ボケ者どもの理想村(ムラビディア)   作:凍傷(ぜろくろ)

6 / 68
呼び出してみよう! 精霊様!

【ケース5:いやそれご神体って言わないから】

 

 それぞれのご神体が用意されました。

 弦月彰利に“砕けたおなご像”。

 晦悠介に“土偶”。

 中井出博光に“長寿と繁栄のなんというかそのー……ぞ、像?”。

 

「ろくなもんがねぇじゃねぇかこのクズが!!」

「なんだとてめぇ! このクズが!」

「そうだこのたわけ! 創らせといてなに言ってやがるんだ!」

 

 高校生の徒党など、所詮はこんなものでございます。

 異世界チートで渡り歩く人たちの精神が異常なのです。

 ちなみに彼らが居た中学の迷惑部では、クズがカスがは挨拶並みに普通の言葉なので、罵り文句として受け取るのは厳禁です。

 

「おいおいどーすんだよこれ中井出YO……」

「なんであえて俺に訊くんだよもう……。あのー、村長さん? これからどうすりゃいいの?」

「ワシもワシの祖父から伝え聞いていただけなのじゃがな……なんでもご神体に精霊やら妖精やらを降ろすため、祈りを捧げるのだとか」

「ホ? いのり? ラビットハウスとかでコーヒー売ってるお子の声当ててそうじゃね」

「そうじゃねぇよトンガリこの野郎」

「おっほっほ、わかっちょーよ中井出この野郎」

 

 彼らはにっこり笑って握手(アクセス)を果たしました。

 不敵に笑い、握るのではなく握手のカタチで固めた手同士をゴッツァアとぶつけるように合わせるのがアクセス。XMENvsストリートファイターでもやっておりました、大変格式高い握手のSAHOUでございます。

 

「お前らは逸れだしたらキリがないんだからちょっと黙ってような……」

「フフフハハハハ……! この儂に指図するとは面白い……! いいだろう! ……小僧ォ……! だがそれは儂を倒さんと───無理だな《バゴシャア!》ソルベ!!」

 

 両腕を広げて、プリンスオブペルシャのジャファーの真似をしていたトンガリさんが顔面を殴られて黙りました。

 そうして、祈りを捧げるSAHOUが伝えられていったのです。

 

「ワガガガガ……! あ、あの……ねぇ中井出? 今なしてアタイ殴られたの……?《ズキズキズキズキズキ》」

「儂を倒さんと無理だなって言ったからじゃないか?」

「ああ、彰利納得。じゃあ祈ろう」

「うむ祈ろう」

 

 祈りの方法は簡単。

 村に伝わる儀式の舞いを見せ、願うことをご神体に託し、最後に跪き祈る。

 成功すればご神体に、己の生涯において、最も関係が深いであろう属性の妖精や精霊、ヘタをすると邪なるものが宿るそうです。

 ちなみに徴収される前のご神体には平和と維持を象徴する妖精が宿っていたらしいのですが、この地から無理矢理剥がされてしまったため、妖精のご機嫌は最悪。

 今まで願いを糧に貢献してきたというのにどういうことだとばかりに、ヘソを曲げてしまっているのだとか。

 

「ほいじゃあアタイいっそ邪神でも降ろしてみる!」

「やめろたわけ! ご神体が砕けた女の像とか、本気で降ろしそうだからやめろ!」

「これアータが砕いたんですが!?」

「おいおいやめてくれよ馬鹿くんたちアホー。今はそんなことやってる場合じゃないだろう?」

「優等生ぶってんじゃねィェー中井出この野郎!! ほいじゃあてめぇから舞を見せてみろこのクズが!」

「ここでクズ関係ないよね!? だがいいだろう! この博光が今より舞を奉納せん!」

 

