【疾走騎士】ゴブリンスレイヤーRTA ドヤ顔W盾チャート   作:もふもふ尻尾

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パート14 裏 後編 『地母神様は性愛も司ってるらしいっすよ?』

 時は夕刻、今日は特に目立ったトラブルも無い素晴らしい一日だった。

 ゴブリン退治の数が少かったのも幸いだ。

 お陰で今日はゴブリンスレイヤーさんの負担も少なく、彼はつい先程牧場へと帰っていった。

 まさに万々歳という訳である。

 さて、そろそろ他の冒険者さん達も帰ってくる頃ですね。

 忙しくなる前に彼等が請けた依頼書を纏めておきましょう。

 これもスムーズな業務遂行の為、必要なお仕事なのです。

 私が受付で鼻唄を歌いながら上機嫌で書類を整理していると、何やら同僚の監督官が唐突に書類の束を手渡してきました。

 

「あ、おい待てぃ! 肝心な書類渡し忘れてたゾ」

「えっ? 何ですかこれは……」

 

 どうやら全て依頼書のようだ。

 目を通してみると下水道での討伐依頼や溝浚いの物ばかり。

 しかし、特に変わった点はないように思える。

 

 …………いや、あった。

 

 依頼書には受注した冒険者を記入する欄がある。

 でなければ日々膨大な数の依頼を処理する中で、誰が受注したのか分からなくなるからだ。

 この依頼書の束に書かれている冒険者の名は全て同じ……そう、今日私がまだ目にしていなかった疾走騎士の名前が記されていた。

 

「私、てっきり彼は今日お休みしてるのかと思ってたんですけど!?」

 

 ギルドに私の絶叫が木霊した。

 つまりこの依頼書の束は全て、あの疾走騎士が請けた物だという事になる。

 どうして! 彼の担当は私なんですよ!?

 

「ままま、そう怒らずに。そっちは別件に追われてたでしょ? 彼、急いでるみたいだったから、私が対応してやるか! しょうがねぇなぁ……って思ったんだよ。こうして報告はしてるんだから良いじゃない」

「報告が遅すぎます! もう夕方じゃないですかっ!」

「でも、おかげでこんなに溜まってた下水道の依頼が全部片付いたんだよ? FOO↑気持ちいい~」

 

 彼が受注したであろうこの依頼書の束。

 詳細を確認してみると、一枚二~三ヵ所を溝浚いする依頼が何枚も。

 他にも巨大鼠(ジャイアントラット)巨大蟲(ジャイアントローチ)の討伐依頼、こちらは合わせて十枚以上はある。

 そして巨大鼠の変異種である暴食鼠(グラトニーラット)の討伐依頼まで……。

 

「ホントにこの量を全部押し付けたんですか!?」

「そうだよ」

「……ちょっと待って下さい、彼の名前は入っているのに一党の彼女の名前が入って無いんですけど……まさか──」

 

 記されているのは彼の名前だけで、一党である魔術師は同行していないようだ。

 つまり彼はこの量の依頼を単独(ソロ)で請けたという事になる。

 

「彼女は朝から酒場で神官の子とお勉強してるよ? 冒険者の鑑だねこのヤルルォ!」

「明らかにマズイじゃないですか! 何を見てヨシ! って言ったんですか!?」

「前回も大丈夫だったからヨシ!」

 

【挿絵表示】

 

 

 確かに彼は冒険者になった当日、一人で下水道に行き、暴食鼠を二匹討伐して帰ってきた実績がある。

 だからと言って今回もそうとは限らない。

 全ては賽子の目次第、それが冒険という物なのだ。

 

「なにも良くありませんよっ! 彼には明日、昇級試験を受けてもらわないといけないのに!」

「お、じゃあ終わったんだね。この前の件」

 

 彼女の言うこの前の件とは、疾走騎士の一党が討伐した『はぐれ』のデーモンの調査だ。

 調査の依頼を受注していたのは重戦士の一党。

 彼等は今日の朝、このギルドへと戻ってきていた。

 

