・・・ふと目が覚める。
しかし、そこは目が覚めて何時も見る様な見知った天上ではなかった。
天の遥々を見渡せば、蒼海が如く美しく透き通った彼方まで見渡せる。
しかも潮の香りがしている。
どうやら海の近くにいるようだ。
現代社会においてはあり得ない状況で、童心に帰ったような気持ちになり何処か心が弾むようだった。
だが、そうはいっていられない状況なのだ。
自宅のベットで名たはずなのに、目が覚めたらいつの間にやら青空の下に居るのだから。
こうしてはいられないと周りの状況を確認しようとすると、身体が思うように動かない事に気が付いた。
本当に思う通りに動かないのだ。
寝ていたせいで身体が鈍ったなどと言う次元の話ではなく、身体がまるで達磨にでもなったかのように動いてくれないのだ。
身体を曲げる事は出来るが、それ以外はいう事を聞いてくれない。
なので、尺取虫の様に体を伸ばして縮めてを繰り返して近くにあるであろう水たまり---海を目指して這うのだ。
やっとの思いで海まで這ったというのに、今度は信じたくない姿が映ったのだ。
---これはダメだな。疲れているのだろう。
---そもそも、俺はこんな如何にも殴ってくれみたいな顔をした海棲生物じゃないんだ。
---それじゃあ、これは夢か。二度寝しよ。
そうしてあざらしは二度寝をしようとしたが、どうやらそうは問屋が卸さないようだ。
---ギョエェェエエ!!
まるでペストマスクのような顔で眼球の片方が飛び出しているホラー系の世界に居そうな怪鳥が、あざらしめがけて急降下してきたのだ。
そこに堂々と二度寝しているお肉があったら、普通の肉食動物は襲い掛かるハズだ。
だって、苦労せずに食料を得られるのだから。
私たち人間ですら、自分で料理せずに食事が出てくるとなれば嬉しいハズだ。
もちろん、それを作ってくれるのは信頼している人という前提は付くけどね。
つまり、絶賛アザラシはお肉扱いされているのだ。
しかも明らかにヤバい見た目をした怪物から。
・・・どうやら二度寝をかまそうとしていたあざらしが異変に気が付いたようだ。
---なんだ、俺は二度寝しようとしていたって言うのに...
---あ? なんだあのホラー世界の住人は。
---まあいい、どうせ夢なんだから適当に放っておいても問題ないだろ。
どうやら、怪物に対してはガン無視することに決めたようだ。
一方怪物の方はと言うと急降下した勢いをそのままに、その特徴的な嘴であざらしを貫こうとしている様だ。
このままでは、転移して早々にその生命が散ってしまう事になるだろう。
ソレはつまらないのだ。
私達観測者からすると、特につまらない。
なので、私はあざらしに対して特殊な能力を与える事にしたのだ。
それは『イモータルエネミー化』と『被攻撃時HP回復』という特殊な能力だ。
しかしこれでは私たちの箱庭を滅茶苦茶にしてしまうのは目に見えている。
なので、デバフとして『無力化』という能力も付ける事にした。
これによりあざらしは自力で何かを倒したりする事は出来なくなったけど、絶対に死なないしHPも減る事が無くなったのだ。
もちろん、死にたいようならば気分で死なせてあげる事にするけどね。
おや?
ついにあざらしと怪物が接触したようだ。
あざらしはその体を車に轢かれたゴム鞠のように吹き飛ばされて、痛みやら何やらで悶えているはずだ。
一方で怪物の方はと言うと、貫くはずのモノを貫けなかったことに驚愕をあらわにしていた。
---なんだよ一体...
---たっく、こんな気持ち良いマッサージ初めてだぞ?
---それで、こんなにも気持ちの良いマッサージをしてくれたお相手はあのホラゲ鳥か?
---んだよ。あんな見た目してるけど良い奴じゃん。
---お~い!もっとマッサージしてくれぃ。
・・・なんだこのあざらし。
幾らHPが回復するとは言っても痛みは普通に反映されるし、不壊化/不死化になるとはいえ普通にそれ相応のダメージが入るようになっているのに...
このあざらし、胴体を貫かれるだけの激痛を只のマッサージ扱いかぁ。
・・・選ぶ人間を間違えたわ。
まあいい。
とりあえずそのあざらしは置いて於くとして、怪鳥の方は怒りを露わにしているだろう。
貫けぬものなしという風な自信満々な顔で突っ込んだのだから、そうでないとおかしい筈だ。
---ギョピェ!?
---キョエェェェェェエエエ!?!?
逃げた!?
この怪物、お肉相手に逃げやがった!?
・・・可笑しいわ。こんな予定じゃなかったのに。
まあいいでしょう。
これからまた何か愉悦的な何かが起こるハズだし...
起こるよね?
---あっ!おいコラマテや!
---テメェ!マッサージするなら最後までしろォ!
私やっていけるのかしら...
・・・新人なのにこんなオカシナの担当させられるなんて。
失礼。
少々取り乱してしまいましたが、次のアクシデントが来たようです。
「ふ~わっ!ふ~わっ!
