菜月スバルに直死の魔眼とか色々組み込んでみた。   作:繭原杏(繭原安理)

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出来が悪くてすいませんっ!


現状

 ――――――戦闘が始まった。

 その前に励起させておいた魔術回路の力を練り、昴は自身の使える数少ない魔術を行使する。

 

 身体強化術式、起動ッ!

 

 そう意識すると共に全身に力が漲り、励起した魔術回路が発光する。

 ジャージの首の右の辺りから電子回路のような文様の光が昴の右頬を伝り、エメラルド色に輝く。

 筋力のみならず、五感や思考速度まで強化された今のスバルは、もはやそんじょそこらの一般人では敵わないだろう。

 

 戦闘に入ると同時に体の震えは収まり、代わりに強い高揚感が沸き上がる。アドレナリンが仕事をしすぎて、脳が弾けそうだ。

 脳内麻薬に浸って熱く逸る感情に反し、思考は冷静に、まるで機械のようなものへと変わる。

 万全の体調でエルザを相手する昴は、しかしとっさに親指でしっかり地面を踏み、足首の動きで後ろに飛びずさりながら、腹を庇った。

 

 直後、両肘を腹に添えて縦に構えた両腕は切り飛ばされ、腹にも軽く横一文字の切り傷ができ、血が滲む。

 身体強化した足で飛びずさった距離は一メートル以上あり、とても足首の動きだけで届く距離じゃないな、と昴は思った。

 そして、切り飛ばされた腕に傷口が燃えるような感覚を帯び、続いて脳を貫く痛みが襲う。

 

 「……うっ、ぐっ! !……っ!」

 

 アドレナリンの鎮痛作用か、それともまた別の脳内物質か。はたまた、身体強化の効能か。

 戦闘に意識が割けなくなるほどの痛みは感じなかった、がそこで終わりだった。

 そもそも、数段上の実力者相手に、一瞬でも意識を逸らせば勝機など訪れるわけはない。

 

 続いて腹部にそれ以上の熱と激痛が走る。

 その痛みに塗り潰され、両腕の痛みは消える。

 

 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっっっっっ!!!!!」

 

 例えようのない痛みが脳内を駆け回る。

 集中が乱れて魔術は途切れ、それまで抑えられていただろう痛みがさらに増幅される。

 

 「あら、私好みの良い腸♪」

 

 そう、エルザが言っているのにも気づかず、ただ痛みに絶叫する。

 最初の一撃を避けれてしまったのが、逆に仇となった。そのせいで昴をある程度の実力者とみなしたエルザは、確実に当てれるよう荒く切り払ったからだ。その切り口は最初の一撃でできる筈だった傷口よりも、更に痛みを与える。

 

 痛みに意識が支配され、思考を失い――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこから先の事はあまり覚えていない。

 気が付けば黒に染まった世界で、一人誰かに抱えられて立っていた。

 立っていた、というのも定かではない。上下の感覚も分からないからだ。とにかく自分は、俺は自然に力を抜いていて、それで誰かに包み込まれるような優しさを感じていた。

 黒の果て、見覚えの有る物を見つけ、そこに近づこうとする。

 だけれど意識はそこから遠ざかり――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「――――――おい、兄ちゃん。リンガはいるか?」

 

 ――――――気づけば、また始まりの時に巻き戻っていた。

 

 

 

 「夢か?」

 

 例のリンガのおっさんに愛想笑いを返しながら、

 さっきも入った路地裏に身を隠す。

 夕方だったはずの太陽は真上で輝き、憎いくらいに町を照らしている。

 先ほどまでの事を振り返り、夢を見たのでは?と疑う昴。だが、それは即座にないなと振り払われる。

 魔術ならそんな実体感のある夢も見せれるだろう。しかしそれでは、そこまでできる魔術師が何故こんなことをするか、という疑問が湧く。

 何より、先ほどまでの出来事は鮮烈で、とても夢とは思えないからだ。

 なら何が起こったのか。

 昴の積み上げたラノベ知識を総動員し、辿り着いた結論は「時間が戻った」という可能性。

 本来なら「魔法」でもそうそう成し得ないだろう奇跡に、「異世界だから」と受け入れることが出来たのは、スバルがこの世界を「異世界」だと認めてきたからだろう。

 少なくとも、それ以上に説得力のある理由が思い浮かばなかった。

 

