ボケ者どもの理想村(ムラビディア)   作:凍傷(ぜろくろ)

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ちなみに王城での鍛錬の日々を続ける中で、とっくに村の大樹は完成している

【ケース15:大丈夫、キミはきっといいヤツ】

 

「等級で分ける理由はなに? 発動出来れば問題ないと思う」

「発動する速度と必要になる魔力、頑丈さもあるし、まあ大体のやつは気にしちゃいないが見た目の問題もあるのさ。頑丈さってのはあれだよ? モンステウの攻撃で砕けてしまわないかってのももちろんだが、込めた魔力で爆発しちまわないかってのもある。等級が高けりゃ、それらの効果が安定していたり破損しづらいってのがあるんだよ」

Vedo(なるほど)……」

「高名な魔法使いなんかは高価な等級を使ってる、なんて思われがちだが、案外そうでもない。低級を大量に仕入れて使い潰している魔法使いなんてたくさん居るもんさ」

「やや? じゃあ質問。等級の高いものを買っていく人は、何故にそういったものを?」

「そりゃあ、強い敵と戦って生き残るためさ。雑魚相手なら低級で問題ない。一発強い魔法を撃って壊れようが、発動しちまえばいいんだから。だからって、わざわざ壊れたものを交換して発動させて、じゃあ強敵相手じゃ命がいくらあったって足りゃしない」

「「Vedo(ヴェード)……!!」」

 

 双子仲良く同じ言葉でコクリコクリ。

 おばさまに「なんだいそのべーどって」とツッコまれましたが、なるほどと納得したからにはさあ購入。

 

「じゃあさっき言った発動媒体を中級で作ってほしい。余った材料の売値で出来れば、とても助かる」

「それなら、どれか二つくらい上級にしてもおつりが来るけどどうするね。全部上級じゃあちと足らんけど」

「…………あ。じゃあ整えるために切った絆の髪の切れ端をここに」

「あんたそれ捨てるつもりだったのかい!? 溶かして使うんだから短いものでも貴重なんだよ!」

「これで足りる……?」

「ふーむ……契約結んでくれるってんなら考えないでもないけどねぇ。逆にもう一声ないかい? 言うだけならタダ流奥義、だったかい?」

「……ちゃっかりしてる。爪はどう? 切って渡せるのはもうこれくらい」

「ちと弱いねぇ。……ああそうだ、あんた魔法使いなら、魔石に魔力込めるくらいは出来るだろう? それを無料でやってくれるってんなら相談出来るよ」

「相談。つまり大して込められなければ話は無かったことになる?」

「大人しく中級で我慢しときなってこったよ。見栄張って上級ばっかで身を固めても、稼げなきゃ意味がない。モンステウ討伐で食って行くなら誰しもそうする。壊れたら新調すりゃいいのさ、無理するこたぁない」

「Ho una domanda……Nn、質問。痛んだ発動媒体の修理は可能……?」

「……いいねぇ。ものを大事にする子はあたしゃ大好きだよ。痛んだならあたしのところに持ってきな。新品同様に直してやるさね。まあ、ここに寄る機会があればの話だがね」

「Sì、美鳩も物を大事にする人はとても好き。是非契約を結びたい。そして大切にしないとわかったなら刺し違えてでも一発殴る」

「物騒だねあんた!! けど、はっはっは、言うじゃないか。んじゃあ……ほれ、この魔石に魔力を込めな。五指全部を魔石にくっつけて、先端から魔力を流し込むイメージで発動させればいい」

「Va bene」

 

 言われた通り、投げ渡された拳より小さめな握りやすい魔石とやらを握ります。

 そして、言われたイメージをかたちにするように魔力を発動させると、それらが魔石に流れ込み───

 

「……驚いた。あんたまでそっちの子と同じく全属性適正があんのかい」

 

