【ケース15:真面目に生きちゃ馬鹿を見る。愚かに生きたら鏡に映った馬鹿が居た。つまり……真面目に楽しく愚かに行こうぜッ☆】
ごくり……と誰もが喉を鳴らす中、彼はそんな視線に気づききょとんとしました。
「え? いや、こんな雰囲気で一度は言ってみたくない? こう……俯いて“いや……失敗だ”とか。あ、実際は成功したよ? なんかドリアードさんの声が聞こえて、心地よい舞いをありがとうございますって」
「ベンハー!!」
「《バゴシャア!!》つぶつぶーーーっ!?」
成功だったので殴られました。原中大原則ひとつ、相手をからかうならば殴られる覚悟をも抱けを胸に、避けることはしませんでした。
「ぐほっ……
「お……おぉおお……! 木像だからなのかどうなのか、おなご像の髪の毛部分の色が緑色に……っつーか全身の色変わってきてねぇ!? え!? なにこれすげぇ!」
「これは……っ……すごいな……! なんか今、改めてファンタジー世界に来たって実感沸いた気がする……!」
「じゃよねじゃよね!? アタイもYOダーリソ! 痛い目見まくって実感したファンタジーじゃなく、しっかりとした日常生活の中で感じられるってスッゲェ貴重! てぇしたもんじゃわい中井出!」
「うむ! これぞ人間の新たなる第一歩! ……ところであのー、これからなにすりゃいいんだっけ?」
「え? そりゃオメー……」
「あ、あー……この荒地をなんとかする方向でいいんじゃないか? これで植物とかの発生条件は整った……んだよな?」
「グムー……そこんところは村長さんに訊いてみるか。あ、じゃあちょっと行ってくるから、そっちも属性ダンス、ガンバな!」
「オウヨ! 藤巻くん並みにガンバリストしてやっぜィ!!」
「だな! 目の前で成功例出されたら俺達もってなるよな!」
成功例を前に、トンガリさんとモミアゲさんのテンションも上がりっぱなしです。二人とも、村長宅へと小走りするモブさんを見送りつつ、さあいざとばかりにやる気ゲージが漲らせております。
「ンマッ、アタイはいっちゃん最初に成功出来たけどネッ!?」
「悪魔召喚して、呼んでねーとまで言ってたんだからあんなもん無効だ無効」
「それ言われるとオラつれぇ……」
「ところでなんだが彰利」
「ホイ? なになにダーリン」
「俺はその……どんな舞いをすればいいんだ?」
「どんな? どんな……オー……か、雷の、舞い?」
「……どんなだよそれ」
「……どんなだろ」
謎でした。
「あ、ほいじゃあ光の舞いとかどぎゃんね!? 雷がダメなら光でGO!」
「もっとどんなだよそれ!」
「そりゃもう笑顔YO笑顔! 輝く笑顔を披露しながら舞うのYO! 具体的に言えば、極上ガイアスマイルを見せながら!」
「ガ、ガイア? スマイル?」
「んもうダーリンたらほんとそっち系にはウトイんだから。極上ガイアスマイルってのはね? スコルスキー戦に突如現れたガイアが登場とともに何故か見せつけたあのスマイルのことYO」
「知るか」
「そうよね」
もっと謎でした。
けれども、確かに心を込めるという意味では、笑顔も外せないものには違いありません。
ならばと、モミアゲさんはできる限りの笑顔で、トンガリさんは絶望フェイスのままに舞いを舞ったのでした。
結果は……失敗。
「ちくしょー! 成功例があると失敗するのがスゲェ悔しい! ダーリソもっと! もっとYO!」
「わかってる! か、雷、雷を意識だな? よし……!」
「ダーリンダーリン! うち呼んだっちゃ!?」
「呼んどらんわ!! 今度はなんの真似だ!」
「ィヤッハッハッハ! そげなこと気にするよか雷YO! ほれほれダーリン、全集中、雷の呼吸……とか言ってみて!? ネ!?」
「だからなんの真似なんだよそれは!」
「OKわかった、笑い方をヤハハにするところから始めよう」
「雷ってそんなよくわからん性質なのか!?」
「オウヨ!」
「……なぁ彰利。ひとつ訊きたいんだが、お前が俺の知らない未来を知ってるなら、この……空き缶に髪を通したような女に合わせたなにかにした方がいいんじゃないか?」
