乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に妹が転生してしまっていた……   作:リベンジ

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短編詰め合わせしてみました。

「サッカーやろうぜ!」

「は?」

暑い夏の日、俺の円○○君並みに爽やかなお誘いに対しての農業中の妹(前世)の返事がこれだ。

わざわざ屋敷まで呼びに来たのになんだよもう。ほっかむり土ついてんぞ。

「なんだよ、ガキの頃よくやったろ、木の間をゴールにしてやる奴だよ、プロレスじゃないんだからいいだろ」

「それは分かるわよ。…でもこの国でサッカー知ってる人なんて私達しかいないじゃない。サッカーは11人でやるスポーツなのよ」

「おまえの友達に教えればいいじゃねーか、俺の町の方のダチはもういつもの森に集まってるからお前入れてこれで6人、後ジオジオ、キー助、アラ坊、メアちゃん、ニコルとソフィア呼べば12人だし6vs6ぐらいは出来るぜ!」

「いやいや、皆貴族なのよ!?そんな全員都合よく来るわけ……」

 

「やあ、今日はお誘いありがとう。救護係のメイドも呼んできたから怪我しても大丈夫だよ」

「姉さん、怪我だけはしないでね…」

「フン、まあ暇潰しに来てやったぞ」

「….…こんなに大勢で遊ぶのは初めてだ」

「私の緑の手でどんなボールでも止めて見せますわカタリナ様!(パァン!)」

「う、運動はあまり得意ではありませんが頑張ります!」

「……うそー」

ほら全員来た。お前の名前出せばすぐ食いつくんだから、我が妹ながらすげえぜ。

なんでこんな気のいい奴らが将来破滅に導く事になんのがほんとわかんねえな〜〜〜。

「よーし、サッカーのルールは今教えた通りだ、お前ら、貴族相手だからってビビんなよ!?」

「「「「応ッ!!!」」」」

うんうん、流石だ。もうすっかり貴族との遊びに慣れてる。

「カー兄の友達、遊ぶときだけ貴族云々頭から飛ぶわよね」

「ボールを持てば皆友達だからな、翼君も言ってる」

「翼君は「ボールは友達」って言ったのよ」

お前キャ〇翼も履修済みかよ。

 

という会話を挟みつつキックオフ。

ちなみにチーム分けはくじで決めた。いつもの6人が皆カタリナと同じチームになりたがるので。こう。

 

俺チーム

俺、トム(町の友達1)、ライプ(町の友達2)アラ坊、ジオジオ、ソフィアちゃん[キーパー]、

 

カタリナチーム

カタリナ、キー助、ニコル、メアちゃん[キーパー]、トゥーチャ(町の友達3、女子)、バールクス(町の友達4)

 

まずは俺がガンガン攻め込むぜ!とキックオフと同時にボールを持ってドリブルで切り込む!

「イェーイ!先取点は貰った!」

「甘いですよ!」

「なっ!」

瞬間!キー助がスライディングで俺からボールを奪い去りすぐさまドリブルの態勢になる!こいつ本当に初心者か!?

DFのトムがあっと言う間に抜かれ、ゴール前がキーパーのソフィアちゃんだけに…!

「ハアッ!」

その時、FWだったジオジオがゴール前まで戻ってキー助を阻む!

「ゴールなど、断じてさせませんよ….…どちらの意味でも!」

「な、何を!」

「隙あり!」

ジオジオが隙をついて右足でボールをキー助の股から前に蹴り、そのまま素早い走りで上がっていく。

「ジオジオ、パスだ!センタリングあげてやるから!」

「君の助けなどいりません!」

「えー!?」

宣言通り、ジオジオは一人でトゥーチャやバールクスも抜き去りそのままシュートを放とうとする。

「カタリナのゴールは….…僕が決める!てやーっ!」

ジオジオが黄金の右足が、ゴール右隅にボールを導く!

だがしかし!

「せいやっ!」

キーパーはそれを読んでいて見事キャッチ!

「貴方のコースは勉強済みですわ!カタリナ様!ニコル様!」

「しまった!」

メアちゃんは大きくボールを投げ、FWのカタリナ、ニコルにボールが渡る!

「ニコル様、ソフィアちゃんが怪我しない程度に点を決めましょう!」

「ああ、カタリナ頼んだぞ(キラキラ汗の爽やか笑顔)」

「あっ…」

カタリナが必殺ニコルスマイルにやられ一瞬ふらつく。今だ!

「でやーっ!」

俺は反則にならない程度の肩押しと共にカタリナからボールを奪取しようとする!

「アラ坊!ニコルをマークしとけ!」

「もうしている!」 

アラ坊はぴっちりとニコルをマークしており、うかつに俺たちのボールの奪い合いに参加できない。

ジオジオもキー助に貼り付かれており、仮に俺がボールを持ってもまた攻め込むのは一人で、という事になる。

「ボールは渡さないわよ、カー兄!」

「それはどうかな?」

「な、何!」

「…幼稚園の頃、木の上からおしっこして同じクラスの子に当てて泣かれた」

「えっ何それ私の事!?」

カタリナが動揺した隙にボールを奪い、一気に前へと上がる!

