【ケース10:勇者さんと賢者さん】
これは、ボケ者ども三人が城を出てからのお話。
窓ガラスが割れる音に全員の目が集中した瞬間に、がさりと両手に持っていた大きな袋をアイテムボックスに収納して、まずは深く息を吐く女の子がおりました。
「まいったなぁ……デヴキングだなんて、この国絶対ろくでもないよ……」
「すこぶる肯定」
彼女らは、先ほどズイホーと叫んで飛んでいった高校男児と同じく高校生ではあるものの、着ているものは制服ではありませんでした。
それは綺麗な喫茶店の服であり、買い物帰りに急に転移させられて困惑していたところに「そんなことは神が許さんぞ!」などと叫ぶボケ者どもが居たため、自分たちもすぐに確認した次第。
◆浜谷絆───はまたにきずな
Lv.1
種族:人間
職業:勇者/女子給仕人
年齢:17歳
性別:女
HP:550/550
MP:95/95
攻撃:75
防御:45
魔力:85
精神:80
称号:きーちゃん
浜谷絆。一人称:私、この絆。
髪は黒髪ロングですが性格は元気さん。調子に乗りやすいながらも案外冷静なところもあり、普段からもこんなノリで猫なぞ被らない豪快さん。
双子の姉であり、高校では生徒会長を任せられそうになったものの、仕事を理由に拒否した過去があります。
喫茶店での担当は紅茶。来店した常連に“いらっしゃいませイカ野郎!”を実際に言ったことがある猛者です。
「自分の過去までしっかり記録されてるってなんなんだろね、このステイト。あ、でも結構ステイト高い。これジョブ補正とか入ってる……んだよね? さすがに一般人が攻撃力75って。ドラクエの主人公だって“ちから”とか一桁なのに」
「とても不思議。では美鳩も静かに確認を」
◆浜谷美鳩───はまたにみはと
Lv.1
種族:人間
職業:賢者/女子給仕人
年齢:17歳
性別:女
HP:180/180
MP:550/550
攻撃:35
防御:30
魔力:250
精神:200
称号:みーちゃん
浜谷美鳩。一人称:わたし、美鳩、この美鳩。
髪は黒髪サイドテール付きボブ。普段から半眼めいた目の開き方をしていて、一見眠そうに見えるけれど普通です。マイペースだけれど元気でもありノリも良い不思議な子。
双子の妹であり、高校では姉の代わりに生徒会長をという言葉を軽く無視して逃走。半眼の眠たそうなキャラは大人しいというイメージに全力で背き、運動も出来るし勉強も出来るしノリツッコミも出来ます。
喫茶店での担当はコーヒー。海外でコーヒーの勉強をしていたことがありまして、その影響でその名残りが口からこぼれることもしばしば。
二人とも高校生にしてはスタイルが良く、二人ともどこがとは言わずとも大きく、双子なのに妹の方がどこがとは言わずとも大きいという成長具合。
両親が喫茶店をしており、学校が終われば手伝うという孝行娘でした。
「……美鳩。そっちどうだった?」
「
「言い出しっぺかー……」
ちらりきょろりと辺りを見渡して、周囲の意識が自分たちに向いていないのを確認したのち、姉は妹の耳に口を近づけて囁きます。
「えと。勇者だった」
「……!」
「で、美鳩は?」
「……ワイズマン?」
「なんで疑問形なのかな? まあいいや、じゃあこれは私達だけの秘密ということで」
「No,すぐにステータス確認でバレる」
「ぬぐっ……トイレ行きたいとか言って、そのままずらかるとか」
「
「……デヴ王だよ? “ほざきやがれ! んなこたいーからさっさと魔王を倒してくるでおま!”とか言いそうだよもう、ほら、今すぐにでも」
「おかしなことを言う。それなら大手を振ってこの国から出ていくだけ。わたしたちはこの国に恩も何もない」
「…………おお」
なるほど、と納得したところで、早速王様が自己紹介と自分の望みばかりをゲヒゲヒと奇妙な笑みを混ぜながら語ります。
召喚してやったんだからこの国のために魔王を倒せ、無能な貴様らに国王であるワシが能力を授けてやったのだ、等々。
「ふむ、能力とな? 勇者の能力は……」
◆ジョブスキル
*勇者/Lv.1
“職業:勇者”のスキル。
このスキルレベルを上げることで、以下の勇者スキルの効果が上がる。
*伝説の武具使用/Lv.--
勇者スキル。伝説の武具の真の力を引き出し、扱える。
武具と意思を通じ合わせれば合わせるほど切れ味などの効果が増す。
逆に、このスキルが無ければそれらの武具は光を取り戻さないとされる。
*不屈の精神/Lv.--
勇者スキル。オートでHPMPが回復していく。レベルが上がればより早く。
敵からしてみれば“なんなんだよそれ!”ってツッコミたい謎スキル。
*溢れ出す勇気のパワー/Lv.--
だからそれなんだよ! “みんなの声援が力に!”レベルでワケわかんねーよ!
