菜月スバルに直死の魔眼とか色々組み込んでみた。 作:繭原杏(繭原安理)
よし、文字数爆増してくれよう。(建前)
削りどころが見つからない……っ!(本音)
今回だいぶ長いです。すいません。
でも二章は年内に終わらせます。それで何とか。
本編がこれからシリアスに向かうので、清涼剤代わりに幕間を投稿します。
本日の午後二時です。
結果から言わせてもらいたい。
青髪メイド。双子の妹の方のレム――ではなくレムさん――はとてもスパルタンであった。
誤解の無いように付け加えるが、初めは優しかったのだ。それこそ企画モノのAVに出てきそうな程だだ甘だった。今時こんな奴もいるんだなと驚いた。何言ってんだろうな、俺。
ところが、俺がある程度できると分かってからは一変した。
最初の態度は見せかけか。それとも、これぐらい優しくしなければいけないほど評価が低かったのか。それは分からない。だが、「なるほど、スバルくんは頭が良いのですね」と褒められたところで調子に乗って、「まぁ、それほどでもあるかなぁ!」なんて言ってしまったのが間違いであった。
笑顔で書き取り。ただひたすらに笑顔で、書き取りを要求してくる。
持参したランタンの明かりに照らされたその笑顔は、下からの照明もあって、とても恐怖を掻き立てた。
無論の事、俺はへこたれなかった。怪異、というか後輩やらなんやらのせいで、ああいう笑顔には慣れてしまったからだ。
それがいけなかった。
できる。そうみると、レムは要求するラインを引き上げた。具体的には、一晩で「イ文字」を暗記しろと要求した。
それは最終的なハードルだったが、途中で一切へこたれなかったために、彼女も加減をできなかったのだろう。そう思いたい。思わなきゃ何処かでプッツンしそうだ。
教わった通りなら、この国には「イ文字」と「ロ文字」と「ハ文字」の三つの文字が存在するらしい。
何故か三つ繋ぎ合わせると「イロハ文字」になってしまうのが気に成ったが、そこを深く考察する余裕はなかった。
用意された小型黒板に、見本となる字の書かれた紙を複写する。消すときは布で。
書いて、消して。書いて、消して。書いて、消して。
気分は延々と穴を掘って埋める囚人のそれである。
ちょっと途中からトリップしてきて、逆に楽しくなっていた記憶がある。自分が信じられない。
深夜テンションだろうか。レムの時間の空きが夜しかなかったため、その時間帯でしか教われなかった。
睡眠時間を削ってしまう罪悪感もあって、なかなか反抗ができなかったのも言い成りになっていた要因だと思う。
でもね? 俺だって傷つくんだよ? へこたれるんだよ?
いきなり笑顔で書き取り始めさせられて、間違っているところだけ淡々と指摘されるのって、こう、凄いきついです。
確かに字の習得を了承したのは俺だ。そこは否定しない。
こちらが教わる以上、教わり方には異論を挟まないべきだろう。
でもな? 弱音ぐらいは吐かせてくれよ。
幸い。「イ文字」は五十音を置き換えたようなものだから、習得は楽だった。
字の印象としては、カタカナの様な直線的な文字である。真似るのは難しくなかった。
問題はそれを言葉と繋げるのが難しいだけで。
カタカナの「タ」にしか見えないのが「の」であったり、「ん」にしか見えない字が「て」だったり。
微妙に似ているからこそ間違えやすいところが多かった。
すごく大変だった。
それしか覚えていない。
朝が来た。レムはいないようだ。仕事に戻ったのか。もしや、徹夜をさせてしまったのか。
罪悪感がこみ上げるが、よくよく考えればあれだけ厳しく教えられたのだからトントンだと思いなおす。
「ふぁああ、ねみぃ……」
まだ少し眠気が残っているようで、悪戯が出てしまった。
それでも外を見ればもう朝で、下手すれば朝食の時間かもしれない。二度寝は諦めることだ。
布団から足を出し、ベットの脇の靴に足を突っ込む。
ふらつく足でドアに向かい、ドアノブに体重を掛けつつ開く。
そのまま欠伸交じりに廊下を歩いていると、その姿がエミリアに見つかった。
「おはよう、スバル。今日は眠そうね」
