乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に妹が転生してしまっていた……   作:リベンジ

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妹の誕生日です。

歳をとると、時が過ぎるのが早くなるという。

元51歳から若返っても、それは変わらないのかもしれない。

だって、カタリナがあっという間に15歳になったのだから。

 

今日は我が町の領主の一人娘、カタリナ・クラエス殿の誕生日である。

今夜お城では煌びやかなパーティが開かれるらしいが俺はそれどころではなかった。

買い物帰りに、給料袋を落としたのだ。

「あわわ……この通りはもう4往復はしたのに……食費とか倶楽部費用とか色々どうしよ………」

既に街頭に照らされ人も少なくなりつつある道路を俺は地面に這いつくばって目を見開きくまなこになって探していた。

殆ど金貨なんだから夜道でも光る筈、光るはずなんだ――――――ッ!!!

そう思わなければやってられない!

道路に落ちている可能性が限りなく低くなったので道端の排水溝やドブさらい捜索のフェーズに移行したが、見つかる気配は皆無。

あ゛あ゛あ゛あ゛銀行も無いとかざけんなこの世界!!!俺が作ってやろうか!?!?仕組みとかなんも知らんけど!!!

そうして一人パニくっている最中のこと。

後頭部に何か投げつけられた感触がした。

「ん?……ってこれ給料袋!」

誰か拾って!?と興奮して振り向くと、そこにはもう誰もいなかった。

……いや、いる!人ごみに紛れているが、若干速足のあの黒い背広の人だ!

俺はすぐさま走り出した、お礼の一つも言わないのは筋が違う!

「うおおおおお待ってええええええええええええええええええ!」

「なっ!?」

「逃がさねえええええええええええええええええええええええ!」

俺は黒服の人に飛び掛かって足にしがみついた。

「逃げないで!伝えたいことがあるんです!ええ、ええと、逃げたらジャーマンスープレックスします!じゃない脅すな俺!」

「一人で勝手に騒ぐなら話してくれ!」

 

周囲の目が異様になってきたので、俺たちは通りを離れて他の道の隅で会話する事にした。

「あの、これありがとうございました。それだけ伝えたくて」

「お、おう………よく分かったな、俺だって」

「なんか速足で早く離れようとしてるみたいだったので。シャイな方なんですね。人を助けてクールに去っていくの俺も見習いたいです」

「…………もうそういうことにしておく。要件はそれだけか?」

「はい、俺も用事あるので。あ、最後に名前だけ聞いてもいいですか?」

俺がそう聞くと、黒い背広の人はしばし考えるような顔をしてこう答えた。

「ルーファ……いや、ソラ。ソラだ。それでいい。もう会うこともないからな」

「ソラさんですか、いい名前ですね!またどこかで会えるといいですね!俺はカール・フェボストリアです!それでは!」

俺はソラさんに一礼すると、掌の光を頼りにクラエス邸に向けて走り出した。

 

「…いい、名前か」

 

クラエス邸に到着したが、すでにパーティは始まっていたようで屋敷は喧騒に包まれていた。

「げー、もう始まってる……入りずらい」

なにせこちらはまともなドレスコードの服など一着も持っていない。

お茶会などに何回か混ぜて貰ったことはあるが、その時も毎回クラエス邸のキー坊の服を借りていた。後は執事と誤魔化した事もあるが執事服も今は手元にない。

「正面からだと注目を集めるな…よし、ベランダから入ろう」

俺は裏庭に回って、大広間にくっついてあるベランダから入る事に決めた。

目的のベランダのすぐそばの木に足をかけ、するすると登っていく。

ふふ、あいつほどではないが俺だって木登りは得意なのだ。まあ、この歳になってやるとは思わなかったが!

「しかし殿方ばかりずるいですわ。私も男性ならカタリナ様と踊れましたのに」

「なら一緒に踊る?」

あ、カタリナとメアちゃんの声。よし、飛び移って驚かせて…とうっ!

