乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に妹が転生してしまっていた……   作:リベンジ

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王子と友達になりました。

「ところで俺は攻略対象とか、重要キャラとかそんなんじゃないのか?」

あの夜から数日後、俺は今度は普通にカタリナ邸へと遊びに来ていた。

いきなり庶民が家に来た事にカタリナの両親や使用人たちは渋い顔をしたが、カタリナの『危ないところを助けてもらったの』の一言で全員が納得の表情をしていた。こいつ……‥。

と言う訳で庭でお茶しながら『ゲームの俺』について情報を聞こうと質問したが…。

「うーん、カールって名前は聞いたことないわね。普通にモブなんじゃないかしら?」

「モ、モブ…‥」

いや、だろーなとは思ってたが……。なんかはっきり言われると……。

「ま、まあ乙女ゲームのモブは顔がいい事多いから大丈夫よ!」

「何の慰めにもならねえよ……」

俺がほんのちょびっとだけ落ち込んでいると、「姉さん!」とこの前聞いた声が聞こえた。

「あらキースおはよう。もう朝の勉強は終わったの?」

「おっすキー坊。休日も勉強とは偉いな」

肩で息をしながら俺たちの元に駆け付けたキー坊は、素早くカタリナの隣の空いた席に座り俺を睨む。

「おいおい、お姉ちゃん取られんのがそんなに嫌かよ」

「そんなこと言ってませんが?それにカールさんが急にうちに来た理由を教えてくれませんか?」

キー坊は張り付いた笑顔のまま俺に質問してくる。うーんシスコン。

「何もなんも、お前の姉ちゃんに会いに来たんだが……ついでにお前にも」

「へーそうですかそうですか。先日お世話になった例に付け込んだという訳ですか。あとキー坊はやめてください」

「ちょっとキース、私の友達に付け込んだとかやめてよ。私も会いたかったし、カールはね…」

カタリナの次に放った言葉は。

 

「キースにとってもお兄ちゃんなのよ!」

 

「おいこら、そんな事言ってもわかんねーだ「うああああああああああああああああああああ!!!」」

キースが机に突っ伏して発狂を始めた。

そして発狂が終わると、ゆっくりと生気のない顔で席を立った。え、どした。

「……部屋に戻ってるね…」

「キース、大丈夫?アン呼ぶ?」

「ううん、一人になりたいから………」

そう言ってキースは本邸に戻っていった。

………なんであんなに発狂したんだ?

あれか、お兄ちゃんが増えるとか言われて困惑したのか?

「あ、そうだ」

俺の疑問をよそにカタリナはいい案を思いついたように手をポンと叩いた。

「カー兄ちゃんって呼んでいい?兄ちゃんを呼び捨てって慣れないの」

「……ちゃんは抜きな」

 

トイレをお借りして、庭に戻るとなにやら人が増えていた。

「なんだ?」

ちょっと物陰に隠れて庭のテーブルを見ると…。

カタリナと、金髪の少年が話していた。

…あれはこの前聞いたあいつか。

「ぽへー、これが噂の顔がいい第三王子か…」

俺が率直な感想を漏らすと、ジオルドがこちらに気付いて振り向いた。

「……この屋敷の者でも僕の従者達でもない。誰です」

おおこわ。9歳にして肝が据わってやがる。

だがこちとら51歳+10歳、ビビったら負けだ。

 

先日、俺はジオルドの事を聞かされていた。

「ジオルド王子は超腹黒王子様なの。婚約者のカタリナのことを防波堤としか思ってなくて必要とあれば容赦なく切り捨てる悪魔よ悪魔」

「ほへー」

要はS男なのな。「おもしれー女」とか言うあんな感じの。

「とりあえず一度婚約解消を持ち掛けてみたんだけど全然聞いてくれなくて……おでこの傷は治ったって言ってるのに」

「んー………」

この場合の最適な方法か……………あっいいこと思いついた。

「なら俺がダチになるか!」

「え?」

「腹黒いのは王族の権力争いとかのせいもあんだろ、なら庶民の同性と友達になれば心が安らかになって身分関係なく優しくなる素晴らしい貴族に大変身!するかもしれねーだろ?そしたら婚約者の頼み事も快くOKしてくれるぜ!」

「それいいわね!!!よーし、今度の休みにジオルドが来るからその時に呼ぶわ!」

よっし。年上の威厳にかけてちびっ子には負けねえ!友情を築いてやるぜ!

