乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に妹が転生してしまっていた…… 作:リベンジ
ちゃうねん。
……今月は後2本は行けるよう頑張ります……
「カール・フェボストリアです………よろしくお願いします…………」
翌朝、俺は魔法省本部に再び出向き職員の皆様に挨拶をした。
眠いうえに罪悪感で胸がひしひしと痛いが、大切な展示品を壊した責任は取らなくてはならない。
一通り職員の皆様とあいさつを済ませ、昨日の応接間へと向かう。
ノックして返事を待つ。
「いいよ~」
もうお相手のコーニッシュさんは着席していた。俺もおそるおそる向かいのソファーに腰掛ける。
「…それで、私は何をすればよろしいのでしょうか」
「そこまでかしこまらずともいいから。君はすぐそこの魔法学園の生徒でしょ?なら、学園の生徒にしか出来ない調査をしてもらいたいと思ってるんだよね」
コーニッシュさんはウィンクしながらそう言った。
「夜7時、君たちに任務を命じる」
「君【たち】?」
俺は首をかしげて応答した。
「と言う訳で、学園の七不思議を調査することになった~~~!いぇーい、いえい、……帰りたい」
夏休み早々に学園の敷地内で、俺はテンション低めに宣言した。
「自分で呼びつけておいてなんですかその態度は」
珍しく涼しげでラフな格好のジオルドが文句を物申す。なんせ今日の気温は……この世界に温度計はあるのだろうか、いや、ある。そういうことにしておこう、31度。深夜なのにだ。
「夜更かしはお肌の天敵ですわ。くだらない理由っぽいのでカタリナ様と一緒に帰っていいですか?」
メアリはいかにもやる気がなさげである。
「…昨日の朝の二人は、呼んでないのか?」
「いや、誘おうとは思ったんだけどあの二人もそろそろ実家に顔出さないと不味いだろうし。この事は黙って夕方馬車を見送ったけど」
「…………褒めていいのか、悪いのか…………」
ニコルが顔を覆ってなんと。
とりあえず来てくれたアランが質問をする。
「確か町の会館の広報雑誌の取材だったんだよな」
(…という事にしてある。魔法省からの任務なんて言ったら大事になるし。「秘密裏にやれ」っていう命令だもんな)
魔法省には王族も密接に関係していて二人、いや下手すりゃ全員将来的にも縁がある。なので急に魔法省からの依頼と伝えたら余計な心配をかけさせるとニコルやソフィアちゃんと相談したのだ。
で、あれよあれよという間にいつものメンバーガそろった。暇か、暇なのかとちょっと思ったけど来てくれたのはとてもありがたい。だって……その……。
なんて思っていたら、休みの時と同じくラフな格好のマリアちゃんが言ってはいけないことを言ってしまった。
「しかしこうも暗いと……幽霊とか出そうで少し怖いですね」
「「「「「「「あっ」」」」」」」
「え?」
「いやあああああああなんでいう゛の゛がんばっでわずれ゛よう゛どじでだの゛に゛ぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
俺は発狂した。
【カールsaidに限界が来たので〇〇〇said】
「もうむり゛!ぼくここにいう!みんなでいってきて!」
「カール。これはカールの仕事だ。我儘を言うな」
「だっで!」
ニコルに押さえつけられながらカールは地面をごろごろして駄々をこねる。これが精神年齢60歳越えの筈の男か。情けない。涙が出る。
「だっでごの゛ぜがい゛ま゛ぼーどがあ゛る゛じゃん゛!幽霊とか吸血鬼とかいるがもだじい!」
そう。この男、かつて妻とのお化け屋敷デートで失神し、息子が幼稚園児の時に割と気合入ったお化けの仮装をしたときに至っては失禁したほどホラー系が苦手なのである!
