《完結》テイルズ オブ デスティニー〜七人目のソーディアンマスター〜 作:灰猫ジジ
さらっと深夜に投稿しておきますので、もし土曜日がお休みでこの時間にまだ起きている方がいらっしゃれば、その方は運が良い!
ええ、本当に運が良いのです!笑
あとがきの小話の下にも色々と書いてあるので、良かったらお読みくださいませ!
数日間は感想欄を非ログインの方も書き込みできるようにしておきますので、よろしければ感想も書いていただけたら嬉しいです。
『ようやく話せるようになったか!』
「ディムロス! 急に話さなくなったから心配したんだからね!」
『仕方がないだろう。まさか
「あ! そうそう、
『…………』
「ちょっと! 無視しないでよ、
テルカ・リュミレースより戻ってきたリリス達。ソーディアン達がようやく話せるようになり、これから直しに行こうというところで
リリスは
「……え、
『おい
『……やっぱりね』
「やっぱり……?」
ディムロスとリリスが声を掛け続けるが、何度話し掛けても返答がなかった。
そこで納得したような声がベルセリオスから出てくる。
『ベルセリオス、どういうことだ?』
『おそらくだけど、
「
ベルセリオスは推測でしかないが、
『ええ。アレは元々
「え……じゃあ
『なんとも言えないわね。ただ今の状態ではあたしが作った施設でも修復は難しいと思ってちょうだい』
『
このままでは
ベルセリオスだけは『まったくあの人ったら……相変わらずなんだから』と不満を漏らしていたが、声は寂しそうな様子であった。
「で、でもさ! オリジンにお願いすればなんとかるんじゃないの!?」
『それもあくまで可能性の話ね。確実性があることではないわ』
オリジンに頼んだ場合、どこまでのことが出来るのか分からないため
しかし、それでも彼女に出来ることはそれだけしかなかった。
◇
アセリア歴4354年。アセリア世界ユークリッドの都にて。
「………………オリジン!!」
『我が主よ、何用か──と、聞くまでもないな』
根源の精霊オリジンはリリスを見ると薄く笑った。
契約をしてからも笑った姿をほとんど見せないオリジンであったが、前回同様リリスに対してだけは優しさを含んだ視線を向けていた。
「オリジン、ソーディアンを直す材料を集めてきたわ……でも……」
『みなまで言わずともよい。
オリジンには全てお見通しだったようで、
『エターナルソードに選ばれし者よ、時空の剣をここに』
「は、はい……」
クレスはエターナルソードをオリジンの前に置くと、リリスにもコアクリスタルと各世界から集めてきた鉱石を同じく置くように伝える。
そしてクレスとリリスが離れたのを確認したオリジンは、目を瞑り集中を始めた。
「こ、これは……!?」
少しの間の後、オリジンとエターナルソードが光り出すと、コアクリスタルと鉱石が浮かび上がりゆっくりとくっついていく。
最後にまばゆい光を放ち、その光がやんだところで──
「こ、これが……」
「これはすごいですね」
「ああ……エターナルソードに勝るとも劣らない美しさだ……」
「それなのに内包する魔力はとんでもないね……!」
「や、やべえな……」
クレス達の目の前には、
その美しさや内に秘める魔力、そして見ただけで名剣、名刀だと分かるそれは、剣士であるクレスには言葉には表せないものだった。
『リリスよ、これでよいか?』
「え……あ、ありがとう。
オリジンにお礼を言ったリリス。アセリア世界で最高位の精霊であるオリジンに友達のようなお礼を言うなどとは本当であればあり得ないのではあるが、それよりも今は
そしてオリジンもリリスにそのような態度を取られていても、気にするような素振りを一切見せなかったのも問題にならなかった一因であろう。
『…………ん……ここは……?』
『
『さすがにちょっと心配したわよ』
『そうですね、あなたは飄々としているのが一番なんですから……』
『そうじゃな。話せなくなるまで無茶するのはお主には似合わんぞ』
『本当だ。それはディムロスの役目であろう』
『…………本当に良かったわ』
リリスも安心したのか座り込んでしまい、それをクレス達は微笑ましそうに見ているのだった。
「これでもう帰ってしまうのか……」
「はい。お兄ちゃんに早くディムロスを届けてあげたいし」
クラースは残念そうな声を出していた。少しだけ話を聞いてはいたのだが、異世界の話をもっと聞きたかったのだ。
