【ケース17:インライングッドフォーユー】
ザッザッザッザッザッザッザッザ……!
「UG!!」
ザッザッ!
「UG!!」
ザッザッ!
「UG!!」
ザッザッ!
「UG!!」
ザッザッ!
「周~防ア~マネ~は」
「やめれ!!」
それはある張れた日のことでした。
今日も今日とて早朝ジョギングをしていたツンツン頭なトンガリさんと、スポーツ刈りチックなモブ提督さんは、トンガリさん先導のもと、リズムよくテンポよく声を張り上げていましたが、歌い出した途端にモブさんに止められました。
「何を歌い出すかと思えば一等兵この野郎! そういう直接的なのはダメって言ってるでしょ!?」
「M78星雲は良くて、なして睡眠の重要性はダメなん!?」
「いいから走ったら耕すぞお前この野郎! 自然の精霊の加護が新鮮な内に、出来る限り緑を増やさないとなんだから!」
「おっけーざますー! で、今日は何週目標で走るん!?」
「もう限界って思ったとこからプラスで一周! それまで学園ゆーとぴあ!」
「オーライまっすぐGO! しっかしただ走るだけじゃつまらんけん、なんかやっぱ歌とかないん!? てーかまなびストレートはいいのに周防天音はダメってなして!?」
「歌じゃなくてもなにか口にするとかでいいだろもう! 僕らケンゼンな17歳! OK!?」
「アッ! ナルホロ! ほいじゃあ───レタスが食いてィェーーーッ!!」
「おお! 魂の叫び! じゃあ俺は……感動出来るほどの食べ物とか食べてみてぇーーーっ!!」
「アッ、それアタイも! 漫画とかドラマとかである、ハッとするようなの、食ってみてェェェ~よね!?」
「だよなぁ!? よっしゃあなんかテンション上がってきた!」
「オウヨ! 舞いの練習もかねて、踊りながら進んでくれるぜ~~~っ!」
「うおっ!? 腰クネクネしながらよくその速度で走れるなおい!」
「オヒョヒョヒョヒョ! 任せてくれたまえー! って、踊りながらとかだとアレ思い出すわよネ、アレ!」
「アレってなんだー!?」
「ジャッ……あ、直接的はNGなのよネ? ほいじゃあ……ジャーンゴー! 村を駆け抜けてー! ジャーンゴー! 光斬り裂くよー!」
「……名前的な意味でマッハパンチなアレか! ファイティングなゴールドもそうだけど、ジャングルとかゴールドとか、そう聞こえない歌って多いよなー!」
「そうなのYO! ファイティングなゴールドとか、もうファイティ~ンゴ~としか聞こえねーデショ!? じゃあもうファイティングゴッドでもえーやんって感じになって、武神な人喰いオロチさんしか思い出さんし!」
「アニメのGOD氏は催眠術に掛かったまま戦ってる時の、あのアッパーカットで満腹だったなぁ……」
「……あの顔、なんじゃったんじゃろね」
「なんつーか、微笑ましい顔してたよな……戦いの最中なのに……。こう、後ろからの攻撃をガッと防いでからの蹴りと、そこから見上げるほど低い姿勢からのアッパーカット! ……アッパーする前は険しい顔だったのに、アッパー場面がサワヤカフェイスすぎて、あの一瞬……この博光、戦いの最中であることを忘れた」
「アイキャッチとか付けるなら、あの場面にファイティ~ンゴ~ッ♪ とか歌つけてみたら最高だと思うの。こう、ファイティ~ンって部分で攻撃仕掛ける場面で、アッパーの場面で、ゴ~ッ♪ って」
「やめれ!」
「じゃあどうすんだコノヤロー!」
「どうするってそりゃお前」
「………」
「………」
「ウォッウォーゥ! ワーゥワッ! イェッイェーーーイデッッテェーン! デーデゲデデ!」
「ウォッウォーゥ! ワーゥワッ! イェッイェーーーイ!!」
「直接的じゃねーって、こーいうことネ!?」
「なんか違うしおもっくそ直接的な気もするけど歌詞カードに書いてないならアリって言えばアリな気がするからGO!」
そうして、踊りながら村の外周を駆け続けます。
時折モンステウと遭遇しますが、二人で協力して仕留めます。
食べられるモンステウならば嬉しいのですが、その可能性は案外低かったりします。
どうやらこの村の周辺にはゴブリン、オーガが多いようなのです。
「あ~……のう中井出YOォオ? 運動ばっかしてると肉食いたくならねー?」
