【ケース30:スローライフを唱えるにはゆったり感が足りなすぎる村生活】
さて。流星になった友人が魔物を倒したことをトンガリさんが確認すると、今度は二人が居る大樹の上空から神々しくゆっくりと、光に包まれたモブさんが舞い降りてきました。
「うおっ! まぶしっ!」
「中井出てめぇ! それ目に悪いからやめれゆーとるデショコノヤロー!!」
「今日も過激に無様にモンステウを殲滅してやりました……こんにちは、博光です《脱ギャッ》」
「輝きながら脱ぐなよ気持ち悪いな!」
「素直にひでぇ! うう……命懸けで村を守ったんだから、もう少し褒めておくれよぅ」
「つーてもウルフらってべつに村とか襲わんもんね。むしろ主食(中井出)のために来てただけじゃろうし」
「副音声やめて? なんか今すっごい副音声聞こえた気がしたからやめて?」
「しかしまあ、難儀なもんだよな。龍の加護はあくまで“村”を守るものであって、俺達は守ってくれないと来た」
「ホホホ、そりゃもう理想村じゃもの、村にとっての最高ってのはつまり、そういうことじゃぜ?」
「……あー、わかってる、わかってるよ。お前らと付き合ってりゃ、そういう常識外れなことも、ツッコミはするけど受け入れられる。けど愚痴こぼしたくなるのも解るだろ……」
そう、“村”のために得た加護は、“村”を守ります。癒します。支えます。
当然住民もですが、彼らは村と住民のために舞いを奉納し、それを受け入れられて加護を得ました。
そう、村と住民のために。そこに自分たちが含まれていなかったのです。なので、彼らを目的とした魔物やらは平気で結界内に入ってきますし、そもそもその結界も加護やマナを逃がさないようにするためだけのもの。
もちろん土の中まで聖域を張っていなかった際に、結界を張り直したりもしたのですが、やはりといいますかそこまで詳しく設定しなかったため、彼ら三人は変わらず狙われております。
「彰利一等兵、張り直しをする気は?」
「さすがにちと規模がデカすぎっとよ。なによりバハムルの加護が外に出ちまうと、まだ見ぬ強敵とか呼び寄せちまうかもしれんから無理。前に張り直した時、ギガースさん呼び寄せちゃったの忘れた?」
「……もう勘弁だな、あれは」
地面にまで結界を行き渡らせるため、一度聖域を解いたことがあります。
その際、漏れ出た龍の加護を、というよりは、龍族の強大な力こそを察知した高レベルモンステウ、ブルギガースがこの村目掛けて襲い掛かってきたことがあるのです。
どうなることかと思ったその瞬間、モブ提督さんが「フッ……任せておけ一等兵ども。こんな野郎は一撃だ」と言って立ち塞がったのです。
なにを馬鹿なと困惑する二人と村人たち、そしてコボルトたちでしたが、彼が一言唱えただけで、ギガースは消滅したのです。
そう……“無情☆ボイン!”と一言唱えただけで、モミアゲから放たれたメガフレアでともに消し炭になることで。厳密には“さあ目覚めよ無情☆ボイン! 今こそギャアア……!!”と喋り途中で滅びたのですが。
「アレがしっかり侮蔑的言葉って理解出来るのが逆にすげーよね」
「いや……まあ、誉め言葉的には聞こえないだろ……」
「いんやぁ? 世界にゃスットコドッコイを誉め言葉と受け取る外国人も居るわけじゃし、一概にもそうとは言えんかもよ?」
「あれは特殊中の特殊だばかたれ」
「まあけど、URの反動か本気の本気で自分の命とかどうでもよくなってるのが、怖いを通り越して面白くなってる俺が居ます……こんにちは、博光です」
「ちょっとは遠慮してくれ提督。確かに俺達も命への執着は低くなってるけど、死んでよしと強く思えるほどじゃないぞ?」
「むしろ連続村人メテオに自分からなりに行くとか無理じゃっつーの。キミほんと楽しみのためなら全力出せるね」
「俺は“楽しい”を手繰り寄せ続けることが“生きる”ことだと思う。己の人生を正しく謳歌する者とは! ほんのちっぽけな“楽しい”をも逃さぬ者ッ!! ……いやー、正直途中から自分がメテオになるのが面白かったってのもある。ジェットコースター気分で自分が飛んでくの。ウルフがキャワンキャワン鳴きながら全速力で逃げるんだけどね? それに“ハッハッハッハッハ……何処へ行こうというのかね”って言いながら、空飛ぶDIO様のように追っていくんですよ。で、木の陰に隠れられて俺だけ頭潰れて死んだり、かと思えば直後に新たなるメテオとなって襲い掛かる俺。逆方向の空からさらなる速さで落ちてくる俺に、ヤツは気づけず潰れたのよ」
