ボケ者どもの理想村(ムラビディア)   作:凍傷(ぜろくろ)

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聖剣。剣としての名前はまだ無い

【ケース28:秘密の部屋。……こういう場所の内装って誰が仕上げてるんだろうね】

 

 さて。

 

「じゃあ下山しながらモンステウを探すとして───なにかやっておきたいこととかってあるか?」

「はいはいはーい! アタイー! 安置されし聖剣が抜かれたことにより、なにかの仕掛けが発動してるやもしれねー! つーわけで完全に降りる前に、もういっちょ滝の裏行ってみっべー!」

「あ、それ賛成! 博光賛成!」

「……抜いたっていうか破壊して持ち去っただけなんだけど、仕掛けがあったとして、起動してるのかそれ……」

「ハチャメチャに不安だけど、動いてるやもなんだから調べてみっべ。案外泉から浄化効果がなくなったら、って条件で発動してるやもだし」

「なるほど。じゃあ行ってみるか」

 

 頷き合って行動開始です。

 きっちりと靴も創造してもらった彼らは元気に駆けて、下山していきます。

 あれほど居たサキュファーも既に存在しておらず、下山はとても楽なものでした。

 途中にあった滝までもあっという間で、三人は軽く迂回するようにしてもう一度斜面の横にある道から滝の裏までを歩きます。

 

「……見た感じ、滝に辿り着くまでもなく思いっきり無さそうだな」

「いやいやすぐ傍まで行かんとわからんかもじゃぜ?」

「そうそう。もしくは聖剣(これ)で斬ると道が開けるとかあるかも」

「おおなんか聖剣っぽい! 行ってみっべョダーリン!」

「う……確かにそれは見てみたい。よ、よし、行くか」

「オウヨー!」

 

 うずりとソワソワしだすモミアゲさんとともに、さらにさらにと進みます。そして辿り着いた滝の裏で……はい、特になにもない滝の裏で、壁を叩いてみたり斬ってみたりするのですが、特になにも起きません。

 

「………」

「悲しいな……滝の裏に洞窟なんてない……。わかっていたことじゃあないかウフフ……」

「所詮そげなもんなんかね……うう、ロマン……俺のロマンよぅ」

「いや、待った」

「ヌ?」

「ダーリン?」

「……提督、ちょっとその剣」

「コレ?」

「そう。それのくっついたままの岩、壊してみてくれ」

「……エ? ───よっしゃあ了解! うだうだ言うよりゃ即実行! それが浪漫だ男道ィ!! うぉおりゃあっ!!」

 

 モブさんはゴトリと地面に岩付きの剣を置いて、その岩目掛けて創造してもらっていた鈍器を振り下ろします。

 それは水底においても、鈍器として使うための最初の小さめの岩を用意するためにも、何度も叩かなければ壊せなかったものですが、水の抵抗もなく振るわれたそれは岩を破壊してみせて、そこには剣のみが残されました。

 

「よっしゃ聖剣ゲットォーーーッ!!」

「……どうだ!? これで岩から完全に抜かれた、ってことになって道が開けたりとかは───」

 

 岩が取れた聖剣を拾い上げ、モブさんは天高く突き上げます。

 モミアゲさんはそんな様子を確認してからンバッと滝の裏の壁を見やるわけですが……やはりなにもない壁があるのみ。

 三人はやっぱりそんなもんか……と溜め息を吐いて、落ち込みます。

 やはり抜いた抜かない云々の話ではなかったようです。

 

「……悲しいなぁ。せめてこう、岩に隠れていた部分さえも鈍色に染め抜けばなにかが起こる~、とか…………やっぱなんもないか」

 

 しばらく待って、拾い直した剣が鈍色に染まり切るのを待ったところで、なにが起こるわけでもありません。

 悲しみを力に変えるがごとく、眼前に落ちる滝へと剣を振るってみると、

 

『《ゴバキャア!!》ギョッ……!』

「あ」

 

 確かな手応えとともに、滝を泳ぐ水棲モンステウ、フォールフィッシュさんが絶命しました。経験値はその希少性と、けれど脆さから計算されて5ぽっち。しかしそれで十分だったのです。意図せぬバトルでなんか突然レベルアップするモブさんが、ここにしっかり居たのですから。

 

「………」

「中井出?」

「提督? どうかしたか?」

 

 ソロでブブルドフさんと戦うため、パーティーから外れていたモブさんです。既にURの効果範囲もパーティーメンバーではなくても通用するレベルではあるものの、だからこそPTのメッセージログで彼のレベルアップを知る者は彼しか居ません。討伐記録さえないのです。

 頬をコリコリと掻きつつ、とりあえず手に入れたポイントを振り分けてみれば、器詠の理力がレベルMAXに。

 そのまま発動してみれば、なにやら声が聞こえたような気がして───モブさんは感覚的に誘われるままに、滝の裏の壁へと手をつきます。

 