「ボアが出る地域だったらまだよかったんだけどなー……ここらへん、ちっとも出ないんだもんなぁ」
「ボアとか出ると、近くに大樹ユグドラシルとかありそ~よね?」
「あ、それわかる。ファンタジアの話だよな? 樹を……穢さないで……と言ってきたマーテルさんの目の前で、大樹復活させてみたいよな」
「時間移動が可能なら出来そうじゃよね」
「むしろ時空転移出来るようになって、真っ先にやることが村を救うことじゃないことに驚いたのですよ俺」
「あ、それアタイも。バークライト氏を助けるより先に、襲われる村を助けると思ってた」
「ミゲールさんやらマリアさんやら、アミィを助けてあげないの!? って驚いたもんだなぁ……」
「ミゲールって聞くと霊能パンチ思い出すな」
「鉄筋家族か」
「………」
「………」
「なんつーかYOォオ? こういう無駄話ってYOォオ? 男子高校生って感じするわよねェ~ィエ」
「するなー。晦も呼んで、三人でバレーボールでもトスしつつ話したい」
「それはゾンビですか?」
「いいえ、坂本ですが?」
「………」
「………」
「で、肉の話だけどさ」
「オウヨ」
踊ることにも疲れて、そのまま走る二人は会話を続けます。なんともどうでもいい会話を、続けます。
男子高校生らしく、話題が途切れれば即座に話が戻ったり、戻った途端に逸れたり。
そうして目標の周回を終えると、そこから地獄のラストスパートです。
「ぜひゃーっはぜひゃーっはっ……!! ぶへっほ! ヌ、ヌヌーーーッ、レベっ……レベルアップしても、貴様に勝てぬとは~~~っ! っほげっほごほっ!」
「ジョワジョワジョワ! まだまだ素の身体能力じゃ負けねぇぜ~~~っ! ……てーかYO? 最近村人のロウズィーンたちがヤケに張り切っとんじゃけど。なんか知らん?」
「ぜはー! ぜはー! は、はっ……!? ヴぃゃっ……! いやっ……特には……! 舞いも成功して、緑がっ、すこっ、少しずつ、増えてきたってくらいでっ……! 俺はごっほげほっ! は、はー、はー……! お、俺、なにか聞いたわけでも、ないから……!」
「そーなん? また貴様がなにかやらかしたんかと思ったZE」
「ぶはっは!? はっ……なんでもかんでも人の所為にするのやめない!? ぶはっ……俺が最近やったことなんて、ぶはっ、死ぬ気でどころか死にながらレベリングして、ひゃぶはっ……結局唯一のスキルであるURのっ、ひゃはっ……スキルレベルを上げたことくらいじゃねーか! ひゃっはーっ!!」
「おおう、テンション高けーなおい」
「呼吸してんだよ!! 息細くなるほど呼吸困難やってんだよ! 命が惜しくないから足とか止めない自分の体がいっそ怖えーよ!! 命に執着がなくなるって、ほんと危機管理ぶっ飛びますね!? なんかもう呼吸停止して死んでも、それより会話を優先させようッ☆ って意識の方が強くて怖い! なにこれ怖い!」
「ぬう……そりゃ重症じゃね。まあアタイもそーなんじゃけど。しっかしURかー……アタイもスキルツリーもとい、スキルひのきの棒を成長させるテメーを横で見とったもんね、村人たちの原因は確実にそれか」
「………」
「中井出? ……中ウオッ!? おまんどぎゃんしたとや!? 顔面土気色しとっとーよ!? もしやそれが伝説のチアノーゼ!? それが伝説のチアノーゼでござるか薫殿!?」
「それござる違いのFate……ヒュクッ!?」
顔が土気色になってきたモブさんは、それでも全速力で走っていました。足が怖いくらいにガタガタぶるぶる震えようとも力を抜くことなく。
やがてひきつったような悲鳴をあげると、彼はザムゥ~と大地に倒れたのです。
「ギャヒヒィ~~~ッ!! てめぇ~、なにを休んでいやがる~~~っ!!」
「……、……、……」
「あ、内臓引きつった? ほれ電気ショックならぬナックルショック」
トンガリさんは、うつ伏せに倒れたモブさんの背に握った拳を叩き落とします。同時に月清力を流すと、彼の乱れていた内蔵が回復していったのです。
「グ……ウ……ウゥ……ウォァァ~~ッ!!」
「ほいほい、ロビンズイコンとストーンヘンジでドロップアウトしたロビンみたいな声出しとらんと、さっさと走っべーョ」
「任せてください」
復活した彼は素直に走りました。