「名付けて『ジオルド男の友情大作戦』!やったるぜ~~~!」

「お~~~~!」

 

「俺の名前はカール・フェボアウストリア!ジオルド王子、お前とダチになりに来た!」

まず自分の名前を名乗り、目的をストレートに伝える!!そうすれば奴の凍り付いた心も解けるはずだ!!

…なんかポカーンとしてるが関係ない!このまま攻めるぜ!

「そう!ジオルド様、カー兄ちゃんはジオルド様と友達になりたいと言うので呼んだんです!」

「…兄!?」

おい、余計な事を言うな。ジオルドもお付きの人も混乱してんじゃねーか。

…そだ。警戒してるかもしれないしここはサシで話そう。

「…兄の真相が知りたいなら、ちょっと裏で二人っきりで話そうぜ…?お付きの人は連れてくるなよ……」

「……いいでしょう。僕一人で行きます」

「ジオルド様!そんな、危険です!」

お付きの人が止めようとするがジオルドは「大丈夫です。護身用のナイフは携帯してますから」とお付きの人を止め、こちらに歩いてくる。

……待って。え、刺されない?大丈夫か俺、人生2回目のゲームオーバー嫌だぞ!?

 

「刺さないでください」

とりあえずDO☆GE☆ZAから初めて見ることにした。日本の伝家宝刀がこの世界でも通じるかはわからないが…!

「え、いや……頭を上げてください、話を聞きたいのです」

「あ、わかりました。後敬語抜いてもいいですか?」

「……いいですけど切り替え早いですね」

あ、俺のいいところ分かってるねこの子。仲良くなれそう!

「いやー武器とか持ってないし他国のスパイとかでもないからね、俺はジオルド王子、君の友達になろうと思って今日この家に来たんだ」

「……はぁ。一体何が目的なんですか。お金ですか、コネクションですか、悪いですがそういうのは…‥」

「‥‥……ううっ、こんな、こんな子供がスレちゃって……この年で人付き合いのリスクリターン計算なんてしなくても…‥…!」

「貴方も僕とそう歳は変わらないでしょう!?」

はっ、つい爺根性で泣いてしまった。

「とにかくそういうのじゃないから。カタリナから話聞いて面白そうな奴だなって思って会いに来たんだよ」

「………僕が、面白い奴……!?」

ジオルドの顔色が急に変わった。え、なんか不味い事言ったかな……。

「そ、それはともかく僕の婚約者とどういう関係なんですか君は!」

「ん?あー、妹、分みたいな?」

まあ今世では他人だが前世では兄妹なのでこれが適切だろう。

「まあカタリナなんかいいじゃないの。それよりさ、親睦深めたいから一緒に遊ばね?」

「良くないですよ!大体君は格好からして平民ですよね!?何故貴族のカタリナと…!」

「貴族と平民が友達になっちゃいけないルールなんてこの国になくない?」

「そ、それはそうですけど‥‥」

「だからさ、平民と俺と王子様のお前も友達になれるって俺思ってんだよ、それに」

「………それに?」

「王子様と友達になれたら、世界がもっと面白くなる気がしたんだ」

「世界が、‥‥面白く…」

「そ。自分から何もしないとこの世界は狭くてつまんないままでしょ?だから俺は、自分から見える世界を面白くしたいんだよ、その為に出来ることは何かなって思ったら………こっそり町に降りて遊びに出かける、畑作りが趣味のガサツでヘンテコな面白いお嬢様を婚約者にしてる王子様なんて‥‥すっごく仲良くなったら面白いでしょ!あ、これカタリナの悪口じゃないよ、褒めてんだよ?」

いかんいかん、防波堤の婚約者とは言えうっかり侮辱罪で切られても困る。死ぬ。

でも全部これは本音だ。

Sな男友達は前世にいなかったんだ。どんなものか拝見したいじゃない!

