【ケース25:アニメOPで空を飛ぶキャラが居るからって、きっと同じように飛べるに違いねーとか安易に思ったらいけないお話。ていうかアニメOPのキャラは何故空を飛ぶのか。バトル物でいずれはそういうのを会得するとかならわかるよ? なんで漫画描き物語で空を(略)】
「ところで真龍王サマ? そちらのご紹介いただける方の性別とかは───」
『雌だが』
「「あ、チェンジで」」
そしてまた即答でした。
その直後にドドスドスドスとモミアゲさんの脇腹に軽い地獄突きを仕掛けていきます。
「だっ! いっ! ちょ、まてまていきなりなんなんだ二人とも!」
「だから雌は人化するって言うちょろー!? なして人の助言ば聞かんとや!?」
「俺が言ってるわけじゃないんだが!?」
「性格だってどうせ晦を崇め奉ってばっかりだとか、さすが真龍王さまがお認めになられたお方ですとかそんなことばっか言うやつに決まってんだから! ていうかもうほんと従者いいから!」
『……? 人は血気盛んな性格は好まんと思っての選別だったが』
「あ、ごめんなさい真龍王サマ、従者さん、ほんと結構です。あ、ところでちょっとばかし情報が欲しいのですが、その優秀な部下サマ、もしや人化の能力など───」
『龍のままでは傍に就きづらかろう。当然授けるつもりだ』
「「それみたことかモミアゲこの馬鹿この野郎!!」」
「お前その主人公ほんとやめろよ!? 異世界でそういうムーブするとこういうことになるんだからほんとやめろよ!? フリじゃなくてやめろ! やめて!? ほんとやめてお願い!!」
「ダーリソほんと迂闊に雌とかご招待すんじゃねぇよ!? ほんと無しねそういうの! ほんとお願い! ね!? ねっ!?」
「べつに人化してもらわなきゃいいだけの話だろっ……って痛ぇ! だから地獄突きやめろっつーの地味に痛いだろーが!!」
「痛くなければ覚えませぬ!」
「えーかねダーリソ! もしこれから誰かがキミに何者かを紹介するとかほざいた時! 必ず性別を訊きゃーせぇ! えーかね!? ぜってー断言するぞ!? それら全部おなごだから!」
「いや……いくらなんでも無茶苦茶だろ、どんな確率だよ」
「うるせー! どーせダーリソなんて町の外てけとーに歩いたら誰かとぶつかって、そいつが亜人のおなごだったりするんだ! なんなのよもうこの主人公野郎!」
「罵倒の内容が言いがかりもいいところすぎるわたわけ!」
こうしてギャンギャン騒いだお陰か、従者の件はお流れになりました。
トンガリさんとモミアゲさんは深く深く息を吐きます。安堵の息です。
『ふむ……だがしかし契約者よ、我がいちいちこうして話しかけていては、貴様が頭のおかしな存在と思われるだろう』
「………」
「………」
「……既に友人から痛い目向けられてるな。事情知っててその目ぇ向けるのやめろコラ」
「したっけどうじゃろう、モミアゲに向かってバハムート、とか言うのがヤべーなら、愛称とか呼び名をつけてみる、とか」
「あ、それいいかも。バハムートにちなんだ呼び名とかがいいよな。言いだしっぺの法則! 彰利GO!」
「え? アタイ? ウムムム~~~~ッ……やっぱバハムル?」
「やっぱりまずはそうなるよなぁ……なんてったってバハムートだし」
バハムルについてはファイナルファンタジー3をどうぞ。
そんなわけであーでもないこーでもないと話し合い、バハムート自身は己の呼び名を誰かが決めるなど随分と久しぶりなため、どこかわくわくしておりました。
時にいい名前が出ては“おお”と歓心、人間もなかなかやる、などと笑みを浮かべては、次から次へと上がる名前を待っておりました。
「おーい、なぁ二人ともー? 肝心のバハムート自身の意見、聞いておいたほうがいいんじゃないか?」
そんな中、モミアゲさんはハタと気が付き助言を口にします。
おおこりゃ失態とばかりに頷く二人でしたが、あいやまたれいと思い直すはトンガリさん。
「どした? なんか気になることでもあったか?」
「オウヨ。本人に自分の呼び名を決めさせるとか、結構恥ずかPことじゃねーの? もうちょいアタイらで考えたほうがえーって」
