ララのいない卒業式 届け、未来へつながるイマジネーション! 作:うさペン
「遼じい、今日も系外惑星が見える宇宙をみせてほしいな」
「そうかい、じゃあそうしておくね」
遼じいにそれだけ伝えると、プラネタリウムの中へと入っていく。
誰もいない一人だけの空間。そこは宇宙と同じだ。
暗いけど、明るい星星に囲まれ、今日もわたしは一つの星となって夜空をみつめる。
ここは今が冬空であろうとも時間を超えて星と出逢うことができる、星のエントランス。
星と向かいあい、想像力を解放させる時間だ。
今、星座つくりではまっていることは、宇宙の暗闇の中で普通にはみることができない系外惑星を想像しながら星座を描くことだ。
「どこかな、どこかな~」
これまでよりも自由は発想でより想像が無限大に広がっていく。
系外惑星とは太陽系の外側にある遠い遠い星達。太陽系外の惑星は恒星とは違って自ら輝くことがないため従来の観測技術では発見しづらく、発見するためにはトランジット法という方法が用いられることが多い。この観測技術の登場により二千六百以上の系外惑星が発見され、その中に地球と似た惑星が二十個ほどあるとされている。
地球よりも遠くて、星空界よりもずっとずっと近い、もしかしたら地球外知的生命体がいる星。そんな星々を想像するだけでもキラやば~☆なので、星座を作っていてもキラやば~☆な気持ちになれる。
「ここに星があって、ここにも星があるから」
なんていいながら暗闇の中の存在している星々をつなげていき、
「ララ。みてみて、あの星と星がね!」
ここにはいないララに話しかけていた。
星空をみつめ、ここにいない人のことを想うと、キラキラしていた気持ちに陰りができた。
ここ最近はなぜだか解らないけど、ララがいるかのようにふるまってしまうことが多くなっている。
(なんでだろう、どうしてだろう)
知りたくでたまらないことなのに答えを見つけることはできていない。
卒業式まで残り二週間ちょっと。心がざわつくことは増えてきた。
もうすぐ卒業だって思う度に、記憶の中に大事にしまっておいたララの記憶が星のように強く輝きだしてしまう。
プラネタリウムの星空には秋の星空が光り輝いている。
他の季節の星座よりも明るい星空が少ない星模様。
寂しげなんて言われたりもするけど、全然そんなことはない。
見方を変えて、想像力を広げていけば、星は強く強く輝きはじめるんだぁ。
「秋の星座はまずはペガサス座をみつけると解りやすいよ」
「ペガサス座、どれルン」
「秋の四辺形っていってね、まずはペガサスの胴体から探してみるといいよ。ほらあそこ、あそこ」
指を指してどこにあるのか方角を示してあげて、星空の案内人となる。
アルフェラッツ、シアトル、アルゲニブ、マルカブからなる、秋の四辺形は秋の夜空の位置関係を知るのにもってこいの星だ。
「あれルン! やっとみつけたルン」
あ、みつけてくれた。やっぱ嬉しいなぁ。
「それがわかれば後は顔と足をみつけてみて。ペガサスの胴体の近くにある一番輝きが強い星エニフ、あれがペガサスの頭だよ」
「あ、だんだんと解ってきたルン」
ただのひとつひとつが点だったものがつながりあうだけで、キラやば~☆な気持ちになっていく。それは宇宙人であるララであってもなにも変わらなかった。
「これがペガサス座、なんか壮大ルンね」
「ペガサス座みてるとフワのこと思い出すよね~」
「そうルンね」
成長したフワはペガサスのように姿が変わった。それはペガサス座と似ていると言ってもいいだだろう。
「今さ、新しいペガサスになったフワ座をつくってる最中なんだ」
ペガサスになったフワ座を想像する。フワをみつけたときは一人でわくわくしながら星空を探検するかのように探したけど、今はララがいる。
