乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に妹が転生してしまっていた…… 作:リベンジ
私、カタリナ・クラエスは本日めでたくソルシエ国立魔法学園に入学した。
…めでたくない、なーんにもめでたくない!
「はい、もう何回目か数えていませんがこれよりカタリナ・クラエス脳内会議を開催いたします」
いつものように、色々なカタリナが集い現状確認と対策を考える会議が始まった。
「はい、ジオルドは傷が治ったと言ってるのに治ってないの一点張りで婚約を解消してくれません。やはり防波堤として活用されているのでしょう、カー兄にジオルドに気になる女性がいるかしょっちゅう聞いてるのに全く成果がないですし」
「キースはチャラ男とは程遠い優し~い子に育ったわね!カー兄に振り回されてるせいで女の子と絡む暇がなかったのも大きいのかしら!この前の冬のバイクもどき大爆破事件は凄まじかったし!」
「ア、アランとはうまくやれてますよね……去年の夏の演奏会でカー兄の思い付きでボーカルをやった時は緊張したけれど思いのほか上手く歌えたし……追放されたら歌手もいいかしら」
「ニコル様とは正直接点がないわねー。ソフィアと話してる時は基本的にカー兄とずっと話してるしー。たまに話しても覚えてないし―――」
4種類のカタリナがそれぞれ攻略対象との今までの交流を再確認する。兄がすごい思い出に混入しているが妹は特に気にしない。
「ゲームのスタート時点とは随分関係が変わりましたわね。メアリもソフィアもゲーム通りに美しく育ちましたがゲームとは違って今は親友ですし」
「だけれどまだ油断はできないわ。歴史を、運命を変えるのはとても困難な事だもの!カー兄もシュタ〇のトゥルーエンドにたどり着くまでに203時間かかったらしいのよ!些細な事が変わったと思ってもいんがりつ?とやらで修正されちゃうの!気を引き締めていきましょう!」
「「「「「おー!」」」」」
5人のカタリナが声を合わせて叫んだ。
私は自らの不幸をちょっとだけ嘆きながら馬車の外を見ると、もう魔法学園の校舎が見える所まで来ていた。
それを見て、私は顔を数回叩き気合を入れなおす。向かいの席のキースはギョッとした。
来るなら来なさいっての、破滅フラグ!返り討ちにしてやるわ!
で、寮に荷物を置いてアンに留守番を頼んで入学式。
眠くなりそうな格式ばった話を前に欠伸をしそうになったが、両隣のジオルドとメアリが「寝てもいいですが欠伸はダメですよ」的な事を言って口を押えてくれた。二人とも親切ね……ん?何故か二人がにらめっこを始めた。さては二人とも話に飽きてたのかしら。
そうこうしてる内に、現生徒会長のシリウス・デュークさんのお話が終わって、そろそろこの退屈な式も終わりかな~と思っていた。
甘かった。
「では、次は倶楽部紹介に移ります。まずは…農協倶楽部からお願いします」
「はい?」
会長の言葉を聞いて、一瞬私は幻聴を聞いたかと思った。
その直後、壇上にあまりにも見慣れた姿が現れ、プロジェクター?的なモノででっかく彼が持っていたフリップが映し出された。
『農 協 倶 楽 部 の ス テ キ な 活 動 報 告 ☆』
はい?