アーチェは目に涙を浮かべていた。
「リリス! これで会えなくなっちゃうなんて寂しいよーッ!」
「アーチェ……私も。でも私達、ずっと友達だからね!」
「……ぐすっ。うん!」
クレス、ミント、チェスターともそれぞれお別れの挨拶をしたリリスは、七振りのソーディアンを担ぎ上げて〝異世界渡り君
「皆さん、本当にありがとう! 絶対にこの世界も平和にしてくださいね!」
リリスは光に包まれながら、クレス達の姿が見えなくなるまで手を振り続けるのであった。
「……行ったか」
「ええ、そうですね」
「なあ……一つ聞いてもいいか?」
クラースとクレスが話しているところに、チェスターが聞きたいことがあると言い出す。
「ん? どうしたんだ、チェスター?」
自分から言いだしたのにも関わらず言いづらそうにしていたチェスターであったが、ついに決心をしたのか口を開く。
「あのよ────お前らだったらあの剣を片手で七振りも持って、笑顔で手を振るなんてこと……出来るか?」
そのことに答える者は誰もいなかった。
◇
「ようやく終わったわね!」
リーネの村に戻ってきたリリス達。自分の部屋に剣を置いたリリスはひと仕事を終えたという達成感で胸がいっぱいであった。
ディムロス達も今回に関しては、リリスの活躍を素直に認めていた。
『リリスよ、今回は本当に助かった。我らを直してくれたこと、心より感謝しよう』
『これでルーティに売られずに済むわね……』
『僕も坊っちゃんに馬鹿にされずに済んで良かったです……』
『フィリアに会えるのが楽しみじゃのう』
『俺もイザークとウッドロウに早く会いたいな』
『エドは元気にしてるかね?』
『あんたと違って自由奔放にするタイプじゃないから大丈夫よ』
「ふふっ、みんな良かったわね!」
嬉しそうな顔をするリリス。ようやく
「これでお兄ちゃんとルーティさんへ
『け、結婚祝いだと!?』
『ちょっと待ちなさい! スタンとルーティが結婚するの!?』
リリスの言葉に驚いたディムロスとアトワイトが口を挟む。
「あれ? 言ってなかったっけ? 今度、結婚式をクレスタでやるのよ♪ 今日はそのお祝いでみんながうちに来るから、間に合ってよかったわ!」
『結婚……はともかく、わ、我が祝いの品だと……』
『あら、それは別にいいじゃない? でもあのルーティが結婚できるとはねぇ』
『そうですよ。今はスタンとルーティのことを祝いましょうよ』
結婚祝いのプレゼントとして贈られることにディムロスのプライドはやや傷付いていた。
アトワイトはルーティが結婚するということに感慨深い気持ちになり、シャルティエも素直に祝うべきだとディムロスを嗜める。
『しかしのう……よもや結婚祝いのためにわしらを直すとはのう』
『スタンの妹の行動力は凄いな』
クレメンテとイクティノスはリリスの行動力に驚き、
『エドとフィリアはもう子供とかいるのかな? あの二人なら男の子でも女の子でもきっと可愛いぞ!』
『そうねぇ……あたしに似てくれればそれで大丈夫よ♪』
リリスがディムロス達を直して戻ってきた夜。そこにはスタンとルーティ──だけでなく、新ソーディアンチームの全員が揃っていた。
「それではお兄ちゃんとルーティさんの結婚を祝して! かんぱーーーい!!」
「リリス、みんなも来てくれてありがとな!」
「まぁ結婚っていっても関係は今までとあまり変わらないんだけどね!」
リリスお手製の豪華な料理をスタン、ルーティ、リオン、ウッドロウ、フィリア、エドワード、コングマン、マリー、チェルシーと祖父であるトーマスと妹のリリスで囲んでいた。
リーネの村一番の腕前であるリリスの料理は、インフェリアで味マスターの称号を受け継ぐに相応しいほどであり、料理屋を出せば繁盛間違い無しの味であった。
久しぶりの再会ということもあり、話が途切れることもなく豪華な料理に舌鼓を打つ一同。
そして良きタイミングを見計らって、リリスは自室へと戻っていく。
「みんな、準備はいい?」
『い、いや。やっぱり止めておかないか?』
『ディムロス、またなの? いい加減に腹を括りなさいよ』
『そうですよ。緊張しているのは皆同じなんですから』
『ふぉっふぉっふぉ。なんぞお主は照れておるのか』
『俺は早くウッドロウに会いたいぞ』
『まったくディムロスたんは可愛いんだから〜♪』
『まったくディムロスたんは可愛いんだから〜♪』
『し、
「……あ、あはは。それじゃあ皆を連れて行くわよ?」