「う……はい、調査結果の報告を受けました」

「ほうほう、それでどうだったの?」

「種別としては下級悪魔。しかしその巨体さと、有していた魔力の量からして、中級程度の強さはあったと見られています」

「ふむふむ、それを黒曜であるあの二人は討伐したと」

「はい、ギルドも昇級に足る人物として認定をしたようです。ただ経験点の差で、一先ずは疾走騎士の彼だけになりますけど……」

「やりますねぇ!」

「ただ、あまりにも昇級のスパンが短いので、少し変わった条件を出してきました」

「お?」

 

 一枚の書類を取り出して監督官へと差し出す。

 それは昇級審査の書類、もちろん彼の物である。

 そこに書かれているのは『上位冒険者と戦闘訓練を行い、その力量を以て判断せよ』という一文であった。

 

「……ほほう、これは面白いことになりそうだね」

「何も面白くなんてありませんよ。あと、これの後処理はそちらでお願いします。受注したのもそちらでだったんですから」

「おかのした!」

 

 私は先程手渡された依頼書の束を彼女に返し、頭を抱えてため息を吐いた。

 はぁ……本当になんでこんな事に……。

 

───────────────

 

「んんっ……ふぅ! もうこんな時間。今日一日ずっと本の虫になってたわね」

 

 あれからずっと本を読み、たまにミルクを飲みながら過ごしていた私達。

 小さく伸びをして外を見てみると、窓からは夕日が覗いている。

 冒険を終えた一党達もいくつか帰ってきたようで、ギルドは徐々に賑わいを見せ始めていた。

 

「本当ですね……今日はありがとうございました。色々と教えて頂いて」

「いいのよ、こっちも良い勉強になったから」

 

 彼女が感謝を述べる。

 怪物辞典(モンスターマニュアル)や他の本を暗記し終えた私は、彼女にその内容を解説してあげたのだ。

 師匠ほどとは言えないが、それなりに分かりやすく教える事が出来たと思う。

 

「凄いですよね。一度読んだだけで殆どの内容を覚えてしまうなんて」

「まあ学院に居た頃は必死に勉強ばっかりしてたから、コツは掴んでるつもりだけどね……」

 

 きっとこれは私の長所なのだろう。であれば、最大限活かす他はない。

 アイツが持っていない私自身の長所、ソレを伸ばす事が、この積み重ねが、ひいてはアイツを助ける事に繋がるはずなのだから。

 

「でも、聖典なんて読んだのは初めてね。なかなか面白かったわ」

 

 私は怪物辞典(モンスターマニュアル)の他に、彼女の持っていた聖典も一冊読ませてもらっていた。

 それは神官である彼女と、そしてアイツも信仰している神である地母神の聖典である。

 内容としては地母神の役割や、その教え等が書かれていたが、かなり分厚く、思いの外読むのに時間が掛かってしまった。

 

「そういえば疾走騎士さんも地母神様を信仰していますよね」

「まあそうね。でもアイツが祈ってるの見たこと無いのよ」

 

 考えてみれば疾走騎士が手を合わせている姿を見たことは今まで一度もなかった。

 本当に彼は地母神の信徒なのだろうか?

 

「え……そうなんですか?」

「地母神とは別の神から宣託(ハンドアウト)がしょっちゅう下ったりもして、それで忙しなく動いてるみたいなのよね」

「別の神? 複数の神を信仰? そんな筈は……」

 

 顎に手を当てて唸る女神官。

 丁度良い機会だ、疾走騎士に指示を送っている神について聞いてみよう。

 もしかしたら何か知っているかもしれない。

 

「ソゥシーヤっていう神様らしいけど、聞いたことないかしら?」

「……あ、あの、もしかしてそれって邪神や外なる神なのでは?」

 

 疾走騎士の言っていた神の名を聞いて不安と焦りを見せる彼女。しかし……だ。

 

「いや、それは無いでしょ。初めて行ったあの冒険で、私はアイツの解毒の奇跡で救われて、それが無かったら死んでたのよ?」

 

 やはりこれに尽きる。分かりにくい所は多いけれど、それでも疾走騎士は絶対に悪い奴じゃあない。それだけはハッキリと言えた。

 