「ペガサスになったフワ座……まずは胴体からさがすルン」
「うんうん。ペガサス座は四辺形だけど、ペガサスになったフワ座は丸型胴体だと思うんだよね」
「丸形ルンか」
「だからね。あそことあそこの星をつなげれば、ほら丸になるんだよ! でねでね、あの一番強く輝いてる星が頭になって、青いあの星を尻尾にみたてたら、ペガサスになったフワ座の完成! キラやば~☆」
「本当ルン」
新しい星座をみつけて描く度に、キラキラをわたしとララの心は輝いていく。
「みてみて、まだまだいろいろ考えてきてるんだ」
描いてきたフワ座の星をララにたくさんみせていく。
「え、これなにルン」
「これも新しいフワ座だよ! フワって星座の力受け取ったときに姿が変わってたから、また姿変わるかなって。今度はもっと壮大に! ビックに! だから星座も大きく、ってね!」
フワは増殖したりもしてたくさん星空で輝いてるはず。
どこをみてもフワがいて「フワ~」って、わたし達のことをみてくれてる、キラやば~☆な星座間違いなしだよ。
「ひかる、たぶんフワはこれ以上姿が変わらないルン」
急にララが冷めた目になり、諭すように肩を叩かれた。
「え!? なんで?」
見当がまったくつかない。知りたいよ、どうしてそう思うのか。
「フワは十二星座の力を全部集めてあの姿になれたルン。これ以上は星座の力がやどることはないルン」
「え~そんな。もっと見たかったな~フワの変わるとこ。あ! でもさ想像ならできるよ。ララもしようよ~」
「しょがないルンね~」
強引な誘い方だったけど、ララもノリ気になって、新しいフワの姿を描いていく。
「しし座だとたてがみがもっと増えるって感じかな」
「あ、それいいルン」
「だったらこことここの星をつなげないと。あ~それだったら全体を大きくして」
「そんなにでかい星座ってありえるルン。フワはもっと小さいルン」
「じゃあ大きくなったフワってことにしようよ」
「とうとつすぎルン!」
「そうかな。もっと成長したフワにわたしのってみたいっておもうけど」
ララはちょろちょろと触覚を動かしながら考え、
「成長したフワ、のってみたいルン」
フワに乗るきになった。
「でしょぉお! フワ、ペガサス座みたいになってくれないかなぁ。いっぱい食べたら、一杯成長するのかな」
「ひかる、お腹一杯食べさせるのは駄目ルン」
「だよね~」
大きくさせるために食べさせすぎちゃ駄目だよね。気長に成長を見守ればいいんだけどなぁ。
「フワが成長するまで、わたし達ってそばにいられるかな」
知っている、この疑問に対する回答は。それでも言わずにいられないのはそのことをわたし自身が自覚したいがためだ。
「トウィンクルイマジネーションが集まれば、みんなとはお別れルン」
「うん、解ってる。だからこそ楽しくいよう、もっとキラやば~☆でいよう。もっとイマジネーションを膨らませようよ!」
「ルン」
ララはわたしの想いに答え、わたしはわたしらしくなっていく。
それがララとの日常。あの頃の日常だったんだ。
「卒業まで後二週間、ずいぶんと早いものだねぇ」
声が聞こえる、これは遼じいの声だ。
心の奥底にまで響く遼じいの声を聞くと不思議と落ち着く。ざわついたものが少しおさまっていく。
「うん、あっという間だった」
ララがいなくなって、えれな先輩、まどか先輩が卒業して、一人の時間は多くなった。
その時間を使って、これまでよりも宇宙のことを、地球のことを、たくさんたくさん調べるようになった。ララと約束を果たす、そのための知識を得るために。
勉強ばかりではない、新しい友達もできた。以前クラスメイトだった子とも仲良くしていて、特に姫ノ城さんとは親しい関係が続いている。
あの選挙以降、姫ノ城さんのことをよくみるようになったし、姫ノ城さんもわたしをきにかけてくれもしている。