 一番手、モブさん。

 彼はこの時、綺麗に舞おうとはしませんでした。

 ただひたすらに村と老人のことを想い、それを一番に“手順を踏んだ舞い”をなぞるのみ。

 そして、こんな願いを受け止めてくれるであろう、まだ見ぬ自身が生涯においてもっとも関わるであろうなにかに願いを懸け、ただそれのみのために舞うのです。

 

「提督……」

「へっ……やるじゃねぇか。舞は汚ェし恥ずかしさも抜けてねぇ……ステップだってどたどたしてるし何度も間違いそうになってて見るに堪えねぇ……」

「だめなところだらけだなオイ」

「だが意志は届いたゼ中井出この野郎……。ヤツめ、途中で舞の仕方を忘れやがった……」

「え? うわマジだ! 目がすげぇキョドってて助け求めてるぞあれ!」

「なにやってんだ中井出てめぇ! 村長さんがあんなに教えてくれただろうが!」

「しゃきっとしろ提督! そこはそうじゃなくて! あぁ違う! 違うって! ちがっ……違うっつってんだろうがこのたわけ!!」

 

 この一等兵どもは本当に厳しい人たちでした。

 そんな彼らのツッコミも応援も散々と飛び交う中、彼の舞の奉納は終わります。

 結果、ご神体に変化は……

 

「……失敗じゃな、これは」

 

 なにもありませんでした。

 

「中井出てめぇ! このクズが!」

「なにやってんだ提督! シャキっとしろってあれほど言ったのにこのクズが!」

「ぼ、僕だって必死だったんだ! なんだよみんなしてこのクズどもが!」

「なんだとてめぇ!」

「誰がクズだこのクズが!」

 

 これでじゃれ合っているだけなので、三人は全力で騒いだのちに普通にそれぞれの舞に戻りました。

 

「クズが!」

「まだ踊ってもねぇでしょうが中井出てめぇ!!」

 

 そういうノリが嫌いじゃないどころか、むしろ懐かしすぎて、お腹を抱えて苦しそうに笑うのはモミアゲさん。

 

「マア! 悠介が笑ってる!」

「愚かな……あれは晦なりの舞なのだ。まず初めに“ここは賑やかな場所なのですよ”と精霊様に知らせることで、心の壁を解きほぐしているのだよ……」

「ご神体の傍で散々クズがクズが言っといて、それを今さら賑やかで済ませるとか出来っこねーベョ」

「いやでも実際、我らにとっちゃあ賑やかだっただけだもんなぁ……?」

「感性の違いってすっごい不思議」

 

 ともあれ、舞いました。

 モミアゲさんの舞は実に綺麗で、二人も思わず拍手をしてしまうほど。

 対してトンガリさんの舞は何故か途中でブレイクダンスに以降。

 最後に「さあ……笑って?」と言い出したので、モブさんとモミアゲさんはクズガクズがと暑い声援を送りました。

 直後に、砕けたおなご像に【悪魔:ザコール】が降臨しました。

 

『ゲッゲッゲッゲ……! 我ヲ呼ビシハ貴様カ……!』

「え? 呼んでねーよ?」

 

 現れた悪魔には、それはもう誠心誠意、正直に即答します。確かに呼んでいません。

 

『ゲッ!? イヤアノ……呼ンダダロウ? 罵リト笑ミニ溢レタ狂気ノ舞ニ誘ワレ、我ハ来タノダカラ』

「いんやいんや、だとしても呼んだのてめーじゃねぇザマス」

『………』

「………」

『ムッハァー!! 悪魔ヲカラカウ愚カ者メ!!』

 

 悪魔:ザコールが襲い掛かってきた! しかしそれを即座に止めるは提督さん。

 

「あいや待たれいザコール殿!」

『ムッ!? …………ホウ、我トノ会話ヲ望ムト。イイダロウ、我ハ寛大ダ。シテ、何用カ、平凡ソウナ人間』

「………」

 

 何気ない悪魔ヴォイスが平凡な心を傷つけた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定