乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に妹が転生してしまっていた……   作:リベンジ

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チート能力を手に入れてしまった…?

「ハハハハハハ!!!もっと燃えろ!!!!!塵も残すな!!!!!」

「あー!鼻水かむのに最適な紙屑だなぁ!!!!ガハハ!!!」

「あーっ水浸しですねえ!!!もう読めないねえ!!!!!!!」

九十九神、という概念が日本にはある。

長年使われてきたものには魂が宿り、やがて神へと至るという話だ。

まあ実際、そういうことはきちんとあるとは確認されてないわけだが。

しかもここは日本じゃないし宗教はキリスト教のパロディじみた物しかない。スパゲティモンスター教でもないかと思ったが無駄な試みだった。

だが、この考えに今は縋るしかない。

この魔導書は人の欲望、願いを正確に映し出すという単純な命令では到底できない高度な魔法を発動している。本の製作者はとうに亡くなっているか、そうでなくてもこの本にずっと直接魔法をかけ続けているわけではないと思う。そんな事をやり続けられる魔力量を持つものは永久機関と変わりないからだ。

なら、この本に仕込まれた魔法自体に何らかの思考ルーチン、疑似頭脳的な物が備わっているのではないか?そうでなければ、あれほど適格に対象者の欲望を出現させられない。

勿論これは机上の空論だし、前提が一つでも間違っていれば無意味なアウトの博打だ。

本の思考に『自分を攻撃し続ける不快な存在』を取り込ませて、自分から俺を追い出すように仕向ける……!成功しても魔法で俺を消滅させようなんてルートだったら待ってるのは死一択!!!

頼む!目論見よ、当たってくれ!!!!!

 

体感数時間後。

「ハァ……ハァ……駄目だ……やっぱり的外れだったかぁ………?」

手ごたえ、永遠の0。てんでない。

時間にして何分経ったかは分からないが、精神力はガリガリに削られていた。

「あーもう、こんな時魔法でなんとかなったらなぁ…」

俺はぼんやり両手を光らせた。こんな明かり一つしか出せないのだから、この状況はどうにも………。

「ん?」

ぐにゃあ。

えっ。

なんか、空間が…歪む、みたいな音が………。あ、歪んでる!なんか景色が崩れていってる!えっ、いや、えっ、マジ?

俺が訳も分からずキョロキョロしていると、後ろから当然肩を叩かれた。

「ウヒィッ!?」

「振り向くな!」

「はい!」

あっ、思わず元気よく返事を。これでなんか振り向けない雰囲気に…………。

「全く馬鹿だね、光魔法は闇魔法完全特攻よ。最初っから光魔法発動してればすぐ出れたのに…いや、その小さな魔力じゃ無理か。外でも光魔法が使われたんだね」

「…………そうなんだ」

いや、闇魔法?何それ、知らん、怖…………。でもこんな魔導書だし、それぐらいぶっそうな魔法でもおかしくはないか。

「ま、無理もないね、学校で光魔法はともかく闇魔法なんて学ばないし。違法だから。しかもこの本、光魔法の使い手でも魔法を自発的に発動しないとうっかり取り込まれるタイプの複合魔法だ。普通なら光魔法はそもそも闇魔法を完全に防御するからね。」

「いや、あの、説明は分かったけど、その」

 

「君は―――――」

 

振り向いたところには誰もいなかった。

 

瞬間。視界が黒く染めあがり眠るように意識が途絶えていく。

 

「私を二人とも置いて行ったんだから、ちゃんと幸せになったね。こんな本の中じゃなくて、皆と一緒に」

 

何を言ってるのか聞き取れなかったが。とてもやさしい声だった。

 

 

