ボケ者どもの理想村(ムラビディア)   作:凍傷(ぜろくろ)

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村はまだまだ癒されない

【ケース6:ボケ者どもの歌】

 

「お、おい提督……慎重にな……!? 悪魔なんて初めて見たけど、これは───」

「フフフ、わかっているよ晦一等兵。この博光とて日本人よ。会話の仕方はきちんと心得たものだぞぅ? 相手が悪魔なら会話の仕方だって選べます。つまり、こう。───オウコラてめぇ会話してやっからマグネタイト寄越せ悪魔この野郎」

『コノ人デナシガァアアーーーッ!!』

 

 悪魔:ザコールが襲い掛かってきた!!

 

「げぇ間違えた。あわわ」

「ここここの馬鹿提督がぁあああっ!! ちょちょちょ待ってくれ頼む悪かった謝るからぁあっ!!」

『黙レコノクズガ!!』

「これっぽっちも否定出来る要素がねぇ! 俺巻き込まれただけなのに!」

 

 だめだ話にならない! ザコールはやる気だ!

 そうして二人とギャアギャア言い合っている内に、後ろからトンガリくんが浄化と神聖の月操力を行使。悪魔を標的固定の月操力で地面に縫い付けると、ジワジワと浄化して滅ぼしていったのでした。

 

「……うわぁ……すげぇ罪悪感……」

「提督……ほんと頼む……。こんなんじゃ命がいくつあっても足りないだろ……」

「アンリミテッドですが?」

「だからって死にたいわけじゃないだろうが!」

「まったくだ!」

 

 浄化の光が悪魔を焼き切り、煙となって消えていくのを見送ると、三人はどうにかできたことを安堵の息として吐き出します。

 そして、トンガリさんがニコォと表情を崩し、二人に振り向きました。

 

「クォックォックォッ……! おいおい三人やって成功したのアタイだけ? おっほっほ、アタイだけ? いンやぁまいったねェ~~~ィエ、自分の才がおっそろスィーわぁ~!」

「うるせー! 悪魔召喚したくせに得意になってんじゃねぇこのクズが!」

「なに得意顔してんだこのクズが! 胸張りたいなら妖精とか降ろしてみやがれ!」

「なんだとダーリンこの野郎!!」

 

 普通に褒め称えることは滅多にしない彼らは、それでも顔は笑みで溢れておりました。

 退屈だった高校生活に比べ、なんと楽しいことでしょう。

 彼らの心は今、楽しかったあの中学時代に戻っているのかもしれません。

 

「しっかし、彰利のあの奇妙な蠢きで召喚されるのに、俺と晦とではなにが違うんだろう」

「や、悠介はパーペキじゃったけど中井出、てめーのはいろいろ残念だったっしょが」

「想いは込めたやい!」

「ホッ、言いおったわこの提督めが。ならばこの彰利が、うぬの珍妙不可思議なる踊りを見せてくれようぞ」

「えっ? そんなこと出来るの? ていうか提督めがってなに? 提督って蔑称だったの? 初耳なんだけど俺」

 

 言いながらも、トンガリくんが動かす指に目がいくモブさん。

 そんな視線を独り占めにしつつ、トンガリくんは月操力を行使します。

 使うのは時間に関する能力。

 元の世界ではこれが原因で同じ時間を幾度も……それこそ千年近く生きることになったのですが、それもまた別の話。

 過去の光景の映像を今に持ってきて、モブさんに見せてくれようとしました。

 その時です。

 その“時間行使”に乱れが生じ、トンガリさんの制御下から外れました。

 

「ぬがっ!? なななんと!? いやちょ、なにこれ! 千の時をコントロールと挑戦に当てたアタイがコントロール出来ねーなど……!!」

 

 簡単に出来る筈でした。むしろ平然と出来ていたのです。

 そこに外部からの干渉がなければ、むしろ完璧に映像のみを持ってこられた筈でした。

 しかし外部から、彼の力を軽く超える干渉があり───結果。

 

  彼の、“長寿と繁栄のなんというかそのー……ぞ、像?”が砕け散りました。

 

「オギャワァーーーッ!?」

 

 自分が真心込めたイメージが砕かれるというのは、これで結構こたえるものです。

 モブさんは奇妙な叫び声とともに悲しみを表現し、ザムゥ~と地面に両膝両手を着き、落ち込みます。

 

「ようこそ、砕けた世界へ……!」

 

 その様子を満面の笑みで見守ったトンガリくん、極上ガイアスマイルでサムズアップ。

 落ち込む彼の傍に屈み、その肩にポムと手を置くのでした。

 

