菜月スバルに直死の魔眼とか色々組み込んでみた。 作:繭原杏(繭原安理)
オリ設定けいほー。
やりすぎたと反省はしている。
ともあれ、次回で戦闘には入れたらなって。
王城に戻り、エミリア達と合流する。
エミリアもロズワールも、何があったのかは一言も言わなかった。
当然だ。
次の王を決める、ということは国の命運を左右すると言って過言ではない。
なるべく、他人に漏らさないようにしたいのだろう。
……ああ、だったら俺も連れてってくれりゃあいいのに。
なんで連れてってくれねぇんだよ。
夕食を和やかに済ませた後は、もう用事もない。
ふと思い立って魔術回路の訓練をしてみたが、流れるように済んだ。いつも通りだった。
何故、あの時だけ失敗したのか。
……知らねぇよ、そんなこと。
「あー、寝よ寝よ」
ぼすんとベットに倒れ、目を閉じる。
瞼に当たる月明りが眩しくて煩わしくて、カーテンで遮りたく思った。
めんどくさいから、しなかったけど。
朝だ。眩しい。
顔を顰め枕に顔を埋める。
意識は明瞭ではないが、眠気はほぼない。もう、起き上がらないといけない頃合いだ。
都会の喧騒に少し似た空気を遠くに感じながら、俺は朝日を浴びて起き上がる。
「ふあぁぅ……んー」
背伸びして僅かに残る眠気を追い払う。
完全に目が覚めれば、次は枕元のジャージに着替える。
布団を跳ね除けてジャージを着て、床に立って靴も履いたら朝食を取ろう。
今は何時だろうか。時計が無いからわからない。
ま、多分いつも通りの時間だろうな。
「そろそろ、朝飯行くか」
目覚めたばかりで目も開けきらないが、歩いている内に覚めるだろう。
それよりも、今は飯だ。
招待客身分で呼ばれてるって聞いたし、多分料理は手伝え無いだろうが……
それでも、配膳ぐらいは手伝わないとダメか?
「ん、ああ、忘れてた」
枕の下に手を突っ込み、軽く膨らみのあるお守りを手に取る。
少しどこに着けるか迷って、ポケットの中に突っ込むことにした。
首には既にペンダントがかかっているからだ。
……このペンダントつけてると、なんか調子いいんだよなぁ。
なんでだろうか。
てかあの金髪の兄さん何だったんだろ。
「これで準備よし、と」
さて、行こうか。
ごちそうさまでした。
相変わらず謎肉美味しかったですっと。
ほんとあれ、何の肉なんだろうか。
レムに聞いても「神竜に捧げられることもある高級肉」としか言われないし……
そんなもんほいほい卓に上がってるけど、ロズワールって意外とお金持ちなんだろうか。
辺境伯って伯爵より上の身分だっけ。
ん?
普段の言動があれだから呆れてるけど、やっぱあいつお偉いさん?
……ま、いっか。
今更だし、態度を改める必要もないか。
いきなり変えても、ほら、あれだしな。
「さて、なにしようかねぇ」
エミリアは打ち合わせとかで忙しい。
ロズワールは貴族としての挨拶回り。
レムとラムは、昨日は王城の人にあいさつに行ったはずだ。
今日はどうなのだろう。
たしか、残ってたと思うが……
「うげっ、姉さんの方かよ」
「いきなりお挨拶ね、バルス。これは躾け直した方が良いかしら? それと、呼び方が気易過ぎるわ。
「ちょっと本音漏らしたら熨斗付けて返されたぜ。てか俺の名前、滅びの呪文に成っちゃってるから! ムスカ大佐がとばっちり受けるぞ、姉様」
「相変わらず訳の分からないことをほざくのね。呼び方はまあ、及第点としてあげるわ」
「相変わらずきついっすね、姉様……因みに及第点以上の回答は?」
「花も恥じらう乙女にして誉れ高きメイドのラム様」
「なげぇよ!」
ふはっ。
この厳しい対応が、何処か心地いい。
あれ? 俺ってMじゃなかったはずなんだけどな。
「何をニヤニヤしてるのかしら。気持ち悪い……いいえ、気色悪いわね、バルス」
「ひでぇ! もっと優しい対応をしてくれ!」
「ああ、そうね。言い忘れていたけど、今日はレムはいないわ。城の給仕に連れていかれたもの。王城勤めからも引っ張りダコになるような腕だなんて……流石は私の妹ね」
「スルーかよ。てか姉様が威張るところあった?」
けどま、流石はレムってところか。
あの屋敷を実質一人で運営できる人材だしなぁ。
「レムは私の妹。私はレムの姉。妹の物は姉の物。つまりはそういう事よ」
「なんというジャイアン理論」
胸を張って誇るな。
余りにも堂々としてるから、一瞬正しいかと思っただろ。
「っと、そうだ。じゃあ、俺はちょっくら出かけるわ」
「別に一々ラムに言う必要はないわ。勝手にしなさい。因みに、何処へ行くの?」
「今言う必要はないって……まぁいいや。騎士の詰め所だよ」
俺がそう言うと、ラムは息を呑み、そして口元に手を当てた。
「あら、自首? 良い心がけね。でもいつかやると思ってたわ」
「いや何かやらかしたわけじゃねぇよ!? 知り合いに会いに行くだけだ!」
俺は無実だ!