目標もできて、友達もいて、充実した日々。過ぎ去っていく時間もあっという間だ。
「あれだけ小さかったひかるが中学を卒業するんだねぇ。わたしは嬉しいよ。成長していくひかるの姿をみれるのは」
「わたし成長できてるのかな?」
すべてが充実したかのような日々ではあるのだけど、不安はあった。
さびしさがそうさせる。さびしさが時々顔を出してしまうから。
「どうしてそう思うんだい」
「どうしてかなぁ……最近ね、よく昔のことばかり思い出すんだ。まだ遠くない出来事のはずなのに」
昔を振り返ってばかりいることに焦りみたいなものはないけれど、このままでいてはいけないようなきはしている。
さびしい気持ちはいつまでもひきずっていたら、きっと前には進めない。
「昔のことに思いをはせる……いいじゃないか、わたしもよくするさ。いや、多くの人がそうしてきている。古代から続く立派な習わしさ」
星を眺め、自分のことのように遼じいは語ってくれる。遼じいもそうしたことがあるんだろうな。
「どうしてみんなそうしてきたのかな?」
「つながっていたいのさ、日常の中ではつながれないものと。そうして人は大切なことにきずいていく。一歩一歩そうやって進んでいけばいいさね」
「そうだといいんだけど、わたしは……」
遼じいの言葉の意味はなんとなくは理解できる。
星座のようにつながった大切な思い出は、わたしをキラキラと成長させてくれた。
でもわたしは星座のようにつながった思い出を大事にしすぎてしまっている。
このままそこにとどまり続けてしまうのが怖い。
会えないのが、さびしいままでいるのが怖いんだ。
* * *
「バレンタイン、彼氏の反応どうだった」
「ねぇねぇ、あの先輩には告白できたの」
学校の廊下を歩いているだけでちらほらと浮き足立った女子の声が聞こえてくる。
卒業式の前、みんなも心が慌ただしくなっているけど、それは別な理由だ。
恋人であったり、なかったり、もうすぐ去ってしまう三年生に自分なりのアクションをしていた。
「もうすぐ卒業式だからさ、みんな落ち着かないよね~」
庭につき、ペンチに座ってお弁当を食べながら姫ノ城さんに話かけると、
「わたくしはそんなことありませんわよ。なにせ観星中の金星、どっしりと構えているのが当たり前でなくて。あなたも観星中の銀河ならば、どっしりとお構えなさい」
後光が射しているかのように姫ノ城さんはビカっと金星のように輝きだした。
「どっしりか~じゃあちゃんと彼にはチョコを渡せたんだ」
「ええ、そりゃあもうどっしりと。けしてうろたえたりはしませんでしたよ、うろたえたりなどは……オホホホ!」
さきほどまで金星のように輝いていた姫ノ城さんは女子らしくもじもじと手をこすり合わせている。言動と行動が噛み合って全然ないとこ、とってもかわいいなぁ。
「って! あなたまでその話ですか! もう散々しましたわよ」
「え~わたしだって聞きたいよ~それから彼の反応はどうだったの」
「彼は美味しいとだけ」
「そっかそっか」
「そ、それと! ホワイトデーはちゃんとお返しをしてくださると」
「うんうん」
変に茶化すようなことはせず、嬉しさを隠せない姫ノ城さんに寄り添うように聞いていく。恋ってこんなにも女の子を変えちゃうんだ。
「わたしさ、姫ノ城さんがおつき合いするなんて、昔は考えもしなかったな~」
「わたくしもですわ。まったくいつも強引で……それでいて放っておけないんですわよ」
「でもそんな彼がみつけてくれたんだよね、姫ノ城さんの小さなきづかいを。誰からきずかされることもなくさ」
「そうでしたわね。って、思い出話なんてさせるんじゃありませんわよ」
怒っているかのようには言っているけど、その口調はやさしげで、とっても彼のこと大切にしているのが解る。
