ボケ者どもの理想村(ムラビディア)   作:凍傷(ぜろくろ)

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同穴のムジーナ - その誇り高き血統 -

【ケース20:同じ穴の貉 (ようするにぼっちだろうとグループだろうと馬鹿である)】

 

「ぇぼっ、僕のスキルかい!? しょうがないなぁ見たいって言うなら見せるよ! せっかく覚えたのに大してつつかれることも見せてくれとか言われることもなかったスキルだけどしょうがないなぁ晦一等兵は! しょうがないなぁ!!」

「あー……うん、すまん。見せたかったんだな」

「つついてほしかったのネ……すまんね中井出」

「おっほっほっほ~~~っ、そういうお前らは実は見てみたかったくせにィ~~~ンヌ」

「中井出」

「う、うん! なんだい!?」

「うざい」

「まっ……真顔でなんてひどい!」

 

 具体的に言えば、説明文があんまりにもあんまりだったために、スキル内容をつつくのが戸惑われただけなのですが。

 そんなやりとりをしつつ、スキルの説明欄の、具体的な効果を見たモミアゲさんは「やっぱりな……」と頷きます。

 

「ゲイパレス?」

「なにがだ。……えっとな、たぶんだけど、新しいスキルを覚える条件。“それ”に関係したモンステウを倒すと得られるって思っていいと思う」

「ソレ? おー……中井出のが意思を読み取るもんで? ダーリソは洗脳耐性……おお! 意思だのなんだのに関係してる能力か! ナルホロナルホロ、相手洗脳魔法モンステウじゃもんね!」

「な、なんだと! じゃあ僕は鈍器殴打を覚えるために、誰と戦えばよいのだ!!」

「……鈍器使い? グムー……」

「モンステウで鈍器って言えば……トロルとかか?」

「アッ、なんかそれっぽい」

「だぁね。オーガはなんつーか“ウンダリャァー!!”って感じで拳振るってそうだし」

「ああ、あるね、オーガはなんかウンダリャァーっぽい。まあそれはそれとして、じゃあゴブリンとかはどうだったっけ」

「ああ、中井出がオーガを窒息させたら、途端に手の平返して“オーマイガッシュラ・サンキュープリーゼンス”とかわけのわかんねー謎言語使って感謝しまくっとったあの?」

「いやちげーよ。それときメモ(ときめきをメモる現実(リアル))の片桐さんの告白の時の空耳だろ」

「そういやアレって結局なんて言ってたん?」

「oh my goodness,thank you please.じゃないか? 正直オーマイグッネスなんてオールマイトが言うまで知ろうともしなかった俺だけど」

「……なんでそれがオーマイガッシュラサンキュープリーゼンスになったん?」

「……そりゃお前。……中学ン頃の俺達が、持ってるゲーム持ち合ってとりあえずやってみっべーってなって、頭悪いなりにこの英語なんてーの? って語り合ったからだろ。片桐さんは英語を混ぜて喋るけど、完璧じゃない、的な設定がどっかにあった気がするし、意味としては謎でも“まあ片桐さんだから”で済ませてた部分はあったよな」

「あー……あったあった」

「というかだな。なんで鈍器の話からその……と、ときメモ? の話になるんだよ」

「そりゃダーリソ、ときメモで鈍器って言やァヘルメットだからじゃぜ?」

「ものすごくわけわからん上にどーでもいい結論だな……」

 

 はぁ、と溜め息を吐いて、彼らは先を急ぎます。のんびりしていれば、またサキュファーが流れてくるやもだからです。

 

「山とはいえ、ちぃと急いだ方がえーかね? 登山は焦ると体力枯渇で死に急ぐって話、聞いたことあっけども」

「じゃああのー……スロウジョギング程度に急いでみるとか?」

「おっ、ええねぇ。ほいじゃあこうリズムを取ってー……ほっほっほっほ……」

「はっほっはっほ……」

「いや、別にジョギングじゃなくてもいいだろ……」

「えーからえーから! ノリYOノリ! ほれダーリソも!」

「あっ、もしかして晦ぃ、お前掛け声無くちゃリズムとか取れないのか~? 中学の頃とか一人黙々と走ってたもんなぁ体育の時」

「そういう提督はよく脇腹抑えてゼヒゼヒ言ってたな」

「……どうですか? 素晴らしいほど凡人だと思いませんか! 昔話をされても安定のクソザコ博光! なんて凡人ッ! 俺ッッ!!」

「凡人認定されて喜べるヤローもめンずらスィーけどね。ほれまあ疲れるまではジョガってみっべヨ」

「だな! とういうことで掛け声ー! ハッラチュー! ふぁいっ、おー! ふぁいっ、おー!」

「オッ! ナッツカスィー!! 中学ン頃はセンセに言わされたもんやねェ~ィェ! ハッラチュー!」

「ふぁいっおー! ふぁいっおー!」

「迷惑部ー!」

「「クズがカスが! ゴミがゲスが!!」」

「ほれダーリンも!」

混ざるかたわけ!!

