ボケ者どもの理想村(ムラビディア)   作:凍傷(ぜろくろ)

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骨々の巻-ホネボネのまき-

【ケース26:当たり前のように受け取ってるけど、勝手に踊っといて“なんかくれ”は頭がイカレてるレベルでおかしいと思うほね】

 

「おーい晦ー、彰利ー、そっちどうだー?」

「おー、復活したか提督~、こっちはー───」

「───死神の舞い───……成りました」

「っと、死神の降臨が叶ったところだー!」

 

 死神っぽさをイメージした像に、トンガリさんの体から漏れた黒い霧のようなものが吸い込まれていきます。

 するとその像からひやりとした空気が流れ出て、鎌を持った骨が現れたのです───!

 

『ほねほねほねほねほね! 心地よい舞いで俺を呼んだのはてめーほね!?』

 

 ……なんだか大変元気な骨でした。古きよき時代の死神ファッション、黒のズタボロの外套に鎌、というスタイルなのに、なんともやかましい死神です。

 そんな彼の前まで近づき、ふよふよ浮いている骨を見上げると、モブさんは自己紹介ののちに骨の名を訊ねます。

 

『我が名はボーン=ナム! 懐かしい気配につられてぬるりとやってきたほね!』

「ボーンナム!? ……ジョジョの第一部に出てきたグールか!」

『ちげぇほね! 本名は天空×(ペケ)字=南無! ただのしがねぇ骨ほね! 死神の舞いで俺を当てるたぁ中々見込みがありそうで無ェほね!』

「なんと!? つまりろくでもねぇもん引き当てたっつーことザマス!?」

『ほねほねほね! ちげーねぇほね!』

「も、もし! もし、そこの骨な方!」

『ほねっ!? 改まって骨の方なんて呼ばれたのは初めてほね……なにほね?』

「えーと……なんで死神って浮いてるの?」

『そりゃ簡単ほね。地界……てめーらが元居た世界の日本の漫画で、ジョジョがあるほねね? その中のスタンドが、使用者が空飛べるわけでもねーのになんか最初っから浮いてる理屈と同じほね』

「おお! つまりDIO戦でDIOと承太郎が空を浮いていた理屈と同じと!」

『イグザクトリィほね!』

「お、おいおい提督? いきなりな質問な上に、これっぽっちも解らんのだが……?」

「へ? あ、いやいや晦? ほら、スタンドって浮いてるだろ? ゲームでも、移動させる時はスミ~って浮きながらの移動。で、スタンドは人に触れる。ジョセフがハーミットパープルを使ってターザンめいた移動が可能だったのも加味するに、スタンドを上空に飛ばすのと一緒に本体を引っ張れば、本体も普通に浮けるんだよあの世界。みんな武空術だ~とか言ってるけど、ジョジョ3部でスタンドが初めて出現して、浮いてる表現が出た瞬間から決まってたことなの。武空術とかじゃないんだ」

「いやスタンドのことを聞きたいんじゃなくてな!? なんで馬鹿丁寧にスタンド講座してるんだよ違うだろ!?」

「な、なんだよ! お前がこれっぽっちも解らないって言ったんだろ!?」

「ダーリソひっでぇ……自分から言っといてスタンド講座すんなとか……」

「お前らほんと人のこと無理矢理悪人にするの好きだな……! じゃなくて、骨の正体とか死神について質問しようとしてたんじゃないのかよ! べつにそれ、死神に訊かなくてもいいことだろうが!」

「グ、グウウ~~~ッ」

「グウウ……ムムウ……!」

 

 図星だったようです。彼らはグウウと唸り、骨の死神はカタカタと顎を揺らしてほねほね笑いました。

 

「ところでおデスさん? おたく、性別は?」

『……死神に性別訊ねる人間なんて初めて見たほね。漫画とかでも普通は無いほねよ?』

「なにをおっしゃる。死神漫画なんて死神とか言いながら外見普通の人間ばっかじゃないか。とある漫画でルイゼンバーン先生が出てきた時、“なんで一番死神っぽいヤツが死神じゃないんだよ!”って思ったの、僕だけじゃないと思うの」