俺は木の枝からベランダの手すりに飛び移ろうとした。その時。

「あっ、なら私もカタリナ様と!」

ドレス姿のソフィアちゃんの姿も拝見した。

 

その美しい姿に、見惚れてしまった。

ガッ。

「あっ」

手すりへの着地に失敗し、身体がベランダの外へ落ちていく。

「ぬおっ!」

だが落ちまいと、俺は片方の足をベランダの手すりに引っ掛けた!よし、後は引き上げてくれ

 

後頭部に激痛が走った。

そう、勢いをつけて手すりにぶら下がったら反動で頭は……

女性陣の悲鳴を聞きながら俺は落下した。

 

「何してるの本当に、私なら足なんか踏み外さないわよ」

「…そこかよ…」

地面に寝転がった俺を降りてきたカタリナが呆れて返す。

「カール様、大丈夫ですか?」

「ああうん、大丈夫。見惚れちゃって踏み外しちゃったんだ」

「へえ。それはカタリナ様にではないですよね?」

「痛い痛い痛い脇腹つつくのやめて。ソフィアちゃんだから。あ、メアちゃんも似合ってるよ」

「取ってつけたようなお世辞はいりませんわ」

厳しい。成長してメアちゃんはすっかり強者の雰囲気になってきた。というかジオジオに似てきた気がする。

「まあ無事ならいいわ。ねえ、メアリ。ここ庭だけど誰にも見られないと思うしここで踊らない?」

「え、お前ダンスなんか踊れんのか!?うちの地元は21世紀にもなってドラ〇もん音頭と〇バQ音頭のローテ盆踊りしかなかったんだぞ……」

「いつの話してるのよ、お母様と先生に死ぬほどしごかれたからダンスはバッチシよ!」

カタリナが腕をまくり力こぶを見せつけるポーズをする。腕の筋肉とダンスはあんまり関係ないと思うが。

「何の話か分かりませんが、はい喜んで!」

「次は私もいいですか、カタリナ様!」

そのまま女子勢は俺を放置して踊りを始めようとしていた。

まあ俺は踊れないしいいけど……。

頭を押さえながら立ち上がり、その場を離れようとしたら。

「カール様」

「?」

振り向いたら、ソフィアちゃんが手を差し出していた。

「え?どういう?」

「私の番が回ってくるまで、踊りませんか?」

ニッコリ笑って、ソフィアちゃんはそう言った。

……浮気ではない。これを断るのは男として違う気がする。

「…よろしくお願いします」

俺はソフィアちゃんの手をそっと取った。

 

で、全然踊れなかった。足とか何回も踏んでしまった。

あまりにも下手なダンスを視界に入れて不機嫌ななったメアちゃんにパーティーが終わるまでガチガチの指導もされた。

弟子に超えられた師匠ってこんな気持ちになるのかな……。

 

そんなパーティがつつがなく終わり、皆が帰っていく。

俺も寮に帰ろうと思ったのだがミリディアナ様から今日はもう遅いから泊まって行きなさいと言われてしまった。

で、風呂を借りた後に。

「おい、ちょっといいか?」

俺はカタリナの部屋のドアを話しながら開ける。

「ん、何ー?」

カタリナはベットに寝そべりながら本を読んで食べカスを口につけていた。

…何も変わらんな、こいつ!

「ほれ、誕プレ」

俺はラッピングされた小箱をカタリナに投げ渡した。

「おお、ありがとう!開けていい!」

そう聴きながら既に開封していたカタリナは、箱を開ける。

「…これ、ブレスレット?」

「ミサンガだよ、細い金属で出来てる奴だけど」

「ミ…サン…?」

「知らんのか。切れたら願いが叶う奴だよ。それが切れたら破滅フラグも回避できるって願いこめといたぞ」

「なるほど、わかったわ!切ればいいのね!」

カタリナは全力でミサンガがひっぱり始めた!

「こ、このバカッ!バカリナ!それは自然に切れないと意味ないんだ一回返せ!!」

俺はカタリナからミサンガを奪え返す為にベットに飛び乗る!

「そんなに待てないわ!後一年しかないのに切れなかったら不味いじゃないの!」

「おまじないに文句言うな!」

ぎゃあぎゃあベットの上で取っ組み合っていると、ドアの方から声が聞こえてきた気がしたがそれどころではない!このアホ!バカ!

「何を騒いで……わあああああああああ何してるんだ二人ともーッ!」

キー坊の絶叫が屋敷に響いた。

 




カール君は育ちのせいでバルコニーをベランダと思っています。(どうでもよい情報)

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