【疾走騎士】ゴブリンスレイヤーRTA ドヤ顔W盾チャート   作:もふもふ尻尾

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パート15 裏 後編 『元祖走者の到着』

 鋼鉄等級一党と別れた後、依頼を探すため受付へと向かった私達。

 そこにはオルクボルグという言葉を口にしながら受付嬢に迫る森人の冒険者が居た。

 オルクボルグ……それは森人の言語での小鬼殺しを意味する。

 しかし受付嬢はその言葉を理解できず、困っている様子だった。

 それに対し、私達は助け船を出す事にしたのだが──。

 

「入って、どうぞ」

「おじゃましまーす」

 

 監督官の案内で、談話室へと通された疾走騎士と私。そしてゴブリンスレイヤーを探してこのギルドまで来たという一党。

 部屋の中央にはテーブルと、その両側に三人程が並んで座れる大きさの椅子が置かれている。

 とても高価そうな家具……部屋の掃除もちゃんとされてるみたいだし、普段から客室として使ってるのかしら? 勝手に使われると困るという受付嬢の言葉も納得ね。

 森人が椅子へ座り、鉱人と蜥蜴人はその傍らで立ったまま。私と疾走騎士は向かいの椅子へと並んで座る。

 

「只今おもみもものサービスをさせていただいてますので」

「あら、気が利くじゃない」

 

 部屋の内装を眺めていると、監督官がお茶を運んできた。

 やはり銀等級の客ともなると、ギルドも相応の対応をする様だ。

 カップを人数分テーブルに置いて、彼女は部屋から出ていった。……ねぇ、このお茶大丈夫なの?

 

「ところで、三人はどういう集まりなんでしたっけ?」

 

 私が恐る恐るお茶に口をつけたところで疾走騎士が話を切り出す。

 大弓を背負った弓手の森人(エルフ)、奇妙な東洋風の衣服を着た道士の鉱人(ドワーフ)、民族的な衣装に身を包む僧侶の蜥蜴人(リザードマン)、しかも全員が銀等級。

 よくよく考えてみれば銀等級の冒険者が三人も訪ねてくるなんて、よっぽどの事よね。

 ゴブリンスレイヤーに用があるって事は、ゴブリン関連なのは間違いないのだろうけれど、ゴブリンでよっぽどの事ってあんまり想像つかないし、できれば詳細を聞いておきたいわ。

 

「なんで話す必要があるの? 私はオルクボルグに依頼をしに来たのよ。幾らシエルドルタが相棒だとしても、話す訳にはいかないわね」

 

 もう放っておいたら? そう口に出したくなるのを堪える。

 私達は最初の冒険でゴブリンスレイヤーに助けてもらった借りがある。

 円滑に話を進められるようにしておけば、ゴブリン退治も捗るだろう。そう思って私達はここにいるのだ。

 

「先程、言語の違いで話が通じていないようでしたが?」

「う……」

 

 どうやら痛い所を突かれたようで、押し黙った妖精弓手。

 疾走騎士が居ればゴブリンスレイヤーにも話が通りやすいし、私は彼等の言語を理解できる。

 彼等にとって私達は渡りに船の筈だ。そこまで邪険にする理由があるのだろうか?

 

「まあ、あなた方の都合も理解は出来ます。森人、鉱人、蜥蜴人の三人、しかも全員が銀等級と来てます。恐らくは……政治なのでしょう?」

「ほう、お前さんよう知っとるの。何ぞ関わりでもあったんかい?」

 

 鉱人道士が自らの立派な白い髭を撫でながら、疾走騎士を見定める。

 

「少しの間、軍に居ました」

 

 成る程、この人達が持ってきた依頼はあまり表沙汰にはしたくない案件って事ね。あの森人の言い方は気にくわないけれど、彼女も忠実に任務を実行してるだけなのだろう。そう考えれば寧ろ好印象に思えるが──……。

 

