【ケース8:男子高校生はノリと勢いの生き物】
食事から大体30分後、三人は再び御神体創りから始めました。モミアゲさんがイメージを受け取り、それを創造。
トンガリさんが創造してもらったものは、誰とも知らない女性の姿の木像であり、長髪で空き缶のようなものに髪を通した綺麗な女性でした。それを、何故かモミアゲさんに渡します。
「彰利?」
「これはダーリンが使って。んで、もういっちょよろしゅう」
「……?」
首を傾げつつも、もう一度創造。トンガリさんが次に出してもらったのは、グリフォンの被り物をした筋肉質の男性の木像でした。
「この胸に、闘魂ある限り……!」
「グリフォンマスク創造してどーすんだこの馬鹿! これにどんなモン降ろすんだよ! 言ってみろこのたわけ!」
「なにってそりゃおめぇ……アレだァ。……エロスの女神?」
「闘魂が死ぬわ! そこは嘘でも戦いの精霊とかそっちの方にしろよ!」
「だってYO、異世界モノときたら出てくるもん出てくるモンなんでもかんでもおなごっしょ? たまにゃあえーやん、男ばっかりでも」
「それを俺に創造させてどーすんだって言っとんのだ俺は! ていうかお前さっきの雑炊用のお椀もそうだったが、つまり木を操れるなら木像だって作れるんだろうが!」
「ギャアバレた! オ、オウヨ。そりゃアタイ、月然力っつー自然をある程度操る能力も持っとるけど…………ね? ───なんでも能力に頼るの、よくねぇ……だろ?」
「おぉんのれは今人の何に頼っとんのか言ってみろこのたわけぇえええ……!!」
「ぎえぇえええコメカミが頭が脳が脳がギャアーッ!!」
モミアゲさんは全力を以って、親友のコメカミに握り拳を埋めるが如く、ゴリゴリしました。
家系の力によってブーストされた遊び的拷問は、割とシャレにならないレベルで人体に埋まります。
散々とゴリったのち、そのままドシャアと地面に捨てられたトンガリさんをよそに、モミアゲさんはモブさんを睨みます。
「提督……人の体力使ってまでふざけたことをするのは本当に、ほんっとーにここまでな……? ───な?」
「すまない……っ……約束は……できないんだ……っ!」
「なんで“運命に左右されてて俺にはどうしようもないんだ”みたいな被害者ヅラして否定してんだよお前は!!」
「うるさいやい!! ただ無限に復活できるだけでザコい俺に体力消費がどうとか“それがどうした”レベルでどうでもいいわふざけんなこのタコ!! お、俺だってなー! 俺だって……! おぶっ……おっほ……おおおお……!」
「言い返しづらい自虐やめろ! ほんとやめてくれ! ~ぁあもうわかったよ! 満足いくまで付き合ってやるから引くくらい泣くなよ! 泣っ……いやほんと……泣くなよ……」
異世界転生。憧れますよね。やんちゃな年頃だと本当にそうです。
しかしそんな異世界にこそモブ雑魚認定された者の気持ちなど、産まれ持ったものがある人にはきっとわからないのでしょう。
ちなみにモブ提督さんには本当に様々な方向で才能がありません。雑魚です。ゴミです。カスです。
「ようするにさ、イメージをもっと鮮明にすりゃいいんだよ。この博光的にはこー……ほら、別にもう地球に未練とかないし、ここで生きていく覚悟を以って、その全てを捧げるつもりで祈ってみるとか」
「ホ? キサマじっさまが居るから早く働きてィェーって言ってたっしょ」
「死んだよ。親戚に毒盛られて。財産目当てだったんだってさ。毒盛ったヤツは捕まって、企てたヤローが金全部掠め取って行きやがった。地球に戻っても帰る場所無いんだわ、俺。だから別に地球とかどうでもいい」
「…………提督……」
「中井出……てめぇってクズは……。………………じっさま死んだのに異世界でクズがカスがとか元気に燥げるってキミほんと中井出やね」
「任せてくれたまえ」
母星に絶望してなお無駄に元気。それが彼でした。
一種のやけっぱちとも言えるのでしょう。
「案外、どーせ死んでもいいやぁとか考えてたからURが発現したのかも。まあお陰で何度も死んで、気持ちの整理もつけられた。死にそうになったりしてみると、考え方の根本とかひっくり返るもんだね、今はもう、死のうがどうしようが楽しむしかねぇぜ~~~っ! って感じになってるわ」