「あーっ!ズルっ!」

「知能プレイだ!そりゃー!」

俺もなるべく上に向かってシュートを撃つ!メアリちゃんは背は高くないから飛べない筈だ!

「グリーンハンド!」

と、思ったがメアちゃんはその辺で拾った太い木の棒でボールを弾いた!

「なっ、キー坊を使うとかありか!?」

「知能プレイですわ!」

メアリちゃんに論破された。

「まず僕じゃないんだけど!?」

「細かいことを気にするとゴーレムに笑われますわよ!」

「いやゴーレムもう操れるようになったからね!?」

「そう言う事を言いたいんじゃないだろ」

こんな事話してたキー坊、アー助、メアちゃんの誰も、それは予想出来なかった。

「お、おりゃー!」

ソフィアちゃんがキーパーから上がってきて、ガラ空きのゴールにボールを蹴り込んで入れたのを。

「「「あっ!」」」

「ソフィア!?いつの間に!」

「えへへ、初得点です!」

「作戦勝ち!」

俺とソフィアちゃんはそのままハイタッチを交わした。

 

その後も試合は白熱を極め、気づけば夕方になっていた。

貴族達も今日は暇とは言え、夜になる前に早く家に帰らねばなるまい。

最終スコアは4-4の引き分けだった。

「あー疲れた…腰痛…誰だサッカーやろうぜとか言ったの……」

「いやカー兄でしょ」

「カール様ですよね」

「カール様、おかしなことをおっしゃるのですね?」

おっと泥だらけの女性陣から手厳しい。おじさん精神年齢56+1年ちょいなので……。

「まあ、意外と楽しかったですね、キース君がストーカーしてきた事以外は」

「マークしてただけですけど???ゲームと現実を一緒にしないで下さい第三王子」

また二人はなんかレスバしてる。飽きないな……

「皆様、軽食を用意いたしましたのでここに置いておきます」

アンさんが持ち運び用テーブルにお菓子やサンドイッチを置いて冷たい麦茶と温かい紅茶を両方用意していく。

これはスーパーメイド。

俺たちは早速席に着き、皆で笑いあった。

 

「じゃあ俺銭湯寄って帰るから、送りはいいよ、またな」

「銭湯?そんなのこのせ…街にあったの?」

「あるわ、この辺は風呂ない民家も多いんだから」

そう言って歩き出した途端、メアちゃんが俺の袖をつかんできた。

 

「カタリナ様、行きましょう」

「え?」

「行きましょう」

「メアリ?」

「行 き ま し ょ う」

 

で、みんなで銭湯に行くことになった。

だがどう考えても貴族たちがいきなり町の銭湯に大量に押し寄せるのはダメだろというアラ助のド正論と共に、この世界にもあるじゃんけんで二人ずつ時間を空けてこっそり入店することになったのだが…。

「結局お前とかよ……」

「しょうがないじゃない、私達二人とも勝っちゃったんだから」

「メアちゃんが辛そうにしてたから今度一緒にお風呂入ってみたら?」

「貴族同士ってなかなかそうもいかないのよね……」

いや、だってなんか怖かったんだもん…覗きませんよね?とか言われたけどやったら極刑だよ……。

「…まあ、少し懐かしいな。ほら、家族で銭湯ガキの頃よく行ったろ?」

「あー、ジェットバスで泳いでたら叱られたのよね」

「サウナでととのう、というのやってみたくてのぼせた事もあったな〜」この世界にはジェットバスもサウナもないので出来ないが仕方あるまい。

「なんか懐かしくなってきたわね、上がったら牛乳飲みましょうか!」

「みんなの分もな」

と思い出話に花を咲かせる。結局こいつとはこんな話ばかりしてしまう。過去には戻れないのにな。

 

その後、俺は風呂を満喫し牛乳瓶を人数分持って待合室待っていたが王子達は何やら俺を抜きで4人で話し込んでいるのか中々上がってこない。

すると、アラ助だけが先に上がって来た。

「お疲れ様、他の3人は?」

「…あいつの事で盛り上がってな」

「またあ?他の話題はないの?最近聞いた曲とか美味い店の話とか…」

こういう時、自分で言いながら娯楽が少なすぎるこの世界に少し絶望する。CDは勿論、レコードもないのかよ………って思ったもんなあ。

あるとしたらスポーツ観戦ぐらいだしなあ……

…スポーツ観戦?