【マリアside】

「カタリナ様!起きてくださいカタリナ様!」

「むにゃ、マリア~」

「えっ……!」

「‥‥もっと食べられるわ~」

「…ふふっ、カタリナ様らしい寝言」

「そこ!二人の世界に入らないで!今一人危険な状況なんだよ!?」

「は!」

い、いけない。カタリナ様の寝顔が美しすぎて現実逃避をしてしまった。

今、カール様がジオルド様の手にある謎の本の中に閉じ込められ皆動揺しているのだ。

「とりあえずカタリナにはまだ寝ていてもらいましょう。むやみに動揺させたくありません」

「そうだね、姉さんは素晴らしい人だけどこういう時には役に立たないから」

カタリナ様の安らかな美しい顔、音カール様の対処に議論を交わす皆さまを見て、私は恐怖が徐々に消えていたのだ。一人だけだったら恐怖でその場から動けないまま泣き叫んでしまいそうだったから。

それでもソフィア様は責任を感じてニコル様のそばでうずくまっているし、ニコル様は放心状態。メアリ様も険しい顔でぽつりとこう言った。

「…とにかく魔法省に連絡して救助に来てもらいましょう」

「だったら俺が行くぜ!この中なら俺とジオルドが一番足が速い!ジオルド達は何か方法がないか考えていてくれ!」

そう叫んでアラン様は図書館を飛び出していった。

「考えていてくれ……そういわれましても、僕らにどうにかできるような事件ではないですよ、本に人が取り込まれるなんて……はぁ……」

ジオルド様が本を掲げて、焦燥のため息をつく。

その時、私の瞳が本をはっきりと捉え。ゾクッ、と嫌な感覚が全身を走った。まるで本能が拒否する原始的な嫌悪感。例えるなら、暗い【闇】のような―――。

「あ、あの…」

おそるおそる手を挙げて、私はこう発言した。

「この魔導書から何かとても嫌な感じがします。例えるなら……闇のような」

「闇……まさか、闇魔法か!?」

ジオルド様が声をあげて、私含めた皆様が驚きで少しひるみました。

「…なんですの、その闇魔法って」

「……禁忌とされている特別な属性の魔法さ。今の我が国では禁術とされていて王族以外には存在すら秘匿させられているんだ。…強く危険な魔法だらけだけど、光の魔法は唯一闇魔法に有効とされているんだ。マリアさんが感知できたのはそれが理由かもしれない」

「でも、カールだって光魔法使いのはずだぞ…!」

「カールの魔力はカタリナと同レベルしかない。おそらく意識的に発動してる状態じゃない限りは一般人と耐性が変わらなかったのだろう……」

「…なら、この本に光魔法をかければ術が解ける可能性があるということでしょうか!?」

「…やってみる価値はあるね、頼んでもかまわないかい?」

「勿論です!頼まれなくたって絶対に助けて見せます!」

 

私は机に置かれた本に向かって魔力を浴びせるイメージをし、光魔法を発動させる。

「…んん!!」

抵抗されているような感覚がある。気を抜いたら吹き飛ばされそう。

「……くっ……!」

「んにゃ……。……ふわ……よく寝、ってマリア、どうしたの?」

「カタリナ様!?」

隣の席でカタリナ様が起きて私に声をかけてきた。それで私が動揺し、魔力の流れが乱れた。

「きゃあ!」

瞬間、私の体は後ろに吹き飛ばされた。

「!マリア!」

 

と、思ったのだ。

でも。

 

私の体は、カタリナ様に抱き留められていた。背中と足を両手で支えられた、絵本で読んだことのあるお姫様抱っこのような形で。

「大丈夫!?マリア!」

「は、は、はい!だ、だだだじょうぶ、です!」

「え、でも顔真っ赤じゃない!」

「だ、大丈夫ですよお!」

私は体制を立て直し、再び

一瞬、視界に入ったメアリ様が死んだ目でこちらを見つめているような気もしたが、あのメアリ様に限ってそんなことはないだろう。

 

「ズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイズルイ」

「メアリ、さすがに今は抑えて」

「気持ちはわかりますが、僕らの友の命がかかってるんです」

 

私は再び光魔法を本に向かって放った。

「んんん……!」

「え?なにこれ?よ、よくわからないけどマリア、頑張って!」

「はい!」

私は元気よく返事を返し、最大の力を振り絞った!