勝手に罪人にすんな!
「嘘……まさか、バルスがそんな知り合いがいるなんて……いくら包んだのかしら?」
ラムの中での俺の地位はどこまで低いのだろうか。
下手したら下限突破してグレンラガンしてるのではないのだろうか。
グレンラガンしてるってなんだ。
「賄賂も渡してねぇよ。んじゃ、行ってくる」
「ええ、行ってらっしゃい。ついでに良さそうな果物買いなさい」
「へいへーい」
熱気のある喧騒の中を歩き、屋台を冷かしながら詰め所を目指す。
お土産はどうするべきか。
挨拶ついでに、あんときのリンゴ屋……こっちじゃリンガだっけ? それ買いに行くか。
ちょっとだけど給金も貰ってるし、買えなくは無いだろ。
それよりも先に、今は、ラインハルトだ。
騎士の詰め所に居るか、そうでなくとも何かしらの手掛かりが欲しいところだな。
「申し訳ないがラインハルト様は居ないし、あの方に合わせることもできない」
バッサリと切り捨てられた。
にべもなく切り捨てられた。
曰く、ラインハルトは重要な――王選とはまた別の――仕事を言いつけられているため、王城に居るとのことだ。
その仕事が何なのかは、当然教えてくれるはずもない。友人だと粘ってみても、駄目だの一点張り。
友人だというだけで機密漏洩はできないか。そりゃそうか。
……じゃあ、王城に戻ってどっかに居る筈のラインハルトを探すか?
それもいいだろう。そうしよう。
だが、その前にお土産だけ買っておかなければ。
そうだ。
王城の使用人とかからなんか情報とか聞きだせないだろうか。
無理だろうけど、やってみるか。
「おっちゃーん、リンゴくれリンゴ!」
「ああ? 金はあんのか? あとリンゴじゃなくてリンガだ。どこの田舎の訛りだよ」
「おお、今度はちゃんとあるぞ」
「今度ぉ? ……まぁいい、ほれ、いくつだ。都会の物価は高いぞ。そう多く買えるとは思うなよ」
「……じゃあ、これで買えるだけ!」
「んーはいはい……ん、んん? んんん? ん゛ーー!?」
「どうしたおっちゃん」
「……家を潰すつもりかぁ!?」
何故そうなった。
話し合いの末、リンガは籠一杯分だけ買うことになった。
籠はサービスしてもらった。
やりぃ。
そこは少し寂れど人気はある小道の、周囲の家々に紛れた大聖堂。
信者や懺悔に来た者たち、旅人などが行きかう玄関口を、一人の老人が通る。
誰もがその接近に気づかず、けれど老人に道を開けるように彼らは自然と道を開けた。
そして、自身がやったことに違和を感じて、それでようやく誰が通ったのかに気付くのだ。
――ああ、彼か。
そして、自身の行動に納得を抱く。
その威厳に無意識にひれ伏し、道を開けたのだ。
極めて自然で、当然だと、納得するのだ。
深く深く刻まれた、木々の表皮のような皴。そこから見とれる年輪に相応しい威厳と、静かな穏やかさを持つ神父。
その老人は、この教会を取り纏める大司教である。
大司教にして、懺悔室にて韜晦を聞き届けるシスターの、その保護者である。
懺悔室の扉があいたのを見て、並ぶ者たちに断りを入れてから老人は扉をくぐる。
――むわりと香る風が、鼻頭を打ち据えた。
仄昏く、薄暗い部屋であった。
夕日の様な光を落として揺れる蝋燭は、この部屋唯一の光源にして
たかが一本なれど、その値、一般庶民の月の稼ぎ賃に匹敵する。
まださほど溶け切っていない所を見るに火は着いたばかり。
それで尚此処まで香りが充満し散るのだから――さてはて、果たして何本燃やしたことやら。
はぁ、と一息。
仕方ない娘だと、ため息をついた。
清貧を唱える教会がそんなことを、と時偶いう人がいる。
その文句は名目上の保護者である老人に向けられ、老人はその訴えを最後まで聞き続けた。
されど老人が反論することは無く――いや、反論することはできなかった。
なぜなら彼は神父。人々の声を聞き届け、行いを見届け、神の教えを広めて、人を救う者であるが為に。
けれども言い分が無いわけではない。
彼が苦情を申される際に、どうしても言いたいことが幾つかあった。
一つは、これは懺悔に来る者の精神を和らげるためのものであるということ。
硝子の鳴子のような声を聴くために訪れる者もいるが、心の底から後悔を抱き、追い詰められて懺悔しに来る者もいるのだ。
これは、そんな者たちの心に余裕を与えるためのものだ。
余裕のない心を安らげ、強張る体を和らげ、早まった考えを薄める。
故に必要経費なのだと、そういうことだ。
言い分はまだある。
というか、そもそもの物話だが――我が宗教は、贅沢を禁じてはいない。
諫めてはいるが、それは堕落を避けるためだ。無柳を慰めるためや、自身へのご褒美などとしての散財は、むしろ推奨している。
