乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に妹が転生してしまっていた…… 作:リベンジ
新学期が始まって2か月ほどたち、農協倶楽部も次のステップに進んだ。
種植えの次と言えば~~~、ひたすら水やり!肥料撒き!生えたら一部を間引き!…地味だな!
まあ地味な事を積み重ねていくのが農業だ。やってこう。
それに、新入部員も入ったんだ。
「入部してくれてありがとうございますね、ネルソンさん」
「いえ、特にお礼を言われることはありません」
俺は隣で肥料袋を運んでいたシエナ・ネルソンさんに改めてお礼を言った。
そう、あの後彼女が頼みまでもなく入部してくれたのだ。正直勧誘の事途中から忘れてたけどまあ結果オーライ!
「いや、本当に助かったんですよ。何かお礼したいぐらい」
「………なら、その、いいでしょうか」
「うん、何でも言ってください!」
「………シエナでいいです、さっきからの敬語もなしで」
「え、でも」
俺が問いかけると、ネルソンさんは黙り込んでしまった。
「わ、わかったシエナちゃん」
「……呼び捨てでいいです、カタリナ様のように」
えええ!?れ、令嬢的に大丈夫なのかなそれ………。
「ちょ、ちょっとそれは……」
「うおーい芋焼けたわよ!」
「おっ芋今行く!」
「あっ………」
おいもの元に俺は走った。
「焼き芋うめえ~~~バターあったらもっとよかった~~~」
「ばたー?」
「牛乳をなんやかんやしたやつ~~~」
「それぇねぇ、わひゃるわ」
「両手で芋掴んで食うな」
「カタリナ様、私のも少しどうぞ!」
「しかし去年お世話になった農家から芋が届くなんてな」
副部長がまだそれなりに余っていた後ろの芋たちを見て感想を漏らす。
「ああ、これは今年はもっと気合い入れていかねばならないな」
「?何の話?」
「んだよ、お前忘れてたの?」
俺はとぼけたカタリナに指を突き付けてもう一度教えた。
「次の連休は年恒例の農協倶楽部、1泊2日の合宿だ!荷物明日までにまとめとけよ!」
「えええ!?なにそれぇ!!」
「プリント渡しただろ、うちの卒業生が居る農家区域を見学させてもらうって」
「き、聞いてなかった………」
「お前その人の話を聞かないくせ直した方が良いぞ」
「毎年恒例って2回目だけどね」
冷静なコメントはスルーして、俺は再びカタリナに向き合いこういった。
「ちょっとじっとしてろ」
「ん?」
「ほい」
俺はポケットに入れていた安物のメガネをそっとカタリナにかけた。
「!?」
隣のキー坊とメアちゃんが凄い驚いた。いやそんなに?
「え?なんでメガネ?」
「変装だよ変装。一応公爵令嬢だろ?それに、それかけてると目つきの鋭さが誤魔化されるぞ」
「おお、なるほど」
「……姉さん、その………メガネ似合うね」
「カタリナ様がいつもの数倍知的かつビューティーに見えますわ!」
「え!そう!ならかけてこ~っと!」
カタリナはくるくるとその場で回りながらテンションを上げていた。
いや、転ぶ……あっホントに転んだ。メガネ……。
【キースside】
「いやー、いい天気!今日は絶好の畑日和ね!皆、頑張りましょう!」
「集合時間ギリギリに到着した馬鹿が言うセリフじゃないの、そういうのは部長の俺でしょ」
大型馬車に乗って、僕たち農協倶楽部は一泊二日の農業体験学習に出発した。
最初は何なんだろうこの部活……と本気で思っていたが、まあ自分の畑を持って適切な管理するのは意外と楽しい。将来領主として父さんの後を継ぐときに役に立つかもしれない。今日の経験も自分なりに生かしたい。
「そうですね、カタリナ」
この目の前の姉さんの隣に座るお馴染みのたんこぶさえいなければ。
「なんでいるんですか、ジオルド様」
「そうですわ!これは農協倶楽部の合宿ですのよ!貴方は生徒会所属でしょう!」
「ハハハ、婚約者が泊りがけなら僕もついていくのが道理でしょう。部長もいいと言ってくれましたしね……」
僕とメアリはカードゲームに夢中になっている部長に厳しい視線を向けた。
が、分かっているのだ。無駄な行為だと。
カタリナの行動を予測するのだけでも難しいのに、更に訳の分からないカールさんの行動を恨むのは無駄だと。ありのままを受け入れるしかないのだと。こきゅう、たのしい。
「おっ、もうすぐたぞ………」
副部長さんが窓の外を見て、嬉しそうな声でそう言う。
その視線の先には、大きく広大な畑がどこまでも広がっていた。
「よーし、がんばるわよ!」
農業体験はつつがなく、しかし楽しく行われた。
みな真剣に、あの授業中はしょっちゅう寝ていて注意しても「勉強は破滅フラグには関係ないし…」と意味が分からない言い訳をする姉さんも大真面目にメモを取って頭をひねっていた。
ここに貴族も平民もなかった。みな平等に農業に対して真剣だった。
「なるほど、つまりここの管理者とコネ作っておけばいいと……」
「後そこは土地がいいですが持ち主の評判が良くないんですね、買い叩きましょう」
「ジオジオ、王家御用達の商人と対談今年中に出来る?」
「交渉してみますね」
………なんか約二人は農家の人とめちゃめちゃ金の話をしているが。
「あ、そうそう。今年はこんな珍種が育ったんですよ」
「へえ、どんな……いやデカッ!このパンプキン中に人入れるだろ!」
「これは出荷に手間がかかりそうですね……」
「うおおお………やっぱ珍種は見るとワクワクが止まらんな……!!!」
……まあ、農業の話もしてるしほっとこ。
「カタリナ様、この花はめしべ同士でもめしべがおしべに代わって種を作れるのです!私もこのような花になれたら………!」
「へー、メアリはこの花が好きなのね」
「………伝わらないんですね、これで……」
「………ええ、伝わらないのです…………」
「えっ何?何二人で通じ合ってるの?」
あっちもまあいいだろう。
今日一日の作業が終わって、皆で街の方の宿屋に移動する事になった。
馬車はもう引き払ってしまったのでくたくたの中、夕日の道を皆で歩きだ。
「あ~疲れたわ~お菓子食べた~い」
「ま、これから行くとこならワンチャンあるかもな」
「え?お菓子屋さんで奢ってくれるの?」
「違う違う」
「さぷらーいず、訪問だよ」
また何か……変な事言い出し始めたんだけど……。この自称兄の事、やっぱり何もわからない………。
「へっくしゅ!」
俺もカール君のことよくわからなくなってきたな……頭が悪いってことは分かるんだけど…………。