「…………確かに考えてみればそうですね。私も守ってもらいましたし、それからも色んな人を救っていますし」

 

 どうやら彼女も納得したようだった。

 地母神の教えは『守り』『癒し』『救え』の三原則。これらは正に、彼が今まで行ってきた事そのものだ。

 彼は祈るのではなく、その行動をもって地母神に報いているという事なのではないだろうか? 憶測に過ぎないが、辻褄はあっている。

 しかしソゥシーヤについては、神官の彼女ですら聞いた事が無い様子……流石にこれはお手上げかしらね。

 

 そんなやり取りをしていると、不意に聞こえてきた見知らぬ冒険者達の会話が耳についた。

 

「おい、見ろよあの魔術師」

「あぁ? なんだ、あの新人がどうしたってんだよ」

「何でもたった数日で白磁から黒曜になったらしいぜ?」

「へぇ、それは凄いね」

「ワシらもあやかりたいものだ!」

「あぁ、でも男の相方が居てな? そいつ盾しか持ってないんだぜ? どう思うよ」

「なんだそりゃ? どうやって戦うんだよ」

「そりゃ勿論身を守るしか出来ないさ。そんな臆病者を抱えて、それでも黒曜に昇進するってんだから、よっぽど優秀な魔術師なんだろうな?」

 

 背後のテーブル席に座った冒険者の一党。逆立った髪が特徴の若い只人の戦斧士。中年とまではいかないが、そこそこの年齢であろう坊主頭の只人の武僧。フードを被っていて分かりづらいが、恐らく森人の妖術士。そしてさっきからイラつかせる言動をしている圃人の斥候。彼等の会話が私と疾走騎士の事を指しているのは明白だった。

 

「成る程なあ。なら一党に誘ってみるか? そんなろくでもない奴より俺達の方がまだ良いだろ」

「そうそう! だからおいらちょっと声掛けてくるよ、へへへ」

 

 どうやら圃人の斥候がこちらへ来る様だ。苦虫を噛み潰したように不快感を露にした私に、神官の彼女は狼狽えている。

 

「なあ! そこの魔術師、ちょっと良いか?」

「……何?」

「おいら達鋼鉄等級なんだけどさ、良かったらうちの一党に入らないか?」

 

 正直会話をするのも嫌になる。しかしここはアイツを見習って……というほどではないが、一応礼儀を弁えてちゃんと断るべきだろう。

 尾を引くのは今後の活動に差し支える可能性もある。それくらいの事は私にも理解できていた。

 

「悪いけどもう一党は組んでるわ。他をあたってもらえるかしら」

 

 読んでいた本を纏めて神官に手渡しながら、私は気がない返事を返す。

 そう、ここまでは良かった。だがここからが問題だった。

 

「そりゃ知ってるって。あのチキン野郎だろ? 可哀想だよな、あんな奴と一緒に冒険だなんてさ」

 

 へらへらと笑いながら、アイツを侮辱する圃人の斥候。

 怒りを堪えながら男の顔を横目で見た私は、ある事に気付いた。

 この男、昨日私達が鋼鉄等級一党と食事してた時にも疾走騎士を侮辱していた奴だ。

 

「大方泣いて頼まれでもしたんだろ? 放っとけ放っとけそんな奴!」

 

 更にこの男は私の耳元に顔を近付けると、聞くに耐えない言葉を囁いた。

 

「おいら達……いや、おいらと組んだ方がよっぽど良い思いをさせてやれるぜ? あいつらバカだからよ、冒険の稼ぎをちょろまかしてもなんの疑いも持たないんだ、楽に稼げるぜ? だから──」

「失せて。二度は言わないわよ」

 

 私が男の目の前に杖を割り込ませて距離を取る。

 すると彼はすぐに激昂し、今度は怒鳴ってきた。

 

「んなっ! せ、先輩が親切心で声掛けてやってんのに、何だよその態度は!」

「お、おい止せよ!」

 

 流石に不穏な雰囲気を察したのか、男の一党が止めに入ろうと駆け寄ってくる。

 このまま放っておいても勝手にコイツは連れていかれるだろう。しかしそれだけでは私の気が収まらない。

 

