乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に妹が転生してしまっていた……   作:リベンジ

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弟子が出来ました。

「本日はお招きありがとうございます。私のような平民がカタリナ・クラエス様及びキース・クラエス様とご関係を持つことをお許しいただき誠に感謝しております、胸を借りる所存でこの屋敷にお邪魔させていただきます」

「あらあらいらっしゃいカール君。お茶菓子ここに出しておくわね」

「ありがとうございます、奥方様」

俺はカタリナのお母様、ミリディアナ様に挨拶を済まし、2人の元へ向かった。

今日の休日も、クラエス邸に俺は着て妹やキー坊となんやかんやしに来たのだ。

これで来るのは4回目だが、最初は庶民と聞いて警戒した様もすっかり歓迎モードになってくれたようだ。

 

「ねえキース、あのさわやか笑顔と敬語を使う人は一体誰???」

「カールさんだよ……あの人、外面の使い分けが凄いよね……すっかり母さん気に行っちゃったみたい……」

 

「おっす二人とも。夏とはいえ最近熱いよなー、夜毎日上半身裸で寝てるわ、わはは」

「……人ってここまで態度変えれるものなのね……お母様に見せてやりたいわ!」

「姉さん、カールさんはお母様の凝った肩をほぐしたり姉さんの行動を逐一報告したりしてるから多分好感度を落とさせるのは難しいと思うよ」

「そうなの!?外堀を埋められてる!?」

「はは、俺を舐めるな、お前がお世話になってる人に親切にするのは当然だろ、いつも迷惑かけてすみません、みたいな」

数十年のサラリーマン生活と姑関連の世話スキルがめちゃくちゃ役に立った。まあ、カタリナのお母様は常に苦労が絶えなそうな顔をしてたから優しくしてあげたくなるんだよね……2割ぐらい実質俺の母親みたいなもんだし。

うちの今のかーちゃんは苦労とは無縁のノー天気人間だし………。

「まあいいわ、とりあえず雑草抜くから畑に来てくれる?」

「おう、お客様にやらせることかそれ?」

とりあえず二人についていく。この家の庭は広くてまだ覚えきれてないからな。

 

畑にやってくると先客がいた。

茶色くふわふわした髪、パッチリした瞳、どこをどう見ても美少女。

素材の良さそうなドレスも似合っているが、それを隠すデカいエプロンと頭のほっかむりがどう足掻いてもミスマッチである。

「あの子、お前の友達?」

「あ、そっか説明してなかったわね。彼女は……」

「カタリナ様誰ですのその殿方は!?!?」

一瞬で彼女はカタリナの胸元に飛び込んできた。

「わっ!メアリ!」

「はっ、すみません!カタリナ様が汚れてしまいますわ!」.

…何というか、やっぱりこいつの友達って個性豊かだよなあ。

 

「彼女はメアリ・ハント。私の農園友達よ」

「そんなそっけない!私とカタリナ様は大親友じゃないですか!」

こ、濃い。

まだ性格の予想が簡単だったジオジオとかキー坊とかと違って俺が全然知らないタイプの子だ。

とにかく情報を知ろうとカタリナにこそっと耳打ちする。

「この子も攻略キャラだったりする?ほら、実は男の子とかゲームに百合要素もあるとか…」

「そんなわけないじゃない、彼女はカタリナ関係ないルートのライバル令嬢キャラなの、でも誇り高くて、なんでも出来て可愛くて凄い子なのよ?」

「あ、ライバルキャラその2ってこの子の事か」

なるほど、つまり攻略対象ではないっぽいし‥そんな警戒する事もないか。

となると普通にカタリナの友達として仲良くすればいい筈。女子だし初対面で気安くするのもアレだからここは平民モードで接してみることにするか?