 

そして、本が。

 

爆発した。

 

といっても小さな爆発であって本を置いていたテーブルが崩れ、私たちも少し黒焦げになる程度だった。

「…ペッペッ!煙!?なにこれ!出れたんじゃないの!?」

煙の中心から、聞き覚えのある声がする。

「「カール(様)!!」」

「へ、どわっ!」

アスカルト兄妹の二人がカール様に真っ先に抱き着きにいった。

「…良かった………!」

私も体の力ががくり、と抜け目から涙が落ちた。

「ゲホッ、ゲホッ、なんで爆発!?なんなの―――!?」

「…キース様が風魔法でニコル様達や私を守ってくれなかったら、今頃服も焦げてましたわね」

「……僕は焦げたんだけど、どうしてかな?キース?」

「やだなあジオルド様、姉さんやマリアさんたちも守ろうとしたから風が届かなかっただけですよ。さすがに二人には届きませんでしたし」

 

【カールside】

と、まあ寮の自室で報告書に昨夜のことを大体書き終えた。

あの後アランが魔法省の人を呼んで、学園の生徒に事がばれないように手配してくれ、俺は魔法の後遺症がないか身体検査され、何故か俺を見る目が実験動物なのか性的対象なのかどっちかわからない目をした人とかもいたがどうにか終わり、寝て起きてこうして作業してるわけだ。

(…さすがに本に魅せられた内容はそのまま、ってわけにはいかないけど)

そこらへんは適当にでっちあげた。どうせ確認するすべはないのだ。

「欲望を見せる本」と話した時の皆の顔はどうにも複雑だったけでも。まあ人間、こっそりかなえたい願いの一つや二つあるのだろう。

「…マリアちゃんには個別でお礼しに行こう」

いや、本当に助かった。妻一筋の俺じゃなかったら確実に惚れていた。

というか皆もそんなそぶりがないのがおかしいまである。周りの女子が美麗だから目が肥えてんのか?

あんな綺麗な女の子他にいない。きっと欲望も綺麗な気すらする。

あ、そう。欲望の魔導書の事。

俺は机の引き出しを眺め、ぼそりとこう漏らす。

「…まだ手元にあるんだよなあ……」

実は図書館から出る時、皆本は爆発で燃えてしまったと思い込んでたし俺もそうだった。

だが、俺は見逃さなかった。

……焦げた本が、床をはいずって本棚に戻ろうとしていることに。

こいつ、人にこんな迷惑かけといて逃げようとしてやがる……。

怒るどころか呆れた俺は、もうほっとこうとしたのだが……。

(……これ、使えるのでは?破滅回避に)

人を本に閉じ込めて幻覚を見せるとか強すぎる。例えば、カタリナが何かの間違いで殺されそうになったらこれを使えばいいのだ。光魔法の使い手じゃなければ克服はできない。チートじゃんこんなん。

(まあ、使わないに越したことはない危険な物だけど……念には念を、っと)

 

というわけで魔法省にバレて押収されないように一旦拾った後着替えて身体検査のため魔法省に行く際に自室に隠しておいたのだ。勿論逃げないように鍵付きの引き出しに。

「ま、これも何かの縁だ。よろしくな…………お前覚悟しとけよマジで」

調教して、俺の言う事を聞くようにしてやる!吸い込まれそうになったらまた光魔法を発動すればいい。

俺ははさみとライターをもって脅すような独り言をつぶやいた。

すると、引き出しがガタガタと震える。

……やっぱ幻覚とはいえ、何回も燃やされたり鼻水かまれたの効いてたんだな。




カール

・こうげき
・ひかりまほう
・のうぎょう
・にげる


・まどうしょ

がくわわった!
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