「親切心ね……下心の間違いでしょ。顔に出てるのよ」

 

 思った事を口にしてしまうのは私の悪い癖だ。

 とはいえ、言わなければ気が済まない。

 最初声を掛けて来た時から私の胸ばかり見て、耳元に顔を近づけてきた時も鼻の下を伸ばして……楽に稼げるから何? だから俺の女になれって? はっ! 虫酸が走るのよ、このクズ野郎。

 

「て、テメェッ!!」

 

 しかし、今回はタイミングが悪かった。私の言葉に逆上したこの男は、驚く事に一党の制止を振り切って私に殴りかかって来たのだ。

 

「っ!?」

 

 マズイ、不意を打たれた。

 呪文の詠唱も間に合わない。

 そして圃人というだけあって素早い。

 気付いた時にはもう私の眼前に拳が迫って──。

 

「おおっと! 女の子に手を上げようとするなんて、圃人の風上にも置けないね」

 

 ……しかし寸前に男の腕が掴まれ、その拳が止まる。

 私を助けたのは……鋼鉄等級一党の圃人野伏だった。

 

「あ、貴女……」

「くっ! 何しやがる!」

「困るんだよねぇアンタみたいなクズ。同じ圃人の私まで偏見の目で見られるんだよ」

 

 どうやらかなり力を入れて掴んでいるようで、苦悶の表情を浮かべる男の腕は、びくとも動かない。

 

「あぁ!? やるってのかよこの野郎!」

「まっさかぁ! 争いは同じレベルの者同士でしか起きないんだよ? やるわけないじゃん」

 

 彼女がぱっと手を放すと、男はバランスを崩し尻餅を付いた。

 成る程、どうやら本当にレベルが違うようだ。

 内面だけではなく、強さという意味でも同様に。

 

「おい! いい加減にしやがれ!」

「頭を冷やした方が良い」

「お嬢さん方すまなんだ! この詫びはいずれ!」

「放せっ! 覚えとけよこのクソアマどもがぁっ!!」

 

 一党達に取り押さえられた圃人の斥候は、捨て台詞を吐きながらも無理矢理連れていかれた。

 ……どうやらこれで一段落のようだ。

 

「だいじょぶ? いやーとんだ災難だったねー」

「あ、ありがとう。助かったわ……」

 

 ふぅ、彼女のお陰であの男に殴られずに済んだ。これは借りが出来ちゃったわね……。

 

「気を付けなよ? 冒険者にはあんなのも少なからず居るからさ。それに、顔は女の命ってね!」

 

 確かに軽率だった。冒険者同士の喧嘩はよくある話だが、それでも魔術師の、それも女を殴ろうとしてくるのは想定外だったのだ。

 ああいった咄嗟の事に対応出来る手段も、今後は用意しておく必要があるだろう。

 

「何て言うか、圃人にしては珍しい方ですね」

「ぷるぷる、わたしわるいレーアじゃないよ!」

「え……あ、あはは」

 

 圃人野伏のジョークに女神官は苦笑いを浮かべている。

 確かに、圃人とは思えない正義感だ。あの誠実な自由騎士の一党に属しているだけはあるという事ね。

 

「そういえば、他の三人はどうしたの?」

 

 辺りを見回すも、彼女の仲間の姿がない。

 どうやらここに居るのは彼女一人だけのようだ。

 

「今は依頼の報告中。私は食事の席取りで先に来たの。ほら、そろそろ混む時間じゃん?」

「ああ、確かに…………って、ああああ! 忘れてたあああ!」

「ど、どうしました?」

 

 そこで私はある事を思い出し、慌てて席を立つ。

 突然絶叫を上げた私に神官の子も驚いていた。

 

「ごめんなさい、悪いけどもう宿に戻るわね!」

「あ、はい! またお会いしましょう」

「はいよ! んじゃあまたね!」

 

 彼女達に別れを告げて、私はギルドを飛び出した。

 下水道に向かったアイツは汚れて帰ってくる筈だ。

 予め洗濯の用意をしておけば効率的だろうと考え、日が落ちるまでには宿に戻ろうと決めていた事をすっかり忘れていたのだ。

 

