乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に妹が転生してしまっていた…… 作:リベンジ
「俺起業しようと思うんだよね」
「……今なんて?」
「いや、だから…起業。会社を作りたいんだ」
今日も今日とてクラエス邸で破滅フラグ回避会議。キー坊もいるが細かいことは気にしない。
「そんなに花火屋さんの経営が困ってたの!?お母様に援助頼んでくる!」
家へと走り出したカタリナの袖を俺は掴んだ。
「違うわ!お前の為を思ってるんだよ!」
「どういうこと?」
「いいか、お前が国外追放されたとする、そしてお前は農業で暮らしていこうと思ってるだろ?」
「カールさん、それは姉さんの妄言で…」
「キー坊、人生は何があるかわからんのだぞ。でだ、お前馬鹿で犯罪者なんだから民家の人に雇ってもらえるか怪しいだろ」
「まだ犯罪者じゃないわよ!」
「で、どんな会社を起業するんですか?」
キー坊が困った顔で聞いてきたので俺は両手を顔の前に置いて静かに答えた。
「J〇バンクを作ろうと思う」
「‥‥なにそれ?」
「なんですかそれ」
「カタリナはわかれや‥‥農業の組合の事だよ、要は元締めだ」
「でも、それはその土地の領主の仕事じゃ?」
「領主は忙しい貴族なんだからそういう仕事を省けるなら委託してくれる可能性がある。そこでだ、農業組合を作って商社制に変える事で各農園に対する保険も自社で保証、俺が会社のトップならお前をコネで雇って働かせることが出来る……これが人生経験から考えた俺の作戦だ!」
俺は自分の計画の秀逸さに思わずガッツポーズをしてしまった。
2人ともよく分かってなさそうな顔だが、理解したその時が楽しみだぜ……!
俺は手に持っていたトマトを丸かじりして我ながら悪い顔をした。
「あ、それミミズついた不良品……」
「ん?なんひゃいっちゃ?」
「…なんでもない」
「という訳でこの国で起業ってどうすればいいのか教えてほしい」
「何言ってるんですか?」
翌日、クラエス邸に遊びに来たジオジオに質問してみる事にした。
「いや、なんでジオルド様に聞くのよ」
「いや‥‥働いたことはあるけど起業したことはないから……」
「た、たよりなーい……」
うるさい、働いた経験もない小娘が。まず分からない仕事について質問することは何よりも大事なんだぞ。
「企業と国家は金利関係の職種系以外だと基本的に民間、もしくは各地の領主にお任せしてるので僕が知ってることはたいしてないですよ?」
「あっやっぱりー?」
「うーん、となるとやっぱりもっと直接働いてる人に聞いた方が良さそうね」
「いや、それより領主の人たちにアポ取る方がいいんじゃないか?」
「アホってカー兄何言ってるのよ!?」
「アポイント、事前連絡って意味だよだよこの猿!」
「あ、あの……」
俺たちがギャーギャー騒ぎ出してしまい、ジオジオが困った顔をする。しまった、一瞬忘れてた。とりあえずお礼
「というか何故カタリナも一緒にいるんですか、そこのところ詳しく説明を」
「ありがと、それじゃ他の所に聞いてみるよ!行くぞ!」
「よく分からないけど分かったわ!」
「えっ、あっ、待ってください!」
俺たちは部屋から出て、使用人室に行って手紙を書くことにした。
数日後、クラエス邸と社会的な関りがあり農業管理も行っている貴族へ出した手紙の返事が返ってきたが、業務内容を教えてくれたぐらいでそこまで大きな情報はなかった。
なおカタリナは人様の家に何聞いてるんだとミリディアナ様に説教されている。すまん、後でなんか奢ってやる。
業務内容は3か月ごとの売り上げ報告、それによる税金額の調整ぐらいらしい。やはりこの世界にまだまだ保険というシステムは根付いていないようで、そこをつつけばチャンスはあるかもしれない。勿論苦労もあるだろうが長い目で見ればプラスだろう………と思う。多分。そのはず。
これで企業の業務内容の方針は決まった。だが、その為の売名も必要だ。
俺はカタリナと庭の畑の野菜を見ながら考え込んでいるとカタリナが言う。
「ねえ、この野菜が美味いってことをアピールすれば会社設立前の良い宣伝になるんじゃない?ほら、副業でうちの野菜も販売するって感じで!」
「別に今すぐ起業するんじゃないんだぞ?ま、じゃあとりあえず…商売を実績を出してみてから考えような」
「商売?」
「そ、商売といってもシンプルなのなら子供でもできるでしょ?」
「安いよ安いよー!トマト、ネギ、大根、何でもありますよー!」
「安心安全でーす!」
「あああ……お母様にバレたらどうしよう‥‥」
「だからこうやって被り物被ってるんじゃないかキー坊、ほら一袋売れたからレジ頼むよ」
という事で、商売してみる事にした。
収穫した野菜を街の露店通りで販売。シンプルだが立派な商売だ。露店と言っても他よりちゃちいゴザ敷いて看板作っただけのフリマみたいな店だが。
野菜は単品売りとセット売りの2種類。
初めて1時間が経過し、ぼちぼち小袋から金貨があふれ出すようになってきた。やはり近くの八百屋の相場を見て少し値段下げたのが良かったな!
カタリナとキースは身バレ防止のため、去年の町の祭りで使った着ぐるみを着てもらっている。
後アンさんも置いて来た、貴族とバレたらあかんからな!
金貨を見ながらほくそ笑んでいると、大きな人影で視界が影に覆われた。お客さんだ!
「はーい、いらっしゃ……」
「おいガキンチョども…ここらで誰に断って商売してんだ?」
「へいへい兄貴ィ、こいつら結構銭持ってますぜえ?」
…こまった、ちょっとかてない。
プロレスでも子供は怖いお兄さんには勝てない。
シャバ代という事で売り上げを怖いお兄さん達に全額払い、もうしないという約束と俺の顔見せ土下座決行で開放してもらい今俺たちは帰路についている。
「ど、どこの世界にもピンハネ屋はいるんだな……」
「怖かった…お母様と同じぐらい怖かった……」
「それ本人の前で言ったら絶対駄目だよ…………」
あそこの路地、商売に場所代とか必要だったのかよ…子供なんだから見逃してくれても……。
着ぐるみのままとぼとぼ前を歩く二人の姿を見ているとますます気分が落ち込んでくる。
くっポジティブに考えよう、二人がクラエス家の人だとバレたらもっと取られる所だったんだ‥‥俺一人の土下座で済んで良かった……。
夕日の中をとぼとぼと歩いていた俺たちをアンさんが探しに来た時、何かを察したアンさんは何も言わなかった。ありがとうございます……。
今回の結論、まず土地代を確保してから起業しよう。
「という訳で、国外追放されたらクラエス邸の金庫からいくらかかすめ取っておこうな」
「で、出来るかしら……蛇の模型をジオルド様のポケットに仕込むテクニックを生かせれば……」
「物騒な相談やめてよ!」