大切な人、大切な想い、それはきっと誰にだってあるもの。
「変なこと聞いてもいい?」
そんなきずきがわたしの中にある好奇心を刺激してしまう。
「そんな顔をして……早く言いなさいな」
なんとなく察しているような感じはする。姫ノ城さんは大きな事をいうけれど、細かなきづかいにきずける人。今もわたしにちょっとした変化にきずいている。
「卒業したらさ、姫ノ城さんは彼と離れ離れになってしまう。なんていえばいいのかな、本当はどうしたいのかなって」
「どうしたいですか……それはわたくし達が決めることではありません。時が進めば道はそれぞれ違っていき、その道に従い進んでいくのみ。たとえ道が交わらずとも」
姫ノ城さんは強いな。金星のように輝き続けるための強さがある。
道を進み、道を導く者としての覚悟が彼女にはあった。わたしにはないものだ。
「ですが彼といたいということを思ったことはわたくしですらあります。大切な人とわたくし達は突然離れてしまった、だからこそなのかもしれません」
でもそんな姫ノ城さんはララのことを覚えてくれている。別れすら姫ノ城さん達は言えずにいたっていうのに。
――ララと別れた翌日の学校
「あれ星奈、ララルンはどうしたんだよ。あ、まさか喧嘩でもしたのか」
登校し、教室に入って話しかけてきたカルノリにどう返答すべきか迷ってしまう。
ララの事、みんなにしっかり話そうと思ってここには来たんだけど、どうにも言葉がでてこない。あれ? なんでだろ。
「…………ううん、そうじゃないよ」
「じゃあどうしたんだよ?」
あれ違うの? みたいな顔でカルノリはいる。ちゃんと話さないと、ちゃんと。
「あのね、みんな聞いて欲しいことがあるの」
大きく息を吸ってからクラス中に響く声をだし、みんなの注目を集めた。
「星奈さん、どうされましたか」
姫ノ城さんがいち早く、駆け寄ってきてくれた。
「ララのことで、みんなに話さなくちゃいけないことがあって……ララさ、遠くの星へ帰らなきゃいけなくなっちゃたんだ」
「うそ、ルンちゃんが……ルンちゃんはまだ地球にいるんだよね」
「えっと、それは……」
もういないってしっかり言わないとだめなのに声が詰まる。あれ、どうしてだ?
「急でね、本当急で。帰らなきゃいけなくなって」
言わなきゃいけないこと、みんなに解ってもらわなくちゃいけないことがたくさんあるのに、感情的にしか話せない。つらいよ、なんでつらいの!
「どうしてそんな急に。羽衣さん、お別れくらいは言ってくれれば」
「ごめんね。本当に急なことで。ごめん……」
「あなたが謝ることではないですわ。先生にはお伝えしましたか」
「それもまだで……」
「星奈さん、いっしょにいきますわよ。まずはその涙をお拭きなさいな」
「え? あれ?」
姫ノ城さんがきずいてくれるまで、泣いてることにすらきずかなかった。
ララがいないっていう現実がそこにあって、ララのことはそれ以降みんなには話せていない。
わたしはお別れが言えたのに、みんなはそれができなかった。
わたしだけがちゃんとお別れができて、それなのに……
「星奈さん、ひかる!」
「あ……」
姫ノ城さんの強く放った声が聞こえて我にかえる。
またわたし、どこか違う場所へ行ってたんだ。
「あなたがわたくしにこのような質問をなさるのも、卒業式が近づくにつれて考え事をするようになったのも……ララさんのことですわよね」
姫ノ城さんはためらないがらも核心をついてくる。みんなが踏み込みづらいと思っていることでも踏み込んでくれた。
だから少し安心する。なんでだろうな。
「うん……わたしさ姫ノ城さんみたいに強くなれてないんだ。ララとお別れだって言えて、ちゃんと気持ちの整理をする時間だってあった。それなのに今のわたしはまだ囚われている。ララのために卒業式をしたいって考えて、姫ノ城さんにも手伝ってもらった。卒業という日をもうすぐ迎えようとしているのにさ」
