菜月スバルに直死の魔眼とか色々組み込んでみた。   作:繭原杏(繭原安理)

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シチュー食べたいです。


理性の笑顔

 「目覚める」、ということは、新しい世界の誕生に似ている。

 

 睡眠とはつまり、自分の眼前の世界への観測を止め、自身の修理をするようなことだが。さて、此処でだ。

 観測されていないものは、果たして存在していると言えるのか。

 

 答えはノウだ。観測されていないものは、少なくとも当人にとっては存在しないも同じである。

 

 ならば、眼前の世界への観測を止める睡眠とは、疑似的な世界の崩壊であり、覚醒とは世界の再誕なのではないか。

 

 

 

 俺は、そんな意味の無いことを、少し慣れてきたベットの上で思っていた。

 眼前には、さっきまでと比べて明らかに増えた死の線が、網になってそこらを覆っている。

 先程までいた見知ったメイド姉妹との初対面は、まぁ、前回よりはましだと思おう。

 

 それは、さして長くもない数分前の事。

 

 

 

 

 

 

 目を開く。その前に、自己の定義を切り替える。

 行動を型に嵌め、感情を理性で律し、肉体の反射を押さえつける。

 それは、狂気に捕らわれる要因であったあの動きを出さない為。自身の意図せぬ未来に絡め捕られないため。

 

 「っ!」

 

 目を開き、驚愕の感情の為ににうろつかせた。

 世界は死に塗れている。それはいつもの事だ。

 

 だが、だがしかし。

 

 果たして昨日までの世界は、これほどまでに脆く見えていただろうか――――――?

 

 

 思えば、死後に揺蕩ったあの世界は、死の線に覆われすぎたために黒く見えたのではないか。

 正に、終わりの集積場とでもいうべき、厳かな神殿だったのではないかと。

 そんなことを思い、苦笑する。

 

 そんなわけないだろ、と。

 

 だって、そんな世界――――――

 

 ――――――()()()()()()()()()()()()()()()のだから!

 

 

 

 そういうことで、あの世界には光が存在しなかったのだと俺は思うことにした。

 真実は分からない。案外、終わりの世界という説が当たっているのかもしれない。

 でも、答え合わせはできないのだ。なら答えは勝手に想像するしかないだろう?

 

 そんな思考を切り替えて、冷静になった俺は、冷静に、知的に行動を開始する。

 

 そう、目覚めの際の第一行動。最適解は――――――

 

 

 

 「知らない天井、ってやつだな」

 

 

 

 ――――――おっとネタに走ってしまったぜ。ははっ。

 

 「お姉様お姉様、お客様が世迷言を申されてます」

 

 「レムレム、お客様は頭を強かに打ち付けたようね」

 

 「寝起き早々失敬だなお前ら!?」

 

 それでも、あの惨劇など欠片も感じさせない彼女らとの会話は、やはりどこか癒されるものだ。

 躊躇いや恐れ、逃げ出したくなる気持ちをこらえ、俺は無理に笑顔を作る。

 「とりあえず、自己紹介と行こうか」

 

 

 

 「――――――俺の名前は、菜月(スバル)! 天衣無縫の無一文! ぶっちゃけ此処何処よ!?」

 

 

 

 すると、レムとラムは顔を見合わせ、ベットの両脇から立ち上がって、俺の前で肩を並べ、同時にカーテシーを繰り出して挨拶を返す。

 

 「「ロズワール辺境伯が屋敷の使用人。レムとラムでございます。お客様」」

 

 薄紅と青が弾み、黒との邂逅は陽の下で。

 月の洗い流した血は過去へ、終わりを越えて新しい朝が来た。

 

 差し込む陽光は部屋を照らし、明るく、彼らを照らす。

 六色の舞う世界は、彩り豊かに黒の瑕疵を飾り立てる。

 それはまるで祝福の様に。それは、狂気の否定の様に。

 

 

 

 「――――――あ、スバル。もう起きたの?」

 

 そして、少女が来る。

 これで二人。役者は、あと二人。

 

 全てが出そろわない限り、まだ、この崩壊と再生は続いていく。

 

 

 

 

 

 

 その後、(スバル)とエミリアが来たのは屋敷の庭だった。朝食が未だ出来上がっていないということで、スバルは病人服のようなバスローブ姿で庭に足を踏み入れる。花の咲き乱れるそこに踏み入るスバルは、奇跡的に恢復した重病人にも見えた。その、不吉とも吉兆とも取れてしまう光景は、エミリアと、その肩に座すパックのみが見れるものだった。

 エミリアは自身の自慢の庭を自慢できてうれしそうだ。パックは警戒を張りつつも、エミリアから離れる際には体をモフらせる程度に心を許していた。

 

 因みに、ジャージより今のバスローブを選んだ理由は特にない。ないったらない。別にまさかこれエミリアたんの服と同じように洗ったんじゃ……はっ、まさかこれ着てれば疑似的にエミリアたんに包まれているのと同じじゃね? なんて思ってない。ほんとほんと。しんじて。

 

 さて、まず何をするか。

 

