オールマイト「マイワイフは女子高生」   作:ワイフマン教授

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今回、私は皆さんに嘘をついてしまったことを告白しなければなりません。



17 職場体験3日目 復活の「A」

 大盛り上がりの宣誓の直後、ミッドナイト先生は体育祭競技の開始を宣言した。

 僕は事前に職員用の要綱を読んだから内容を知っているけれど、第一競技はスタジアムの外周を走る障害物競走だ。障害として用意されているのは、入試の時の各種ロボット、綱渡り、地雷原。つまりまあ原作通りだ。

 ここからは僕も観客気分ではなく、ちゃんと運営としての視点で体育祭を見守らなければいけない。

 早速だけど、この第一競技が僕にとっての本日の山場だ。

 この競技は擦り傷や捻挫などのちょっとした怪我をしやすい内容になっているし、骨折レベルの負傷も十分あり得る。参加者も多いから、そこそこ大量の怪我人が発生する見込みだ。

 

 ミッドナイト先生が競技内容の説明を終えると、設置されたランプが点灯を始め、スタジアムから出るためのゲートが開く。第一競技のスタートだ。

 そしてにわかにゲート周辺で人だかりがごちゃごちゃし始めた。

 

「ああ、あそこで早速誰かが怪我してるんでしょうねぇ…」

「そうさねぇ。こんな始めのところで真面目に小競り合いしてもあんまり意味はないんだけどね」

 

 リカバリーガールはやれやれといった風に言った。

 第一競技のコースの全長は4km。スタジアムの外周と言いつつ、実際はかなり遠くまで走らされる。障害物競走にしては異常に長い距離設定だけど、これは恐らく意図的なものだ。

 足を使うにしろ何かしらの個性を使うにしろ、この距離を全速力で駆け抜けるのはスタミナに恩恵のある個性の持ち主以外には不可能。

 基本的にこの競技は、速さではなく体力を問うものなのだ。

 リカバリーガールが言う通り、この時点での10秒や20秒のロスは大した差にはならない。

 

 もっと言えば、3つの障害物エリアすら実はそんなに意味はなかったりする。障害物以外の単に走るだけの区間が長すぎるから、よほどもたもたしない限りは体力さえあれば追いつけるのだ。

 短い距離で速さだけを問う競技内容だったら、たまたま適した個性を持っている人間が勝つこともあるだろう。しかし、体力勝負となれば日々の積み重ねがものを言う。

 この競技はヒーロー科が勝てるようにできている。

 逆に言うと、この競技で負けるような奴はヒーロー科にふさわしくないし、勝てるだけの肉体強度を備えていた生徒はヒーロー科への編入を考慮されるだけの価値があるとも言える。

 

 ちなみに、八百万さんとかサポート科みたいな生徒達は適したアイテムがあれば体力と無関係にレースをすることができるけど、「妨害可能」というルールがあるために突出することはできなくなっている。

 人が必死になって走っている横をバイクだか乗り物で悠々と走り去ろうものならそれはもう集中攻撃を食らうことだろう。場合によってはアイテムを強奪される可能性すらある。

 

 と、考察しているとモニターの映像がスタジアム外から見たゲートの様子に切り替わった。内部の人込みを抜けて続々と生徒がゲートから出てくるのが見える。その先頭を走るのは赤白の髪の少年、轟君だった。

 そして轟君がいくらか走るとその足元から突然地面が凍りだす。轟君の後続への妨害だ。

 冷気の波が通り過ぎた後、それを傍観していた生徒は凍り付いた足を地面に固定され、それ以外の生徒達も氷の張った地面を歩くのに苦戦し始める。

 ご機嫌なプレゼントマイク先生の実況と、それに付き合わされている解説役のイカ澤先生のローテンションな声を聴きながら、僕はぼんやりと思う。

 今日の気温なら足が凍ってる人たちは霜焼けにならないで済むだろうけど、転ぶ人は多そうだなぁ…

 

 そんな中、数人の生徒達が人波から飛び出す。

 爆発さん太郎、切島君、八百万さん、常闇君…轟君の個性を知っているA組の生徒達だ。B組やその他の一部の生徒達もそれに続く。

 その中に一人、光線を放ちながら空中に飛び立った男子生徒が一人。

 ヒーロー科の生徒ではない。彼は腹部にベルトを巻いていて、そこから光線が出ているようだった。

 