強くなりたい、強くありたい、そう願えば願うほど自分の気持ちが歪んでいく。
どうしてかは解らない。知りたい、知りたい、どうしてこんなにもわたしは弱いんだろう。
自分のことを知ろうと何度も何度もララと向き合ってみても、返ってくるのは変わらない現実だけ。知りたいという好奇心だけは超えられない、それだけではだめなんだって思うけど、それ以外の方法をわたしは知らなかった。
「それのどこが行けないことなのでしょうか。わたくしさっぱり解りませんですわ」
「でも姫ノ城さんはしっかり自分の道を進もうとしている」
「わたくしではなくあなた、あなたはそうしたいのでしょ。だったらそうするのが正しいことではなくて。大切なものを失っても平然としていられるほうが困ります」
泣き出しそうにもみえた表情から一転して、みたこともないようなやさしい笑顔で姫ノ城さんはわたしと向き合ってくれている。わたしの震えた肩をつかみ、よりそおうとしてくれる。
「大丈夫ですわ。あなたは変われる。だってわたくしを変えてくださったのはあなた方です。ときには生徒会長選挙で戦い、プリキュアとしてわたし達を守ってくださった」
「今のわたしはもうプリキャアじゃないよ」
「でなければどうだというのですか。この先もそのままだと。あなたは観星中の銀河。こんな所で終わるはずがありませんわ。だから信じなさい、もっとあなた自身のことを」
姫ノ城さんの気持ちや熱意が悪いわけではない。悪いのはわたしだ。
これほど自分のことを支えようとしてくれているのに、気持ちのうえではまだ変わることができなかった。
「ありがとう、姫ノ城さん」
それでもこれ以上心配をかけさせまいと偽りの笑顔の仮面をかぶる。
うそなんてつきたくない。つきたくないのにつけてしまう。
こういった汚いぶぶんだけは変わってしまった。変わってしまったんだ。
「解ってくださればいいのですわ。そろそろ授業がはじまりますわよ」
嬉しそうにしている姫ノ城さんをみて、わたしはどこか安心していた。
ララの卒業式を開くための手伝いまでさせてるのに、これ以上は巻き込んではいけない。これはわたしの、わたしが解決しなければいけない問題なのだから。
* * *
「卒業か~あっという間だったね」
「いろいろ大変だったルン」
桜吹雪が舞う桜並木でララと一緒に歩いていた。春の咲く小雪は一面を鮮やかなピンク色に染め心すらもやさしくつつんでいく。
天気も快晴、桜も満開。そして隣にはララがいるすべてが理想どおりの夢の世界。
幸福で、嬉しくて、喜びに満ちている。
現実みが少しないようなきがするけど、今はそんなことはどうでも良かった。ただここにさえいられるのが嬉しい。それでいいんだ、それでいい。
「日本語も自力でこんなに話せるようになったルン。これもひかるのおかげルン」
「ララが努力したからだよ」
「努力できたのはひかるが側にいてくれたからルン」
ぎゅっと手をにぎって、ララが微笑むと、キラキラと心が輝きだす。
甘く柔らかいその笑顔をいつもみてきた。少し幼くて、でもいつも見守ってくれて、きずけばそれが当たり前になっていた。
ああ、いつだってこうしてたかった。こうしたかったんだ、わたしって。
「たくさんいろんなことしたルンね」
「修学旅行、ララといった時になにしてたっけ」
「UMA達と回ったとこを改めて歩いて、えれなとまどかがしてたダイビングをしたルン。夜は一緒に浜辺で歌ったルンよ」
「そうだったよね。どれもすごい楽しい思い出だったなぁ」
豊かな生態系が残った沖縄の海を満喫して、クワンソウが咲く花畑でUMAとのことを語り、星がきらめく夜の海辺で『ながれぼしのうた』を歌う。