 「――――――ラジオ体操、第一っ! ちゃんちゃんちゃちゃんちゃんちゃんちゃん♪」

 

 「えっ? 急にどうしたの? スバル」

 

 「ほらほら一緒に、のびのびと、背中の運動から。はいっ」

 

 「え? え? え?」

 

 「一、ニ、三、四」

 

 「い、一、二ぃ、三、四っ」

 

 「腕を大きく横に振って、足を曲げまーす。はい、一、ニ、三、四」

 

 「一、ニ、三、四!」

 

 「よーし、いいぞ!」

 

 そうして始まった、脈絡のないラジオ体操。しかし、菜月賢一ならこうするはずだ。これで問題ないのだ。

 元気に体中を動かしながら、(スバル)は満足げに笑う。

 その安堵に満ちた顔は、誰も見ないままにゆるんでいった。

 体を包む倦怠感。お日様の温かさ。揺蕩うような心地に、思わず目を細める。

 これでいい。これでいいのだ。

 

 

 

 唐突に始まったラジオ体操は、(スバル)の合図で終わった。一応は怪訝な顔をしつつも、内心ではある程度の納得を含ませてエミリアは問いかける。

 

 「それにしても、どうしたの? 急に」

 

 「ん? ……ああ、やっぱこんなにも気持ちいい朝だったら体動かしたくなるじゃん? 準備運動だよ、体痛めない為の。ほら、だいぶほぐれてるだろ?」

 

 そう言いつつ、気を付けの姿勢から上半身を前に倒し、両手をぺたりと庭につける。どう考えても日ごろの柔軟の成果である。ラジオ体操? ああ、いい感じに体ほぐれたよね。

 

 「すごいわね、スバル。私もできるかしら?」

 

 「んー、まぁ、やってみようぜ? 何事も挑戦だって!」

 

 「それもそうね。よし、やってみるわ!」

 

 うーん、と唸りながらなんとか膝を曲げずに地面に指先を付けたエミリア。が、その先が上手くいかない。

 ぷるぷるしてきた足を見て、こりぁだめそうかな? と(スバル)は思い、実際そうなった。

 

 「ぷはっ。スバル、これ、難しいわ」

 

 「うーん、やっぱ体かてぇんだな。これから毎日柔軟してみたら? 風呂の後とかに」

 

 「じゅうなん? って、なに?」

 

 「それはだな――――――」

 

 当初の目的も忘れたように、二人は和気あいあいと雑談に励む。そんなエミリアの髪をちょいちょいとパックがつまみ、耳元でエミリアに語り掛ける。

 

 「リア、お喋りするのもいいけど、彼らも待ち侘びてるよ?」

 

 そう言って視線を送る先には、六色の光の粒が混合した、エーテルに似た知性体が存在していた。

 識別名を微精霊。微小な精霊。精霊の雛型にして、最も力が小さく、そして原始的な感情しか持たない、蛍の様な神秘。

 それらの死すら、今となっては捉えられる。うっかり腕で払えば、簡単に消し去ってしまえるほどに彼らは弱く、しかしその存在は強大である。

 精霊とは即ち星の触覚。それが昴の学んだことであり、(スバル)の認識だった。が、彼らは違う。

 

 星の触覚と呼べるほどの絶対性も無く、一極性も無く、あまりに無力に過ぎないそれは、精霊という名は、唯の符号でしかない。

 彼らの本質は自然の具現。偏在、流動、収束等の自然法則の象徴。属性とは即ち、それらの傾向であり、或いは起源と類似する存在としての方向性である。

 その方向性は色によって極めて類似しており、必然的に大別して六種類しか存在しえない。多様性無き存在に可能性は無く、しかし六種もあれば、人には事足りる。

 まるで人が扱うために創り出されたような、生物としても法則としてもできそこないな、家畜のような生態を不思議に思うも、深くは踏み込まない。

 自身の愛する菜月家に魔術的な知識などさほどなく、それらの結論を導出せる筈が無いのだから。

 

 木陰でその神秘と戯れ始めたエミリアを、親のような心境で見守るパックと(スバル)

 いやまて、パックは分かるが何故お前が親の様に見守る。おいこら、言ってる傍から目を細めるな微笑むなっ! そうかそうか110番がお望みだなって警察いねーじゃん! えいへーい! えいへーい! 衛兵さん、こいつですっ!