「……無理しとらん? ほれ、例えば麻衣香ネーサンとか」
「や、冗談抜きで地球にゃ未練はないから大丈夫だ。麻衣香ともこっちの身内で殺人事件が起きたってんで、あっちの親が中井出家に関わっちゃメーなのー! って感じで引き離したしね。……フフフ、解るかね一等兵らよ。───この博光は、今こそまさに自由であるぞ……!!」
両手をズォオと無駄に迫力を以って横へと広げ、ニコリと笑みます。一等兵ら、モミアゲさんとトンガリさんは素直に“ヤベェこいつイカレてやがる”と再認識しました。
「そういう貴様らはどうなの? 博光そこらへんとっても気になる」
「きょとんとした顔と口調で“貴様らはどうなの?”とか言葉としておかしくないか……?」
「まぁてめぇがそれでえーんならえーんじゃけれどね? で、アタイはー……うぬ、
「妹たちがどうしてるかが不安でしょうがない……!!」
「わぁ、そりゃ確かに」
「晦の妹っていったら───あー、若葉ちゃんに木葉ちゃんかー。ブラコンだもんなぁあの二人」
言いつつも、既に御神体を傍に、舞いをする用意をしているモブさん。
モミアゲさんはそんな彼とその御神体を見て、少々の疑問をぶつけます。
「そういえば珍しく彰利がツッコまなかったけど、提督のソレってどういう御神体なんだ?」
促す先には綺麗な女性の石像。促されたモブさんはニコリと笑い、応えます。
「グフフホハハハハ……! これこそこの博光の頭の中より生まれしイメージ、なんかめっちゃ綺麗なおなご像よグオッフォフォ……!!」
「「よし壊そう」」
「やめて」
なんだかドヤ顔がむかついたらしい二人が拳を構えたところ、彼は割りとマジで止めに入りました。
「いやさ、なんか知らんけど見てた夢の中に出てきたんだよな。辺り一面自然で囲まれてて、空気がめっちゃ美味しいの。そんな中で、この……あ、夢で見た女は緑色の髪をしてたんだけどね?」
「緑色の髪って中井出てめぇ……」
「ああ……俺も驚いた。───あれ絶対なんかの病気だぜ……!?」
「オウヨ、ぜってーやべェェェぜそやつ……!」
「ファンタジー来て今更髪の色で体調心配される相手とか初めて聞いたわ」
しかし不思議と髪の毛の色にツッコミを入れない転移者ばかりなのです。世の中とはまっこと不思議なものでございます。
「で、ともかくこんな女性が出てきたわけで。なにやら訴えてるんだけどちっとも聞こえなくて」
「あー……なんぞアニメとかでありそげなアレか。夢の中の相手の声がちぃとも聞こえんで、日にちが経つにつれ聞こえてくる~とか」
「そう、それよ。俺もそうだと思ったからさ、“バカヤロー! わざわざ時間経過待ってねぇで根性で伝えろこのクズが!”って言ってみたら泣いてしまって」
「提督あんたなにしてんだ!? もしかしたら相手、お前になにか伝えたい精霊かもしれなかったのになにしてんだ!?」
「おいおい晦一等兵、そんな、相手がもし精霊様だったらこっちに聞こえないわけないだろう?」
「まったくダーリンたら、ちっとは考えんと……じゃぜ? 相手はアタイらなんぞとは比べものにならんほどの強大な力を持った精霊様じゃぜ?」
「……なんかもう物事が平穏に解決する未来がこれっぽっちも見えなくなった。誰か助けてくれ……」
「へへっ、安心しろよ晦一等兵……俺達、仲間だろっ?」
「安心するんじゃモミナレフ……ダーリンにゃあアタイらがついてるぜっ☆」
「お前らが阿呆なことばっかしてるから未来が不安なんだよちったぁ理解しろたわけども!!」
「「グ、グゥムッ……!」」
たわけどもは自らがたわけどもであることを理解しているため、グゥの音も出ないのでグゥムの音を出しました。
……殴られました。
「じゃ、緑髪の恐怖のことも解決したところで、一発目は俺ってことでいいか?」
「オウヨ、別にかまやしねーだぜ!」
「解決したのかこれ……ああまあいや、ていうか提督、舞いの仕方はちゃんと覚えたのか?」
「晦一等兵。大事のは心……だぜ?」
「結局覚えられてねぇんじゃねぇかこのタコ!」
「なんだとてめぇこのタコが!」
「クォックォックォッ、おいおい落ち着きたまえよタコども、ここはアタイに免じて……な?」
「うるせーこのタコ!」
「なんだとタコてめぇこのタコが!」
「なんだとてめぇこのタコが!」
三人等しく馬鹿でございました。