隣にはいつもララがいて、ララといっしょにこの世界では歩めたんだ。
「ど、どうしたルン。ひかる」
「ごめん、なんだか想像するだけで嬉しくてさ」
「ひかるは時々すごい泣き虫ルン。みんなが泣きたくなるような状況だとみんなを引っ張るくらい強いのに、本当に孤独なときはいつも泣いてる。でも大丈夫ルン、わたしがいるルン」
「うん……」
現実味のない理想どおりのララに抱かれ、その好意に甘えてしまう。
ララの匂い、ララのぬくもり、感じたいな、感じていたいなぁ。
「まだ卒業式がはじまってもないのに、泣くの早すぎルン」
「えへへへ」
笑顔でいたい、このまま笑顔で。
そんな想いと暖かい居場所は、だんだんと感覚すらも鈍らせていく。
ここはどこで、ここはどんな場所かは今は知らなくていい、今はまだ……
きがつけば、卒業式がはじまっていた。
ララが卒業証書を受け取っている。ガチガチで緊張しちゃってる。そんなとこがララぽい。
わたしも卒業証書を受け取った。ララと一緒に卒業できたんだって実感できる。
「これが卒業証書、なんかえらくなったきぶんルン」
目のまえにララがいた。卒業式が終わって、卒業証書をみせあっていた。
「うんうん! またひとつ成長できたって思えるよね。わたしララと卒業できて嬉しいよ」
「わたしもルン」
「あ、写真撮ろうよ。卒業証書ひろげたときのやつ。カルノリ、写真撮ってよ」
カルノリにカメラを渡して、ララと一緒に卒業証書を広げている写真を撮ってもらった。
「これがこの学校の、地球ではじめての、宇宙人の卒業生。すごいよ、トップバッターだよ」
二人で写真をみていたら、キラやば~なことにきがついた。
宇宙ではじめてのお友達が、みんなのはじめてになっていく。
「みんなに伝えられれないのが残念ルン」
「でもいつか伝えられるようにしようよ。たくさんの人達にさ!」
理想だ。すべてが理想で埋められていく。
「二年三組のみなさん、お集まりいただけましたか」
「およ! どうしたルン!」
「実はさ、二年三組のみんなでララの卒業祝いをしたいって思ったんだ」
「ララ卒業おめでとう」
「みんな、ありがとうルン!」
みんなでララの卒業を祝っていると、ふわふわとした感覚は急激に強くなっていく。
幸せとは違う、想像力で生み出したまぼろしの中にいるからなのかもしれない。
意識を保たないと、終わってしまう。消えてしまう。
「写真撮るルン!」
みんなの声は聞こえない。ララの声だけが聞こえ、だんだんと情報が断片的なものになっていく。待って、まだわたしはララといたいのに。
「みんな、みんな、いつまでも一緒だよ。誰もかけることなんてない」
ララの笑顔、みんなの笑顔がひとつになって溶け合う、最高の卒業式。
「キラやば~☆」
これがたとえまぼろしでもいい。わたしは笑顔のままでいたい。それが偽りでも、わたしはまだここで。
「ひかる、また会おうルン。また会えるルン」
ララ、ララ、ララ、そう叫んでいるはずなのに声にでていない。
なんでさ、どうして理想どおりにならないの!
手をのばしても離れていってしまうララが振り返り、
「ア……リガ、トウ」
あの時と同じ、片言の言葉でララは告げた。
世界は白く輝いた。真っ白な白い世界、どこにでもいくことができる世界。
そこにはもうわたししだけしかいない。理想の世界はそうして終わりを迎えた。
(わたし、やっぱり……)
夢から覚めると涙がいっぱい溢れでていた。
なんで今日なの。どうしてあんなに幸せなのに、その今がないの。
(叶えたくて、叶えられなくて、全部夢で。わたしおかしいよ。またおかしくなってる……ララ、ララ、ララ、会いたいよ)
ひとりでずっと大丈夫って思っているのにずっとおかしいまま。
ララのいない卒業式。わたしはどう迎えるんだろう。
後編へ続きます。明日には投稿予定。