乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に妹が転生してしまっていた……   作:リベンジ

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王子は誰でもない一人の王子です。

庭の一角に建てられた即席プロレスリングに私とアランは何故か立っている。なんで、ほんとなんで。

キースはお母様と全力で交渉中である。プロレスリングが見つかれば全員不味いので。

「というかいつの間にか作ったの…」

「いつ作ったかって?そりゃ二人が勝負やってる間にこの家の物置の材料でトムさんと一緒に」

「トムじいさん何してるの!?」

最近筋肉が付いたと思ったら!

「カタリナ様、辛くなったらすぐ私にタッチしてくださいね!アラン様にカール様直伝のバックドロップを炸裂させますわ!」

待って、なんでメアリまでノリノリなの、アランってあなたの婚約者なのよ?

「アラン様、しないとは思いますがジオジオともタッチは可能ですよ?」

「誰がするか!これは俺の勝負だ!というかジオジオってなんだ!」

「渾名ですよ。まあ頑張ってくださいアラン、僕の婚約者に酷い怪我は負わせないようにしてくださいね」

「やかましい!というかなんでお前が居るんだ!また邪魔を、俺だって……俺だって……」

「婚約者の家に遊びに来るのは普通だと思いますが…聞いてませんね」

「はいプロレスファイト、レディーゴー!」

「「いきなり!?」」

なんか始まってしまった!

よ、よくわからないけどとりあえず技をかけないと!

私は怪我しないように大げさにパンチを出した。

アランはそれを見事によけ……ようとしたが顎にかすりふらついた。

「出た―ッ!ザ・グレート・カブキ直伝のアッパーだ!でもそれじゃあボクシングだぜ☆」

「やかましい!」

「カタリナ様、ベビーフェイスとして誇り高きプロレスをお見せください!」

「うあああああメアリがすっかりプロレスオタクに―ッ!」

「く、ぐ、よくも!」

アラン様が一気に私の腕をつかみ、引き寄せて投げようとする!

「おりゃっ!」

だけど私も踏ん張る!

密着状態のまま、互いに動けなくなる。

うっ…やはり少しはカー兄みたいに筋肉も鍛えるべきだったかしら…!

「な、あ、あ、うあ…」

ん?

アラン様の力が緩んできた。チャンスだ!

「う、うおーっ!飛び掛かりー!」

私は体重をかけてアラン様を押し倒した!

そのまま私はアラン様に馬乗りになった状態になった!

「な!」

「あ!」

こ、ここからどうすれば……

「ど、どけーっ!お前はそれでも淑女か―ッ!」

「アランすぐにタッチを!!僕が下敷きに変わります!!!」

「させません!!!カタリナ様すぐおどきになって私とタッチを!!」

「あっ、ちょっと二人ともリング乱入はやめて!」

そのまま後は乱戦となった。

ジオルド様とメアリは勝手に試合を始めちゃったしカー兄は見入ってるし……ん?

「大変!アラン様がいないわ!」

「え?気付かなかった…‥」

カー兄は心から驚いた表情でそう言った。酷い。

 

カー兄と二人でアラン様を探し、なんとか見つけた。

それは、最初の勝負をした木の下だった。

アラン様は体育すわりで泣きべそをかく幼さが前面に出た姿だった。

…なんて声をかければよいのか。

「すみません、そんなにプロレスが気に食わなかったなんて…」

「カー兄の馬鹿は黙ってて」

カー兄を下げて、私はアラン様の隣に座り込む。

「…なんだ、逃げ出した俺をあざ笑いに来たのか」

「そんなことありませんよ、プロレス馬鹿の兄がご迷惑をおかけしました」

「……奴とは苗字が違うが、腹違いなのか?キースとも義理だと聞いたが」

「え?まー、親は違うのでそんな所です」

「……その方がマシだったかもな」

アランはそれだけ言って再び黙り込んでしまう。

ああ、そうか。そういえばゲームではそういう設定だった。

アランとジオルドは年が近い事もあって常に比べられてきた。

体が弱く、色々と出遅れていたアランはいつもジオルドに差をつけられ続け、何をやっても敵わない。

自分がどんなに必死に頑張っても、ジオルドは涼しい顔でその上をいかれる。

…私と二人の兄は色々と違うからあんまり比べられたことはないけれど、アランの悲しみはほんの少し分かる気がする。

「アラン様にはアラン様のとりえってものがあると思いますけど‥…」

「ふん、そんな言葉一つで励ましになるか」

「アラン様はどうしてそんなに自信がないんですか?」

「はっ。…‥‥生まれてからずっとジオルドと比べられて、何をやってもあいつに勝てない。腹の中でジオルドにいいとこを全部、持っていかれた残りカスだと言われ続けて、どうやって自信など持てというんだ。そしてお前にもこのザマだ」

そんなに酷いことを言う人がいるの!?

「誰ですか!そんなむごいこと言う人!私怒りますよ!」

「は、ちょっと待て…なんでお前が怒る」

「怒っちゃいけないんですか!」

「だ、だが‥‥」

「アラン様とは勝負を重ね、お茶も何度もしたのだからもう友達です!友達を悪く言われたら私は怒ります!」

アランはジオルドじゃなくてアランなんだ!そんな事言われる筋合いは全然ない!