「ああ、おはよう、エミリアたん。いやー、昨日は徹夜でさぁー」
「そう、頑張ったのね。えらいえらい」
「おわぁ! ……あ、もっとお願いします」
いきなり頭を撫でられて驚いた。その拍子に、エミリアの手が引っ込んでしまう。
期待のまなざしを込めて見つめることしばし、素直に撫でてほしいことを要求したが……
「ふふっ、駄目です」
「ちぇー、でもそんなエミリアたんもかわいいからよし!」
見事に断られた。
でも小悪魔な雰囲気を浮かべるエミリア――隠しきれない善性が、小悪魔臭を消し去っているが――が可愛いので納得した。
かわいいは正義。かわいいから仕方ないね。
「いやー、微妙に似てたから覚えやすかったけど、エミリアたんも覚えてんの? 俺はイ文字しか覚えてねぇけど」
「私? 私は、そのー」
「あぁ……分かったぜー。あれだな? まだ覚えきれてないんだろ? じゃあ一緒にべんきょ――」
「――いや、その、ロ文字までなら覚えたわよ? ハ文字が難しくって、少し苦手だけど」
「……さすがエミリアたん!」
「そうかしら? その、少しでいいなら手伝うわよ?」
「えっ! マジでマジで!? よろしく頼むわ!」
「マジ……? ええ、分かったわ。じゃあ、朝食が終わったら……そうね、ベアトリスって絵本持ってるのかしら?」
「持ってんじゃね? 後で聞いてみようぜ!」
「そうしましょう」
ふわりとほほ笑むエミリア。揺らぐ髪がその花のような香りを漂わせ、くらくらするほどの陶酔感を与えてくれた。
楽しい。
今はただ、それだけでいい。
心の底から会話を楽しんで、そして、もう食堂についてしまった。
「――じゃあ、俺はこっちか」
「また、ご飯の後にね。スバル」
「……ああ! またな」
そして各々の席に着き、俺らは食事を始めた。
「ベア子ー、居るかー?」
「だからなんで毎度毎度当たり前のように入ってこれるかしらっ! あと、その呼び方やめるかしら!」
偽装が足りない。俺から言えるのはそれだけである。
「なあなあ、ベア子。この部屋って絵本とかないか?」
「ごめんなさい、ええっと、ベアk、トリス。禁書庫に『始祖の物語』っておいてある?」
「小娘、あんたまでベア子と呼びそうになったわよね? ふざけるかしら」
「え? でもスバルが呼んで――」
「ベティーはちゃんと嫌がっているかしら!」
「ご、ごめんなさい」
やはりこの二人は仲が良い。同じ館に住む――いや、同じ館に住んでいると言えるのか? まあ、いいや――者同士、交友が深まるのだろう。ほほえましい。
つい先ほどまで読んでいた、ベアトリスの胴ほどもあろうかというほど大きな革張り金装飾の本を傍らに置くと、そのフリフリした袖を振りながら怒りを表現した。
エミリアはそれに謝罪を返す。やはり天然が入ってるところがあるなぁ、と再確認しながら俺はベアトリスに話を進めさせる。
「で、此処には無いのか? 『しその物語』とかいうの」
「……無くは、無いかしら」
苦々しい。なんだ、そんなに嫌か。貸したくないなら遠慮ぐらいはするが。
……あ、エミリアの為に意地でも借りようとする気がする。うん、苦々しくなるのも当然だな。
ベアトリスは立ち上がり、とことこと本棚の合間を進む。
ある棚の前で立ち止まって、そこにある一冊を抜き出し、俺に差し出した。
「……大事に読むかしら。ベティーの、思い出の品かしら」
そう言って差し出されたのは、日に焼けてクリーム色すら通り越したボロボロの絵本。
「いいのか? 思い出の品なんだろ?」
「別にいいかしら。本は読まれるためにあるのよ。読まれないと可哀そうかしら」
「でも、もし破っちまったら」
「……そんな扱いはしないって、わかるのよ」
「……なんでさ」
何故か、妙に信頼されているためだ。
「貴方の本の扱いを見れば分かるかしら」
そんな姿、見せた覚え――。
そう考えて、思い出した。
そうだ、俺はループ基点の直前に、禁書庫に立ち入っている。
「あれだけで分かんのか!?」
「一目瞭然かしら」
流石は禁書庫の主だ。
ふふん。ベアトリスは得意げに鼻を鳴らした。