緊張して直前になって会いたくないと言い出すディムロスを全員でからかうソーディアン達。
その様子を苦笑いで見ていたリリスであったが、もう大丈夫だと判断しソーディアン達を持ってリビングへと向かう。
すぐに持っていくとバレてしまう可能性もあったので、リリスは部屋の入り口でひょこっと顔だけを出した。
「あの〜、実はお兄ちゃん達に渡したいものがあるんだけど……」
「ん? リリス、どうしたんだ?」
「えっとね、これなんだけど……」
食事をしているテーブルとはまた違うテーブルに布に包まれた物をゆっくりと置く。
置いた時の音で、それが金属で出来たものだと全員が分かった。
全員が注目する中、リリスはソーディアンとスタン達の間に立って話を始める。
「えっと、お兄ちゃん。改めてルーティさんとの結婚おめでとう! 今まで寝ぼすけで大食らいのお兄ちゃんがまさか結婚出来るなんて思っていなかったわ」
「それって完全にスタンのこと馬鹿にしてるわね……」
途中でボソッとルーティがツッコミを入れるが、リリスは構わず話す。
「結構抜けているお兄ちゃんはきっと誰かに騙されるんじゃないかなって思っていたんだけど、ルーティさんみたいな素敵な方と結婚出来て本当に良かったと思っています」
スタンとルーティ以外の全員が「ルーティと結婚したらお金を騙し取られるのでは」と思ったが、それは敢えて口にしない。
「ちょっと寂しいけど……ううん、本当はすごいさみしいよ。でも……私もいつまでもお兄ちゃんと一緒にいるわけには……いかない……もんね……」
「リリス……」
リリスは目に涙を浮かべ、鼻をすすりながら話す。
スタンはそのリリスを見て、今までの生活を思い返していた。
両親がいないエルロン家は、いつもリリスが切り盛りしていた。
小さい頃からしっかりしなきゃいけないと兄であるスタンの面倒を見ていたりしていた。
本当ならもっと甘えたかった。実際に甘えていないわけではない。スタンはいつもリリスを甘やかしてくれていたからだ。
そんな兄が大好きであり、ずっと一緒にいたい、ずっと一緒にいてくれると疑っていなかったのだ。
だからこそあの日、飛行竜に忍び込んでいなくなってしまった日。リリスはもぬけの殻になったスタンの部屋を見て愕然とした。
そのときは自分を裏切った兄に怒ったりもしたが、次に会ったときに素直に謝ってくれた兄を許す気持ちにもなれた。
結果として世界を救うという大偉業を成し遂げたスタンは、リリスにとって自慢の最高の兄だった。
その兄が今度は自分以外の大切な人を見つけ、自分から旅立っていく。
それを彼女自身のわがままで潰すことなんて、絶対に出来ない、絶対にしたくなかった。
「お兄ちゃん、今まで本当にありがとう。大好きなお兄ちゃんに私から結婚のお祝いを贈らせてください」
そう言って、後ろのテーブルに置いてあった布を取る。
そこに置かれていた物を見て、
「ディ……ディムロス……?」
「アトワイト……なの?」
「シャル……!?」
「ク、クレメンテ……!」
「イクティノス!」
「と……父さんと母さん……?」
スタン、ルーティ、リオン、フィリア、そしてエドワードがそれぞれ完璧な状態のソーディアンをじっと見つめていた。
「実はね、数日前にこの子達のコアクリスタルだけを見つけてね。頑張って直したんだ……」
リリスの声は届いていたのだが、それに返事をする者は誰もいなかった。
すぐにそれに気付いたリリスはスタン達へテーブルに来るように促すが、誰も動かない。
『お、おほん! スタン! 早く我を取りに来ぬか!』
「……あ、ああ!」
ディムロスの声でスタンを皮切りにようやく全員が動き出す。
「ディムロス! お前、お前! 本当にディムロスなんだよな!?」
『我がディムロス以外にお前には見えるというのか?』
「あぁ……その言い方は間違いなくディムロスだ! 本当に戻ってきたんだな!」
『まぁな。お前の妹のお陰でもある。あとでちゃんとお礼を言っておくがいい』
スタンとディムロスの横ではルーティとアトワイトも再会を喜んでいた。
「よく戻ってきたわね」
『ええ。コアクリスタルのままだと売られかねないと思ったから、リリスにちゃんと直してもらったのよ』
「あら、別にソーディアンの状態だってちゃんと高値で売ることは出来るわよ♪」
『あなたって人は……はぁ、まぁいいわ。とりあえず今は結婚のお祝いを言っておくわ。……ルーティ、結婚おめでとう』
「ええ、ありがとう。アトワイト……」
