ボケ者どもの理想村(ムラビディア)   作:凍傷(ぜろくろ)

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フォント回。なるほど、ハーメルンだとこんな感じに……。


転移・転生者は何故か最強にならなきゃいけないがこいつはならないっていうか無理

【ケース10:小者臭すら出せずしてなにがモブか】

 

 堕天使ノレシフェノレと契約を果たしたモブさんは、ひっどいドヤ顔で二人を見ておりました。

 

おホォいおいィ、成功しちゃったよ俺ェエ~ッ、いやぁまいったぬああぁああっはぁああ~ん? え? なに? キミたちむぁああだ成功してなぁああいのォホホホぉん?

ギャアアアアアアアアアアアアうぜぇえええええええっ!!

「ねちっこいにもほどがあるだろ! ちょっと顔面整えて冷静になってから話しかけてくれ頼むから!」

「なんてひどい!? な、なんだよ! てめぇらが役に立てって言ったから頑張ったんじゃないか!」

「うるせー! 結局ただ殺されただけじゃねーかこのタコ!」

「お前それ言うなよ!! それっ……それ言うなよ!!」

 

 何気にざくりと突き刺さったようです。事実殺されただけですが。

 

「はぁ……けど、まあ、一応契約は出来るってことで、段落は得られた……のか?」

「精霊じゃなくて堕天使じゃけんどもね。どーすんだよ堕天使なんて……」

「あ、ねぇ堕天使てめぇ、御神体に精霊が降りねーんだけどどうすりゃ降りるの堕天使てめぇ」

『ぬぐっ……とりあえずその堕天使てめぇという呼び方をやめてもらおうか……!!』

「え? やだ。だっててめぇが下僕にでもなんでもなってやるなんて言い出すからっ……! 俺、友達になってほしかっただけなのに、てめぇがあんなこと言い出すからっ……! だから俺っ、仕方なくっ……!!

オォオオオオオこんガキャ都合のいいことをペラペラとぉおおおっほぉおおおっ!!

「でも俺対価として殺されちゃったしさぁ。ちゃんと同意の上で契約したんだからしょーがないじゃん。下僕言い出したのお前だよ? 違う? ン? 違う? 言ってみれ? ン?」

ギャアアアアアアアアアアアうぜぇえええええええええっ!!

「……アタイ、真面目な口調の超常の存在にうぜぇとか言われた人類初めて見たわ……」

「漫画でもまず居ないんじゃないか……?」

 

 訊ねるたびにぺちぺちと頬を叩かれる堕天使さんは、顔面全体にミキメキと青筋を浮かばせて絶叫しました。

 けれども契約は契約なので怒りを発散させる呼吸法をしつつ、説明をします。

 

『……ぬ。主よ。貴様の生体マナに、自然のマナが集いつつある。そうまで自然からの干渉が多ければ、声のひとつでも聞こえてこようものだが?』

「ホ? そーなん? どーなん、中井出YO」

「え? いやてんで。ちっとも聞こえねーけど」

「ホ? ホッホッホ、おやおや堕天使さんたら、もしや知らないけど知ってることにして見栄とか……ウフフ、張りたかったの?」

『違うわカスが! この男は間違いなく自然の精霊から干渉を受けている! 声が聞こえぬなどあってたまるものか! ここまで強い然の力だぞ!?』

「うるせー! ここまでとか言われたって見えねーんだからわかりっこねーべョ!!」

「そうだこのタコ! 自分だけ見えるからって何様だコノヤロー!!」

『貴様らが教えろと言い出したのだろうが!!』

「なんだとてめぇ!!」

「このクズが!!」

『クズは貴様らの方だろうがこのクズが!!』

「い、いや……あのな? 正直客観的に見て、こいつらと同じノリで騒ぐっていうのは、お前自身が相当な馬鹿ってことを意味して……だな」

「そうだこの馬鹿!!」

「馬鹿め! 馬鹿め!!」

ギッ……ギィイイイイイイイーーーーーッ!!

