ボケ者どもの理想村(ムラビディア)   作:凍傷(ぜろくろ)

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ガリーはホウセ

【ケース18:村から離れたなんか高ェ山の先を目指して】

 

-_-/ボケ者ども

 

 視線の先で、ドドドドドドド……と轟音を高鳴らせて水が弾けています。

 三人はそれを眺め、ホホー……と熱い吐息を漏らしつつ、景色を堪能しながらもやっぱり“どうしたもんかなぁ”と唸ったりしていました。

 

「えーとダーリソ? アタイらYO、川の源泉求めて来たのよネ?」

「おー……そだなー」

「……や、そりゃね? 川じゃもの、滝くらいはあるとは思っとったけどさ。……なにこれ。マッスルフォール?」

 

 流れる川に逆らうかたちで源泉を求めて歩いていた三人は、いつしか森に入り、随分とまあ奥地まで来ておりました。源流、と呼べるものに辿り着くことはなく、そもそもが一本の川のようでした。それを辿ってきて訪れた山は、なんともまあ涼しく、自然味溢れる場所で、サキュファーがたくさんおりました。

 洗脳魔法を使いはしますが強さは大したことがなく、モブさんが盾となり後ろからモミアゲさんとトンガリさんが攻撃することで楽に討伐出来ています。戦いに貢献する、という意味で大変な効果を発揮するその戦い方は、モブさんに結構な経験値をもたらしております。こん棒を持っているのに全裸になって水鉄砲を持とうとする効果だけはなんとかならんかなぁとはモブさんの言葉です。

 

「え? いや、べつにもう慣れたっていうか。服脱いで水鉄砲装着する以外に実害がないとか楽勝の部類じゃないですか」

 

 彼は言います。「オーガにボコボコに殴られたり暗黒地獄極楽落としされるよりよっぽど楽だちょー」と。

 戦い方と言えば、サキュファーを発見したら遠くから創造したクロスボウガンで狙撃するか、月操力で攻撃するかです。倒し切れずにサキュファーが襲ってくれば、モブさんが肉壁となって洗脳を引き受けます。死に対する恐怖とかなんかもうほとんどありません。なのでWHOOOO(ウホオオオ)と叫びながらこん棒で殴るのです。

 そうして混乱したりこん棒クリティカルで勝てたりしながら進むのです。川は続くよどこまでも。それだけならばよかったのですが、多少傾斜になっている程度ですぐに辿り着くと思っていた源泉は、まだまだ先のようなのです。森の先は山になっており、その先を目指してみればいきなり滝です。しかもめちゃくちゃ高い位置から水が降ってきております。

 そしてそんな高い位置からの水が水底をえぐり、川は随分と深いものになっておりました。

 

「滝といえば裏だよなー。いやぁああ……俺、勢いのあるでっけぇ滝の裏とか見てみたかったんだよなぁ。まさか異世界に来てそれが叶うとは。……あるよね? 裏の洞窟とか」

「異世界じゃもの。無けりゃあおめぇ……嘘だぜ? てーか……ほれあそこ。滝の絶壁の……あそこ。なんか道になっとらん? あそこからなんか普通に滝の裏に行けそうじゃけど」

「あからさまな場所に宝みたいなものは望めないだろうけど───」

「けど、じゃよね」

「おうとも、けど、行ってみたくなるのが冒険者ってもんでしょう」

「冒険者じゃねーけどね、アタイら」

「冒険してるなら冒険者さ! というわけでGO! 案外あの裏のところからサキュファーが出てきてるのかもしれないし!」

「グムムー、有り得そうでいややねぇ」

 

 高い位置から落ちてきた滝の水が、溜まった水と弾け合って霧になり、マイナスイオンとかきっとたっぷり出ています。

 そんな霧の中、見上げていた滝からボチャアと落ちてくるなにか。

 