 魔力が満たされた魔石は、中で虹が踊るように様々な色で輝いていました。

 これにはおばさまもびっくり。これでいい? と小首傾げとともに差し出された魔石を両手で大事に大事ィイにソッと受け取ると掛けていた眼鏡の縁をトンと叩き、鑑定を始めたようでした。

 

「質問。それは杖の装飾や水晶の元になる?」

「……はぁ。わかった、わかったよぉ……。魔石10……いや、5でいい。それをこれと同じ虹色光石(にじいろこうせき)に出来るなら、全部上級だろうが承ろうじゃないか」

「Nn……最上級は?」

「髪も血も足らないよお馬鹿っ!! 魔力だけでどうにか出来るならあたしだって苦労しないって話さ!」

è triste(悲しい)……」

「……ちょいとあんた。この半眼娘がたまに言うこのわけのわからない言葉はなんなんだい?」

「イタリア語……って言ってもわかりませんよね……」

「?」

 

 頭に疑問符を浮かべつつ、ごちゃりと箱に入っている魔石を次から次へと虹色光石と変える姿を見て、段々と乾いた笑みしか浮かばなくなってくるおばさま。

 結局10コほど光石に変えると、「上級の中でも会心の作を期待する……!」と目を輝かせながら言われてしまいます。

 

「……はぁ。まあ、髪、血、魔力まで用意されちゃあ、魔道具の技師としちゃあ失敗は出来ないねぇ。いいよ、また明日にでも来な。それまでには用意しておくさね。やれやれ開店したばっかだってのにもう店じまいだ」

「大丈夫……? 魔力足りる……?」

「むしろあんたがどんだけ魔力持ってんだって話だよ! こんだけの魔石作れるやつなんざ見たことがないわ! ……あんた、世間知らずのようだから言っておくけどね、今みたいにぽんぽんと光石を作ってみせるんじゃあないよ? 価値が下がるってのもそうだが、それを使ってよくないことを考える輩は居るもんだ」

「大丈夫。おばばはきっといいヤツ」

「うん、きっといいヤツ」

「褒めたって何も出やしないよ。ていうかなんなんだい、その小指でデコ掻く仕草は。なんか意味でもあんのかい」

「きっといいヤツ」

「きっといいヤツ」

「だからなんなんだい!」

 

 ともあれ、交渉は成立したようでした。

 輝く魔石を箱ごと運ぶおばさまは顔が緩んでいましたし、けれど受け取った材料を見た時には職人の顔をしておりました。

 さあいざ最高の仕事を───! と張り切るおばさまでしたが、

 

「それはそうと余分に変換した魔石の代金をいただきたい」

「ちゃっかりしてるねあんた!!」

 

 ツッコミでいろいろと台無しになりました。

 

「悲しいことに本日の宿泊代金すら持ってない……じゃなきゃ髪なんて売りにこない」

「……あぁ、そりゃあそうだろうね。まったく……言っておくが魔石に関しちゃあたしゃ5でいいって言ったんだ、色はつけるが支払う額に文句はつけさしゃしないよ!」

「Sì。それは美鳩もわかっててやった」

 

 溜め息ひとつ、はいはいとお金を用意してくれるおばさまは、なんだかんだでやさしい人でした。きっといいヤツ。

 その後の採血作業の際に「《ぶすり》ぴあーーーっ!?」……と。とても痛い思いをして、マイペースだった半眼さんが泣かされたのは別のお話です。

 

……。

 

 明けて翌日。

 しっかりと熟睡……は出来なかったものの、生活魔法で体と衣服を清潔にしていようが体を拭きたかった二人は、しっかりと宿で体を拭いて本日を迎えました。

 

「さぁてー! おばば様の仕事ぶりを拝見しに行きましょうかー!」

「夜逃げしてなきゃきっちり居る筈。居なかったら地の果てまでも追って締め上げる……! 激痛の恨みは忘れない……! この痛み、アンナの痛み……!」

「血を売るって了承したのは美鳩でしょー? ほら、さっさと行くー」

「あうぅ……」

 