 スラムの腐臭も、サテラの手の柔らかさも、その美しさも、先ほどまでの痛みも。

 全てを鮮明に思い返せるからこそ、これは夢ではないと断言できるし、「時間が巻き戻った」と思える。

 無意識の内に自分の腹を撫でていた手に意識を向ける。そこに穴など無く、いつもの手触りが返ってくるのみ。

 大分解れてきたジャージの生地の感触を感じながら、思考を巡らす昴に、路地裏から例のゴロツキ達が近寄る。

 

 「よう、兄ちゃん。随分良いモン持ってんじゃねーか。一寸金分けてくれぇか?なぁに、有り金全部でいいぜ?」

 

 「ああ、言っとくが断るなんて言ったら……分かるよな?」

 

 「安心しろよ、ちょーっとばかし恵むだけだろう? へへ、そんだけだよ。俺たち友達だろ?」

 

 セリフも背格好も記憶通り。まるで未来予知でもしたかのようだ。

 しかし、それはあり得ない。何故なら俺は『未来視の魔眼』など持っていないからだ。

 持っているのは精々、『見えないものが見えるこの眼』だけ。

 だが、この魔眼に未来視の機能なんてないはずだ。

 一体俺に何が起こったんだ?

 

 「お? 黙ってんじゃねーぞ、ビビってんのか?」

 

 「へへっ、安心しろや。抵抗しなけりゃ、痛い目を見るこたぁねーからなぁ」

 

 「ただ黙って出すもん出せばいいんだ、分かるだろ?」

 

 じりじり詰め寄ってくる。

 どうする? このまま囲まれて、さっきのようになるか。

 それとも、

 

 

 

 「うぐっ……」

 

 「がぁ……」

 

 「いてぇ、いてぇよぉ……」

 

 戦闘自体は数分もかからなかった。やはり、魔術があると色々変わる。何よりも、余裕ができる所が素晴らしい。この調子で経験値積んで、あのエルザって女を倒しに行かないと……

 

 「って、そんな上手く行ったら良いんだけどなぁ……」

 

 当然、現実はそこまで甘くない。そもそも経験値積んでも、人間は急に強くなることは無い。

 あの殺人鬼に勝つには……不意打ちか、それとも他の強い奴に頼るか……

 いや、最悪魔術回路の暴走を覚悟すれば、ワンチャンあるかもしれない。問題はそれほどの魔力を冷静に操作できるかという点だ。

 考えていても仕方がない。取り合えず、前提条件を確認しよう。

 目的は「あのサテラという子を助けること」。ぶっちゃけ、見捨てるという手段も思い浮かんだが……それは無いよなぁ……男として。それに、この程度で逃げてちゃ「正義の味方」になんて成れない。

 えーっと、俺の切り札は……「魔術」と……

 

 あっ、そうだ。

 あの女の子が盗んで帰ったのは「盗品蔵」で、そこは盗品の取引なんかも行っている。ということはこの「盗み」は「誰かの子飼い」の仕業ではなく、「依頼」で行われたはずだ。

 ならば、その依頼の報酬を上回る物を提示出来たらどうだ? 「誠実」をモットーにする奴ならば受けないかもしれないが……可能性はある。

 それにここは異世界だ。少なくともそれに近い、価値観が異なる世界だ。俺が普通に持っている物に、あの「徽章」とやらを上回る価値の物があるかもしれない。そうと決まれば、所持品をチェックしよう。

 

 持ち物は、「ガムテの財布」「紙幣幾つかと硬貨」「ギザ十」「十徳ナイフ」「携帯」うへっ……砂入ってら。「コンビニ袋」と、その中の「カップ麺」に「スナック菓子」。「自宅の鍵」なんかもあるな。それと……これは最終手段だが、「俺の魔眼」と「このペンダント」だな。

