ボケ者どもの理想村(ムラビディア)   作:凍傷(ぜろくろ)

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隣人さんいらっしゃい

【ケース27:骨と学ぶ妖精講座】

 

『まず死神といっても、俺はこの世界の死神じゃあなく、てめぇらの世界……いわゆる地界の死神ほねが───』

「コボルトの説明じゃねぇのかよ!!」

『うるせぇほね! そもそも漫画だのジョジョだの言ってた時点で察しろほね! では続いて妖精コボルトの話ほねが』

「………」

『コボルト。ここに眠ってるコボルトは、基本住人には見えはしねぇほねが、家事などを密かに手伝ってくれるありがてー妖精ほね。伝承なぞじゃあ邪な精霊、なんて悪名も通っているほねが、基本は供え物を贈ればいたずらもしない、小さな隣人さんほね。その容姿は腰巻をつけた小人、のような感じほねね。背丈は人間の子供程度ほね』

「子供の……へぇええ……そうなのか……」

 

 出てきたウィンドウの画像には、耳が長く鼻も長い、子供サイズの大人、な感じの生き物が映っていました。それらがせっせと村人の家事の手伝いをしているのです。

 

『けど、ここの妖精らは無理矢理加護を剥がされたもんだからご立腹のご様子ほね。けれどもそこはご安心ほね。てめーらが無駄にギャンギャカ騒いだお陰で、妖精たちも興味をくすぐられて戻ってきているほね』

「じゃあ?」

『対価があればきちんと働いてくれるに違いねぇほね。幸いここには、“妖精を守るもの”として龍の加護、“妖精の棲家を守り育むもの”として自然の加護、また“それらを朽ちさせないためのもの”として死神の加護があるほね。きちんと謝って、誠意を見せれば許してくれるにちげーねーほね』

「………………」

『ほね?』

「いや……うん。その、ちょっといいか?」

『なにほね?』

「謝るって………………その。俺達妖精に関してはなんにも悪くないんだが」

『………』

「………」

『悪いことしてねー奴になんとなく謝られるのって、お門違いもいいとこだって無駄に腹立つほねよね……』

「わかってくれるか……」

 

 骨と二人、モミアゲさんはどうしたもんかなぁ……と本気で頭を痛めました。

 そこへやってくる二人のやかましき人々。

 

「謝るのはなんか違う! そんな時は!」

「そう! そげな時こそ会話が必要! アタイら話せる存在なんじゃぜ!? 触れて語って描いて書いて、伝える手段の全てを以って想いを届けるのYO!」

「うむっ! そのとーり! というわけで晦! 紙とペン創造して!?」

「いやまずは普通に伝えろよ」

「ばかっ! 晦のばかっ! い、いきなり口頭でとかっ……恥ずかしいじゃないかっ……!」

「ええい頬を染めてもじもじするな鬱陶しい……!! ていうか今更恥ずかしいとか言うような性格じゃないだろ提督は……」

「はっちゃけた時にほら、恥を知れ、とか言われるじゃないか。ね? 恥を知ってみたんだ。だからちょっとおくゆかしさを出してみようかなーって」

「てーか恥を知れって言うやつってさ、言われた奴らの恥ずかしさの何を知ってんじゃろね?」

「そりゃお前……」

 

 溜め息を吐きつつ創造してもらった紙に、彼は一筆したためます。

 それをそっと折り、モミアゲさんにくしゃりと握らせると、薄く笑むのです。

 はて、と折られたそれを広げていくと───

 

 

  ───自室にて

 

       机に積まれる

 

         エロの山───

 

 

 ───そんな恥が、したためられておりました。

 うわー……と固まるモミアゲさんの横に立ち、それを覗いたトンガリさんも、うわー……と固まります。

 