「いや……だからな? そうして言い返した時点でほぼ負けでだな……」

『黙れクズが! そういう貴様とてこいつらと同じ穴の狢なのだろう!!』

「なんだとてめぇ!!」

「「このクズが!!」」

『このやり取りでなにがどう違うと言える!!』

「自滅で契約した()天使に言われたかないわこの馬鹿!!」

『ぬぅっく!? ききき貴様ァアアアアアアアッ!!』

ワー、怒った怒ったオーコッター♪

小さい小さい堕天使ちいさ~い♪

ウゴロギャアァアアアアアアアアアアッ!! ここここのクソカスどもがぁあああああああっ!!

 

 こうして、堕天使と彼らの戦いの火蓋が切って落とされました。

 その戦いは凄まじく、三日三晩───

 

『貴様らからふっかけてきたのならば話は早い! 燃え尽きるがいい有象無象! 我が究極の魔法、フグオォオオオオッ!?

 

 ……続きませんでした。

 何故ならば、魔法を放とうとしたノレシフェノレが、その瞬間にミイラのように皺枯れていったからです。

 

アゴ、ゴゴァアア……!? ナナナ、ナニ、ガ……!

「……ほれ、あっち、見てみ?」

アガ……? ア、ァ…………アアーーーッ!?

 

 カサカサに乾き、震える声で訊ねた彼は、トンガリさんに促された先を震えながら見やります。

 すると……なんということでしょう! そこには、同じくカサカサに枯れた中井出博光の姿が……!!

 

「アホやねぇ……。中井出を主にしといて、魔法なんざ撃てるわけねーべョ」

「あの……な? 提督を主にして契約した時点で、お前もう魔法とか使えないんだよ……。だって提督、魂以外に対価として捧げられるものとか一切なさそうだし……」

ェッ……イ、イヤ、ナニカアルダロウ……! 血デモイイ、欲シクハナイガ精デモイイ……! ホ、他ニ……!

「いや……だってキミねぇ……中井出じゃぜ?」

「お前が魔法とか使うのに、マナとかそういうものを使うっていうの、なんとなくわかるよ。漫画とかではありそうだもんな。……でもな? 提督なんだよ……。お前がそれを引き出すための触媒がさ…………提督なんだよ……」

………

 

 まるで意味はわからないのに、何故だか彼は無性に悲しくなってきました。

 同時に、理解もしたのです。

 

……、……ゲホッ、ゴホッ、ん、……この男に精霊の声が届かない理由がわかった。……生体マナが少なすぎるのだ』

「………」

「………」

 

 物凄い説得力だったといいます。

 そしてモブさんは、カサカサな状態のまま三人に肩をポムポムと叩かれたのでした。

 

……。

 

 カサカサに乾いていた彼が、潤い復活のために川に突き落とされて数秒。

 彼はぴちぴちの若い姿となって空から舞い降りました。

 

「回復めんどいからってとりあえず殺すのやめない!? ほんと命に対して大雑把になってきてるなぁもう!」

「や、アタイに言われても。突き落としたのノレさんじゃし」

『ノレさんと呼ぶな』

「んー……なんとかしてその生体マナ、だっけ? を、上げることは出来ないのか?」

『レベルでも上げることだな。それ以外があるならこちらが聞きたいものだ』

「てめーが解放されるのを条件に、生体マナを授けるとかは?」

『主の体が爆発四散するが?』

「中井出……てめぇ花火だったのか」

おう! 俺だ! 留だぁ! 今年の花火大会はよぉ……! 俺っちの登り竜乱れ七変化を楽しみにしてくんな!

「なんであんたはそこでノリノリでネタに走れるんだろうな……」

「人生とはそういうものさ晦一等兵! というわけでレベルアップね! OK任せてくれ! なにを隠そう、俺はレベリングの達人だぁあああっ!!」

 

 言って、彼は走り出しました。

 そう、燻っていてはなにも先になど進みません。状況を動かすならば今……そう、今がまさに旬なのですから───!!

 ……そうして彼が走っていって数分後。

 

「《パパァアア……!》天象……降臨……!!