 

「‥‥っく、あははは………!」

「ん?」

「はははははは‥‥………さすがカタリナの友達、いや兄貴分ですね‥‥…」

「え、なにそれ俺とアイツが似てるって事……?」

それはなんかやだな…俺アイツよりずっと頭いいし……。

「……わかりました、友達になりましょう、カール君」

「カールでいいよ、ジオジオ」

「ジ、ジオジオ!?」

「うん、よろしく。あ、嫌なら変えるけど」

「……い、いえ別に…‥」

「ならよし!で、今日は何する!キー坊も呼んで男三人でなんかするか!?」

「え、ちょ……」

俺はジオジオの手を引っ張り、庭の方へと戻っていった。

 

「おーいジオジオ王子!また遊ぼうぜ!」

「はい、それでは」

夕方、一通り遊んだジオジオ一行を乗せた馬車がクラエス邸の正門を出ていく所を、仕事の父上を除くクラエス一家とついでに俺が見送った。

馬車が見えなくなったところで、俺は深く息を吐いた。

…仲良くなれたんかなーあれで。まあいいとするか。

そう妥協してると、カタリナがキラキラした瞳を俺に向けていた。

「でも、ほんとにジオルドと仲良くなるなんて凄いわ!カー兄ちゃんってやる時はやるのね!」

「最後のは余計だ。というか後半は殆どお前の畑作業の手伝いだったんだが…?アサガオ枯らしてたくせに畑なんてほんとに大丈夫か?」

「小学校の時の話をぶり返さないでよ!というかそれが通用するなら私が貸してた1300円返してよ」

「…この世界日本円じゃねえのに無理言うなよ……」

というかそんなのあったっけ、なにせ30数年前だからな……お魔き奢ったんだから許してくれ…。

 

「母様……姉さんとカールさんが聞き取れない言語で会話してるんですけど……」

「まさかカタリナにあんな特技があったとはね…というかあの子は誰なの?随分礼儀正しく挨拶したり礼儀作法もきちんとしてたけど…どこの貴族の子なの?」

…そういや俺が平民だってカタリナの両親に言い忘れてたな。まあいいか次来た時で。

 

[ジオルドside]

 

今日は驚きの連続だった。

カタリナの兄貴分(自称)がいきなり友達になろう!と言い出した時の混乱はある意味1年前のカタリナの傷事件以来かもしれない。

おまけに面白い奴、とまで言われてしまった。カタリナが一体外部の人間に僕の事をどんな風に語ってるのかは今後2人の時にじっくり問い詰めなくては。

しかし今日は一通り遊んだけれど、運動の方が得意、畑仕事の手際は良い、だが頭は回らないわけではない。

カタリナの両親の前では急に礼儀正しくなったので聞いたら「大人には顔を使い分けるのは貴族でも常識だろ?」と返され「でもジオジオは友達だからな、公のパーティーとかあったらまあ敬語使うけどそれ以外は緩くいくぞ」とも言われた。

多少の違いはあれど、彼を見てるとどうにもカタリナがダブる。

まあ、カタリナよりも物事をしっかり考え世渡りが巧そうな印象はあるが……。

「世界を、面白く…か」

つまらない世界は、自分から踏み出して変える。

どうやら世界は、自分から変えていこうとすればいくらでも変えられる。彼はそんな簡単な事実を教えてくれたのだ。

カール・フェボアウストリア。

僕の初めての平民の友達。

どうやら、今まで以上に退屈しない毎日がやってきそうだ。

 




カールとカタリナは二人だけで話す時は日本語を使ってます。(会話の内容を聞かれたら変に思われるとカールからの提案)

ちなみに読者の皆さんはご存知だと思いますが原作からしてカタリナにプロレス技をかける兄は存在しますからね(性格はオリジナルだけど)
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