「創造主のナックルパートで砕かれた像と一緒にしないでいただきたい」

「なんだとてめぇ!」

 

 結局みんなクズでした。

 

「それよりどうすんだよこれ……真心だけじゃダメで、なんかいきなりブッ壊れるし……。もうこれ晦の土偶にかけるしかないの? この世界はおなご像と長寿と繁栄に恨みでもあるの?」

「アタイの像は悠介にブチ壊されたから度外視されるべきじゃねーベョ! きっとほらあれじゃぜ? 砕かれてなけりゃあステキなのが降臨してたんじゃぜ?」

「大悪魔ベノレフェゴーノレさんか」

「誰それ!? だっ……誰それ!? 語呂悪そうに見えて、なんかリズムがわりかし良い!?」

「ドラゴンボールをドラゴソボーノレとか初めて呼んだ時の想い出?」

「ソレダ」

 

 解決したようなので、二人はモミアゲさんの土偶の前に立ちます。

 モミアゲさんは土偶に最後の希望をたくされたような気分になって、少しうきうきです。

 

「さて、中井出さんや」

「なんだい彰利さんや」

「…………どうすれば触れずに砕けるかな」

「俺も今それを考えていたところさ」

「おいこら待て」

 

 舞を奉納したのは三人とも同じなのです。

 なのに砕けていないのが一つだけ。

 二人の心にほんのちょっぴりの嫉妬と、盛大なる遊び心が煮汁の如く溢れ出ておりました。

 なんで少し目を離した隙に、好き勝手に溢れ出るのでしょうね、鍋の汁というのは。

 

「なぁ彰利YO」

「なんだYO」

「……お前、能力使って俺の像破壊してないよね?」

「ホホ、愚かな。アタイがその気になりゃあ、アタイのが砕かれた時点で巻き込んどるぜ?」

「だよなぁ、そうじゃない事に賭けてみようだなんて、この博光も間違っておったわ」

「まったく……気をつけなせぇよ? アタイじゃなけりゃあ激怒モン……じゃぜ?」

「悪い悪い」

「いやそれでいいのかお前……」

「ホ? ダーリンたら何が?」

「いや…………まあ、ああ。それでいいならいいんだけどな」

 

 クズであることが当然のように信じ切られているので、釈然としないのも当然なのですが。

 ともあれ、二人は土偶を見つめ、モミアゲさんを見つめました。

 

「ねぇダーリソ? ものは相談なんじゃけど」

「砕かないからな?」

「おいおい晦誤解するなよ? 俺達はただ仲間外れを出したくないだけなんだ」

「そうじゃぜ? これはいわゆるあのー……ユウジョウ!」

「友情で土偶破壊されてたまるか!!」

 

 大事そうに土偶を抱えるモミアゲさんを前に、トンガリさんとモブさんは「ちぇー」と口を尖らせました。まるっきり子供のノリです。

 

「ま、いいや。ご神体はこのままで、村の復興手伝おっか。村長さんなんかあるー?」

「え!? ええの!? や、まあてめーがいいんならええんじゃけどね!?」

「今までの流れ完全にぶった切ったな……。って言ってもやれることって言ったらなんだ? 一応基本方針は“村”であることを崩さない発展だから、適当なもの作られると困るんだが」

「老人さんたちをさ、マッスルにすることとかって出来るかな。体を強靭にして、腰痛肩こり関節痛なんぞを知らないボデーに蘇らせるとか」

「およ? そりゃまたローソン維持に大切っぽい案件」

 

 ローソンとは言っておりますが老村です。

 そしてそれが出来たなら、老人ばかりのこの村にも希望が持てるというものであり、

 

「オウヨ! そういうことならアタイにお任せッ☆」

「じゃあ老人たちは彰利に任せて、この博光はもう一度舞いと降臨の儀式にチャレンジよ」

「───」

「……何故、道をふさぐのかな? 晦一等兵」

「むしろなんで土偶に近寄るんだ? 提督」

「………」

「………」

「………」

「創造からもういっちょチャレンジするんだぜ! というわけで創造ヨロシク!」

「そこは無謀とわかってても突撃するとこだベョ提督てめぇ!!」

「ウルサイワーイ!! ぼ、僕だって怖いんだい! だって晦一等兵ってば卵を守るリオレイアみたいな目ェしてんだもん!」

「どんな目じゃいそりゃあ!」

 

 む~んと謎の迫力を出すモミアゲ様を前に、モブ提督さんはやり直しから始めることに決めたのです。

 ……ちなみに創造も舞いも失敗したそうです。

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