「農協倶楽部、部長カール・フェボストリアです!魔法や学問だけではなく土を耕し、汗を流す楽しさを君を感じよう!」
「「「農協倶楽部!?」」」
私とジオルドとメアリの叫びがハモった。
それからの入学式はよく覚えていない。
だけれど、じっとしていられなくて私は壇上で言っていた農協倶楽部の活動場所とやらに走っていく。ジオルドもついてきてくれたが、メアリは荷物が多く一度寮に戻ってしまった。
第一校舎の倉庫の裏。そこに着いた私を待ち受けていたのは………目を疑うような光景だった。
きらめきを放つ手入れの行き届いた土、区画整理や間引きの跡が完璧な耕し跡。使い込まれた鍬の宝石のような光沢。
「す、素敵……!私の庭の畑より豪華で手間がかかってるかもだわ……」
感動に打ち震えていると、私に気が付いたカー兄が駆け寄ってきた。
「おっ来た来た、お前もどーせやるんだろ?お前の分の畑も用意しといたぞ」
「ほんと!?これで耕す手間が省けたわ!」
「いや、待ってください。まず農協倶楽部とは何なんですか?」
ハッ!そうだ、それを聞きに来たんだった。
「?ジオジオお前入学式寝てたのか?名前の通り農業、家庭菜園などをやる倶楽部だけど……」
「だから何故そんな倶楽部がこの魔法学園で成り立っているんですか!?」
ジオルドが汗をかきながら質問していく。
「良いだろうが、別に倶楽部活動は魔法関係なくったって」
「いやだからって……」
ジオルドが困惑する中、私はもう一つの疑問を思い出した。
「あっそう!もう一つ聞きたいことがあったの!」
「ん?肥料とかは2週間後に撒くけど」
「そうじゃなくて!なんでカー兄が魔法学園に入ってるの!?」
「……は?」
カー兄は「こいつ何言ってんだ」という目で私を見て来た。な、何よ。
「カタリナ、知らなかったのですか?」
「へ?」
さっぱり分からない私にジオルドはこう言った。
「カールは光の魔法の使い手ですが……」
「えっ」
思わず声が出る。
「お前……今まで知らんかったのか……」
カー兄が本気で驚愕していた。
「待って、カー兄が魔法使った所なんか見た事ないわよ!」
「ちょくちょくあるわ。暗い道の帰り道とか、お前と初めて会った時も使ってたぞ」
「嘘ー…」
私は17年と6年近く一緒に居た兄の真実に愕然とした。
[カールsaid]
そう、妹は気が付いていなかったみたいだが俺の魔力は世にも珍しい光の魔力である。
だが、これがまあ役に立たない。出来る事といえばランタン程度の光を出す事だけ。夜道でしか使い道がない。男の子なのでもっとカッコいい魔法が良かった。火やら風やら。
光の魔力と対話とかもうよく分からないし、隠そうとも思ったがカタリナのことを考えて結局王族経由でバラして魔法学園に入学した。
15歳の誕生日に両親に言ったら、頭が愉快なのか街中に自慢して回って街のみんなが俺の為にパーティしてくれた。俺は泣いて、この世界に来てから初めて酒をバカみたいに飲んだ。結果、翌日めちゃくちゃ頭痛したしクラスメイトの女子は顔を赤くして目をそらした。何故。
「ま、まあカー兄も学園に居るしこんな素晴らしい倶楽部もあるし先行きは最高ね!おにーちゃん好きよ!」
「気色悪い」
俺は妹の媚を切って捨てた。
「酷くない!?」
「また貴方は何を言って……まあ、事情は分かりました。カタリナが入りたいと言うなら僕も……」
「え?ジオジオも入ってくれんの!?いやー、今部員俺含めて4人しかいないから二人が入ってくれたら畑が余らなくて済むし予算も今年は多くもらえるぞ!!」
「「「ウォ―――――ッ!!!これでカカシ畑の数だけ作れるぞ!!!」
「もうカラスにトマトを取られずに済むんだ~~~~!」
「農協倶楽部の2年目は明るいぞ――――ッ!」
俺たちはカタリナも交え手を合わせて円陣を組み皆でガッツポーズをした!
農協倶楽部、バンザーーーーイ!
「いや、やっぱり辞めようかな……」
ジオジオが何か遠くで言った気がしたがみんなの声で聞こえなかった。
それを遠くから見つめる一人の金髪の少女が居たことを、俺はまだ知らない。
2週間後、みんなでカカシを作って肥料をまいていたら今日はカタリナの付き添いにキースが来た。
「ところでよく同級生で3人も集まりましたね。農協倶楽部の部員さん」
「みんな生徒会から追い出されちゃったからな―――。お互いのことは嫌いじゃないんだし、農業を精を出してもらえば癒されるかと思って」
「カールさんには感謝しかないですよ!さすがニコル様の親友」
「私、家に帰ったら家を出て農家に嫁に行くつもりなんです」
「俺は農協組合を経営学を学んでいるので実現したいんですよ!」
すっかり毒された3人を見てキースは苦笑した。
(ああ…だから3人の畑のカカシがニコル様に似ているのか……)
元生徒会メンバーの居場所はここだよ……!
(2023/1/24)嘘だろ、中盤のモノローグが思いっきり抜けてる……!修正しました!