乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に妹が転生してしまっていた……   作:リベンジ

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候補を見つけました。

カタリナ達が魔法学園に入学してから、はや一月。

初の学力テストが終わり、ジオジオは結局生徒会メンバーに入ってしまったのでうちの部には入部してくれなかった。がっくしである。

代わりにキー坊が入ったとは言え新入部員2人はキツい。

という訳でカタリナと二人で勧誘を試みているのだが……

「すいませーん!うちの農作物を一度味見していきませんかー!」

「土の魔力を高めるのにオススメですよー!たぶんー!」

びっくりするぐらい誰も寄ってこなかった。

うちの学校の倶楽部は貴族が嗜む趣味のものが殆どを占めていて、茶道的な奴に料理、ダンス、創作、演劇等と積極的に体を動かさないものばかりだしそもそも倶楽部に入らない生徒もかなり多い。みんな貴族社会に行くし魔法研究とかしたい人は魔法省に就職するし。

メアちゃん達に頼むかも考えたのだが「こういう時にあんまり友達に頼らない方が良いよ、探してから考えよう」とキー坊が提案したのでこうして呼び込みしてるが効果無し。

勧誘の看板を草むらに投げ、そのまま俺もカタリナも草むらに倒れこんだ。

「まーさかここまで食いつかないとは……」

「みんなそんなに農業が嫌いなのかしら………」

くっ、やってると意外と楽しいのに……生前も今世も別に妹に再会するまで農業に興味なんかなかったのだ。それが、段々こいつの畑を手直ししたり自分の分の畑スペースを作ったりしてく内に…………!

「もー、お前のせいだからな……」

「何がよ、ん?」

俺が雑な文句を言っているとカタリナが何かを見つけた声を出した。

その視線の先には。

校舎の二階から、俺たちを見下ろしている人影があった。

あった、というのはカタリナと目が合ったのに気が付いた途端逃げてしまったからだ。

「あっ!や、やっぱり私の悪役顔が怖くて逃げたのかしら」

カタリナが妙に低い自己評価で落ちこんでいる横で、俺はあの顔の少女を思い出していた。

「あの子、確か名前は……シエナ・ネルソンさんだったかな」

「え?新入生の名前覚えてるの?」

「まあ、全員じゃないけどな」

俺は立ち上がり、カタリナに問いかける。

「ちょっと調べてみようぜ」

 

生徒会室は通常、生徒会メンバーしか入室を許されていない。

けれど俺とカタリナは生徒会メンバーとの仲が影響してかガンガン出入りしてもお咎め無しである。コネって本当に便利だ。

俺は部屋の本棚から今年の入学者名簿を引っ張り出した。

「シリウス、ちょっと一年の生徒名簿見てもいい?」

「ああ、かまわないけど……相変わらず忙しそうだね、カール」

「お前ほどじゃねえよ」

その山積みになった4月分の書類を一日でさばくお前より忙しい奴、政治家くらいだぞ。

「カー兄、会長とまで仲良かったの?」

「おう、ニコルのツテで生徒会室にはしょっちゅう来ててな、シリウスとはすっかりダチよ」

去年入学してから他の友達もいるけれど、主につるんでるのはニコルやシリウス、それから農協倶楽部の前生徒会メンバーだ。

特にシリウスとはニコルと三人でよく遊んだ。仕事も学問もいつも一緒で、学園祭なんかは俺のアイディアのせいで仕事が大幅に増えて迷惑かけたなと思っている。いや、テスト一週間前に泣きついた時も結構迷惑だっただろうし、夏休みに……やめよ、気分悪くなる。

生徒名簿をパラパラとめくっていると、さっきの子の顔を発見した。

まだ写真技術はこの国に存在しないので絵なのだが彼女の特徴をとらえていたのですぐにわかった。

絵の下にしっかり『シエナ・ネルソン』という表記もある。

「ほら合ってた、確か同じクラスだよなお前と」

「記憶力いいわねー。でもこの子がどうかしたの?」

「まだわかんねえのかよ、この子勧誘するの」

「え!?」

「この子、前もうちの畑見てた事あってさ。興味あるんじゃないかと思うんだよ」

ふふ、俺の目は誤魔化されないぞ、ハマらせてやる農業に………。

そうニヤリと微笑んでいると、カシャンという食器の音が響いた。

「カタリナ様、カール様。紅茶をどうぞ」

「あ、ありがとう。キャンベルさん」

「ありがとうございます、キャンベルさん」

新しく生徒会に入ったマリア・キャンベルさんが紅茶とお菓子を持ってきてくれたので頂く。どうせシリウスのだろうし。

紅茶はうん、シリウスの味だ。で、お菓子……あ、そこの学校の裏の売店のだ。

「おいし~~~!ねえ、キャンベルさんはお菓子作ってきたりしないの?」

は?突然何言いだすのこいつ?

「あの…何故私がお菓子を作っている事を知っているのですか?」

「あ……えっと……」

「えーと、俺が食堂に行った時偶然見かけたのを喋っちゃったんだ、ごめんなさい」

「え、そんなの聞い」

カタリナの肩を抱き寄せ俺は耳打ちした。

「いいから俺に話合わせろ、急に何言いだしてんだお前は。理由も言いどよむものなのが何なんだ」

「ご、ごめん……メイド長の手作りお菓子が懐かしくなって………」

「あー……まあわからんでもないけど………」

実際あの人のお菓子は美味しい。前世はお菓子を手作りするタイプの人は周囲に居なかったので比較対象がないが全然お金取ってもいいぐらいだ。

「あのね、私高級なお菓子も好きだけど手作りのお菓子もとても好きなの!うちのメイド長さんがね、手作りのお菓子よく作ってくれて!あの味がね、すごいの!」

「落ち着けお前は食い物なら何でも好きだろ。でも、折角だし俺たちも食べてみたいな、キャンベルさんのお菓子」

俺がそう言うとキャンベルさんは、少し顔を下に伏せた後こう言ってくれた。

「それでしたら、今度生徒会の皆さんの分も作ってきますね」

「お、ありがとう」

「ありがとう!!!!!」

カタリナは感激でキャンベルさんの手を掴んでブンブン振り回した。

食い物に関してはやべーなこいつ………。

 

午後の授業が始まるので、生徒会室を出てカタリナと二人で歩く。

「マリアちゃんほんっといい子よね~。生徒会に入ってなきゃ絶対倶楽部に誘ってたわ。さすが主人公」

「主人公って大げさな。じゃ、もう昼休み終わるし俺は2年の教室戻るわ」

「うん、また放課後ね―!」

カタリナと別れ、2年の教室は別の校舎なので渡り廊下を歩いていると前方からあの彼女が歩いてきていた。

シエナ・ネルソン。

彼女は一人で歩いていた。友達とか……余計なお世話だな。

「こんにちは、シエナ・ネルソン様」

俺が立ち止まってお辞儀をすると、シエナさんは首で一回会釈すると無言で通り過ぎていった。

いや、正確には小声で。

「………贔屓されてる癖に」

それだけ言って彼女の姿は校舎内に消えた。

「………………何が?」

俺には彼女の言ってる意味がいまいちよく分からなかった。

贔屓されてる筈なら、妹が破滅の運命とか背負うはずないんだけどな。

 

このころの俺は、今思うと倶楽部の事に躍起になり過ぎて天狗になっていたんだと思う。

まさか、ああなるなんて………。

 

 




こいつ、さてはゲーム主人公の事忘れてるな………?
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