あっ!なんかあそこに殴り易そうな
わ~いっ!ちょっと
どうやら、幼女な修羅が来たみたいですね...
この世界、本当に大丈夫なのかなぁ
その幼女は顔に3つの瞳があって頭に角を生やしたちょっと変わったタイプの修羅みたいだ。
・・・何やら物騒な事を言っているが、気のせいのはずだ。
一方あざらしはと言うと...
不貞寝かましてやがった!
いい加減寝るのを止めろ!
そっちに幼女が行ってるぞ!
そのまま殴り殺されろ!
誰だよあんなマゾをイモータル化した奴!!
・・・イモータル化したの私でしたね。ぴえん。
---んぉ? なんだ幼女か。寝よ。
「んもぅ!私は幼女じゃありませんよ!
そんなこと言うサンドバックには滅っしちゃいますからね!
え~いっ!」
---あ^~。気持ちえんじゃ^~。
可愛いく言っているけど、攻撃力がおかしいわ。
だって、地割れ起きてるもの。
それ喰らったハズなのにあざらしが恍惚とした笑みを浮かべてるわ...
うぁ...
ナニコレ、なんでこんなドマゾ担当させたの...?
・・・そういえば、あの普段キリッとした先輩の顔が引きつっていたような...
まさか!
あの先輩押し付けたな!?
・・・はぁ。
まあいいわ。
どうせ、今日一日見守ったら後は自由にしていいらしいし。
こんなドマゾをずぅぅぅぅっと見ていたら絶対に可笑しくなるわ。
「こんなにも殴ったのに死なないなんて!
きっとこの子はサタンさんからのプレゼントなんですね!✨
ありがとうございます、サタンさん!」
---あ^~。
---ん?なんだ幼女?
---ちょ!なんで俺を持ち上げる!?
---あっ!ちょ!そこはっ!?あひ^~。
・・・もう嫌だ。
お家帰らせて。
「ちょっと待てぃ!」
こんどはなに!?
もうなんなのこの世界!
なんでこの蛸喋ってるの?
なんで下着被ってるの!?
この世界を作った神様ってホント馬鹿じゃないの!?
...もうやだ、お家帰らせてぇ。
「むっ!
貴様は私を幼女扱いするパンツ!」
「いや、これはパンツじゃないからね?
これ模様だから。
そんなことより、そいつは渡してもらおうか!
丁度あざらしカレーを食べたかったんだが、近海にはあざらしが見当たらなくてな」
なんでそんな模様なのよ...
まあいいわ。
全くよくないケド。
「むっ!
私の新しいおもちゃに手を出すなんて、余程その足が要らないみたいですね!
今日こそはその足を全部毟らせてもらいますから!」
「いやじゃあ。
ワシはまだ死にとうない!
という事で、タコ墨ィ」
---なんだこの変態生物。口から墨吐いてんゾ。
---墨吐くとか、コイツパンツ被る為だけに耳削ぎ落としたイカじゃねえの?
---うわぁ。異世界こわっ!...とづまりしとこ。
なんなのこの変態達...
皆がみんな、自覚無しじゃない。
この世界って碌な生物が居ないわね。
まあいいわ。
全くよくないけどねっ!!
それで蛸と幼女が激闘している間は面倒だし、目を塞いで耳を塞いでたから何にもないわ。
結局は蛸がカレーを諦めて幼女の勝ち。
そもそも、天変地異を起こす幼女相手に戦える蛸って何よ...
もうやだぁ...
おうちかえるぅ。
かえらせてよぅ。
「それじゃあ、私と一緒にお家に行きましょうか!
大丈夫ですよ?
ちょっと暑くなったり冷たくなったりしますが、快適な住居です!」
---この幼女何言ってるか分からないけど、俺を持ち抱えて締め付けるとは中々できる幼女だ!
「今幼女って思いましたねっ
そんなサンドバックはこうです!」
---あ^~。内臓が揺れるんじゃ^~。あひ^~。
「まったく。
私の言う事を聞かないからこんなことになるんですよっ」
会話の内容だけを聞いているとあざらしを幼女が軽くシェイクした程度にしか聞こえないけど、実際はあざらしの尻尾を掴んでベシンッベシンッって叩き付けているのに平和的に聞こえて来るのはナンデ?
しかもその度に地震みたいな揺れが発生して大地に亀裂が走っているのに、なんでこんなにも平和的に死か聞こえないのよ...
なんなの、このイカレたテーマパークは。
本当にこの世界作った神様って頭が残念どころか、螺子が数百本は抜けてるわよ。
「んもぅ!
さっきから幼女幼女って言ってる天使っぽい感じの見た目したアナタ!
なんか手を出しちゃ駄目かなぁって思って放置しておきましたが、もう我慢の限界です!
アナタもサンドバックにしてあげます!」
・・・たすけ
「私を幼女扱いするからこうなるんですよ?
みんなも私を幼女扱いしたら、コウナリマスノデオボエテオイクダサイネ?」