は硝子の靴を突き付けられるだろう。
幕引きの時は、近い。
【風見の加護】
風を読む性質と、風のように目に見えないものを見る性質を併せ持つ加護。この加護を通して他者の「感情の風向き」を読むことが可能で、詳細を読み解くことはできずとも『嘘』を言った、という事実を隠すことはできない。
加護を「願っただけで手に入れられる」なんてなろうチート染みた力を持つ持つラインハルトの持つ、多くの加護の内の一つ。
実は明らかに嘘っぽいのに、スバルが嘘を言っていないことが分かるラインハルトは、ひそかに混乱していたりする。
まあ、凄く弱そうだし万が一の場合もどうにかなるか。と、そう思って同行。
まさかスバルからひそかに心配されてるなんて少ししか分かっていない。向けられたことの殆どない感情に、困惑が加速している。
理由の分からない善意は、時としてあけすけな悪意より怖い物だ。
【加護】
生まれたときに世界から与えられる祝福。
オド・ラグナから与えられると信じられている。
多種多様な種類があり、特定の種族に生まれつき与えられるものも存在する。
加護を持つものは、誰に言われずとも自然と自覚している。
■■と■■■■■■からの贈り物であり、この世界の■■■■■の一種。
魔女因子が体内に混ざると機能しなくなる。
【オド・ラグナ】
■■の一部。
世界の核であるという説がある。
【徽章】
王選参加用アイテム。資格者の手に渡ると光を宿す。
手のひらに収まる大きさで竜を象った意匠が特徴的。
翼竜を正面から象ったデザインをしていて、徽章の中央に竜の口が赤い宝石をくわえるような意匠。高価そうな金属が使われている。
実は保有する機能は特定の■■に応じて蜈峨r謾セ縺、讖溯?縺励°辟。縺――――――
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