「提督、彰利、なんか降ってきた」

「ホ? なんじゃらホイ?」

「きっと上流に生えた木から落ちたでっかい木の実かなんかだちょー」

「小腹も空いてきたことだし取って食べるツィー」

「春巻先生みたいな語尾しなくていいから。なんでなんじゃらほいからそこまで広がるんだよ」

「ノリと勢いとネタじゃないか? 男子高校生が集えばくだらんことでも笑えるものさ晦」

「おっほっほ、もちろんじゃとも」

 

 霧に紛れてわかりづらく、一度沈んで浮かんできたものを目を凝らしてみてみます。それは丸っこいもので、なるほど、言われてみれば大きな木の実のような───ソレが、ぎょろりと瞼を開いてこちらを見ました。───敵・モンステウを確認しました。サキュファーです。

 

「「「ホワァアアアアアアッ!?」」」

 

 木の実だと思っていたそれが川を浮いていたその身を宙に浮かせると、早速というべきか目を光らせて洗脳魔法を放たんとします。

 

「さぁせるかぁあああ! ネオタイガーショットォ!!

 

 しかしそこはすっかり相手の行動に慣れたモブさん。土をドカァと蹴り上げると、その勢いのままに大きな目玉へと土や砂や砂利などをまとめてぶつけたのです。

 どこから声が出るのか、目玉モンステウはピギイイイと悲鳴を上げ、瞼を閉じました。

 

真由子さん! 今!

「キミほんとよくこげな状況でスラスラとネタが口からまろびでるねぇほんと! “狙撃”(シュートヒム)!!

 

 瞼を閉じて、涙を滲ませ震えるモンステウへ、トンガリさんがボウガンにて狙撃します。一撃で終わるとは考えず、モミアゲさんと一緒にボルトを装填しては発射を繰り返して、やがてサキュファーは落下して、川に流されていくのでした。

 

「おいおいおいおいおいおいおいィイ……マジですか? デッケェェェェェ木の実かと思ったらモンステウとか。これ大丈夫なん? 山ァ登っていったらモンステウホウセがあるとかない?」

「ホウセじゃなくてハウスって言えって」

「ああでも晦? ホウセって言いたくなる気持ちもわかる気もしないか? ローマ字覚えたての頃とか、ガッコで英語習い始めた時は、全てがローマ字で解決出来りゃあよかったのに……とか思ったもんだし」

「じゃよねぇ? houseでなしてハウスなんじゃいって話じゃぜ?」

「なぁ。とりあえずモンステウ倒したあとにハウスにいちゃもんつけるのやめないか……?」

「ダーリンがわざわざ細かいツッコミ入れるからデショ! 人の所為にするんじゃありんせん!」

「そうだモミアゲこの野郎!」

「だったら最初からモンステウハウスって言っときゃいいだろうがこのたわけ!!」

なんだとてめぇこのクズが!!

「緊張感溢るる状況に、ほんのちょっぴりの冗談を混ぜたかった彰利の心意気になんたる暴言! 許せる!」

「なんと!? 中井出てめぇ傷心のアタイを裏切る気か!」

暴言ひとつ許せぬ者の、どこを友と言えましゃう。そんな友にはこちらも暴言を以て肩を組むのが礼儀といふものです

「結局暴言返してるんじゃ許してるって言えないだろそれ!」

なんだとてめぇこのクズが!!

「いやもうどっちがクズだよこの場合!」

 

 本日も全力で平常運転です。

 ともあれ話しながらも川の裏へ続く道を歩きます。“そもそも滝の裏の洞窟、なんてものは普通に考えて自然的に出来るわけがねー、そうだそうに違いねー、そういうことにしとこー”と考えているモブさんとトンガリさんは、絶壁とも思える滝の壁の横、しばらく歩いて坂になっている部分から遠回りをするように登っていくと、

 