「おい彰利……この提督、自分の自爆話を自信満々に語ってるぞおい……」
「どんだけハートが図太けりゃそげなこと出来るんじゃろね……」
「村を思えばこそさ! というわけで今日も田畑を耕し土とともに生きよう! 加護さんたちったら俺達にちっともやさしくないけど、だからこその自給自足のムラビトン生活が成り立つ! スローライフってこういうことさ!」
「“人生ゆったり”かぁ……なんか提督と彰利が一緒ってだけで、スローライフの醍醐味の、ゆったりっていうのがちっとも訪れそうにないんだが」
「自然の精霊を呼び寄せたあとに、バハムートなんてスローライフぶち壊しの生物を召喚したダーリソに言われたくねーザマス」
「呼んだの提督なんだが!?」
「任せたのはキミだ! 願いを届ければなにかしらの龍族が召喚される、なんていう状況でこの博光を頼るなど! ああなることが予測できなかったとしても、とんでもないことになることくらい予測は出来たであろう!」
「うーわー、納得したくないのにモノスゲー説得力」
縁側でお茶と羊羹を嗜むのが好きな彼にとって、この友人二人はとてもやかましい存在です。
しかし自分一人では、そもそもこの村にも辿り着けていなかったんだろうなぁ、と予想がついてしまうあたり、頭が痛いモミアゲさんでした。
それどころか果たして生きていたのかどうか。
「じゃ、とりあえず魔物の皮でも
「あ、すまん。ほぼ全部が僕と一緒に爆ぜてバラバラになったから、鞣すのとか難しいかも」
「………」
「でもレベルは上がった! これでまたURを成長させられるぜ~~~っ!」
「キミの復活条件設定もいろいろ幅広くなってきたよね……自動追尾でモンステウ追っていく復活ってなんぞねほんと……。もはやわざと死んで、転移魔法扱いしとるし……」
「家族も好きな幼馴染も失った人間なんてこんなもんこんなもん。“命懸けで楽しむ”の究極形ってこういうことだと思うの僕」
「ほんと言葉通りの究極形だなおい……」
「しかし自分でやってみててなんだけど、同じ大正時代ならサクラ大戦の大神さんが鬼滅の刃に出ることも可能だと思うの」
「またいきなりスゲー話ぶっ飛んだねぇ中井出この野郎」
「ああほら、大正時代が舞台の漫画で、大正が1912年からとして、大神さんの誕生日が1903年だろ? 丁度いい年齢の大神さんが活躍できると思うんだ。霊子甲冑じゃなく鬼滅の隊服に身を包んだ大神さん……仲間とのパーフェクトコミュニケーションを抑えると、黒髪の貴公子として震天動地が使用可能になるとか」
「黒髪の貴公子はよかったのう……」
そしてやはり気を抜けばどうでもいいような話を始めて、溜め息ひとつ、三人は腰を持ち上げて歩き出します。
レベリングは必要です。元から持っていた能力とはいえ、スキルレベルが上がると月操力や創造の能力が向上するのです。
先ほどもモブさんもろともウルフをコロがしたお陰か、経験値は入ったもののレベルは上がっていません。その中途半端な経験値を満たすため、右手で左肩を押さえながら左腕をぐーるぐーる回し、村の外へと歩くのです。
「クォックォックォッ……いずれは来るであろう強敵(転移勇者)と戦うため、レベルをもっと上げておかねば~~~っ!」
「我らの最大の敵となるのは必ず転移者どもに違いねぇ~~~っ! そいつらに華麗に殺されぬためにも、腕を上げることに躊躇はねぇぜグオッフォフォ……!!」
「同じように転移してきたのに、どうしてこう敵意剥き出しなのか……。なぁ、“そういう話”だと、そうなるのは当たり前なのか?」
「そうYO? みんな力に溺れて、“俺達or私達ならなんでも出来る! 勇者である俺達に逆らうんじゃあないッッ!!”みたいな性格に一気に切り替わるの」
「で、男の場合の大半は女性目当てで蠢き出すな」
「う、うごめくのか」
「えーかい悠介、異世界で勇者に憧れてえーのは現地の少年だけぞ? 現地のおなごめらが憧れてみんしゃい、口車に乗せられたり洗脳されたり催眠かけられたりして、す~ぐエロォスなことに巻き込まれちゃうんだから」
「あとデブ国王は基本信用しなくてOKな方向で」
「オウヨ。てーか中井出? 華麗に殺されるってなんぞ?」
「この博光が無様以外に殺されるとでも?」
「なるほど華麗には絶対ねーね」
「ああなるほど、そういうことか。うん、絶対ないな、提督だし」
妙な方向で絶大なる信頼を得ていました。彼はその事実を大変誇らしそうに笑顔で受け止めました。