「あらあら! じゃあすぐ辞めちゃったのねぇ。 悪魔(デーモン)と戦うのが怖くなったのかしら?」

 

 前言を撤回しよう。私コイツ嫌い。メッチャ嫌い。

 

「お主、見たところ鋼鉄等級じゃが、冒険者になってからどれくらい経つ?」

 

 鉱人の問いに対し、疾走騎士は無言で左手の指五本に、右手の指三本を合わせ、計八の指を立てて見せた。

 

「八……八年っちゅう事はないじゃろうな。八ヶ月かの?」

「いえ、八日目です」

「はあっ!?」

「なんと、それはそれは……」

 

 声を上げて身を乗り出す妖精弓手と、その後ろで目を剥いている蜥蜴僧侶。

 銀等級の彼等から見ても、疾走騎士の昇級速度はやはり異常なようだ。

 

「ちょっと流石にそれは嘘でしょ!?」

「ギルドに確認して頂ければ分かるかと」

 

 そう、彼の言っている事は紛れもない事実なのだ。

 疾走騎士の言葉に、彼女は開いた口が塞がらないといった様子。

 ふふん、この森人もようやく疾走騎士の凄さを理解したようね! ……まあ私が言えた義理じゃないけれど。

 

「ふむ、これで分かったかのう耳長の。こやつも伊達にかみきり丸の相棒として歌われとる訳ではないというこった。信用して話しても構わんじゃろ」

「むう……わかったわよ」

 

 どうやら話す気になったようだ。

 不満そうに口を尖らせた彼女が、ようやく依頼の内容を話し始める。

 

「近頃都の方で悪魔(デーモン)が──」

「お断りします」

 

 が、疾走騎士は即座に切り捨てた。

 

「ちょっ、何でよ!? まだ何も言ってないじゃない!」

「いや、ゴブリン退治の依頼でないなら彼は断りますよ?」

「~~っ! 話は最後まで聞きなさいよ!」

 

 顔を真っ赤にしながらテーブルを叩いて立ち上がる妖精弓手。

 対する疾走騎士はそれをスルーしつつ、鉱人道士と蜥蜴僧侶に向けて肩を透かした。

 

「とまあ、こういう具合に喧嘩になってしまう訳です。ゴブリンスレイヤーさんなら間違いなく」

 

 確かに……その光景がありありと目に浮かぶわね。

 ゴブリンスレイヤーはゴブリン以外には全く興味を持たない。

 故に彼はゴブリンスレイヤーなのだが、それが度を超している事をこの一党はまだ知らない。

 しかし疾走騎士の言葉を聞いて、小鬼殺しという人物が如何に気難しい性格かを、一応は感じ取ってくれたようだ。

 

「成る程のう。こりゃとっとこ丸には居てもらわにゃ困るわい」

「ハッハッハ! 相違ありませぬな!」

「あーもうっ! なんなのよコイツは!」

 

 床に敷かれたこれまた高価そうな絨毯の上で地団駄を踏む妖精弓手……弁償させられても知らないわよそれ。

 

「では拙僧が説明致そう。よろしいかな?」

「よろしくお願いします」

 

 一歩前へと出た蜥蜴僧侶の言葉に疾走騎士が頷くと、妖精弓手はどっかと椅子に座り直し、腕を組んで静観を決め込んだ。

 

「まず、我々が依頼するのはゴブリン退治に他ならぬ」

「なら間違いなく請けるでしょう。場所、群れの規模等は分かりますか?」

 

 歯に衣着せぬ物言いをする疾走騎士に、蜥蜴僧侶が困ったように唸る。

 

「出来ればまず、拙僧らの事情を聞いて欲しいのだが……」

「彼は興味を示さないと思いますよ? それに、大体の予想はつきます」

「ほう、その心は?」

 