「初めましてメアリ・ハント様。私、カール・フェボアウストリアと申します。カタリナ様とは身分の差こそあれど親しくさせていただいてます、以後よろしくお願いします」

と、俺は膝まづいて深く頭を下げた。

「………よろしくお願いします」

そっぽ向いたまま棒読みの挨拶を返された。

……娘の反抗期思い出しちゃうぜ。

 

「なあキー坊、さっきからメアリ様が目すら合わせてくれないんだが俺何かした?」

「自分の胸に手を当てて考えてみたらどうですか?」

「キー坊、人間のハートは心臓だけど考える部分は頭にあるんだぜ」

「誰が医学書の解答を求めましたか、まず聞く前に自分で考えてみてくださいって事ですよ」

厳しい。

雑草取りをしながらキースと男同士の付き合いをしようとしてるがキー坊は俺にもやたら厳しい気がする。知り会ってそろそろ一か月近く経つんだしもう少し心開いてくれんかな……親戚の子に接するオジサンってこんな気持ちだったのかしら。

落ち込みながらトマトの添え木の調整をしているカタリナに相談することにした。

「あの年頃の女の子なんてさ、娘以外に知らないからさ……あんま期待してないけど、何かアイデアない?」

「ちょっとムカっとしたけどそうね………やっぱりメアリが言われて嬉しい言葉と言ったらアレね!『緑の手』!」

「……………は?」

「いやいやふざけてないの!これ、原作のメアリが婚約者のアランに言われて立派な淑女へと変わる切欠になった言葉なの!私はそのエピソード忘れてうっかりメアリに『緑の手』って言ってそれがきっかけで仲良くなったんだから!」

「どんなうっかりだよ、確信犯の方がまだ信じられるわ」

「ほんとにたまたまよ。後でアランも言って仲良くなれたらしいし、この魔法の言葉でメアリはイチコロよ!」

「いやいや、さすがに3回目は響かないでしょ」

「言うじゃない、仏の顔も三度はokとか二度あったら三度あるとか!」

「うろ覚えの言葉引用されてもな…」

ため息を吐きながら、他の方向を向くと。

 

水やり中のメアリ・ハントが人殺しのような目でこちらを見ていた。

 

…怖っ!!!

思わず目を見開くと、メアリがこちらに向かって笑顔で歩いてきた。…これは怒ってる。理由はわからないけど。オーラがなんかもう怖い。

「カール様、でしたね。少々カタリナ様と距離が近すぎるのではなくて?」

「そ、そう?」

肩を震わせているとカタリナがフォローに入る。

「メアリ、心配しなくてもいいのよ。カー兄ちゃんは口がキツいけど良い所もあるんだから」

「兄様!?」

メアリが愕然として膝から崩れ落ちた。え、待ってここ畑!しかも今自分で水やりした濡れてる所!

「お、お兄様とは知らず大変ご失礼を…!」

「いいから立とう!ドレス汚れてるから!!ね!!!」

 

[メアリside]

「メアリ、私の服サイズ合ってる?」

「…………もう死んでもいいです」

「そんなに嫌だった!?」

「逆です!!!ありがとうございます!!!」

かっかかかかかカタリナ様のご洋服に私が身を包まれている‥‥‥‥こんな幸せなことがあっていいのか。

カタリナ様に兄と呼ばれるあのアホ、もといカール様に少しは感謝すべきなのかもしれない。

大浴場から出て、カタリナ様とアンと一緒にカタリナ様の部屋に向かう事にした。邪魔者(殿方)はこれで来ない、後はアンを部屋の前で待機させればカタリナ様と2人きり………。

 

「どぉらっしゃああああああああああああああ!」

になろうと思ったらとんでもなく大きな声が窓の外から聞こえてきた。

「ちょ、何?私様子見てくるわ!」

「「カタリナ様!」」

私はアンとハモりながらカタリナ様の後を追った。

 

駆け付けた先には、キース様が呆然と立ち尽くしていた。

「どうしたの、キース!」

「姉さん!それが魔法でゴーレムを出したらカールさんが……」

「はっ、もしかして私の時と同じ!?カー兄が、あぶ」

「いや、その……投げ飛ばしちゃって…今土を元通りに直してます」

「は?」

キース様は何をおっしゃいますの?