「……うん?」

 

 すごく見覚えのあるプレイスタイルを見てつい声が出た。

 

「何かあったかい?」

「いえ…あのレーザーを出している生徒、強そうな個性ですけどヒーロー科では見覚えがないなと思って」

 

 こちらを見てくるリカバリーガールに適当な言い訳をする。

 というか、あれは、もしや。

 

「ああ、あれは普通科さね。優先度が下のやつだったから見覚えはないだろうけど、あれも一応保健室の要注意個性リストに名前があるやつだよ」

 

 保健室で管理されている、負傷や特殊な症状を誘発し得る個性のリスト。

 ヒーロー科や一部のサポート科の生徒達の情報はだいたい僕も見せてもらっているけれど、プライバシーの観点からそれ以外の優先度の低いものまで開示されているわけではない。

 彼はその優先度の低いほうのリストに名を連ねる者だという。

 

「1年C組 青山優雅。個性は臍からレーザー光線を出すそうだね」

 

 レーザーの最大殺傷能力が高い上に、ベルト型のアイテムをつけてないとたまに不随意で個性が発動する欠点がある。あと、個性を使い過ぎると腹痛になる。そのあたりの事情から普通科ながら要注意リストに名前が載っているのだとリカバリーガールは教えてくれた。

 

「第二競技に進めるのは上位42人…ヒーロー科が全員通っても残り3つの枠があるからね。あの勢いだと青山は第二競技まで残るかもしれないねぇ」

 

 リカバリーガールはのんびりとお茶をすすりながら言う。

 僕は予想だにしない情報を呑み込むのに忙しかった。

 

 ムッシュ青山……!? いないと思ったら普通科に居たのか…!!!

 

 僕たちの注目を集めるその金髪の男は、轟君の作った氷のゾーンを飛び越えて着地すると颯爽と駆け出していった。これで彼も立派なトップ層の一員だ。

 

 そうやってしばしモニターに映る青山を眺めていると、ふいに僕たちの手元のタブレットのアラームが鳴る。その画面には『1年生ステージから搬送中!』と表示されている。

 これは学校が用意したシステムで、搬送されてくる生徒がいた場合事前に知らせてくれるものだ。

 後ろ髪をひかれつつも、青山から保健室に頭を切り替える。

 

「第一号だね」

「所属はサポート科。主訴は捻挫と打撲と書いてありますね。最初のゲートでしょうか」

「だろうねぇ」

 

 そんなことを話しているうちに、壊れたアイテムを抱えた男子生徒が担架に乗せられてやってきた。運び手は雄英の誇る便利ロボットだ

 

『オラ! 怪我人ダゾ!』

「し、失礼します…」

 

 どうやらこの生徒は最初の混雑で転んで捻挫をした上に、踏んだり蹴ったりされたらしい。体にはいくつも足跡がついていた。

 彼は痛みを堪えているのか渋い表情をしていたけれど、僕を見てはっとした顔になった。

 

「あっ…! もしかしてフィーネさんですか?」

「ええ、初めまして」

「初めまして、よろしくお願いします!」

 

 昨日からこういう反応をする生徒は少しずつ増えている。

 僕が赴任してから3日。新しい保健室のヒーローが校内でじわじわ噂になっているようだ。

 

 それから少しすると、大小の怪我をした生徒がぼちぼちとやってくるようになった。

 リカバリーガールが診断、データ入力をし、僕が治癒を施すという体制で捌いていく。

 

 そして作業に集中しているうちにモニターを見ている暇はなくなってしまい、競技のことが頭から離れてきた頃…

 

 突然遠くからドド、と花火のような音が聞こえ、室内にわずかに振動が響いてきた。

 何事かと保健室に居たみんながモニターに目を向ける。

 すると、大きな歓声とともにプレゼントマイクの興奮した声が聞こえてきた。

 

『爆 撃!!!!! 空から地雷を爆発させて妨害ーーー!!!!』

 

 

 1年生モニターにはリプレイと思しき先頭集団のゴール前争いの様子が映っていた。

 そこに居たのは轟君、爆発さん太郎、緑谷少年、わずかに遅れて切島君とB組の塩崎さん。

 スローモーションで走る彼らの前方で、ピッ、と後方の空から降り注いだ一筋の光が地面をなぞった。それからわずかに遅れてその場所に埋めてあった地雷が一斉に炸裂した。

 

『奴は…普通科、C組の青山ーーーー!!』

 

 爆風にあおられて僅かに立ち止まる先頭集団の前に空から青山が舞い降りる。

 そして青山はスタジアムに背を向けてレーザーを乱射…後続への妨害をしつつその勢いでゴールへ向けて飛び始めた。

 その映像を最後に、画面がリアルタイムのものに戻って、一人突出した青山がだんだんと追いついてくる先頭集団から逃げる構図が映された。

 

 あ、青山がトップだと……!? いつの間に……!!?