 俺の魔眼は言うに及ばず、「浄眼」というだけで中々の値が付く筈だ。ここらの「魔法使い」とやらが、俺の知る「魔術師」に近い感性などを持っているならば、だが。

 もう一つ、ペンダントは……うん、本当に使いたくない。というか思い出したくすらなかったなぁ……

 

 

 

 それは普通の昼下がりの事だった。

 ちょっと買い出しに出かけてる時に、商店街でキンキラななんか「俺様!」風の男とすれ違い、そのまますれ違えればよかったものの、何故か呼び止められたのだ。

 その男は俺の顔を覗き込むと、何やらブツブツ言いだした。中二病なのだろうか。目も赤かったし、コンタクト? ではないのかもしれないが……

 男はそのまま悪い笑みを浮かべ、肌身は離さず持っておくようにと、命じるようにこのペンダントを押し付けてきた。

 正直何が何だか分からないが、ペンダントを押し付けられたときに、その男が化け物染みた魔力を抱えていることだけは分かった。それまで気づかなかったのは、恐らく何らかの魔術か道具でも使っていたのだろう。

 その影響が無くなったのは、耳元で囁きが聞こえるほどの距離だからか。いや、それはおかしい。何故近づけば影響が無くなるんだ? 自分の意思で解いた?

 未だにあの男が何なのかは分からないが、一応このペンダントは肌身離さず持っている。それを破ったらどうなるか知りたくないからだ。 

 

 

 

 ともかく、そう押し付けられたこのペンダントだが、流石にあの男もここまでは来れないだろう。

 異世界―――面倒なので、もうここを「異世界」と認める―――まで来れるわけがない。その筈だ。

 神話の中の英雄ならともかく、現代の神秘でそんな事は為し得ないからだ。

 それにこのペンダントは、胸に当たる部分に大きな宝石があしらわれている。飾りも美しいし、軽く調べてみる限り何らかの魔術作用もあるみたいだった。込められた神秘も俺程度には計り知れないほどだ。こんなんを魔術師どもはごろごろ持ってんのか?やっぱバケモンだなぁ……

 いやいやそうじゃない。宝石はどこでも不変かつ普遍に高価であるものだ。何故なら産出量が少ないから。異世界といえど、まるっきり地質が違うなんてことはない筈。ならばかなり高価で売れるはずだ。これはイミテーションだろうが、此処でそんなこと分かる奴は居るまい。幾らで売れるだろうか……

 

 ゾクッ……!

 

 ん?なんか今怖気が走ったような……?

 ま、気のせいか。

 

 




【■■■のペンダント】
 銀の枠に「その旅路に幸あれ」とアッカド語で記されている。
 制作者不明。

 とある男が昴に与えたペンダント。
 胸に当たる部分に緑のダイオプサイドと小粒のダイアモンドで豪華に飾られている一品。
 芸術的なカットで上品に光り輝き、決して知性無しに飾り付けた物ではないことが伺える。
 豊かな森を思わせるダイオプサイドと、朝露の如く柔らかに添えられるダイアモンド。そしてそれらを調和させる複雑な文様は「美事」の一言に尽きる。
 覗き込むと、中央に不思議な光が見えるらしい。
 作製されたのはB.C.■■■■。人類の原罪を背負って死んだ聖人が生まれる、遙か前の事。
 これを作り上げた者の願いとは即ち「■■■■の■■の■■」であり、その有り余る思いが込められた至宝。

 勿論、昴はこんなことを知らない。
 「なんか本物っぽいイミテーションのペンダント」と思っている。
 まさか本物の宝石をタダで渡されるとか、そんなの有り得ないよねっ!

 ■■の物で、本来の用途は「■■■までの■■を■■■■」御守り。

 それを売るなんて とんでもない!

 さて、何処の金ピカなんでしょうね?
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