 すると蜥蜴僧侶の問い掛けに、疾走騎士は大きく息を吐き、暫しの沈黙。どうしたのかと銀等級の彼等はお互いを見合った。

 無理もない。疾走騎士にとって、その言葉はあまりにも重いのだ。

 俯いて、ぽつりと呟くように、彼は……彼自身にとっての呪言を口にする。

 

「…………ゴブリン相手に軍は動きません」

「疾走騎士……」

 

 ……そうだった。コイツが騎士を辞めた理由は、ゴブリンから人々を救ったからだってゴブリンスレイヤーが言ってたわね……。

 軍が動けない代わりに冒険者が動く。この世界ではよくある事だ。

 俯いた彼は普段からは想像もつかない程弱々しく見えて……どうしてだろう、つい抱き締めてあげたくなってしまう。

 ……別に彼はそんな事を望んではいないだろうけど。

 

「とはいえ、ゴブリンスレイヤーさんが戻るまで時間があります。彼の代わりに聞いておきましょう」

 

 疾走騎士が顔を上げて言うと、うむ、と承知し、蜥蜴僧侶が語りはじめる。

 ──今、封印されていた魔神王(デーモンロード)が復活し、世界を滅ぼそうとしている。

 それに対抗するため、只人、森人、鉱人、蜥蜴人といった多種族の王や長が集まり、軍議を開くこととなった。

 だが、その近辺に大規模なゴブリンの巣が見付かってしまったのだ。

 そこは森人の土地であるが、森人が兵を動かせば只人との間に角が立ってしまう。

 その代わりの冒険者として我らが雇われ、只人からはゴブリンスレイヤーが選ばれたのだ──。

 これらの内容を話しながら、蜥蜴僧侶は机に地図を広げた。

 

「遺跡ですね」

「恐らく」

 

 と、そこで部屋の扉が開かれた。

 

「こ↑こ↓」

「そのようだな」

 

 監督官に連れられて、ゴブリンスレイヤーが部屋へと到着したのだ。

 

「ゴブリンスレイヤーさん」

「え!? こんなのが!?」

 

 銀等級の一党達は彼がゴブリンスレイヤーである事に驚いていた。

 吟遊詩人に歌われる勇者、小鬼殺し。しかし実際に現れたのは粗末な装備に身を包み、顔が見えない不気味な風貌をした冒険者だ。

 鋼鉄等級である疾走騎士はまだしも、彼は銀等級。イメージとのギャップに、妖精弓手は信じられないといった様子。

 しかし実際、彼こそがゴブリンスレイヤーなのだ。

 

「客だと聞いた」

「遺跡に大規模なゴブリンの巣。情報は以上です」

「そうか、請けよう」

「あと、今回は自分も同行させて頂きたいのですが」

「RTAか」

「ええ、そうです」

「そうか……分かった」

「では行きましょう」

 

 疾走騎士は机上の地図を手に取って、ゴブリンスレイヤーの目の前で広げて見せたあと、自ら同行を申し出て、ゴブリンスレイヤーは承諾。そのまま部屋を出ていった。

 あまりにも早いやり取りに私達は困惑した。まるで彼等二人の間だけ時が加速してるような──……。

 

「……って、ちょっと待って疾走騎士! さっき同行するって言ってたわよね? 私それ聞いてないんだけど!?」

 

 ああもう! 相変わらずホンット勝手なんだから!

 置いていかれる訳にはいかない、急がなければ。

 私は立ち上がり、二人を追って走り出す。

 

「ふむ、話が早すぎるのも考えもんじゃの」

「依頼額の相談も無しとは、たまげましたなあ」

「なんか思ってたのと違う……」

 

 想像の範疇を超えた未知の存在に困惑しつつ、彼等もまた、部屋から出ていく。

 そして残されたのは、ゴブリンスレイヤーを案内して来た監督官だけ。

 

「ふむん、RTA……ねぇ?」

 

 ゴブリンスレイヤーが口にしていた意味深な言葉を、彼女は聞き逃してはいなかった──。

 