「?」

「提督?」

 

 さらにそこに器詠の理力を使用してみれば、まるで水に沈むかのように、手が壁へ沈みます。

 

「うおおっ!?」

「中井出!? っとダーリン握手(アクセス)! これたぶんよくあるスキル使用者しか通れないとかそういうのだ!」

「お、おおっ!」

 

 トンガリさんは沈みゆくモブさんの手を掴んで、モミアゲさんはトンガリさんの手を掴みます。

 すると同じく手から体まで、まるで抵抗もなくとぷんと壁に沈んで───……気づけば、その先の隠し通路へと、立っていました。

 

「滝の裏の……」

「洞窟?」

 

 洞窟、というには相応しいのかそうでないのか。

 そこはまるで教会やら神殿やらの祭壇のようであり、「うおっしゃああああ! 滝の裏の洞窟ーーーっ! 博光感激ィイイーーーッ!!」物音ひとつしない、「ウッヒャッホォーーーイッ! ロマンやロマン! ロマンは死んでなかったんじゃーーーいっ!!」明らかな人工物のようなそこの先には「洞窟っていうよりは神殿とか聖堂、みたいな感じだけど……やばいな、嬉しいぞこれ。滝の裏に隠し部屋とか……!」……三人とも大変に元気です。ともあれ、まず階段がありました。広い間隔で数段しかないそれは、通路・階段と何度もそれが続いていて、登り切った先には───台座の上に突き刺さっている剣の鞘がありました。

 

「ウムムー……剣の……鞘、だな」

「材質なんだろ……触った感じはー……鉄、とかじゃあねぇぜ?」

「魔法金属かなんかか? こういう時、分析のスキルでもあればなって思うな」

「だぁねぇ……ま、とりあえず……どうする? 抜く? それともあえて剣を鞘に差し込んでみる?」

「差したら抜けなくなるとかないかな……博光心配」

「いや、その時はまた台座でも破壊すればいいんじゃないか?」

「あ、そかそか。晦もたまにえげつないなぁ」

「やかましい、前例が無けりゃ思いつくもんか」

「おいおいその前例とやら、相当性根が腐り落ちてやがるよ? 大丈夫?」

「………」

「………」

「え? な、なに? 二人して僕のこと見つめて。もしかして僕が英雄っぽく剣を納める瞬間をそんなに見たかったりしたのウフフ?」

「や、どれだけ頑張っても、我らが提督がなんか剣を鞘っぽいのに差し込んでる姿にしか映らんから、英雄っぽくとか無理せんでえーよ」

「素直にひでぇ! でもなんか解る。身の程ってものがあるもの」

「それ自分で言うのか……」

 

 ならばと剣を持ち上げて、台座の後ろ側に立っていざ、差し込もう……とするのですが、どういうわけか鞘の方が明らかに大きいです。これ、ほんとに剣を差す場所で合ってる? とモブさんが二人に不安な視線を送るほどです。

 

「……これ、違くない?」

「オ、オウヨ。明らかに鞘の方がデケェェェェゼ?」

「え? じゃあなんの鞘なんだそれ」

「知らんけど……まあいいや、差してみよう」

「オウヨ。こういう時はあれYO。解らねば 試してみよう 保登心愛

「うむ、やりたいことには全力でぶつかっていくココアさんスタイルですなグオッフォフォ……!!

「さ、さあ山岡くん! やってくれたまえ!」

「うむ! では───ウォーリャー!!

 

 ジャコォンッ! パシュッ、ゴキィンッ!

 

「あ」

「あ」

「おおっ……!」

 

 差し込んでみました。ら、大きいと思っていた鞘が剣を守るようにジャコンと形を変えて納まります。まるでカチっと音がするまで押し込むアレのようなギミックです。

 そうして納まってみれば、聖剣の鞘として丁度いい大きさになったそれは、台座からガコンと押し上げられ、軽い力で抜き取ることが出来ました。

 

「おおお……それが完成形か……! ……つーかなして鞘とは別になっとったんじゃろ」

「提督、剣に訊いてみることとかって出来るか?」

「出来ると思う。んんー……おお、聞こえる聞こえる。えーとね? 前に下賜されたオーサって人と隣人の妖精さんらに、浄化の象徴として封印みたいなことされたんだって」

「ホ? オーサと隣人って……村長とコボルトさんら?」

「たぶん。いかんせん何十年も前のことだから、覚えてるのが辛かったって」

「……待て提督。聖剣とか伝説系の武器でありがちだろうから訊くぞ? ……それ(・・)誰だ(・・)?」

 

 モミアゲさんはなんとなく察し、モブさんに訊ねます。「博光です」「お前じゃなくて」……それ、というのはもちろん聖剣のことでありまして───

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