「ONE PIECE Order of Grandline」RTA   作:メメイ

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狂気はいつでもハリケーンなのじゃ!
相変わらずレズちゃんを男と勘違いしてるロー


幕間「狂える男」

あんな状態だから狂っても仕方ないものだとは思うが、だとしてもその様を見るのは自分にとっても恐怖だった。

 

良くわからないうちに、何故だか怪物が現れたり色々してフレバンスから逃げ出した自分達とシスターに待っていた生活というのはそこもまた緩やかな地獄だった。

アスセナ、という俺と同年代の子供をただ一人除いてみんな珀鉛病を発症していたものだから他所の町には入れず郊外のボロ小屋で身を寄せ合いなんとか自然の中から食糧を得て暮らす日々。

 

誰かが見つけて殺しに来るかもしれない、夜も眠れない、医者には当然かかれない。

世界の全てが、何も悪い事をしていない俺達に優しくはなかった。

 

俺は医療の心得というのはあったが、かといって珀鉛病の治し方はおろか遅らせ方すら分からなかった。

ストレス、環境の悪さ、体力を養えない状況、そんな状態になれば珀鉛病の進行だって早まる。

一人、また一人、ぽつぽつと死ぬ、命がこぼれていく。

最初に死んだ奴が出たとき、アスセナが言った。

 

「し、死んだら……、ほら、埋めてあげなきゃ」

 

誰一人哀しみで動けなかった中、そいつだけは埋めろと言っていた。

それは正しい、正しいのだけど、死んだら空っぽだとでも言いたげな声色は……この状況でそんな感情になれるとか、頭が狂ってるのかと叫びたかった。

 

一つ、二つ、白い死体が増えるたびにあいつは穴を掘って死んだ奴らを埋めていく。

 

アスセナという奴は人見知りなようでやるべき事がない時は隅っこにいるか、外にでて一人で居た。

陰気で前髪で目元を隠してるものだから感情も分かりにくかった。

あいつだけは病人ではなかったから、外をうろちょろしていても咎める奴はいなかった。

本格的にこいつはおかしい、と思ったのはとある夜に外に出たあいつが誰かと喋るような声を聞いたから気になってこっそりと盗み見したときだった。

 

虚空を見つめて"お父さん"と話をしていた。

 

こいつの父親は死んでいる。

死んだはずのものの幻を見て話をする光景というのは見ているこちら側が狂気に毒されそうで恐ろしくなりすぐに寝床に戻って早く朝になれと祈りながら眠った。

恐怖に晒され続けたら、俺もあんなふうにおかしくなるのかという恐ろしさがあった。

 

三つ、四つ、五つ、六つ、命がボロボロと白く崩れていく。

 

大人だったから最後まで体力的には持っていたシスターもまた、白くなっていくのが怖くて仕方なかった。

 

「二人には、一つだけ約束して欲しいの。これから先どうなるかは分からないけども、どうか……どうか、振り返らないで。私達のことは、できるなら忘れて明日の事を考えて生きていってほしいの」

 

無理だ!と叫びたかった。

優しくされない世界でそんな風に生きるのなんて無理だ、病気だって誰一人受け入れないだろうことを考えると、シスターの思いやりもまた酷く苦しかった。

ただ、ソレは言葉にならなかった。

あいつが思いっきりこづいて言葉をとめたからだ。

 

「あ、あ、あの、シスター、大丈夫、大丈夫だから……。あ、安心して、ください。ね?」

 

わかっている、こいつの意図は分かる。

今こうして叫んだところで、死に際のシスターを不安を抱かせるだけというのは分かっているんだ。

でも、心の内側で「それはお前が今がどん底でも健康体だから言えるんだろ?」というある種の嫉妬心が拭いきれない。

幻と話をするような気狂いだろうが、身体は健常なのだこいつは。

明日が分からない、明日が来るのかも、いや来たとしても恐ろしいものでない確証も無い。

そんな身には、その理屈は嫌味がすぎた。

 

その後結果的に、あの場所を出てドフラミンゴの元に来た。

あそこで暮らした日々というのは、ゆるやかに下る地獄として頭の片隅に今も息づいている。

その中心には、気狂いの……幻とはいえ親とは離れず、一人じゃない男が居る。

お前だって一人のくせに、なんでそんなに頑なに幻を手放さないんだと叫んだ事もあるがもう今となっては過去のことだ。

 

「今日はとんだ厄日だな」

「どうしたんだよ、珍しく浮かない顔で」

「フッフッフ、笑える事にな……"腕狩り"と呼ばれた人間の腕を好んで蒐集する海賊といままでちょいと取引してたんだが、そいつがどうも捕まったらしくてな」

「珍しくも無いことじゃねえか」

「ただ捕まっただけならな、ただどうも腕狩りの奴頭が狂ったらしくてなあ……殺してきた被害者が襲ってくるというトチ狂った発言を牢屋の中で繰り返しているらしい」

「死んだ奴が……とんだ狂気だな」

「フッフッフ、そいつに任せてた案件が全部オジャンだ。取り返しがつくとはいえ手間がかかる事を考えるととんだ厄日だ。なんだったか、イーストブルーでこんなことわざがあったな確か。狂気はいつでもハリケーンだったかなんだったか」

「恋だろそれは」

「そうだったか?まあなんでもいい。ロー、お前はつまらん狂気に飲まれるなよ。狂気は狂気でも、飲み込む側になれ」

 

飲まれるものかよ、あんなもんに俺はなりはしない。

 

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