 普通科に居るってことはヒーロー科を落ちたんだろうけど、ここまでできるのにどうして落ちたんだ…!?

 

「ああ、青山…!」

「青山君っ…!」

 

 驚愕で手を止めた僕をよそに、彼のことを知っていると思しき普通科の生徒達がモニターに釘付けになって彼の名を呼んでいた。

 あまり目をそらしているわけにもいかないから平静を装って作業に戻りつつ、モニターから聞こえてくるプレゼントマイク先生達の実況に耳を傾ける。

 

『いい!!! 普通科が、良い!!!!』

『多くの普通科がヒーロー科に追随してるし、トップ争いに参加している奴までいるな』

『リタイアも想定より少ねえしスゲェぞ!!? 切島の宣誓で奮起したか!?』

『ちょっとやる気出したくらいで出るパワーじゃないだろ。例年より明らかに普通科のレベルが高い』

『ヒーロー科お前ら負けてらんねぇぞ!!?』

 

 先生たちは口々に普通科を称賛している。僕が処置している普通科の生徒もそれを聞いて嬉しそうだった。

 そして競争はラストスパートに入ったのがプレゼントマイク先生の実況で伝わってくる。

 

『C組青山逃げ切れるか!!? A組轟、爆豪、緑谷が追う! 切島とB組塩崎も追いついてきてるぞ!! 先頭集団スタジアムへ!! ……ゴーーーール!!!』

『ゴールの瞬間は団子だった。着順はビデオ判定だな』

 

 少し作業の手が空いてモニターを見ると、上位6名ぶんが空欄のまま7位以降の順位表が埋まっていくのが見えた。

 続いて、画面には先頭集団でゴールした6名が順にアップで映される。

 

 轟君。苦々しい表情だった。

 爆発さん太郎。怒りと同時に驚愕をあらわにしている。

 緑谷少年。継承者として是が非でも1位を獲らなければならないと思っているのだろう。祈るような表情だった。

 切島君。団子とは言うけれど自分が1位より一歩出遅れたことを認識しているのか、悔しそうだ。

 塩崎さん。彼女も厳しい表情をしていた。

 そして青山。

 

 青山はスタジアムに背中から飛び込んできたまま地面に墜落して、仰向けに転がったまま滝のような汗を流してぜいぜいと荒い呼吸をついていた。

 6人…というかゴール者の中で一番苦しそうだったけれど、わずかに首を起こし、スタジアムを見渡してスタジアム内の大型モニターに自分が映っているのを見つけると、表情を無理やり笑みの形にした。

 

『僕が……』

 

『来たよ゙っ☆』

 

 スタジアムが歓声で包まれた。

 

 

 第一競技

 

 1位 緑谷出久

 2位 轟焦凍

 3位 爆轟勝己

 4位 切島鋭児郎

 5位 塩崎茨

 6位 青山優雅

 




「青山不在」タグがありながら、青山が出てきてしまいました。
出さなきゃいけないという使命感を感じたんだ…
青山がこれだけ健闘できた理由とか、普通科が強かった理由はまたいずれ…

ちなみに緑谷少年は原作よりワンフォーオールに馴染んでいますが、長距離走をノーダメージで走り切れるほどには馴染んでいなかったので、要所要所で使っていくスタイルで走っていました。原作のような奇策を使わなくてもトップになれたものの、最初から最後まで轟、爆轟、緑谷の三すくみで互いに妨害し合いながらトップを走っていたため、ぶっちぎり状態にもなれませんでした。(塩崎さんと気合切島君が彼らに追いつけたのもそのため)ただ、最後の一歩はやはりワンフォーオールを持っている彼が強かったため1位は彼のものとなりました。
 
 
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