「アタイ……そんなヤツに恥を知れとか言われたくねィェー……」

「いや……ある意味でそんな悲しみを、他の誰かに知ってもらいたくて言ってるのかもしれないぞ……」

「あれの発言者って同類作りたかったん!?」

『落ち着けほね』

「うむ! というわけで冗談はここまでで、まずは一筆したためよう! えーと……」

「オウヨ! つーか中井出てめぇこの世界の字とか知っとったんね!? どぎゃん字どぎゃん字!? どがぁして書くん!? 書いてみれ書いてみれ!」

「ククーーーッ!」

「ムウウ~~~ッ!!」

「ああはいはいちょっと待て、妙に唸ってないで、とりあえず落ち着け」

「いやいや晦、これは手紙を書いている時に邪魔された際にする、肉的ルールだから」

「邪魔されたらククーっと唸り、邪魔した方はムウウ~と唸る。意味はきっとゆで先生にしかわからんのだろうけど、なんかそう決まっとるのYO」

「……なんかもう心底どうでもいい説明だな」

「まあまあ晦もそう溜め息吐かんで。こういうのはノリだって彰利一等兵も言ってるだろ? もちろん俺もだけど。だからまずはノリとしてこう、手紙を───」

「まあせやね。んで、内容とかどぎゃんするん? やっぱ無難に───」

「ククーーーッ!」

「ムウウ~~~ッ!!」

「それはもういいから……! ……で、提督はこの世界の字は解るのか?」

「エッ?」

「………」

「………」

『まあ予想は出来ていたことほね』

 

 当然のように書けませんでした。結局書けたのは恥ずかしい川柳のみであり、無駄遣いすんなとばかりにモミアゲさんにバゴシャアと殴られるハメになったのです。

 

……。

 

 さて。

 モブさんが自然の加護、モミアゲさんが龍の加護、トンガリさんが死神の加護を得てから一息。

 休憩を挟んでから、彼らは再び三つになった祠の前に集いました。

 自然の加護の祠の周囲には既に植物が生えており、祠を瑞々しく立派な蔓が包んでいます。花も咲き、虫が飛んで来ては、その花粉を別の植物へと運んで、やがてそこでも花が咲く、といった連鎖が生まれ、植物と虫が増えていく。

 龍の加護は魔物や害虫からこの村を守り、益虫や稀少生物を呼び寄せては、この村に幸をもたらします。その祠の前には鳥居が作られており、左右には土偶と信楽焼き。さらにそれらを軽く囲うように小さなお地蔵様が並べられております。

 死神の加護の祠の周りは大量のカルボーンが鏤められており、鏤める、といったからにはしっかりと装飾めいた状態になっていて、それらは拾うことも壊すことも叶いません。それらは骨死神がモブさんに頼んだことであり、骨 (のようなもの)が無造作に散っている様子から、なんか地獄のような雰囲気とかでねーほねかねぇ……というのが骨死神の意見でした。どう見てもカルボーンがたくさん落ちてる汚い祠です。

 

『……………』

 

 そんな三つの祠の前に集まった三人だったのですが。

 そこには先客が居て、何故か小さな子供サイズの生き物に囲まれ、慰められておりました。

 

『待て違う。少し悪魔としての自分の在り方を振り返っていたら悲しくなっただけなんだ。そうしたら急に肩を叩かれ……振り向いたら……』

 

 T-SUWARIをしたままのノレさんは、こうなった、とばかりに溜め息を吐きます。

 その周囲には藁で出来た腰布のようなものを腰に巻いただけの、小さな子供のような存在が何人も居ます。

 名をコボルト。かつてここを去った妖精の中の一部でした。

 

「これがコボルトか……へぇえええ……! 本当に小さいんだな……!」

 

 自分の腰より低いところに頭のてっぺんがある小さな生き物を見て、モミアゲさんは少し興奮気味に笑みを浮かべます。純粋にファンタジー要素が心をくすぐるのでしょう。

 姿はやはり耳と鼻が長く、ぱっちりと目が大きくて全裸に腰布、もとい腰藁を纏ったのみの存在です。

 

「おおお……失礼、コボルト殿とお見受けいたす。私、中井出博光と申す者」

『おオ、ワレラ、コボルト。大地に活力出てきタ……地精とシて感謝しタい』

「地精! 地霊ノッカー思い出す名前やね」

『一度は離れたワレラだガ、またここに根を降ろシていいだロうか。事情はこの悪魔かラ聞いてイる。オマエラが王国ラと敵対シ、自然を、大地を守ル者ならバ、ワレラはオマエラと共に在ろウ』

「うむ! その言葉、自然の加護を受けたこの博光が受け取りましょうぞ! あ、ちなみに他に妖精などは───」

『オオ、エルフやピクシーも、呼べば来ルと思うゾ』

「あ、女性の方は却下で」

『マジデカ!? 人間で雌を拒むモノ、初めテだ……!』

「俺も妖精が“マジでか”とか言うの初めて見たよ」

『ワカッタ。雄の楽園なのダなここハ。コボルトは皆が雄。大地とマナで、産まれルのではナく生まれル。雌は生まれヌから安心すルとイイ』

「ありがとう。では───」

『契約成立ダ。ワレラ地精コボルトは、自然と共にあるオマエラの隣人となろウ』

 

 言って、手を差し出すコボルト。モブさんはその手をそっと取ると、頷き返してよろしくと言うのでした。

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