ばたりと扉が閉まり、がやがやと喧しい声が遠ざかっていく。
ふぅと一息吐き、静まった禁書庫の中で研鑽を続ける。今読んでいるのは自らの系統である陰属性。それの基礎である。
基礎であると侮るなかれ。ベアトリスは度々これを読み返すが、腕が上がる度に新しい知見が得られる。流石であると、母である著者に思いを馳せる。その時に心に凪いだ虚無感を振り払い、ベアトリスは手元の本に目を落とす。
しん、と静まり返る部屋は頁を捲る音と布擦れの音しか聞こえない。その息は浅く、まるで呼吸を必要としないかのように鈴鹿である。
まるで絵画の様な禁書庫の中で、ふと顔を上げた。
「あら、そういえば」
それは、書物に書かれていた魔法の、「心臓を止める」という一文を見て思い出したこと。
「あの男、なんであんなに妙な鼓動だったのかしら」
まるで、心臓のように振舞う異物の如き違和感を持った彼の鼓動を思い出し、思考が逸れる。
部屋に引き込んだ際に、健康状態を調べるために色々と調べた。とはいえ、陰魔法はそういうものに特化していない。特に力を入れる意義もないので、軽く脈を調べる程度である。
「あの鼓動、まるで――」
脈を取った際の均一過ぎる鼓動を思い出す。
あれではまるで、機械のようではないか。
それは、そう。
「――いや、有り得ないかしら」
気のせいだろう。
ベアトリスはそう結論付け、目線を戻した。
飲み込んだ言葉。それは有り得ないこと。
断定できる。それは有り得ない。
鼓動が均一過ぎる。絡繰り細工のようかしら。
ああ、それじゃあ、まるで――
――私たちみたいじゃあ、ないかしら。
「えーと、此処は、り、ゆ、う。りゅう、か」
「そうね。で、繋げると『そして、
中庭で心地よい風にそよがれながら、俺たちは絵本を読んでいた。
だいぶボロボロなそれを日光に当てていものだろうか。そう悩んだ末、俺たちは木陰でそれを読むことにした。
チラつく木漏れ日。右肩のぬくもり。鼻をくすぐる匂い。頬にかかる髪。
――至福っ!
今振り向かれたら、きっとドン引きされるだろう。表情を引き締めようとはしているが、絵本に集中していなければ怪訝に思われて振り返られる。
絵本も読み、表情も引き締める。両方やらなきゃいけねぇってのが、俺の辛ぇ所だぜ……
脳内に勝手にチャックを引き、シャーシャー開け閉めする。喧しいという要望ですぐさま蹴りだされた。そこら辺のどこかに。
少し顔が引き締まったのを感じ、よし、ならば今度はこの状況を堪能だ。そう言わんばかりに鼻をを膨らませようとした時だ。
「ここらへんで少し休みましょうか、スバル」
「おう、そうだなっ」
エミリアが振り返る。
慌てて無表情になるように顔に力を籠める。無表情になるなら逆に脱力するべきだが、今はそれでは駄目だった。勝手に笑ってしまうからだ。
今の二人の体勢を思い出そう。
さて、そんな状態でエミリアが振り返るとどうなるか。
答え。顔がドアップ。さらに上目遣いになる。
おお、神よ。貴方は私を殺すつもりですか。
鼻から何か熱いものがこみ上げてしまいそうだ。目の焦点をぼやかし、意図的にエミリアの姿を意識しないようにする。
すると、今度は匂いに意識が向いた。駄目だこれ。
「おう、そうだな」
エミリアは何も言っていないのに、念押しするように二度目の返答をする。
スバルは、突然の事に慌てて、直前に言ったことを忘れてしまっているのだ。
「ねぇ、スバル。少し、村を散歩してみない? とーってもいいところなんだから」
「おう、そうだな」
「じゃあ、行きましょ。まず絵本をベアトリスに返さないとね」
「おう、そうだな」
立ち上がるエミリアに、ようやく
「……」
反芻する。
「……ん?」
再度反芻。
「……っ!!?」
三度の反芻。そして気付く。
無自覚に、デートの誘いを受け入れていたことに。
人に踏み固められた道は、土が剥き出しであろうが歩きやすい。
むしろ、そこらのひび割れたアルファストを凌ぐのではないか。そう思わせるほどに、
隣にはエミリア。思い人。
そう、これは、デートである。
誰が何と言おうが、少なくとも、
「いい天気ね、スバル」