「とあるもなにも、ルイゼンバーン先生の名前出してる時点でバレバレじゃねぇの……同意見じゃけども」

「というわけで、骨な死神に性別訊くの、軽口で言う夢のひとつだったんだ僕! ねぇねぇ教えておくれよ! 性別はなんだい!?」

『ほ、本骨を前にして軽口の夢とか普通言わねーほね! なんて失礼な! あ、でも男ほね』

「「ようこそ、老人の村・老村へ」」

「男にはやさしいなおい!! 男ならなんでもいいのか!?」

「いやいやまさか。シモのことしか考えねー男とか、チャラチャラしたチャラ男さんとか全力で勘弁」

「視界に入るだけで不快にしかならん人が村に増えても困るデショ? そこはきちんと選ばんと」

「それ、もし自分たちが村人からそういう対象として見られたらどーすんだよ……」

「ホ? どーってそりゃー……」

「俺達だけの村を探すか作る! 命に替えてもである! 後から来たヤツが我が者顔とか、全力で勘弁ノリスケだし!」

「や、そこでノリスケさんは関係ねーべョ」

「まあまあ」

『てめぇら死神を目の前にして全力で自由ほねね……』

「「何故ならそれが原ソウル。常識だけでは語れない」」

 

 モブ提督さんとトンガリさんは無駄に胸を張ってワハハハハと笑います。

 そんな二人を遠目に見るノレさんは、もはや我関せずの距離を把握しつつあります。

 

「ノレっちー!? ノレっちやー! てめえそげなところでなにやっとんのー! こっち来いコナラー!!」

『他人の振りをしているのだから巻き込むな馬鹿者!!』

 

 けれども所詮“しつつある”でした。完全に逃げておけば巻き込まれなかったというのに、召喚された死神に興味を持ったがために捕まりました。いえ、厳密には捕まったわけでもないのですが。それに途中で気づけた彼はハッとするととんずらしました。

 

「なんとっ!? 逃げおったっ! おんどりゃ何処に行───」

「待てい彰利! 踏みとどまれいっ!」

「!?」

 

 とんずらしたノレさんをトンガリさんが追おうとしましたが、それを止めるはモブ提督さん。

 何事!? とばかりに振り向くトンガリさんに、彼は真面目な顔で肩に手を置き、告げるのです。

 

「…………便所だ。そっとしておいてやれ

「───! あいつっ……! だからあんな切羽詰まった顔で……! ……すまねぇ、アタイが……間違ってたよ

 

 ノレさんが消えた方へと、二人で悲しい視線を送ります。言葉はありません。ただただ、悲しい風が吹きました。

 

「もういい加減、あいつ本気で泣いていいと思うぞ」

『ほねほねほね、ああいう輩には、係わった時点で終わってるという言葉を贈るほね』

「あー……その。不躾な質問だけどさ。お前はどんな加護をくれるんだ?」

『ほね? そうほねねぇ……俺はこれでも死神としてはおかしな骨ほね。だから“死をォ~……くれてやァる”とか若本さんボイスで死の加護をくれてやるわけでも、不死の加護を~とかそんなものを与えるわけでもねーほねねぇ』

「じゃあ?」

『骨が丈夫になるほね』

「それどっちかっていうと別方向での骨とかがくれそうな加護じゃないか!?」

『じゃあどんな加護が欲しいっつーんだほね!? ただ踊っただけで加護が貰えるって状況に疑問を覚えずモノよこせとか恥ずかしくねーほね!?』

「ぁああああ耳が痛ぇえーーーっ!!」

 

 まったくでした。なんと太っ腹なのでしょう、異世界の精霊たちは。

 

「ああ、うん……じゃあ加護とかもういいから……。その、悪かったな……急に呼んだりして……」

『構わねーほねよ。気まぐれで不朽の加護をバラ撒いておいたほね、植物が栄養を遺すために枯れることはあっても、土壌がダメになったりすることはこれでねーはずほね』

「くれるのか!? えっ……な、なんで」

『……? 特に理由はねーほね。気まぐれに理由求められても困るほねよ? お前よく“いちいち理由求めててうざったい”とか言われねーほね?』

「今初めて言われたけどなんかすごい突き刺さったからやめてくれ!! ~……そういや俺、物事に対して理由とか意味とか求めすぎてたよな……もっと状況を、ただ楽しめばいいのに……」

『ほねほねほね、理屈屋にはよくあることほね。あとは……そうほねね。ここに棲んでいたらしい妖精も復活させておくほねよ』

「……よ、よし、もう出来るだけ驚かないぞ。出来るのが当たり前、とか考えておけばいいんだよな?」

『ちなみに妖精はコボルトほね』

「………………コボルトって、あの顔が犬な?」

『違ぇほねこのタコ! 妖精っつってんだろうがほね!』

「なんで誰も彼も罵倒のあとにタコとか馬鹿とか言うんだよほんと泣くぞ!? 異世界のことなんか知らないのが当たり前だろうが! 俺はあいつらほどそういうのに詳しくないんだよ悪かったな!」

『そうほね? ならば軽く説明するほね』

 

 言って、涙目のモミアゲさんの前で半透明のウィンドウのようなものを出現させ、指揮棒のようなものも一緒に出すと、ウィンドウに文字と画像を出現させては説明していきます。

 


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