「ホ? おっほほそりゃ無理じゃよ、成功したらヤベーヤベー。だってそれ死神だもの」
「なんてもん押し付けてんだよお前は!!」
「キョホホ、なんてもんてそりゃオメェ……ルナっち?」
「…………未来でなにをどうすりゃ死神相手にそんな呼び方出来る道を選べるんだよ」
「それはキミの未来でキミが見んしゃい。そっちのアタイがせいぜい頑張るさ」
「………」
軽く笑って、トンガリさんはモミアゲさんの胸をトンと軽く小突きました。そしてすぐに舞いの続きをします。
闇とはまったく関係のない、力強さと躍動感に溢れた舞いです。それはとても熱く、とてもリキんだ舞いでございました。
やがて最後に「見よっ! この腹筋!!」とブリッジをしたところで、なんと彼の体から黒い霧のようなものが溢れ出て、グリフォンマスクの像に向かっていったのです。
「え? あれ? ……キャア成功した!? ダーリンダーリン成功した! アタイったら成功しちまったわYO!!」
「お、おおお……! え? でも黒いぞあれ。さっきみたいに弾かれるんじゃないか?」
「アッ……も、戻れ! 戻るのYOアタイより出でし黒のなにか! い、いかーん! そっちへ行ったらダメだー!! ……お、おお?」
失敗例を思い出し、慌てて声をかけると、なんと戻ってくる黒い霧。もしや意思がしっかりある? そんな疑問を胸に、軽い答え合わせをしてみると、彼はひとつの結論へと到達しました。
「やべぇよダーリン……これきっとアタル兄さんの奇跡の灰だ……!」
言われたモミアゲさんは思いました。絶対に違うと。
「ほれほれ見て!? これきっとアタイがピンチになったら助けてくれるんじゃぜ!? 自分の歴史を燃やされたのに、灰になって行動出来るとかスゲーよね! ね、ねぇ灰さん!? なんか喋ってみて!? あたかもシューティングゲームで自機の周りを回るオプションのように動いて! そしたらシンデレラとかサンドリオンとかステキな名前がつけられると思うの!」
トンガリさんの言葉を聞いて、黒い何かがざわざわと動き、トンガリさんのもとへと集まります。
それが密集し、やがて形になると───
『私だ』
「ゲェエエエーーーッ!? サンシャイン!?」
『私だ!!』
ノレさんとなりました。
「いやテンメなにやっとんの!? なしてアタイの体からまろび出っとや!?」
『まろばんわ! ただ夢の世界から出るのに苦労しているところを、貴様の闇の波動に引っ張られただけだ!』
「ホ? なに? きさん、えらそうなこと言っといて夢の中で今まで苦労しとったの? へー、ほー、だっせー」
『ななななななにも知らん貴様に言われたくないわぁあーーーっ!! キッサマ私があの男の夢の中でどれほど苦労したかっ……!!』
「おっほっほ……ん、わかっちょーよ……苦労したのね……? ホホ……たいへんだったねぇ……。ん、そうかい……よかったねぇ……」
『ギ、ギィイイイイイーーーッ!!』
「あ、あー……訊いていいか? ノレ」
『ノレシフェノレだ!!』
「言いづらいんだよお前の名前! なにか略称とか考えてくれ!」
「もうサンシャインでえーんでねぇ? ほれ、グオッフォフォ……!! って笑うところから始めんべ?」
『太陽光などと一緒にするな忌々しい!!』
「あ、一応サンシャイン=太陽光で理解得られてんのね?」
「そんな細かいツッコミはいいから。名前とかさ、もうシフでいいだろ。それで、訊きたいんだが」
「アルトリウスの大剣ってどうやって作るん?」
『知らん』
「彰利……ちょっと黙ってような?」
「じゃ、じゃけんどシフっつーたらロマンシングサガか大狼のじゃぜ!? なんか言いたくなるべヨなんか知んねーけど!」
「うるさい静かに見てろ!」
「グ、グゥムッ……!」
モミアゲさんは思いました。ここに提督が戻ってきたら絶対に話が進まなくなる。さっさと話を進めるなら今しかないと。……思いはしましたが、それはこの親友まで静かにしてくれたらだろうか、と少し遠い目で寂れた村から見える遠くの空を見ました。