「そうだな。きれいな群青だ。こういう日は昼寝が一番だぜ」
見上げた空は相変わらず深い。こうして見上げていると、いつか吸い込まれてしまいそうな錯覚を覚えるくらいに。
流れる雲の白、そして細やかな黒のコントラストもまたいい。空の青さに不思議な温もりを与えている。
「あったかいわね、スバル。こういう時は草むらで寝っ転がりたいわね」
「Me too」
「……ん? どうしたの? スバル」
哀れ
しかしエミリアは奇行に慣れている。伊達にあの変態と一つ屋根の下に住んでいない。おっと急にあの変態に殺意が……。
「あー、いや、『俺もそう思う』って意味だよ」
鼻の頭をかいてそっぽを向く。その耳は赤く染まっているが、エミリアは気付かない。
「ふぅーん。みーとぅ。みぃつぅ……聞いたことないわ」
「あー、ほら、俺が田舎もんだからじゃね?」
「それにしては服が立派過ぎるわよ。本当に、詮索するわけじゃないけど……スバル、貴族様の子じゃないの?」
「違うって、そんな大層な親は居ねぇって」
村の中を歩いていると、
村人たちがエミリアに話しかけるためだ。
エミリアとの時間が盗られるのを嬉しくないように感じつつも、村人たちと話を弾ませるエミリアの横顔を眺める。かわいい。
かわいい。
話の途中で急に話を振られたりもする。作物の話はついていけないが、家事の話なら何とかついていけた。
そうしてゆったりと過ごしながら、
そこには、黒い犬と戯れる少年少女たちがいた。
「あ、犬ね。どこから来たのかしら……」
「ん? もともと居なかったのか?」
「少なくとも、私は初めて見たわ」
二人の先には茶髪をおさげにした純真そうな少女に抱きかかえられた、黒い子犬がいた。
「――あっ、エミリアさまだー!」
あー、とか、ほんとだー、などという声が混ざり合い、一塊になった子供たちがエミリアに突撃する。
どうしてくれようか、こ奴らめ。
そんな大人げない思考をしてるとは露も思わず、子供たちはエミリアと戯れる。エミリアが楽しそうだからいいか。この場は見逃してやる。
そんな
「お兄さん、だぁれ?」
「ロズワール様のお客さま、ですか?」
犬を抱きかかえた茶髪の少女。そして、前週で犬を差し出したペトラ・レイテという少女。
「ああ、そんなところだな。で、良い毛並みしてんな、この犬。さては良いもの食ってんだろ」
「……うん。とってもいいもの、あげてるの!」
茶髪の少女がそう言った。
「ほーう、撫でていい?」
「だめー!」
「おうおう、随分とケチじゃねぇか……よぉうし、なら、これならどうだ?」
そう言って、
「……それが、どうしたの?」
合いの手を入れたのはペトラだ。
ちょうどいいので、正面に立たせる。その際にポケットの位置を確認する。
……縫い目が荒い。親、ではないだろうな。恐らくだが、彼女自身が縫い付けたのかもしれない。
子供の成長は早いことを、
「ここにコインがあります」
打って変わった声音に、エミリアに群がる子供の幾らかが此方を向く。
「これ、実は不思議な魔法がかかってるんだぜ?」
えー、うそだー。そんな声は上がらない。魔法が実在するからだろう。
しかし、その分食い入るような好奇心が殺到する。
かかった。エミリアに群がる分も削れ、
「これを握るとー、ギュギュっとな」
二回、三回。手の甲を上に向けて握りこんだ後、手の平を見せるように手を開く。
「消えちゃった!?」
ペトラの言う通り、手の平の上には、もうコインは無い。
「左手に持ってるんじゃないのー?」
「おっと、こういわれちゃあ仕方ねぇ。これならどうだ?」
指先を地面に向け、手の平を見せて振るう。両手分、しっかりと。
いつの間にか、観客は増えていた。エミリアに纏わりついていた子供のみならず、暇な主婦たち迄が集まっている。
「ほれ、コインが消えちまった!」
ざわめき。その中には興奮と、少しの恐怖。
少し疑問があったが、すぐに納得がいく。これを人にできるかもしれない。そう思っているのだろう。
所詮は手品。そんな大層なことはできない。だが、そんなことは分からないのだろう。
