平和な日本のごく普通の高校生、陸田行成は携帯で友人とだべっている時にふと空を見上げてそれを見つけた。
「お、流れ星」
『え、まじで?そう言えば、なんか流星群来てんだってさ。願い事でもかけてみたらどうよ?』
「願い事か……」
『おう、なんかねーの?』
「なら、そうだな……もう一度会いたい、とかかな」
『もう一度って……お前、それは……』
「あー違う違う、そういうのじゃない」
友人の吉尾からの躊躇いがちな様子にすぐさま返事を返す。
今、行成の頭に浮かんでいたのは亡き母ではなく、母を亡くしふさぎ込んでいた行成の世話をしてくれた自分の事を流れ星と名乗った一人の少女。
少女と言っても、当時の自分からすればお姉ちゃんだったわけだが。
『んじゃ、会いたいって誰によ?』
「んー、しいて言えば……初恋の相手かな」
『……』
「ん?」
返事が返ってこないことに疑問を抱き、直前の自分の言葉を思い返してふと気づく。
あれ?俺、今めっちゃ恥ずかしいこと言ったんじゃね?と。
『ダハハハハハ!!流れ星への願い事が初恋の相手に会いたいって、随分メルヘンだなおい!』
「う…るっせえ!切るぞ!」
ゲラゲラ笑う友人に思うところはあるが、恥ずかしいことを言った自覚もあるため言い返せず会話を打ち切る。
電話を切ったらもうやる事もないため、布団に入って眠りについた。
「…………」
その会話を聞いていた存在がいたことに気づかぬまま。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
翌日、朝から見知らぬ少女が訪ねてきた……なんてこともなく。
行成はいつも通りの学校生活を経て、帰宅した。
「ただいまー」
家に入り帰宅の挨拶をするが返事はない。
「あれ?親父いないのか?」
「一成さんなら出かけているわよ」
「あー、そうでしたか……って、誰!?」
つぶやいた言葉に覚えのない返事があり、とっさに振り向く。
振り向いた先に居たのは、お月様のような金色の眼の少女。
「……」
「え……おねえ…ちゃん?」
「久しぶりね……ユキちゃん?」
そこに居たのはまさに昨夜に思い描いた、流れ星を名乗る少女だった。
「え、はい。久しぶり……え?」
あまりに予想外の再開に思考がフリーズする行成。
そんな行成に対し、流れ星の少女は言葉を紡ぐ。
「ごめんなさい……私はあなたに謝らなければならない」
「え……?」
「私は願いを叶える流れ星。十年前、あなたのお父さんの願いを叶える奇跡を起こすためにやってきた」
戸惑う行成に対して少女は言葉を続ける。
「だけど、私は十年前奇跡を使う事はなかった。1度目は私に叶えられない願い。2度目には奇跡は必要なかった」
少女は一旦そこで言葉を区切り、意を決したように言葉を続けた。
「そして、3度目……私はあなたに嘘をついた」
その内容は……行成にも心当たりがあった。
「だから、今度こそはと……昨夜のあなたの願いを叶えるために来た」
「おねえちゃん……」
と、そこで少女は弱々しい笑みを浮かべる。
「なんて……ただの私の自己満足。勤めを果たさず消えもせず、姿だけくらまして眠ってただけの
自嘲気味……いや、まぎれもない自嘲で少女は言う。
「あなたにはどんな罵倒をされても仕方ないと思って……」
「え、いや。何でですか?」
「え?」
そんな行成の返事に戸惑いの顔を浮かべる。
「え?いや、だって……あなた、今の私の話を聞いたでしょう?」
「ええ。聞いたうえで言わせてもらいますが……ただの責任感が強くてめっちゃ優しい人じゃないですか。なんで俺が罵倒するんです?」
その言葉を聞いて、呆けたような顔をする少女に行成は言葉を続ける。
「おねえちゃん。俺の
「それは…貴方の…母親の蘇生…でしょう?」
「……いや、正確に」
「……『お空の上のお星様になったおかあさんを連れて来てほしい』……」
「そうです。それです」
「それが…どうしたの?私には何も…」
「いいえ」
行成は戸惑う少女に対して更に言葉を重ねる。
「《半分は》叶ったんです。《あなた》が来てくれたから」
「……うそ……」
「嘘なものですか。その上、4度目の願い……初恋の人との再会もこうして叶えてくれた」
「それでも奇跡を使わなきゃならないなら、もう一つお願いをさせてください」
「もし、おねえちゃんが嫌じゃなければ……俺とずっと一緒にいてください」
行成の告白に対して少女は無言、と言うより頭が追い付いていないといった方が正しいだろうか。
だから、行成は待った。少女が自分の言葉を飲み込み答えを出してくれるのを。
そうして、どれくらい時間が過ぎただろうか。数秒のようにも数時間のようにも感じた沈黙を破り少女は口を開く。
「天見志染……」
「え?」
「私の名前よ……一緒にいてほしいってそういう意味でしょう?なら、いつまでもおねえちゃんじゃかっこうがつかないじゃない」
「おねえちゃ、いや志染さん……!」
顔を上げた少女の表情はどこか晴れやかだった。
「こんな私だけど……これからよろしくね、行成くん」
星野姉妹の存在がなくなってしまったのでアンチ・ヘイトタグつけました。
ただ、念のために言っておくと作者は星野姉妹を嫌いではありません。むしろ、それぞれ皆好きです。
でも、それ以上に最終巻の志染さんは反則だと思う。
続きはありません。