乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に妹が転生してしまっていた……   作:リベンジ

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幸せを守ります。

俺は戦っていた。

「ふぅぅぅぅぅ‥‥‥ハーッ!!!」

声を張り上げて、拳を握りしめる。

こいつには関節技も寝技も通用しない。ただ、己の破壊力を信じるのみ。

足に全身全霊の力を込めて、飛び上がる。

「ホワチャ―――――――――――!!!!」

真上めがけて、俺は拳を振り下ろした。

 

発端はマリアちゃん家の畑をカタリナが整備してあげよう!という思い付きだった。父親が失踪してからなんとなく触る気にならなかったらしい。

………妻も息子も娘も置いて行ってしまった身として胸が痛くなった俺は、その思い付きに賛同した。

そこで、またまたサプライズとして。

「なあ、貰った種植えてみない?」

昼の畑で貰ったクソデカカボチャの種を植えてみたのだが………。

「うーん、日差し悪いな」

「部長、光魔法で畑を照らしてみたらいいんじゃない?」

「おっ、ナイスアイデーア」

部員の元書記、ラナのアイデアで俺がしょっぼい光魔法で畑全体を照らしたら……。

 

メキメキと大きく育ち、巨大なカボチャが実った。

「う、嘘でしょ!水ちょっとあげただけでもう実が実って……」

「ワレハ、シンジダイニウマレオチタカボーチャ………ニンゲン、ハイジョシワレワレガテンカヲトル」

「うわーっ喋り始めた――――ッ!」

「グワォ―――――――――——————ッ!」

「襲い掛かってきた――――――っ!」

「ッ!」

部員たちに飛び掛かってきたカボチャを俺は取り押さえた。

「ゴラァ、部員に牙向くならまずは俺を倒してからにしろや……!かかってこいやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

俺はすぐ近くの鍬を拾い上げて、カボチャに向かって振り下ろした!

そして、壮絶な戦いが火蓋が切られた。

 

鍬は強靭なカボチャの皮によりすぐ折れた。人体に特化したプロレス技は全て役に立たない。そもそもなんでカボチャが自我を持ち始めたんだとかいう些細な疑問もあるが、今は気にしてる暇はない。

「ハッ!」

俺は回し蹴りをカボチャの右下めがけて振りぬく。さっきからこの箇所を集中的に狙っている、チリツモのダメージで穴をあける………!

「ソノテハヨメタ!」

「!」

カボチャはバックステップで俺の足を避けると、すぐに足めがけて噛みつこうとしてきた。

俺はすぐに足を膝蹴りの体勢に変え、カボチャの『芽』に膝を食らわせた。

「グッ!」

カボチャは一瞬たじろいだものの、今度は自分の『茎』をムチのようにしならせ飛ばしてきた。

「がぁぁ!」

しなる茎は想像以上に痛く、俺の顔も苦痛に歪む。

「カールさん!」

ここに来てからやっぱり、和解したとは言えいきなり家まで押しかけてしまう事に抵抗があったのか喋らなくて悪いことしたな、謝らなきゃ……と思っていたシエナちゃんが俺の名前を叫ぶ。

「大丈夫!いいからみんなは家に入ってて!」

「カー兄!無茶しないでよ!」

「分かってる、よ!」

「ナ!?」

俺は茎の一本を掴み、カボチャをその場から動けなくする。

「ふふ、俺の友達には炎魔法が使える奴が居るんだ……お前が逃げられないようにこうして抑え込んでおけば、お前なんて灰だぜ………」

「オ、オマエモヤケルノニ、コワクナイノカ!」

「真剣勝負にそんなもの関係ないわ―――――っ!!!」

俺は茎を握りしめたまま、カボチャに向かって走り出す。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

互いを思い切り突き飛ばし、互いがゴロゴロと土煙を上げて転がる。

「や、やるじゃねえか………」

「オマエ、モナ………」

なんか今体当たりされた肋骨が痛いけど長男だから我慢出来る。次男だったら無理だった。

勝てるのか、コイツに。

ふと気持ちがネガティブになったその時。

 

マリアちゃんと、マリアちゃんのお母様が仲良くお菓子作りをしているのが見えた。

 

………この幸せを、壊させてたまるかああああああああああああああああああ!!!!!!!