「吸血鬼?それはどんな本の登場人物ですか!?」
ソフィアがテンションを上げてカールに詰め寄る。
カールはそのソフィアに縋るように服の袖を掴んで抱き寄せた。
「あんし、ん、する……」
「あ、あの、え、そ、その………ち、近いで、す……」
ソフィアの訴えはまるで効かない。壊れた機械のようにカールはガタガタと震えるだけだ。
「呼んだ本人がこれとは。まあ予想はしてましたが」
「昔から夜遊びとかはするくせに、怖い雰囲気とか恐怖系の物語とかは全部苦手ですわよね、カール様」
「皆さん知ってたんですか………
「まあ、ニコルがそこまで言うなら信じますが……」
「あびゃびゃぶあんじゃまいか‐――――――!?!?」
ぞろぞろと皆で長い列を作って暗い夜道を歩いていく。ジオルドやアランが炎の魔法で道を照らしてくれなければとても歩けたものじゃない。いつもなら照らす係は光魔法の使い方を盛大に間違えているカールなのだがまともに魔法が使える精神状態ではなかった。だろうね。
「コワイ、ココ二イル、ワタシ、ダークネス」
「駄目ですね、完全に目から光が失われています」
「ほ~らカール様、光ですよ~」
マリアがそっと魔法で光を指先に浮かべる。カールはそれを見て、少しだけ笑顔を浮かべた。
「介護人みたいになってるな」
「ド~ナ~ドナ、売られて、ドナドナ~」
「不吉な歌歌わないでよ………」
「冬のスローカーブは~あなたが残したラブレターの後~~」
「不吉じゃない歌ならいいとは言ってないぞ」
「あ、懐かし~その歌、冬休みよく聴いたな~~~」
「?姉さん、僕は聞き覚えないんだけど……」
「!あ、いやいや気のせいね!うん!キースなんか話をして!」
「ええ!?」
突然話を振られたキースは困惑しながら長考に入る。
「ええ、えーと、あの~~…‥……」
「そういえばキース様、先日クラスメイトの女の子にまた告白されていましたよね!わたくし拝見いたしましたわ!」
「なっ!」
おっ、メアリがここぞとばかりにバラしてきた。
「キース、キース!どうしてそんな大事なことをお姉ちゃんに言わないのよ!」
「そうやって絡んでくるからだよ!断ったよ!」
「………それは、おれも、ききたい」
あ、ちょっと正気が戻ってきた。
「いや、あのね……断った、だけだよ。……多分。きっと、違うはずだし………」
「?どういうことですか、キース様?まさか、断ったはずなのにその方のことが頭から離れずこれは恋だと……」
「いや、気になるのはそうなんだけど……というか、さっきから……いや、下手すると数週間前からずっと学園内を歩いていると、何か変な視線を感じて…」
「アブアラブラブラブラブrバウrbsd、おあppj@い@ぽsa@m」
「壊れた!」
「呪いの人形みたいな声出してますわ!」
「何てこと言うのキース!」
「ご、ごめん!」
それからもカールは暴れた。
「キー坊キー坊土でおっぱらって!!!おっぱらって!!!」
「ただの葉っぱだよ!落ち着いて!背中で揺れないで!あっ唾とんだ!やめ、やめろ―ッ!」
「ウギャーッ
「
そんな壊れたカールを介護しながら歩いていたら、いつの間にか森を抜け図書館にたどり着いていた。
ニコルが借りてきた鍵で南京錠を外し、ギギギ、と古めかしい音を立てながらドアを開く。
「お、おお―――!こんなに大きいのね!本だらけ!」
「あたり、前だろ……こっちは何時も行ってる本校舎の方の図書室と違って歴史や魔法の資料本が中心だから……お前の好きな小説は、ないぞ………」
おお、こいつ妹を罵る時は語彙力が戻ってる。なんてシスコンだ。
と、思っていたらメアリがカタリナの腕を掴んで引き寄せていた。