「ところでな、あの消えたコインなんだが――」
右手の人差し指を口の前に持ってきて、言う。
「――実は、面白い性質があるんだ」
にやりと笑い、辺りを見渡す。
道化の様に大仰な語り振りで、語り部の様にわざとらしい語り口で。
「あのコインは、大成する者の懐に飛び込む。ああ、或いは、この中の誰かが持ってるかもしれねぇな?」
すると一斉に懐を探し始めた。うむ、エミリアたんまで混じってる。
あーあー泣くな泣くな。
フォローをするために、
「ああ、とはいえ、あれは隠れた運命を引きずり出すんだ。流石に分かり切った道がある奴の下にはいかねぇだろうな」
分かりやすくほっとした。これで良し。
ここらで懐をまさぐる動きは止まる。
「――おや? 誰の懐にもない? これは妙だ。そこのねぇさん。ポケットにコインは無いかい?」
「はっは、上手だねぇ! 私の懐には、残念ながらないよ!」
「ほぅ、じゃあ、そこの坊主はどうだ?」
「ぽけっとがないー!」
「こいつぁ失礼したな。それじゃあ飛びたくても飛び込めねぇもんな……と、なると、誰の下に行ったものか……ふーむ」
ワザとらしく聴衆の周りを歩き回る。
腹を見て怪訝そうにしたり、瞳を覗き込んで頷いてやったり、そういった、いかにもな演技を交えて。
そして、一周して元の位置に戻る。
「んー、こりゃあおかしい。おかしいぞ? っと、ああ、そういえば、お嬢ちゃんは見てなかったな」
そう言って、ペトラを観察するふりをする。
「んん? おかしいな。本当に探したのか?」
「……探したもん」
「それはおかしい。おかしいぞ。何故なら――」
ペトラの、彼女が縫い付けたのであろうポケットに手を伸ばし、軽く叩く。指先が線に当たらないように、慎重に。そして、何回目かでようやくペトラは気付く。
硬い感覚。それは、
一旦左手の中に移ったそれは人の温もりが移っているが、確かにそこにある。
「ここに、あるじゃあないか」
「え……?」
慌てて不出来なポケットに手を突っ込み、何かを取り出す。
ペトラがポケットの中から取り出したのは、先ほどまでは無かったゲームセンターのコイン。
その中で、丸みを帯びたマスコットが笑っていた。
「そのポケット、嬢ちゃんが縫ったんだろ。上手だ。きっといい服屋に成れるぜ」
線に触れないように気を付けながらぺトラの頭に手を置き、そう言う。
驚愕の籠ったどよめきが上がる。
そして、
……よくよく考えれば、菜月賢一はラジオ体操とかで子供の興味引きそうだな。
そんな愚にもつかないことを考えながら。
とても、平穏な昼下がりの事であった。
【ランタン】
幻想的な雰囲気を味わえるインテリア。
ゆらゆら揺らめく明かりは非現実的な空気を醸し出す。
流石にLEDよりかは暗い。
【始祖の物語】
建国神話の童話版。
日本でいう「桃太郎」ぐらい有名。知らなければ十中八九外国人。
大まかなあらすじ。
大瀑布の果てから竜がやってきた。
竜は人々を慈しんだ。
そして、人々が飢餓に苦しむと、竜は天に祈りを捧げた。
すると不思議な男が現れた。後の始祖様である。
始祖様は川を生み出したり、街を創ったり、世界を住みやすいように作り変えてくれた。
そして、ルグニカという国ができた。
ルグニカが運営されてから何十年。始祖様は力を使い果たし、消滅した。
だが、死の間際に竜と交わした盟約により、ルグニカ国は庇護を受ける。その礎として、石が王に下賜された。
竜は始祖様の立てた塔の方へ羽搏き、そして天からいつも見守ってくださる。
そんな、ありふれた童話。
【ラジオ体操】
万能コミュニケーションツール、では当然ない。
菜月家はこれに一体如何程の可能性を見出してるのだろうか。分からん。
【スバルの精神状態】
エミリアとの交流により、小康状態。
……じゃけん、ちょっと無理してましょうねー。
お知らせ:
原作、やっと更新されたね。
そこで、です。
この作品は基本的に、先日までの情報を基に作り上げられています。
まあ、温かい目で。お願いします。
プロットだけならすでに出来上がってますのでご心配なく。
十年で終わるか不安ですが。