 痛みを思い出したのか、少し涙目で唸る妹に姉はほっほっほと微笑ましいものを見る目を送ります。

 さて、お目当ての魔法発動媒体はどうなっていることやら。

 黄金の国ジパングに到着したマスクドアラジンとブキャナンのように、どおれ完成したブツを使って冒険に出るとするか~~~~~~っ! と無駄に語尾を伸ばすような気分で歩きます。

 道中特に目に留まるものもなく───いえありました。そういえば朝食がまだなのです。

 

「お腹空いたねー……」

「Sì……でもお金がない」

 

 厳密にはお腹が空いたのではなく、喉が紅茶とコーヒーを求めておりました。

 けれどもそんなものは無いのでそのまま進みます。光石5つ分に色がついた程度のお金は、宿泊代と晩御飯だけでほぼが燃え尽きるお値段だったのです。

 目に留まった屋台も、ちらりとお値段を見れば結構なもの。なんでも王様がひどい税率を強いている所為で、これ以上安くするのは難しいのだとか。

 

「おのれ王め……! 冒険の旅に出た勇者を魔王じゃなくあんたが苦しめてどうするのか……!」

「Ho la stessa opinione……Nn、同じ意見……」

 

 けれども一つだけなら買えなくもなかったので、屋台で肉と野菜を挟んだパンを買って、二人で食べました。

 お肉が甘辛いねっとりとしたタレで焼かれ、野菜はシャキシャキ、パンは焼き目をつけながらもどっしりとした歯ごたえ。量が少なくても噛む回数を増やして、二人は出来る限り味わって味わって味わいまくって嚥下しました。

 

「……余計に胃が刺激された気分だー……」

「ァゥ……」

 

 お腹が“もっとだ! もっとよこせテメー! まだあンだろ!?”とばかりに吼え猛っておりますが、無いモノは食べられません。

 なのでさっさと魔法道具店へ行って、発動媒体を手に入れたならばモンステウでも狩ってフレッシュミートを頂くことを───

 

「……待って。私また買い物袋の存在忘れてた」

「───!」

 

 双子は似るといいますが、二人とも見事に現状を思うあまりにここでは異世界のモノとなる買い物袋のことを忘れておりました。

 早速取り出してみれば、喫茶店で使う予定だった料理───の、材料がごちゃり。もちろん女性の手で持ち運べる程度の量なので、少量ずつ作って食べたとしても何日保つかは考えません。アイテムボックスでは時間を気にせず保存できるとはいえ、量が無限になるわけでもありませんので、気をつけねばならないのです。

 

「グムムー……ダイエッティヴ乙女として多少の空腹などチャメシゴトよと耐えるか、それとも調理出来る場を探して喰らうべきか~~~……!」

「絆、肉が出てる」

「肉出てる言うなー! 肉語がこぼれてるって言いなさい! 言って!? お願いだから!」

 

 “ダイエットなんて必要ないくらい痩せてるィョ~ンヌ”と彼氏が居たならヘラヘラ笑顔で言いそうですが、実際に元からスタイルがいいところに、勇者&賢者鍛錬のお陰でさらに磨かれた彼女たちです、おかしなところはありません。肉が出てるといえば、どことは言いませんが大きなところくらいです。

 ちなみに彼女らも女性でありながらキン肉マンが好きなので、自然と肉言語が出たりします。主に親とその知り合いの影響ですが。

 ちなみに今現在の、某肉大好きのモブさんはといえば───

 

 

 

-_-/モブさん

 

「我が骨子は捻じれ狂う……!《バキゴキベキバキ》ギャアーーーッ!!」

「おわわわわ提督を形成する骨子が! 骨子そのものがーっ!」

「中井出!? 中井出ェエーーーッ!!」

 

 ビッグコング・モガという大きな猿型のレアモンステウに捕まり、彼の肉体的骨子が(物理的に)捻じれ狂っておりました。

 レベリングと称して、村の外に出ていた際の不幸な出来事でした。

 

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