「カタリナ様、ちょっとわたくしここは不気味で怖いです……捕まっててもいいですか?」
「「なっ!」」
「勿論いいわよ!私が守ってあげる!」
「カタリナ様!好き!」
更にメアリが抱き着く。
「私も好きよー、メアリ!」
うーんこの子、老婆心が働くなあ。
「で、ここに何の七不思議がありますの?」
「………本」
「本?」
「ああ、『人を飲み込む呪い』の、本だ」
カールとニコルがコーニッシュさんから聞いた話はこうだ。
『あの図書館には【魔導書】がある』
『魔導書って、あの……』
『そ。君たちも授業で習った
『あの……』
『ん?』
『魔導書の調査が終わったら……給料の代わりにその魔導書を頂いてもよろしいでしょうか?』
『カール……』
(魔導書は使い方を熟知すれば魔力関係なく効果を発動できる優れものだ。
カタリナの運命に対する保険はいくらあってもよい。光魔法は役に立たない俺だが魔導書の魔法なら使える可能性がある)
なんてこと考えてるんだろうね。
君のとりえとか武器はそんなことじゃないのに。
『ま、内容次第かな。しかしそうなると君の雇用期間は伸びるんだけどね?』
『構いませんよ、どうせ光の魔法なんて手に入れた時からここを無視できないとは思ってたんで』
『ほう、なら将来の進路は魔法省で決まりかい?』
『いえ、JA起業です』
『えっ』
まだ言ってたのか…………。
「その本がこの図書館に眠っているという噂が後を絶たなくてな。万が一本当に呪いでもあった場合に炎の魔法で燃やして処理しようかと思ったんだ」
「成程、炎魔法の使い手は俺とジオルドぐらいだしな」
ニコルの大変分かりやすい説明にアランは感服した。
「成程、では二手に分かれましょう。カタリナは勿論僕と。キースはマリア、ソフィアやニコルとカールの介護を。メアリはアランに守ってもらったらどうです?」
「あらあらあらバランスが極端じゃありませんこと????むしろあのザマのカール様をジオルド様が守った方がよろしいのではなくて???」
あーまたこんな時まで喧嘩。この二人、カタリナに対しての圧が滅茶苦茶めんどくさいよ………。
議論(くじ引き)の結果、カタリナ&マリア&キース、メアリ&ジオルド&ニコル、アラン&ソフィア&カールとなった。
「ががががっがんばばばばろろろろ」
「小刻みに震えるなよ背負いずらいだろ……」
そしてアランは、碌に歩けないカールをおんぶして運んでいた。
「それにしても本棚はとても高いですわ……台車や梯子を使わないと上の棚が確認できません」
「確かにな。こりゃ俺でも届かん」
「う、うえは……俺、が見るから……」
「お、おう。頼んだ」
そして捜索は始まった。
ひたすら魔力を感じる本を一冊一冊捜索する。地道過ぎる作業だがそれしか方法はない。
ここら辺はまだ何もなかったので飛ばさせていただく。
で、そんな捜索から一時間ほど経った時。
「あら、これは……」
ソフィアが、本棚の一番下にあった妙に分厚く引き込まれる雰囲気の本を手に取った。
「ん……」
そして。
カールは、その本が放つ『真っ黒な』【魔力】に光の魔法の影響で即気が付いた。
「あっ……!」
「危ない!」
カールがアランの背中から離れ、無我夢中でとっさにソフィアを突き飛ばす。
瞬間。
本が煌めき、辺り一面が光に包まれる。
「どうし…うわっ!」
反対側を見ていたアランも叫ぶ。
その光が空気に溶けたころ。
その場には、呆然と立ち尽くすアラン、へたり込むソフィアと一冊の本。
そして、意識を失って倒れているカールだけが残されていた。
……不安だなあ。わたし、この人となんで結婚したのか分かんなくなってきた………。
【冬のスローカーブ】は「タッ〇」の「背番号の〇いエース」が元ネタ。