 

 死んで戻ってきました。ご丁寧に天使の降臨を彷彿とさせるエフェクト付です。光とともに舞い落ちる幾つもの羽毛が鬱陶しいったらありません。

 

「なにあっさり死んでんだタコ!」

「なにやってんだ提督てめぇ!」

「う、うるせー! お外で強敵に出会ったんだい! 僕悪くないもん!」

「提督……悪い悪くないじゃなくて……な?」

「この雑魚が!!」

「雑魚です《バァアアーーーン!!》」

「決めポーズ取ってんじゃねィェーーーッ!!」

「愚かな……。雑魚でなければレベリングになど出るわけがあるまい。そこんところを理解もせずに雑魚を雑魚などと……フフッ、正論すぎて泣けてくる……っ……!」

『……おい。こいつはいつもこうなのか?』

「そりゃオメェ……だって中井出じゃぜ?」

「提督だもんなぁ……」

『……貴様は慕われているのか? 貶されているのか? どっちだ』

「必死に今日を生きています。…………あの。ねぇ。なんか堕天使が泣きながら肩に手ぇ置いてきたんだけど。ねぇ、なにこれ」

 

 彼の質問に、級友は笑顔で拍手を贈るだけでした。

 ともあれ、そうして彼は仲間のサポートの下、何度も死にながら、モンステウとの戦いを続けました。

 

勇ゥウウ者ぁああ《ドボォ!》ゲフォーリ!!」

 

 木の棒を手に、魔物へ向かって。

 

「ふっ……やるな……! ならば喰らえ! これぞ王家秘伝の奥義・流し斬り!! ……ば、馬鹿な! 流し斬りが完全に入ったのに《ドボォ!》ゴフォーリ!!」

 

 様々な攻撃方法を試し、殺され、復活し、殺され、それでも諦めず。

 

「ギャアアアア強ぇええええええっ!! たたたたすけてぇえええええっ!!」

 

 けれども彼は弱音を吐きませんでした。

 

「《ビタァーンビトゥーン!!》ゲファーリゴフォーリ!!」

 

 いつだって真っ直ぐな眼差しで己の成長した先を見据え、強敵を相手にしても逃げ出さず。

 

だぁああじぃいげぇええでぇえええ……!! ごごごごろざれるぅううう……!!

 

 ついには相手の弱点を見出し、そこを突くことで勝利を収めたのです……!

 

「あ、あれ……っ……? なんか折れた棒が刺さって勝てた……!? や、やったー! 勝ったー! ウオオオオーー《ドボォ!!》ゲフォーリ!!」

 

 けれど勝利を味わおうとも油断はせず、不意を突いた魔物の攻撃も華麗に躱し、すれ違いの一撃で見事に倒してみせたのです。

 

「《ドゴゴシャメキャゴキャビタンビトゥンドゴォン!!》ぎょよわぇあよぉあおガァアアアアアアアアッ!!

 

 そう……彼の者の名は博光。中井出───博光といいました。

 

「《チーン……》グビグビ…………

 

 なお、事実とこの解説は異なります。

 後には泡を吹いて痙攣する馬鹿者だけが残されました。





ルッパッパラー【-豆知識劇場-】ラーララーラー

「ねぇねぇタイ・ソーのお兄さん! 【グビグビ】ってなぁにー?」
「ハッハッハハ! うん! 飲み物を乱暴に飲んでいるオノマトペにも使われるけど、キン肉マンに関しては違うんだぞぅ!?」
「いいから質問にだけ答えてよ! 前振り長いんだよどいつもこいつも!」
「ぁす、すいません。……グビグビっていうのはね、古くはキン肉マンの登場人物であるロビンマスクが、ネプチューンマンに掟破りのロビンスペシャルをされた頃まで遡るんだ」
「だから答えろっつーの! 結論!」
「ロビンスペシャルをくらったロビンから分泌される、謎のロビン汁が溢れる擬音です」
「すげぇ!」

 ルァー【-豆知識劇場 完-】ラーラーラー

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