「ほらほら言われてんぞ、女の子にここまで言われて黙って拗ねてる場合か?」

「…お前」

「おっとすいません、素の口調が」

「いや、それでいい。お前の敬語は胡散臭い」

「酷い」

カー兄もアランの隣に寝転がり、語り掛ける。

「というかそんなに言われっぱなしで黙ってるのがいけない。ガツーン!とやり返しちまえよ。お前はジオジオじゃなくてアランなんだから。ジオジオに勝つ必要はないし比べられる義務もないんだ。お前がそうやってグズグズしてるとジオルドだって心配すんだろ?後、婚約者のメアちゃんだってさ」

「二人とも、別に俺の心配なんて……」

「じゃあアレは何だ?」

カー兄は遠くの畑の方を指さした。その先に見えたものは。

「アラン、アラン、どこですかー?」

「アラン様―!放置してすみません、どこにいますか―!」

それは、ジオルドもメアリもアランを探している姿だった。

 

「ほら、ね?」

「…………」

「そうですよアラン様、アラン様の周りには私たちがいます。だから泣かないでください」

そう言うと、アランは目を袖でぐしぐしと拭き立ち上がった。

「……泣いてない。だって俺は…‥第4王子『アラン・スティアート』だからな」

その目は、もう泣いていない。強い目だった。

とはいえ、アランのコンプレックス自体が解消されたわけじゃなそうだし……なんかもう一押し励まし…。

「そうだ!アラン様、ジオルド様の苦手な物を私知ってますよ!」

「何?」

「えっマジか!?あの完璧小僧ジオジオに!?」

カー兄の方が食いついた。まあ、いいけど…。

「いいですか?…カー兄、ジオルド様を呼んできて?」

「応、おーいジオジオ、見つかったぞ!」

「本当ですか、それは良かった!」

ジオルドが駆け寄ってきたので私は茂みに隠れる。

 

これは数週間前の話である。

その日はカー兄以外の全員が来ていて、畑で使用人たちにおすそわけの野菜を収穫していた。

手伝いを申し出てくれたジオルド、メアリ、キースとで野菜を見て回っているとそれは現れた。

私の足元を通り過ぎようとしたそれを、メアリの方に行ったらびっくりするかなと思って捕まえた。

すると、それを見て近くにいたジオルドが声を出して飛びのいたのだ。

普段、冷静沈着な彼があんなに狼狽えた様子は始めてみた。

そして気づいた。もしかして、ジオルドはこれが苦手なのではないかと。

「良かった、心配したん…」

「そりゃあ!」

私はジオルドの足元に『それ』を放り投げた!

「うわっぁ!」

ジオルドが驚きで声を上げ、尻もちをついた。

その顔はただ驚いただけというにはだいぶ狼狽えており、いつもの余裕な感じも見られない…。

ビンゴ!!!これは…使える!

「ね、見た見た!ジオルド様は蛇が苦手なのよ!」

私が投げつけたのは蛇のおもちゃ(自作)だ。

「確かに……なら…お流れになったプロレスの代わりの第4勝負はどっちがジオジオを驚かせられるかの勝負になるな…」

「お、おい……もう勝負は…」

 

「カ・タ・リ・ナ?」

 

「ヒッ!?ジオルド様!?」

振り返るとそこにはそれは美しい笑みを浮かべたジオルドが立っていた。

その手には私の放り投げた蛇のおもちゃがしっかりと握られている。

顔は笑っているのに目がまったく笑っていない。

「お…怒って、ます?」

「ははは、婚約者の可愛いいたずらです。多少驚きましたよ」

「多少…?」

「尻もち着いたよな…」

後ろで二人がひそひそ話しているが、私は目の前のジオルドが怖くて聞こえない。

……これは、怖すぎる。

もしかして、私このまま『蛇のおもちゃ王子様に投げつけた罪』で国外追放されるのかもしれない。下手すれば…死刑。

「そう言えばキースとクラエス夫人に今日は挨拶していませんでしたね。アランとの木登り、プロレス勝負のことや、カタリナが蛇のおもちゃを投げて遊んでいる話などをクラエス夫人に報告、いえお話しなくては」

「きゃあああ!やめてくださああああああああああい!」

腹黒王子~~~!

私はジオルド様の後を必死で追いかけたが無情にも全部報告され3時間は絞られることになった。

 

「ひーひー、まったく……元気出たろ?あれ見たら」

「‥‥‥‥‥‥」

「ジオジオなんかと比べっから落ち込むんだよ、下を見ろ下を。あのアホ令嬢とかを見てると「俺はまだマシだな…」って自己肯定感が増すから」

「……ははっ!あっはっは!それはそうかもな!」

「ところでさ、アラ助でいい?渾名」

「…長くなってないか?」

 

[カールside]

 

それから、アラ助は勝負にこだわるのをやめたようで勝負はお流れになった。少し残念。

でもプロレスの事もチクられた時はマジで言いくるめるのに疲れた。おのれジオジオ…俺にまで…。

だがまあ、プロレスがお釈迦になった事に個人的にモヤっとしたので第4勝負は奥方様に見つかっても怒られないような新しい競技で行ったのだが‥‥…。

 

アラ助、ピアノめっちゃ上手かった。カタリナの演奏はただのお遊戯会だった。いや前世はリコーダーも吹けなかったので進歩しているのだが。

もうこれは5番目の勝負はしなくてもアラ助の勝ちだろと言う事で、俺の中で5番勝負はアラ助の勝ちになった。

 

皆でほめたたえてアンコールを頼んだら、朗らかな笑顔を見せてくれた。

そして、カタリナの家に遊びに来るたびにピアノを弾いてくれるようになったという。まあ結構、頻繁にくるので一緒にお茶をしたりもする。

今度、低学年の奴らの為に演奏に来てもらおうかな……学校のレクリエーションはネタがすぐ尽きるからな…。

あ、申し遅れましたが私町の学校では行事全般の企画・運営をやってます。前世でもそうだったし……。




5.6話は時系列は4話のニコルsaidとカールsaidの間です。
ニコルと会った時にジオルドが蛇に驚いていた感じ。

この小説ではアランと仲良くなってからひと月ぐらいでカタリナはソフィア攻略してます。兄パフすごい。
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