「……けどさっきからろくな名前出てないだろ。なんだよジョルジョーネ=ディ=モンテ=ショスタコビッチⅢ世って」
「こういう時は直感GOYO! なのでアタイは───ドランゴで」
「もうちょっと捻った方がいいと思うぞ」
「もうダーリソったらそればっかり! だったらダーリソ提案GO!」
「むっ……まあ、確かに聞いてばっかなのにダメだしばっかなのもよくないよな。あ、あー……名前、名前かぁ……バ、バート?」
「………」
「………」
「お前らとりあえず俺の発言聞いたら目ぇ逸らすことにしてないか!? ちょっと待て今考えるから別の! ん、んん、あー……! 真龍王からとって、シン、とかどうだ!?」
「罪と書いてシンと呼びたくなるな」
「オウヨ。レスト・イン・ピース」
「なんの話だよ」
「ケンゼン!」
「言うだけならタダ!」
「シンじゃダメか……あ、じゃああとは提督か」
「お、せやね。ほれ中井出~? なんぞか思い付きで言ってみれ? バハムートと関係があって、なんかこー……これぞッッ! って感じになる名前」
「ぬう。バハムート……名前……これぞ~……おお」
彼は珍しく頭を捻ってよ~く考えました。
なにかに名づける……異世界ではよくあることで、なんかよくある“名づけは大切なこと”的な印象があったので、頭が上手く回らないなりに懸命に考えました。
そしてハッとすると、行きつけのお店で好物を注文するような人懐こい表情で言うのです。
「“無情☆ボイン”、っていうのはどうかな」
───その日。
ひとりの少年が、モミアゲさんのモミアゲから放たれたメガフレアで消し炭になったそうです。
……。
さて。無事にモブさんが消し炭になり、復活した現在。
大地には、地面を抉り、ビグンビグンと痙攣を起こすモブさんが……おがったとしぇ。
そして、それを見届けた彼らは……
「これぞアタイ流……死神のッ舞いッ!!」
「おっ……彰利ー、ちょっと霧みたいなの出てたぞー! 死神で間違いなさそうだー!」
「よっしゃあオッケン! よぅしぜってー召喚するぜー!」
痙攣する彼を視界の隅に、絶対に召喚してくれようと意気込んでおりました。
『いや貴様ら……もう少し構ってやった方がいいんじゃないか……?』
「ホ? したらノレっち、つついておやり?」
『嫌なんだが』
「マア! 自分がされたら嫌なことを人に押し付けるなど! なんと悪魔的行動!」
『やかましい! というかこいつはなにがしたかったのだ? 急にバハムートのように雷雲とともに空から舞い降りたかと思えば───』
そう。彼はバハムートのメガフレアで消し炭にされた瞬間、URの復活方法にて“バハムートの登場シーンを再現して復活”を選び、空から舞い降りました。雷雲を裂いて現れた時点で雷に打たれまくってボロボオロだったのですが、その直後に地面をズガガガガガガと滑ったわけです。死にます。
詳しく言えば、雷雲を裂いて降り、バハムートのように地面スレスレで上空に浮き、風を吹き飛ばすように翼を広げる……筈が、翼がなかったので顔面で地面を抉りながら滑っていって、あのザマです。
仕方なく様子を見るため動いたノレさんは、痙攣しつつもなんとか仰向けになったバカ者を見下ろし、溜め息を吐きます。
「……、こ…………ろ、し……て……くれ……。おまえ、の……てで……」
ズタボロ状態の彼は、なんとか声帯を震わせて意思を届けます。それを受け取ったノレさんは一切の躊躇もせず心臓に手刀を突き刺しました。
「シーザー……波紋で心臓を……」
そしてなんか誤解されました。やがて彼はシャアアアン……と塵になって消え「残像だ」
『!?』
いつの間にか、ノレさんの背後に背を向けて立っていたのです。
バトル漫画なら“貴様……いつの間に!?”とか驚かれる状況ですね。
そんな無駄空間をわざと殺されてまで作った彼は、「これぞ秘奥義幻影無光拳……!」とカッコイイポーズを取りつつい言いました。意味はありません。
当然のように「《ドス》ベンッ!」殴られました。