 

 「……それで、スバル。どうだい? うちのリアは」

 

 「うーん、尊いっ! マジEMT!」

 

 「いーえむてぃー?」

 

 「エミリアたん・マジ・天使!」

 

 「ふむ、リアを天使とは……中々いいセンスだね。認めようか。『たん』って何か、よくわからないけど」

 

 何を認めたのか。そして一体パックは何目線なのか。

 それは知らないが、とりあえずノリに乗ろう。

 

 「『たん』、とは可愛いものにつける敬称ですよ、お父様」

 

 「むふふ、お父様、かぁ……お前には娘はやらんっ! とでもいえばいいのかな?」

 

 「そこをどうかっ!」

 

 パックも意外とノリが良かった。

 

 「だめだだめだっ! リアはまだ嫁にやらん!」

 

 「一生幸せにして見せます! だからどうか」

 

 「ふんっ、貴様にその覚悟はあるのかな?」

 

 「……ええ、ありますとも」

 

 両腕を大きく広げ、威嚇の様に、体を大きく見せるように、上からパックを見下ろす。パックもどこで知ったのか疑問が尽きないファイティングポーズを取り、シャドーなんてしてみる。

 

 「はぁー!」

 

 「やぁー!」

 

 両者激突。結果、当然というべきか。パックが(スバル)の両の手に収まるだけに終わった。

 

 「くっ、これまでか……殺せ!」

 

 「ふふふ、パックくん。ではこれはどうだね? ……モフり千手の一、揉み撫で!」

 

 「ふぁぁぁ……あ、これ気持ちいいね」

 

 「そうだろうそうだろう」

 

 目を閉じ、そのモフモフの触感を十全に感じ取る。

 視界を閉ざすことにより、モフモフを楽しむ触覚を、よりえいびんにしているのだっ! というのも、理由の一つではある。

 もう一つの理由は、言うまでもない。線だ。

 

 

 

 ……(スバル)の視界に映る死の線は、もう前週のそれとは比べ物にならない。精霊は普通の生物より格段に少ない。それは、精霊が生命として並みの知性体よりも核が上である証左である。

 だが同時に、その表面積も格段に少ない。今の(スバル)では、適当に触れてしまえばそれだけで殺してしまいかねない。故に、視界を閉ざして魔眼の機能を制御するのだ。

 幸い、精霊の点はまだ見えない。うっかり薙ぎ払いでもしなければ、そう簡単に死ぬことは無いだろう。

 

 最も、()()というだけの話だが。

 既に世界中に線が見え、一部の生物にはもう点すら浮き出ている。大気の流動にすら薄い線が浮き出ており、こと感情すら逆算できてしまう。皮肉なことに、それは■である■■の淨眼すら超えていた。技も理念も何もかもが劣る中、今更素質のみが上回るなど、なんという皮肉だろうか。

 

 生物の死の線は気を付けなければ危ないというくらいだ。エミリアはハーフエルフというだけあり、どうにも少ないが、それは本当に少しの事だ。ほぼ常人と変わらない。

 特にメイドの少女たちなど、前週に増してさらに殺し易くなってしまっている。故に(スバル)は、更に気を張らないといけなかった。

 

 新しく始まった世界は、(スバル)にとって脆すぎた。

 それでもスバルは笑う。嗤うのではなく、笑うのだ。

 如何に脆く儚くとも、それは美しいのだと。生きていることは素晴らしいのだと。

 

 逆説的に、殺戮への忌避感を自ら埋め込み、そう自己を定義する。

 

 ああ、生きてるって素晴らしい。

 

 素晴らしいんだよ。そうなんだよ。

 

 素晴らしいんだ。

 

 そうでないと、イケナイ。

 

 「スバル?」

 

 目を開けると、小首を傾げて見上げるパックの姿があった。

 うっかり死の線に触れないよう、さりげなく、思索に耽るように瞼を下ろし、手を解いた後に目を再び開ける。

 

 「いや、何でもないよ。大丈夫」

 

 呟くように、そう言って、(スバル)は声を張り上げた。

 

 「ぃよぉーっし! モフモフ分補充完了!」

 

 「きゃぁ!? あっ、ああぁぁ……」

 

 (スバル)の大声に連動し、エミリアが悲鳴を上げる。

 いや、それは驚きによるものだ。それでも直後落胆の籠った余韻が残ることから、どうやら何かやらかしてしまったらしい。

 振り返ると先程まで集まっていた微精霊が拡散し、空気に溶けていくのが分かった。

 そして他の微精霊と同じような振る舞いに戻り、エミリアの視点が彼らに合わなくなったのを見る限り、どうやらもうエミリアには見えなくなったしまったようだ。

 

 ふむ、これは完全にやらかしたな。

 

 顎に手を当て、深く考えずとも答えの出る問題に汗を流す。肩を落とすエミリアの姿に、何か別の解釈は無いかと考える。

 

 まあ、出なかったのだが。




一章、及び二章前半―導入編―完了。

【情報開示】
■■士郎:起源【■■】

 菜月昴:起源【■】

果たして、高々人類の悪性程度で、魂の起源がそうも簡単に変わるのだろうか?
そうも簡単に変わってしまうのなら、その起源は、本当に存在していると言えるのか?
そんなにも空っぽな起源は、人として破綻している。そう、言えないだろうか。


スバルは正義の味方である。それは、()()の誓いに由来する在り方である。
スバルの魔眼は、■■■(■)より零れ落ちたものである。■■■(■)は、繧「繝ウ繝ェ繝サ繝槭Θ 縺ィ隱槭i縺 轤コ縺ォ 謇九↓蜈・繧後◆ 譬ケ貅先磁邯夊??→縺励※ 縺ィ縺励※縺ョ迚ゥ縺ァ縺ゅk――――――[※情報が汚染されており、解析が困難です]
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