 

 

男2人残されて、暇だったのでキー坊にこの世界の「魔法」について聞いてみた。

なんでも個人毎に特定の属性を持つ魔力が備わっており、それらを持ち扱えるのは必ずしも全員ではなく運次第だとか。

そして魔力保持者は自動的に国に目をつけられ優遇されるので、それを繰り返す内に現在の魔力保持者の殆どは貴族の家出身の者ばかりになってしまったらしい。

属性は大きく分けて炎、風、水、土が確認されているらしい。カタリナとキー坊のクラエス家メンバーは土属性で両親は魔力持ちではないという珍しい家だ。

更に魔力保持者が自らの魔力の存在に気づくのは基本的に自我と理性が確立される5〜6歳頃という都合良い設定もある。自分の魔法で怪我したらたまらんもんな。

乙女ゲームなせいか、どうにもワクワクしない設定である。

キー坊にホウキで空を飛ぶとか欲しい物を出すとかビーム砲を出すとかはないのかと聞いたら本の読みすぎじゃないですか?と鼻で笑ったので頭を7秒ほどゴリゴリした。

そして頼んで、高い土属性魔力を持つと作れるゴーレムを見せてもらう事になった。以前カタリナに見せた時怪我させてしまったので気が乗らない、と言われたので「ふ〜ん、つまりキー坊はその頃から何も成長してないんだな」と煽ったら出してくれた。

始めてみる巨大なゴーレムに男の子心が騒ぎ、上に登ろうと足をかけた。

そうしたらキー坊がゴーレムを操るバランスを崩したらしく、俺が足にぶら下がったまま倒れてきて……。

「どぉらっしゃああああああああああああああ!」

倒れてくる勢いを利用して、足が地面についた瞬間に全力でゴーレムを右横に投げ飛ばした。

潰されるまで紙一重だった。

ゴーレムが音を立てて土塊に戻っていく様を、俺は手の土を払いながら見ていた。

そして土塊の後片付けをしながら俺は本音を口から独り言で零した。

「そんなに重量なかったからギリギリてこの原理で投げれた………魔法すげえな」

「すごいのはあんたよ!」

カタリナの声が聞こえた。

「うおっいたのか。てかなんだよそんなすごくねーよ、お前が小学生の頃の俺の柔道部の活躍を覚えてなかったのか?」

「見たけどあの大きさの敵はいなかったわよ…」

「なーに、俺は所詮全国に行けなかった元柔道部とただのプロレスファンだ。本物ならもっと華麗に投げ飛ばすさ」

「よく分からないけど私が死んだ後もカー兄は大して変わらなかったのは分かったわ」

カタリナが呆れた顔でため息をついた。なんだか腹立つな……。

 

念のために見てもらったが怪我は何もなく、外もこの直後に行くのはアレな為、台所で一人茶をすすっていたのだが…。

「ここにいたのですね、カール様」

そこに意外な来客がやってきた。

「‥‥メアリ様?お腹でもお好きならアンさん方メイドを今お呼び…」

「いえ、貴方様本人にお話があるのです」

「……メアリ様の分のお茶も入れますね、粗茶ですが」

 

茶を入れ、2人揃って使用人用の一般家庭レベルの大きさの食卓テーブルに向かい合って座る。

……ええ、何言われんの。ちっちゃな女の子にここまでビビった事前世でも今世でも初めてだわ………。

緊張して肩で呼吸をしていると、メアリ様が意を決して口を開いた。

「どうしたら……貴方のように強くなれますの」

「はい?」

強く……って何が?どういう?

困惑しているが、メアリ様はさらに決意を秘めた瞳で続ける。

「わたくし、もっともっと、強くならなければならないのです。精神的にも、立場的にも、肉体的にも。……愛の為に、欲しい未来の為に。今日の貴方を見て気づかされました」

「……かっこいいじゃない」

思わず感想が口に出てしまった。こんな小さな女の子が愛の為に強くなりたい。そんな素晴らしい決意を今日あったばかりの俺に聞かせてくれた上に教えを乞おうとするなんて。感動した…!

