当時の自分はこの映画の話の構成やキャラクターの描写に心を打たれました。今の映画にはあまり見られないマルチエンディングで、中盤終盤のどんでん返しを食らうため興味があれば視聴してみてください。
初投稿なので、誤字脱字や句読点の位置など、指摘があればお願いします。
━━月━━日 火曜日 23:28
所々雲があり星が点々と光る黒い空に、星たちに負けない位の綺麗な月の光が木々を照らしている。その照らされた緑一色の中にぽつんと一つ、学校位の大きさがある白色の建物が建っている。その建物は精神病院でこの辺りではかなり有名な病院でもある。その建物に取り付けられた数ある内の一つの窓に人影が一つ動いていた。
「はぁはぁ...落ち着け、落ち着けっ!」
それは真夜中の観賞室。この部屋は患者が昼間に映画を視聴するために使われる部屋で、映像を映し出す機械が備え付けられている。 基本的に夜は患者たちが就寝する為、観賞室を使用することは出来ない。だがその室内に一人、青年が四つん這いになりながら床に置いた紙に何かを書いていく。
電気を点けていない暗い部屋。外から照らされる月光を頼りに書いている為、書かれている文字はお世辞にも綺麗とは言えない。
月光が射し込む場所とは反対側に位置する扉。その扉をドンドンっと強く叩く音とバタバタと走る複数人の男性の声。扉の先は廊下になっており、廊下とこの部屋を隔てる窓ガラスからは懐中電灯の光と思われる白い光源が部屋の中を照らそうとする。
そんな状況下で、青年は外からの干渉に一切見向きもせず、ただひたすらに紙に文字を記していく。
「っ!」
急に部屋が暗くなるのを感じる。先程までは月光で見えていた紙の文字が徐々に見えなくなり、今では完全に真っ暗になってしまった。
(くそっ!こんな時に!!)
原因は雲が月と重なってしまったため、灯りが途絶えたのだ。しかしそんなことに構ってられないのか、青年は感覚で文字を書いていく。
完璧にとはいかないが上々の出来だと見えないが判断し、書き終えるのと同時に廊下側から甲高い音が鳴り響いた。
これには流石に驚いたのか、青年は音の発生源へと目を向けると、隔てていた窓ガラスの一部が割れており、割れた部分から人の手が伸びてきて鍵を開けようとしているのか、ドアノブを探そうとしているのが、照らされた懐中電灯の光で分かった。
(やばい!でも、机やソファーを置いてるから、まだ!)
数分後、嫌、一分にも満たないであろう先の未来を想像してしまった青年は額から汗を流している。だが気持ちを切り替えたのか、すぐさま書き終えた紙を退かし、横に置いておいたディスクレコーダーを目の前に置き、取り出しボタンを押しトレイを出す。
懐に手を入れ中から数枚のディスクケースを取り出し、無作為に一枚を手に取り乱暴に開ける。
19━━年 ━月━日
ディスクの表面には、日付が書かれたテープが貼り付けられている。青年はそれをぺりっと剥がしトレイに載せレコーダーに入れ再生した。
先程まで外から射し込む月光と廊下からの懐中電灯の光しか灯りが無かった部屋に、目の前の機械が生み出す新たな光が部屋の半分を照らす。黒い布が敷かれた壁には読み込まれた映像が写し出されており、青年はその映像がもたらす様々な色の光を浴び、流されていく光景を見つめている。
その瞳はこれから先絶対に忘れない様に、または、何一つ逃さないとするかのように焼き付けようと凝視している。
「...待ってろ。絶対に、俺がお前らを...!」
そんな状態の青年から少し離れた位置に青年が先程まで書いていた紙が飛ばされており、雲から顔を出してきた月の光が当たる。その光は青年が記した文字をまるで読む解くかのように徐々に照らされていった。
『これを貴方が読んでいると言うことは俺は失敗したのだろう。一つの人生だけでは味わえない程、俺は沢山の経験をした。そんな俺が今からやろうとしていることは、世界中の数十億という人間が無理だと言うだろう。だがもしも、あの時、あの時間の選択を、人間関係や思い出、これから先の待っているであろう未来の幸福を文字通り全て棄てることで、あの瞬間をもう一度やり直せるとしたら...俺は━━━━』
夜の森が醸し出す静けさとは対称的に、人の声や物音がして騒がしい精神病院から雲ひとつ無い綺麗な漆黒の空へと━━━
一匹の蝶が月光に照らされ青く光ながら羽ばたいていった。