「……こげな面倒な造り、ほんに人間がするかね?」

「魔法とかに発達した世界なら、多少面倒でもするんじゃない? 俺そういう才能皆無だから、そもそも“それをやろう”なんて考え自体が無謀すぎて参考にもならないけど」

「中井出の場合、“そりゃ努力が足んねーのよ”とかじゃなくてマジで才能云々で理解出来るからスゲーヮ……」

「更新されたステイトに、“強くなるならゲームとかこういう世界で、レベルとスキルに後押しされなきゃクズでカスでゴミでしかない”、とまで書かれてたもんなぁ……」

「俺TUEEEや転生無双、転移無双など夢のまた夢のさらに忘却の彼方の夢……こんにちは、博光です《脱ギャァアアアン!!》」

「……ここで胸張れるから提督なんだよなぁ……」

「アタイ、フツーこういう場面だったら泣きそうになるわ」

 

 ……先ほど、サキュファーを退治して得たスキル、器詠の理力。その取得と同時に更新された説明欄に、とても手厳しいことが書いてあったのです。

 内容は、彼はともかくポンコツで、転生特典だの転移特典だのを得ようがそれが眩く開花することなどありはしませんというもの。

 実際の説明欄の文字は、読んだ者の向上心を叩き折るような文字列で、“お前転移・転生者に恨みでもあんの!?”というくらい辛辣なものでした。が、彼は「今さら僕に才能がないとか書くなんて理解が遅いなぁこの世界の管理者ったらウフフ」とむしろ笑っておりました。




 ルッパッパーラー【-豆知識劇場-】ラーララーラー

「ねぇねぇタイ・ソーのお兄さん! このお話ってよく小ネタとか使ってるけど、肉ネタ以外で“これ知ってる人どれくらい居てくれるんだろ”って思うのってあるかな!?」
「うぅんそうだねー。現在“横田卓馬”先生として活躍中の、かつてのYOKOさんが描いた“ブーンがいじめにあっていたようです”をはじめ、“痴漢男”や“オナニーマスター黒沢”という漫画があるんだけどね? その中のネタになるのかなぁ。それ言ったらYOKOさんっていうよりは原作者側のネタってことになるのかな? いやでもド失礼ながら原作の方知らないからなぁ……まあともかくそんな感じさ!」
「へー! どんなネタどんなネタ!?」
「いやぁ……オナマスもそうだったけど、いい作品だったなぁ……。でも僕が気に入ってるのはツンバカだったりするんだ。ドクオがトンファービーム撃った時なんかそれはもう笑ったものさ! YOKOさんは本当にいい絵であれらの作品を描いてくださった……! ……いじめの方は、ほんとクラスメイト男女合わせてクズしかいなかったのが悲しすぎて悲しすぎてもう……!」
「聞けよこの野郎!」
「WEB連載からもう12年もの年月が……あれ? 2008年でよかったよね? 活動終了の一枚絵と、各漫画のDLセットの日付が2008年だから……うんたぶんそう。第四十工房に栄光あれ! 出会えてよかったー!」
「だから閉鎖したってばさ!」
「はいというわけで今回の豆知識! 凍傷はYOKOさんのお陰で知った面白漫画や面白知識が結構あるぞ! YOKOさん本当にありがとうございます! 横田卓馬先生、これからも連載頑張ってください!」
「豆知識っていうかもうただの宣伝じゃねぇか!」
「うるせー悪いか小僧めが! 言っとくが俺はタイ・ソーのお兄さんであって体操のお兄さんじゃねぇからな!? 子供だからって図に乗ってんじゃねーぞコゾー!!」
「な、なんだって!? 僕を騙してたのか!?」
「そもそも誰だよお前! タイとどんな関係だ!? このタイ・ソーの兄であるブアイ・ソーに聞かせてみるがいい!」
「タイ・ソーのお兄さんってそういう意味かよ!!」
「はいここまでが豆知識」
「なげぇ!」
「はっはっは! そういうものさ!」
「……じゃあ、なんかこう……YOKOさんの漫画で妙に記憶に残ってる部分は?」
「内藤・ホライゾン・ツン様」
「誰!?」

 ルァー【-豆知識劇場 完-】ラーラーラー

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