「ギルドに報告する時に水で流す程度はするでしょうけど、服に染み付いた臭いは落ちにくいものね」

 

 宿の裏手には井戸がある。女主人に桶を借りて、そこで洗濯をしよう。

 自分の行動を予めちゃーんと決めておく。疾走騎士の言葉通りに今後の予定を立てながら、私は宿へと向かうのだった。

 

 

───────────────

 

 

「っていう事があってさあ。ソイツ、以前私達に声を掛けて来た奴だったよ」

 

「下らん。大方、新人ならいけるとでも踏んだのだろう」

 

「しかし、その調子だとまた何か仕出かすのではありませんか? 何かしらの手を打つべきかと思いますが……」

 

「そうですね。我々と懇意にしている彼を逆恨みして、悪評を周囲に吹聴しているのはあの男です。もはや慈悲は不要かと」

 

「まあ、その冒険者に関してはこっちに任せてよ。二度とこの世界に居られないようにしてやる!」

 

「オッスお願いしまーす!」

 

「そういえば、あの男はまだ戻っていないのか?」

 

「彼ならもう報告を終えてったよ? 今ごろ宿に帰ってるんじゃないかな?」

 

「い、いつの間に!? 全く気が付きませんでした……」

 

「であれば、私達がここにいる意味はありませんね。宿に戻りましょう」

 

「じゃあ、今回の『お茶会』はお開きだね。それじゃあまた」

 

 

───────────────

 

 

「あっ」

 

 宿の入口を開けた鋼鉄等級一党の目の前に、一人の男が立っていた。

 薄い麻のシャツを身に付けた男の黒髪は濡れており、前下がりとなって目元を隠している……どうやら風呂上がりのようだ。

 

「お疲れ様です。今日も互いに無事戻って来れましたね」

 

 そう自由騎士が挨拶をすると、彼は微笑みながら頷いて、自身の部屋へと歩いていった。

 他の三人はそれを呆然と眺めていたが、それも仕方がない。

 彼女達のなかで兜を外した状態の彼を見た事があるのは、頭目である自由騎士のみなのだ。

 

「ちょ、ちょっとリーダーリーダー! さっきのって……彼だよね!?」

「確かに気弱そうな優男だったが、人は見掛けによらんな……」

 

 顔を赤くして自由騎士の肩を揺らす圃人野伏と、腕を組んで感想をもらす森人魔術師。

 二人は先程の優男が、あの勇猛な戦い方をする疾走騎士だとは想像もつかない様子だ。

 

「でも、ちゃんと鍛えているようでしたよ?」

 

 彼は細身であったが、その体にはしっかりとした筋肉が付いていた。

 それは十分な鍛練を経ている事の証明に他ならない。

 

「話によれば、師である祖父が凄まじい剣の使い手だったとか。とはいえ──」

「押せばイケそうだね!」

「押せばイケそうだな!」

「押せばイケそうでしたね!」

「押せばイケそうですね!」

 

 ……暫しの沈黙のあと、女僧侶による裁きの鉄槌が圃人野伏の頭上に振り下ろされた。

 床に沈んだ彼女につられてしまった三人は、微かに頬を赤らめている。

 

「んんっ! ……違います。我々に下った宣託(ハンドアウト)は、そんな事ではありません」

 

 自由騎士は至高神の信徒である。

 至高神は法と正義を司る神ではあるが、神自身が人を裁くのではない。

 何が正義かを決めるのは、人自身だというのがその教え。

 そう、至高神は『人が神の人形となることを是としない』のだ。

 

「彼が覚知神に魅入られた哀れな傀儡なのだとすれば、それを救うのが私達の役割です」

 

 そうでなければ良し。万が一そうだったのなら、どんな手を使ってでも彼を助けよう。

 決意に満ちた彼女達はお互いに頷いて、自分達の部屋へと戻る。

 ……気絶した圃人野伏を引き摺りながら。

 




Q.聞いてきたけど至高神ちゃんそんな宣託(ハンドアウト)下してないってさ!

A.あああああああもうやだあああああああ!!



おまけ

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