「ラァ゛ッ!」

「ガッ!」

俺は拳を全力でカボチャにぶつけた。

痛い、だが。

負けると言う出来事になる痛さより、ずっとマシだ。

「コ、コブシ二スゴイチカラガ……!ナンナンダオマエ!!」

「カール・フェボストリアだよ!!!!!」

更に殴る。

殴る。

 

「…………」

「…………!ネルソンさん………」

「お菓子を作ってくださるのだから、お茶ぐらい淹れます。それと………」

 

「おごがましいのですが、マリアさんと呼ばせていただいてもよろしいでしょうか……」

 

殴る。

殴る。

 

「ん~マリアのクッキーはやっぱり最高~~~!」

「カタリナさん、がっついたら喉に詰まるよ?」

「シエナさんの入れたお茶、とても美味しいです!」

「…ありがとう、ございます……」

「……部長、大丈夫かな……」

「大丈夫よ、カー兄が大丈夫っていう時は本当に大丈夫だから!」

「まあ、確かにそういう人だよね……」

「そうね、カール君だもの」

「あの、せっかくですし……皆様の知っているカール様を教えていただけませんか?」

殴る。

叩く。

叩く。

叩く。

 

いつしか拳は開いていて、無意識のうちにプロレスでよくあるビンタのようにカボチャの頬を叩いていた。

そうだった。プロレスは勝つか負けるかで全てが決まる世界じゃない。相手をリスペクトし、互いを引き立てあう素晴らしい総合格闘技だった………!忘れかけていた、この世界に来てから!

 

やがて、カボチャはぐらりと倒れた。

俺も、倒れた。

「お前、とのプロレス、楽しかった、ぜ……」

「プロレス、ノイミワカラナイガワレモダ………」

 

いつしか、俺とカボチャの間に奇妙な友情すら感じていた。

 

その後、マリアちゃんのクッキーを食べながら手当してもらったのでそろそろおいとますることにした。

「マリアちゃん、カボチャンの事よろしくねぇ………!」

カボチャはカボチャンという名前になった。名付け親はカタリナだ。

「サラバ、サラバワガトモ……!」

「は、はい!」

「カボチャン、ご飯はお水だけでいいの?」

「カマワナイゾ、オクサマ」

そして学園にこんなの連れていけないのでマリアちゃん家で飼う事になった。マリアちゃんのお母様もこれで寂しくないだろう。

「それじゃあ、皆さんまた学校で……」

「あっ、そうだわ!」

俺もお別れの挨拶をしようとしたら、カタリナが突然思い付きでこんなことを言ってのけた。

「マリア、今日は貴方も一緒に泊まらない?」

「え、ええええっ!!!」

マリアちゃんは大声を出して驚いた。俺もびっくりして声が出なかった。

ちょ、お前それはいくらなんでも………。と、止めようとしたその時。

「マリア」

マリアのお母さんがマリアちゃんの肩に手を添えた。

「今日は行ってきなさい」

「……うん!」

 

【ラナside】

どうもこんにちは。わたくし農協倶楽部2年の元生徒会書記ラナ・リードイッヒと申します。

今日は倶楽部の合宿に来ていたのですが色々とありまして。

「マリアちゃんも泊まる事になったから」

「「どうしてそうなるのですか」」

おっと冷静な指摘が。

「まあいいじゃないの!みんな一緒の方が楽しいわ」

「そうそう、部屋は……どうしようか?」

「ではカタリナと僕は別の宿に……」

「さ せ ま せ ん わ よ?」

メアリ様がジオルド様を笑顔のままドスを効かせて止める。うーむ、カタリナちゃんは大人気だね。さすが学園でも華の聖女と言われ始めた侯爵令嬢。

そして、その子を妹分だと言っているこちらの包帯だらけの人が、私の大切な人。カール・フェボストリアである。

「部屋は何部屋とってます?」

「?確か、二人部屋で男子で3部屋、女子も3部屋だったと……」

「じゃあ一人入れるじゃありませんか。はい、解決ですし早くチェックインしましょう」

それだけ言ってわたくしは宿に入っていく。

 

………ふふ。

若い男女が大勢でお泊り。更に多角関係。

………滾るッッッ!!!滾りますわッッッ!!!

ああ、多角関係に関係ないモブとして全力でこのかけがえのない関係性をしゃぶりつくしますわッ!!!!!

カール君だけでも相当ヤバヤバでしたのにカタリナちゃんも来たらもう、もう!!!!!

幸せ過ぎて笑いが止まりませんわ―――――――ッ!!!!!!!!絶対にこの幸福を守りますとも、ええ、ええ!!

 

「ん、ラナ様。どうしました?」

「なんでもありませんわ」

わたくしはにこやかに笑みを返しました。

 

その後、沢山の素晴らしい出来事がありましたがこの思い出はプライスレスなので皆様にはお教えしません。

ちなみにカタリナ様は帰宅時に実家に寄ってこっぴどく怒られたそうですわ。わたくしたちも他人事ではありませんわね………。

ちなみに皆さまはカール×副部長ですか?カルシエですか?カルデジでしょうか、それともジオカタ?キーカタ?マリカタ?

 




カール君、新しいペットを手に入れるの巻。
あ、普通にカボチャンは野菜じゃなくて野菜に擬態する魔獣の一種です。種を植えて魔力を送ると発芽して人間を襲います。
なんでそんな種が農家に紛れてたんでしょうね。不思議~~~。

ラナ様の急な第3の壁崩壊はお気になさらず。
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