だから「清貧を唱えている」というのは筋違いである。よほど「信じる」という行為に縋っている者でもなければ、今時清貧を常時心掛けている信者など居るまいて。
老人からすれば、彼らの言い分は見当外れもいいところだった。
筋違いの言いがかりなのだ
第一、これはこの懺悔室の奥の――薄壁一枚向こうのシスターによる手作りである。
最近では転がり込んでいたお姫様――今は修道女の一人か――もそれを手伝っている。原価としては、市場に普及する蜜蝋一本の値段を下回るだろう。
因みに、香草は我が教会の庭園を私物化したシスターの作物である。
僅かに貴族たちに卸売りしているが、あの美しいシスターの手作りであるという点と効果、品の薄さから目の飛び出るような値段になったにすぎず、高価であるのはそのためだ。
教会も収益が無ければ運営できないのだ。
「ウルスラ様、入りますよ」
蝋燭の落とす光の圏外、そこに隠されたかのように見え辛い扉があるなどと、知っていなければ分からないだろう。
扉を開ければ、向こう側も同じく暗い。
けれども小さなステンドグラスの採光窓があるから、懺悔室程暗くは無い。
石が剥き出しにされた、味気無さを通り越して牢獄の様に詰まらない部屋の中央。
ステンドグラスを通した斜光を浴び、背負って祈る少女がそこに居た。
齢十を越えるか。新しく入った修道女の半分の、そのまた半分より多い程度。
そんな子供がこんな物寂しい部屋で何をしているのかというと――懺悔を聞き届けているのである。
そう。
この少女――いっそ幼女とすらいえよう彼女こそ、全ての罪を聞き、受け入れ、許しを与える「シスター」である。
纏う修道服が堂に入っているのは、着慣れているためだった。
祈りの為に組んでいた手はそのまま、薄目を開き入ってきた人物を確認すると、少女は口を開いた。
「おじさま、何の用ですか?」
「ウルスラ様。その、せめて座ってくださいませんか? 椅子ならあるでしょう」
「もう。私はそこまで貧弱ではありません。心配のし過ぎです。座ってばかりも体に良くないのですよ?」
「……はぁ、昨日熱を出したばかりでしょうに」
「う……そ、それで要件は何ですか!」
痛いところを突かれた、と露骨に慌てだした。
話を逸らすために入室の理由を聞く。事実として、老人は用があるからシスター――ウルスラに会いに来たのだ。
ごほんと、咳払いをして喉の調子を整え。
いざ、老人は話す。
「では、ウルスラ様――いいえ、
聖女とは、教会の最高階位。
「実は先ほど――」
「――
「……ええ、そうです。分かっているならば」
話の出だしを遮られ、老人は落ち込んだ。
とは言えそんな姿を細かく見たがる者もいない。
ウルスラという少女もまたそうである。
「そろそろ波が来ますね。教祖様の指示通り、人は王都に集まっていますか? 司教達は集まっていますか? 特にほら、レグルスさんなんか逃げ出してそうですよね。あれだけ奥さんを紹介してあげたのに」
「ええ、集まっています。それに、レグルス様もおります。まぁ、数名ほど欠席していますが……それらはよく脱走しているウルスラ様なら、ご存じでしょう?」
「うっ」
これでも年頃の少女である。
外で遊びたがるのも仕方ないだろう。
こんな黴臭い――掃除はしているが、気分的に――場所に閉じ籠る方が可笑しいのだ。
老人は深く追求しなかった。目溢しをしたのは自分なのだから。
……空いた懺悔室の代わりを務めるシスターが、少々哀れだが。
「それで、聖女様。事の際にはくれぐれも」
今一度の聖女呼び。
それは、目の前の少女ではなく、彼女が演じる筋書き上の人物。そうであれと身勝手に願った、「聖女」という役割。
老人は目を閉じ、思いを馳せる。
数日もしない内に王都を襲うであろう、大波と台風に。
それは教祖様の計画した台本。
ならば、我ら信者は盲目に従うのみ。
例え行く末を知ろうとも――。
「――ええ、赤頭巾は狼さんに食べられるのが筋書きですもの」
そういって彼女は微笑んだ。
少女の洗礼名はビーチェ。以前の名前はもう無い。
ビーチェという名も、もう、殆ど呼ばれない。
今はもう、ウルスラだ。ウルスラでしかない。
この懺悔室に居るのは、無邪気な少女ではない。
それは、この国の十二人の聖女、その一角である「ウルスラ」の名を貰う、
※この世界は優しい世界です。
現実に比べれば優しいです。
【アースゲート教】
教祖という人物を基に発展した、神竜ボルカニカを奉る宗教。
特筆する点にて、12人の「聖女」と1000人の「修道女」の位がある。
ウルスラという聖女に付き従う、1000と11の処女なる侍女。
【ウルスラ】
男の場合は、アーシュラと呼ばれる。