───────────────

 

 部屋を出たゴブリンスレイヤーと疾走騎士は階段を降り、最短距離で受付へと向かう。

 不気味な鎧兜が並んで二人。その異様な光景に、周囲の冒険者達は反射的に距離を取る。

 私はそんな彼等の姿を見付けて、階段を駆け降りた。

 

 ────ガンッ。

 

「大丈夫か」

「問題ありません」

 

 えぇ……疾走騎士が置いてあったテーブルに体をぶつけたんだけど……。

 

「何してるのよ疾走騎士……」

 

 もしかして疲れてるんじゃないでしょうね? でも今日の昇級審査では特に不調そうな感じはなかったし、兜のせいで視野が狭いのかしら?

 

「ランス……の調整です」

「? アンタ槍なんて持ってないじゃないの」

 

 もしかして何かの隠語? さっきのあーるてぃーえー……? といい、コイツらの言葉がイマイチ分からない。

 森人や鉱人の言語より難しいってハッキリ分かるわね。

 

「あれ? ゴブリンスレイヤーさん、さっきお客が来てるからって部屋に向かったんじゃ……?」

 

 戻ってきたゴブリンスレイヤーを見付けて、神官の彼女が駆け寄って来た。どうやら待たされていたようだ。

 彼があまりにも早く戻ってきた事、そしてどういうわけか疾走騎士や私も一緒に戻ってきた事に疑問を抱いた。

 するとゴブリンスレイヤーが口を開くよりも先に、疾走騎士がいつものように一切の無駄を省いて話す。

 

「今回の目標は大規模なゴブリンの巣。我々も同行し、共同して依頼にあたる事となりました。そちらにとっても、悪い話ではないと思いますが?」

「あ、はい! わかりました! よろしくお願いします!」

 

 疾走騎士の説明を聞いた彼女は状況を理解した様子だ。

 ところで疾走騎士? それより先に声を掛けるべき相手がここに居るんじゃないの?

 

「ねえ疾走騎士……私は?」

 

 或いは、本当に私を置いていくつもりなのか。そんな一抹の不安も感じはしたが……。

 

「もちろん今回も頼りにさせて頂きます」

「ええ! 任せて!」

 

 当たり前よねえ? 彼と正式に一党を組んでるのは私なんだから!

 ゴブリンスレイヤーの相棒も、どっちかと言うと神官の彼女だし、歌なんてあてにならないわね。

 それにしても疾走騎士を犬だなんて……どうしてコイツはこんな風評被害ばかり受けるのかしら。

 

 ……まぁ、落ち込んでても仕方ないわ。ちゃんとした疾走騎士の活躍を歌ってもらえるように頑張りましょ。

 そしたらきっと、私とコイツの二人の物語が歌われるようになって…………はっ! いけないいけない。 変な想像してる暇なんて無いわね。

 

「待ちなさい! 私達を置いていくつもり!?」

「……来るのか」

 

 妖精弓手が私達を呼び止めた。

 あ、来るのね。予想はしてたけど。

 

「拙僧らも冒険者、ついていかねば先祖に顔向けできませぬ故」

「わしらにも駄賃が出とるからの、働かざる者食うべからずってな」

 

 こうして、私達七人はゴブリン退治へと向かう事になった。

 ……いや、多くない? 銀等級が四人も居るゴブリン退治って何よそれ。

 というかそもそもの話、疾走騎士がこの依頼に着いていく意味が分からない。

 別に報酬が良いって訳じゃ……って、あれ? 報酬の話、してないわよね? もうっ! 話を端折り過ぎよ!

 

「あ、因みにここから二~三日ほど歩く距離なので頑張りましょうね」

「はぁ!?」

 

 ウッソでしょ疾走騎士!? うー……わかったわよ! やってやろうじゃない!

 




Q.今ガバムーヴしましたよね?

A.乱数調整です。
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