皮肉を言っていたルーティだったが、母の形見であるアトワイトを見て嬉しそうな顔をしていた。
「シャル……」
『あ、あはは。口うるさいって言われていたんですけど……戻ってきちゃいました』
「そうか……」
『坊っちゃん、また会えて嬉しいです』
「ああ、僕もだ」
リオンとシャルティエ。知り合いに久しぶりに会ったときのような微妙な距離感ではあるのだが、二人の再会にはこれ以上の言葉はいらなかった。
「クレメンテ、よくご無事で」
『フィリアよ、また会えて良かったぞ』
「ええ、私もです。」
『そういえばエドワードと結婚したそうじゃな』
「は、はい……そうなんです」
『わしもフィリアの綺麗なドレス姿が見たかったのう……』
「もう、クレメンテったらからかわないでください!」
クレメンテとフィリアは最後に別れたときと変わらない自然な再会を果たすことが出来ていた。
そしてそれはウッドロウとイクティノスも同じであった。
『ウッドロウよ、また会えて嬉しいぞ』
「イクティノス……」
『イザークは息災か?』
「ああ、今は王位を引退して悠々自適に暮らしているよ」
『そうか、それならよかった。ところで……』
「ん? どうした?」
『お前はいつ結婚するんだ?』
「…………………………え?」
そして、ソーディアンとはいえ両親と再会をすることが出来たエドワード。
彼は
「父さん……母さん……」
『また会えたな』
『エド、フィリアと結婚したって聞いたわよ?』
「はい、そうです」
『フィリアを幸せに出来てるの? もう子供は出来たの? 今は何の仕事をしているの?』
『お、おい……そんな急に聞くなよ……』
ベルセリオスはエドワードが答える間もなく矢継ぎ早に質問をし、
ハロルド時代から息子大好きなのは変わらないのであろう。
ソーディアンと持ち主達が再会することができ、そのまま再会を祝して二次会が開催されることとなった。
あまりの嬉しさに子供を除く全員が酔い潰れてしまい、次の日は二日酔いで死ぬほどキツい思いをしたのはご愛嬌であろう。
(みんな、再会出来てよかったね!)
こうしてリリスの小さな冒険は幕を閉じるのであった。
『なぁ、ベルセリオス』
『なによ、
『ふと思ったんだが……』
『何よもったいぶって。早く言いなさいよ』
『〝異世界渡り君
『…………あ』
〜後日譚 リリス、頑張ります! Fin〜
【小話:その後】
リリス
「あの……フレン……さん……」
フレン
「リ、リリスさん!? どうしてここに?」
リリス
「どうしてもまたお会いしたくて……来ちゃいました!」
フレン
「そうだったんですか……実は、僕もです。またリリスさんに会いたいって、そう思っていました」
リリス
「え……?」
フレン
「初めて会ったときからあなたのことが忘れられなくて……」
リリス
「フレンさん……私もです」
フレン
「良かったら……この世界で一緒に……い、いやでもリリスさんも自分の世界がありますもんね……」
リリス
「はい……やっぱり自分の世界からいきなりこっちに来るのは難しいです……お兄ちゃんやおじいちゃんもいますし」
フレン
「そ、そうですよね……ごめんなさい、変なことを言ってしまって……」
リリス
「……だから、私が今回みたいにフレンさんに会いに行きます!
フレン
「リリスさん……僕は絶対にあなたのことを大切にします。僕の騎士としての誇りにかけて!」
リリス
「……はい、こちらこそよろしくお願いします」
これで「テイルズ オブ デスティニー〜7人目のソーディアンマスター〜」の投稿はおしまいとなります。
もしかしたらIF形式の短編を何か書くかもしれませんね。
テイルズ オブ デスティニー2をもし書くとしたら、新しい枠で書くことになるんですかね?
プロットは頭の中で色々と出来ているんですけど、書く時間が今は取れなさそうです。
一応説明しておくと、前話の最後にハロルドから言われたセリフは、
「〝異世界渡り君
といった内容ですね。
それを真に受けたリリスがちゃんとベルセリオスにも許可を取って正式に〝異世界渡り君
TOD2に出てくる高い剣の技量を持つ少女で、ノイシュタット闘技場の現チャンピオンを務めるリムル・エルロン。
さて、リリスと誰の子供なんですかね?
それでは今まで本作を楽しんでくださった皆様、本当にありがとうございました!
また次回作でお会いしましょう!
他のお話も良かったら御覧くださいね!