「俺が、強い理由を知りたいの?」

「ええ」

「………プロレスかな」

「ぷろれす?」

「プロレスは最強の格闘術かつエンターティナーショーだよ、これを極めたモノは皆スターだった。俺はそのおこぼれをかじっていただけだったけれど、幾度となく窮地をプロレスに助けられたよ」

プロレス。

この世界には存在しないらしいが、世界最大の己の肉体と知恵を駆使する最高の格闘エンターティンメントだ。

「力にはいろいろな種類がある、学力、社会的身分、情報格差、どれも強く使える力だ。だが……『肉体的力』を身に着けているとそれらすべての力にもブーストがかかる。応用的な力を身に着けることも大事だが『基本』を磨くことを忘れた愚か者は必ず倒せる、俺はそういう人生を送ってきた」

「肉体的力…筋肉…という事ですの?」

「ベースはそうだね。だが、筋肉には『使い方』があり、プロレスは最も効果的に筋肉を使えると俺は思っている

。………メアリ様がどんな強大な敵だろと勝って欲しい愛があるのならまず鍛えて。藩外戦術は、基礎を覚えていなければただの付け焼刃にしかならないから」

「……!わかりました!ならば…わたくしに、プロレスを教えてください、先生!!」

先生!?

「えっ、あ……時間があればたまになら……後、先生はやめて?俺も敬語やめるから…」

こうして俺は、プロレスを貴族のお嬢様に教えることになった。

 

「どうして!?!?なんでそうなるの!!??」

「俺にも分からない…でも、なんかカッコ良かったから協力してあげたいなって……」

「あんなに可愛いメアリがムキムキお姉さんになっちゃったらどうするつもりよ!」

「そこまでしないよ……ところでさ、メアちゃんの好きな人って知ってる?」

「メアちゃんって……普通に考えたらこの前成立した婚約者の第4王子、アラン様じゃないの?」

「いや、多分道が険しい系だと思うな…後普通なのそれ?貴族なのに?」

メアちゃん(そう呼ぶことにした)と別れ、カタリナとこっそり話していた俺はメアちゃんの恋の相手とやらが気になっていた。

恋愛事は何が破滅フラグにつながるか分からない。知れるものなら全部知りたい。

そもそもカタリナとメアリは原作ゲームではろくすっぽ絡みがないらしく既に逸脱したこの状況がどんな変化をもたらすかなど神のみぞ知る所だ。

「うーん……カタリナ聞ける?俺が聞くのはなんか駄目な気がするんだよね……」

「OK!恋バナは大好物よ!」

「あっちゃんとは推しキャラのシチュ妄想しかしてなかった気がするんだが」

「それも広義の恋バナよ!ていうかカー兄がなんであっちゃん呼びなのよ!」

「ああ、それは―――—」

「「カタリナ様(姉さん)!こんなところに居ましたのね!」」

答えようとしたらメアちゃんとキー坊がカタリナに一目散に抱き着いてきた。

……昔からこいつ、結構モテるんだが本人に自覚なさそうなのは生まれ変わっても変わらんか。

 

[メアリside]

何ですかあの殿方は。

カタリナ様とあんなに馴れ馴れしく、距離が近く、くっついて!

自宅の自室に帰ってから、私はずっとノートにあのにっくきカール・フェボアウストリアの絵を描いてそれをペンでぐしぐしと突き刺している。

最大のライバルは、ジオルド王子だと思っていた。

だからせめて、義理の姉妹を目指して第四王子との婚約も取り付けたのに………。

カタリナ様は太陽のように朗らかで素敵な女性なので、樹々である周りの人間が絆されてしまうのはわかり切っていましたが、あんなにカタリナ様が気を許して軽口を叩き合うような仲の殿方も湧いてくるとは……。

「ライバルに…頭を下げるのは屈辱ですが…」

 

今ここに、私の新たなる目標は決まった。

いつか、カタリナ様と2人の世界を作るためにもっともっと強くなると。

 

だから、私は敵にすら頭を下げる。

ぷろれす、必ず身に着けてさしあげますわ!

「そしてゆくゆくはあの男やジオルド様も下し、カタリナ様と二人きりで………ふふふふふふ」

闇夜に不適な笑い声が響いていた。




時系列はメアリ編とアラン編の間からよーいスタート!

カール版カウントダウン
「TVアニメ、『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』、放送まであと〇日。カール・フェボアウストリアです。このアニメの見どころは……えー、完パケ済みなので作画は保証しますし楽曲、声優さん方の実力も保証いたします。後は………まあ、野猿妹の頑張りと皆のことをよろしくお願いします。はめふら~」
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