 

後日。ジオジオとこんな話をした。

「サッカー協会とかこの国に作って大ブーム起こせたりしない王子様?」

「国だからってお金は無限に湧かないんですよ」

い、言ってみただけだし……。

 

そんな微笑ましい出来事から2、3か月後。

俺はクラエス家代表として王家直々の他国との交流会に参加することになった。

いや、どういう事でしょうか。

 

「キー坊が風邪を引いた?」

「そうなの、それで代わりに出れる人を探してるんだけれど…」

数日前、もはや自分の家のごとくのんびりと宿題をクラエス邸でやっていたらカタリナがそんな相談をしてきた。

なんでも、我がソルシエ王国と隣国のシャルマ王国との国際会議が近々両国の狭間に建っている共和ソルマ堂にて行われるらしく、第三王子ジオジオの婚約者であるカタリナも呼ばれたそうな。で、勿論一人だと心配なのでキース同伴の予定だったらしいのだが………。季節の変わり目に風邪を貰ったらしい。会議の日に回復が間に合っても病み上がりを国際会議に連れて行くわけにもいかない。

「いやお前が1人で出れよ」

お前ピンピンしてんじゃねーか。バカは風邪引かんもんな。

「何言ってるの!病気で辛い時に姉が看病してあげなくてグレたらチャラ男、国外追放待った無しよ!お母様も賛成してくれたわ!」

「ミリディアナ様………」

賛成しちゃったの……どれだけ一人で行かせたくなかったんだよ…。

「それじゃあ無理じゃん、ジオジオに断りの連絡を……」

「カールさん、私から頼みがあるのです」

「え?」

カタリナの隣に険しい顔のミリディアナ様が立っていた。

そして。

この世界に生まれ直してからて初めて、大の大人が自分に向かって頭を下げていた。

 

年上の貴族に頭を下げられてしまったら、もはや平民の少年に断るすべは残されていなかった。

とりあえず隣国の人たちにはキー坊と名乗り、カタリナが風邪で来れなかった、で押し通すつもりらしい。

「いや、別に婚約者の出席は義務ではないので君がわざわざ来なくても良かったんですが……」

で、いざ会場に向かう馬車でジオジオに言われてちょっと後悔した。

アラ助の奴はゲラゲラ笑っていたが宰相なのでついてきたニコルはそっと俺の肩に手を置いて慰めてくれた。やさしい、ありがとう。

後メアちゃんはカタリナが来ないことに露骨にテンションを落としてため息を吐いていた。女の子一人は大変だもんな。

そして会場に到着しなんとかつつがなく挨拶回りを追える。

だが、ここからが鬼門だったのを俺は知らなかった。

「後は子供たち同士でごゆっくりと」と言われて数人の使用人たちを残し、中部屋には俺たち少年少女だけが残されてしまい、空気が完全に固まってしまっていた。

いや、正確にはジオジオとかは普通に話せている。アラ助も意外とコミュ力は高いし、聞くところによると前は引っ込み思案だったらしいメアちゃんも隣国の王子の婚約者達とスムーズなガールズトークをこなしている。

が、俺とニコルはその場でどうしようか頭を悩ませていた、と思う。

ど、どうしよう。アテにしてたうちの第一王子は大人と一緒に行ってしまったし、第二王子は留守番ときた。

いくら会社員時代接待を数多くこなした俺でも、ここまでの大物は中々ねえよ!

俺はニコルに無言のヘルプを送るべく、隣に座る彼の様子を伺ったが。

ニコルは無表情で座っていた。

そうだったこいつ無口だったぁ~~~!

というか微笑むだけでなんか相手の空気がほがらかになってるし!ずるいぞ親友!

つまり、この場で浮いているのは……俺だけですか。

くそっ、ええいめげるな。俺はこの国の三人のお偉いさん型とマブな間柄になった男だぞ!

ナメられたら終わりだ!気合い入れていけ!!!

「あ、あの!」

俺は意を決して口を開いた。

「サッカーやりませんか?」

 

サッカーは世界万国共通語だった。

ソルマ堂の外の庭で、ボールが縦横無尽に飛び交う。

「ヘイ、パスパス!ボールをこっちにって意味です!」

「わかった!ハッ!」

「よしきたシューッ!と見せかけてアラ助!」

アラ助がその黄金の右足で、シュートを放った!

「とりゃーっ!」

しかし、相手の第二王子に阻まれた!

「きゃーっ!がんばって!」

「素敵です!!!」

「アラン様おしかったですわー」

女子たちは今日は応援。というかついていけるうちの女子たちのバイタリティが強いのだ。

こうして、サッカーで俺たちは分かりあえた。

「いや、何言いだしてるんですかほんと、幸い相手の第一王子が食いついてくれたから良かったものの」

「いや、お前もノリノリでシュート3回決めて完勝したじゃねーか」

「まったくだ、しかもその後俺にソルマ堂のピアノで一曲引いてくれとか言い出しやがって」

「でも大好評だったじゃない」

「むう……」

「でもカール様、私を誘って説明したプロレスには誰も食いつきませんでしたね?」

「にやにやしながら言わないでよ~~~」

「………だが、今日はカールのおかげで楽しかった。ありがとう」

「……そう言ってくださって光栄です」

帰りの馬車の中で、俺は気を使われて励まされてしまった。

 

数年後、シャルマ王国はサッカー発祥の地として全世界にその名をとどろかせるのだがそれは俺たちと全く関係ない話なので割愛する。




随分アニメから引き離されてしまったので投稿ペース上げられるよう頑張ります。
次回、7年後編に突入です。

(2023/1/24)地の文追加。
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