なんか強い。なんか……うん。なんか強い。なんか。なんか力が溢れてくる。
心に勇気が湧くと、なんか力とかも湧いてくる。どっから来るのそれ。
なんなんだよ……なんなんだよ勇者お前ほんとそれなんなんだ。
*成長/Lv.--
様々な行動から得られる経験値が多くなる。
パーティーを組んでいる者にも効果あり。現在のスキルレベルでは二人まで。
◆独自スキル
*紅茶淹れ/Lv.4
美味しく紅茶が淹れられる。茶葉のランクよりも上の味を引き出せる。
*物真似/Lv.2
近しい人の物真似が出来る。
「……ふむ」
どうやら勇者スキルを上げればいろいろと都合がいいらしいです。
そしてジョブスキルはジョブのレベルを上げれば勇者スキルのレベルが纏めて上がるようで、彼女は少し嬉しそうでした。
「美鳩の方はどう? いいスキルあった?」
「Nn……」
◆ジョブスキル
*賢者/Lv.1
“職業:賢者”のスキル。
このスキルレベルを上げることで、以下の賢者スキルの効果が上がる。
*伝説道具類使用/Lv.--
賢者スキル。伝説の道具等の使用が可能。
使用目的が謎とされている古の道具、魔道具などの使用が可能。
水晶、タリスマン、護符、杖なども魔道具扱いとなる。
*賢者の泉/Lv.--
賢者スキル。自動でMPが急速回復。
回復速度はジョブレベルで変化。
*速射魔法/Lv.--
賢者スキル。魔法の連射が可能。
詠唱を口や頭で処理できる力があればあるほど有利。
通常、威力は多少落ちるものの、詠唱と魔力量があれば通常の威力での速射も可能。
*鑑定/Lv.1
様々なものを鑑定出来る。鑑定出来る種類はレベルで変化。
◆独自スキル
*コーヒー淹れ/Lv.7
コーヒーをとても美味しく淹れられる。低ランクのコーヒー豆でもかなり美味しく淹れられる。
*物真似/Lv.1
ウィッグをつけて目をぱっちり開いて息を整えると絆になり切れる。
スキルレベルが上がれば、職業を真似ることも……?
「……悲しいことにコーヒー豆がない」
「なんの話?」
急な一言に、姉がハテと首を傾げます。けれども自分のステイトの“紅茶”を思い出すと、なるほど妹はそっちの方が上手かったと納得しました。
などと思っている間にも話は進み、ステータス等の確認が始まりました。
「余が欲しいのは勇者と、それを支え共に戦う者たちである! いや、この際魔王を倒してくれるのならジョブなぞ不問だ! 魔王を討伐した暁には望む褒美を与えよう!」
「そのようなことを仰られずとも! 人が困っているのなら救うのは当たり前です! 任せてください王様! 俺達が必ずや魔王を打ち取ってみせます!」
「おおおそうかそうか! 期待しておるぞぉ!?」
そんな中で一人、“あ、こいつ勇者だ”と異世界転移モノを知っている者たちならば思わず呟いてしまうようなことを言い出す男子生徒が居ました。
事実、様々な生徒が口々にこぼします。
「うわぁ勇者だ……」
「まじかよ勇者だよ……」
「やだなぁ……話通じねぇんだよあのテの勇者……」
「知ってる……そのくせこっちにはいろんなこと強要してくるしさぁ」
言われたい放題です。かなり言われたい放題です。
そんな彼は真っ直ぐな瞳のままに口を開きます。
「みんな! 王が、国が困っているんだ! 僕らがここに召喚されたのはきっとこの国を救うためなんだ! 尽力しよう!」
などと言い出します。
その前向きな言葉に女性は、
「うわぁ有り得ない……」
「なんで勝手に連れてこられて相手の要望に応えなきゃならないのよ……」
「ヤバいよあいつ、本気で頭どうかしてる……」
と熱い溜め息を吐き散らし、男性は───
「やっべぇ想像以上に頭イカレてやがる……」
「ていうかなんであいつが仕切ってんの?」
「おい……誰か“お前ならそういうと思ったぜ”とか言って隣に立ってやれよ……距離取られすぎてなんか輪が出来上がってるからさぁ……」
「じゃああんたが行ってくれ、俺はああいう奴が心から大嫌いだ。だから心の底から拒否する」
「だよなぁ……よくあんなことを恥ずかしげもなく……。ある意味スゲーよな」
「え? 勝手に召喚されて、肥えたブタ王の国のために働けって言われて真に受けて、他の奴らにまで尽力しやがれって言うやつがすげぇの?」
「……すまん、ただのゲス野郎だった。頭大丈夫かあいつ」
と、ある意味尊敬の眼差しを向けました。
そんな彼がついにステイトを調べるに到り───!
「山田のぶお殿───ジョブ、格闘家!」
「「「「「勇者じゃねぇのかよ!!」」」」」
その場の、王や兵を含めた全員が、この時だけは一丸となってツッコみました。