 

 原沢南中学校は普通です。異常なのは迷惑部だけです。

 ファイッ、オーッ、のリズムでクズカス言うのなど彼らくらいなものでしょう。

 仕方がないので二人は「わっかめー!」「こんぶもずくこんぶもずく!」とわかめ高校の掛け声をあげつつ先を急ぎます。

 

「あ、とりあえずこん棒とか鈍器系が武器のモンステウが出たら僕に任せておくれよ! 僕、なんとしても鈍器系スキルが欲しいんだ! だから頑張って戦って、鈍器スキルを手に入れるんだ!」

「中井出てめぇ……男だな!」

「なんだとてめぇ俺の何処が女に見えそうだってんだこのクズが!!」

「そういう意味じゃねィェーーーッ!!」

「源泉までの道のりで、もうちょいいい感じの会話とか出来ないか……?」

「ホ? おお、そういうのが欲しいのネ? じゃあ“もうちょい”。えーっと……お題:小説サイト“モノ書きにナルォオオ”の恋愛ジャンルで見かけるタイトル。学校一の美少女に惚れられた系タイトルで、なんか一言。ほい中井出」

「“学校一の美少女が俺に告白してきたけれど、べつに学校で一番ってだけで、世間じゃ普通です ~ モブ顔高校で俺に春が来た件 ~”」

「………」

「………」

 

 出題者と回答者が、静かに微笑で握手(アクセス)しました。

 

「学校一の美少女が日本一もしくは世界一レベルで可愛い場合が多いアレはなんなんだろな」

「おおそれそれ。ぼっちモノなのに友人が居るのもアレなんとかならんかのう。学校ではぼっちだけど、普段は友達知り合いいっぱいですとか逆にそれどうやってるのって感じヨネ」

「いやいや、それ言ったら超一流のぼっちを自覚しているにも関わらず、やたらと人と関わり合おうとしてるのもアウトだろ」

「? ぼっちっていうのはあぶれてて、なんとかして集団の仲間に入りたいと思ってる、とかじゃないのか?」

「それは普通の“望まぬコミュ障あぶれ系ぼっち”ね。超一流のエリートプロボッチャーさんは、学校だろうが私生活だろうがそもそも家族以外の人とは関わらんのYO」

「誰になにを言われようともそもそも孤独を好んでつるもうとしないから、会話も続かんし“やれやれ仕方ないな”なんて考えすらしない。自分が一人になるためだったら、人と関わらんためだったら、自分の立場がどうなろうが案外どうでもいいのがプロボッチャーなんだ。だからよくある弱みを握られて仕方なく、なパターンもプロボッチャー相手だと呆れるほどに通じませぬ(マジです)」

 

 なにやら随分と極端なことを言われている気がする。モミアゲさんは頬をコリリと掻くと、とりあえず質問を投げてみます。

 

「……それ、生きていけるのか?」

「いけるよ? 学校だもの、勉強と運動さえしてれば問題ないよ?」

「い、いや、寂しい青春してるとか、心配されたりは……」

「選んで孤独を魁てるプロボッチャーさんに、そんな言葉は無意味ざんす」

「青春潰れるよりも孤独が大事。ええやん、人それぞれだもの。言っとっけどホントのぼっちって、幼馴染が居て自分とその幼馴染の関係で、その幼馴染と自分の両親同士の関係がどうなろうが孤独のためなら突き進むからね?(マジです。そして家族内で立場が無くなるパターン)」

「自分の時間を自分のためだけに最大限に使えるから、勉強も運動もし放題だからなぁ、ぼっち」

「そして真のハイスペックぼっちは他人のためになど労力を使いません。教師からの圧力すら引き延ばして言い訳して逃げおおせるとんでもねぇヤロウです(マジです)」

「それ将来的に大丈夫なのか!?」

「なに言ってんの、本気でぼっち選んでるヤローが将来の人間関係のことなんざほんとに考えてるわけないじゃん。孤独でも生きられる方法と職業しか考えてねーよ?」

「無駄にスペック高いくせにその日のことさえ無事で平穏でぼっちならそれでいいんだぞ?」

「……ぼっちってすごいな」

 

 相手からの評価なんぞ気にして、ぼっちなど出来ません。学生の本文が学ぶことなら、彼ら彼女らは立派にぼっちを学んでいます。そして、その認識の仕方といえば“ぼっちにさせたのはお前らだ”的なもので、案外間違いでもないのです。

 

「ぼっちへの最高の対応は、“相手にしねーこと”YO」

「そう。なので僕らは僕らでてけとーにやればいいのです」

「相手にしないこと、って……じゃあ心配したりもいじったりも無しってことか」

「ぼっちを構うヤツなんてホホ、自分が構ってちゃんなだけじゃぜ? そいつつついて自分が目立ちてーのよ。相手をぼっちと判断した上でそやつしかつつけないようじゃ、そもそもにしてアレだけど」

「ていうか彰利も結構ぼっちに対して理解があるな。コーコーでデヴューしちゃった系?」

「うんにゃ、アタイと悠介とでダブルドラゴン的な二人ボッチみたいな感じではあるけども」

「あー……高校ってつまらないよなー。中学が面白すぎた」

「アタイらの例が異常ってだけじゃと思うけどね。のう悠介」

「ああまあ、それは激しく同意する。むしろ小学の時点で交友関係絶望的なのが家系の人間ってイメージだ。先輩……更待先輩はやたらと突撃してきたけど、自分の交友関係はまともだった気がするし」

「おお、あったのう。なつかスィー。そもそもアタイら、原中メンバーに合うまでは二人ぼっちを貫く気満々じゃったもの」

「それがなんだってああなったやら……」

「中井出が面白すぎた」

 

 モミアゲさんの呟きに、トンガリさんが即答で返します。

 それに待ったをかけるのは、あいや待たれぃとばかりにズビシと手の甲を相手に向けて振るい、途中で止める、いわゆるツッコミポーズを取るモブさんです。




タイトルに意味はありんせん

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