ここは博麗神社、人里離れたこの寂れた神社を1人掃除する巫女がいた。
彼女は博麗霊夢。この神社の巫女にして幻想郷の調停者である。
「ふぅ、こんなに綺麗にしたんだから今日こそは参拝客が来るはず!…きたらいいなぁ」
少女の口からこぼれたように人里離れたこの神社には参拝客など居なかった。
ただでさえ人里から離れており、道中も整備されてはいない、あまつさえ妖怪に襲われる危険を起こしてまで参拝しに来る者はいなかった。
「今日はなんだか参拝客が来そうな気がしたのに…時間の無駄ね」
そんな勘を頼って掃除するあたり、この巫女、かなりの暇人である。
「疲れたし、お茶でも飲もうかしら…あら?」
箒を片付けて母屋に向かおうとすると、階段を登ってくる小さな足音が聞こえてきた。
(うそ!?ほんとにきちゃった!)
期待を胸に出迎えの準備をする霊夢、その足音が階段を登り切るとき
「ようこそ!博麗神社へ、素敵な賽銭箱はそこ…よ?」
とびきりの笑顔で迎えたはずが最後には困惑の表情に変わってしまった。
そこには、太陽の光に反射する美しいブロンド髪の子供が肩で息をするように立っていた。
(子ども?こんなところに1人で?)
おかしい、この子供は人里離れたこの神社までたった1人でたどり着いたというのだ。道も整備されていないというのに
なにより妖怪からの脅威から逃れられるはずもないこの子供は一体…
「ねぇ…」
そんなことを考えていた霊夢におずおずと話しかける子供
「ここでお願いすればなんでも叶う?」
「えっ?そ、そうね!ここでちゃんとお賽銭入れて願えば叶うわよ!…たぶん」
そんなご利益は存在しないだろうに、ついつい調子の良いことを言ってしまう霊夢。ちゃんとお賽銭を入れるように言う辺り、がめつい巫女である。
「ホントに!?じゃあお願いする!」
その言葉に表情を輝かせ、頬を緩める子供。
その表情を見たがめつい巫女はと言うと
(可愛い!何この子天使!?)
何故かメロメロであった。
(綺麗な髪ね…女の子かしら?)
「ねぇちょっと」
「なぁに?お姉ちゃん」
「お、お姉ちゃん!?」
なんと破壊力のある言葉であろうか。ずっと1人で神社で過ごしていた霊夢には効果は抜群だった。
「どうしたの?お姉ちゃん?」
小首を傾げ、それでいて笑顔で問いかけてくる
(何この天使、やばいわ)
「んんっ、ねぇ、あなた人里から来たの?親は?」
「そうだよ」
「1人で?」
「んー、1人ではなかったよ」
それを聞いて安心する霊夢
「そう、あ、私は博麗霊夢。ここの巫女よ」
「れーむ?れーむお姉ちゃん!」
(ぐふぅ!?)
本日2度目の萌え攻撃。耐性のない霊夢には効きすぎた。
「あ、あなたの名前は?」
「ボクは雅貴だよ。よろしくね、れーむお姉ちゃん!」
そう綺麗なブロンドの少年ははにかんだ。
(可愛すぎる!?…え?ボクってことは男の子?うそぉ!?)
てっきり女の子と思っていた霊夢は驚きを隠せないまま、目の前の少年の笑顔に見惚れていた。
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私は眼を奪われていた。たった1人の少年に。ついさっき初めて会ったばかりだと言うのに…。
その理由は分からないけれど、彼を見ているととても不思議な感覚に襲われる。
なにか、こう、母性をくすぐられると言うのだろうか、大事にしたい、守ってあげたいと自然に思えてきてしまった。
「ねぇ、霊夢お姉ちゃん」
「なぁに?」
『お姉ちゃん』と呼ばれているだけなのに顔が熱くなってしまう。どうしたのよ私は…
「お参りの仕方、教えて」
「良いわよ、まずはこうやって」
そういいながら私は作法を思い出す。自分でお参りすることはないが、最低限のことは覚えてないといけない。
ニ礼二拍手一礼の動作を雅貴に教える。
「ありがと、霊夢お姉ちゃん」
「どういたしまして」
しかし、まだ幼い筈なのに礼儀作法を気にするなんて、とても几帳面なのかしら?どこかの誰かさんと大違いね。あら?噂をすれば…
箒に跨る白黒が近づいてくるのが見える。
「おーい、霊夢!」
「どうしたのよ、お賽銭なら向こう「お姉ちゃん!」よ?」
お姉ちゃん?私のことかしら?
「どうしたの?まさ「まぁぼぉ!?」た…え?」
まぁぼぉって誰よ、なんて思っていると雅貴が魔理沙に抱きついていた。羨ましい。
「お姉ちゃん、会いたかった!」
「私もだぜまぁぼぉ!いやーでかくなったな!」
完全に置いてけぼりの私である。しかし何故だろう、雅貴に抱きつかれている魔理沙が、見たこともないとても幸せそうな顔をしているのは。
「魔理沙、その子とどうゆう関係なの?」
「私たちは姉弟だぜ」
「ええ!?あんた弟いたの!?」
今日2度目の驚きである。
「ところでまぁぼぉ、なんでこんな貧乏神社にいるんだ?」
「お願いしてたの!お姉ちゃんに会いたいって、そしたら会えたんだ!」
すると雅貴は今度は私に抱きついてきた。
「霊夢お姉ちゃんの言ってたこと、本当だったんだね!すごいね!」
なんだろう、すごいポカポカする。子供の体温って高いのね。すごい暖かな気持ちになれるわ。
小さな身体でギュッと抱きしめてくるあたりがもうなんともたまらん!
抱きしめ返したい衝動に駆られていると魔理沙から冷めた眼で見られていた。
「…お前、まぁぼぉに変なこと吹き込んでないよな?」
「失礼ね!この神社でお願いすれば願いが叶うって言っただけよ」
実際に叶ったのだから嘘ではない…はず。
「お姉ちゃん、一緒に帰ろうよ」
いつのまにか抱きついていた雅貴が離れ、魔理沙の方へ寄っていく。ちょっと残念。
「…悪りぃがそれはできねぇんだ」
「なんで?」
「なんでも、だぜ。大丈夫、ここに来たらいつでも姉ちゃんに会えるぞ」
ナイスよ魔理沙!これなら毎日彼に会えるわ。
「…約束」
そういうと雅貴は魔理沙に小指を立てる。それを見て魔理沙も小指を絡める。
「ああ、約束だ」
そうして2人は小指を重ねて誓いを立てる。
なんとも微笑ましい光景だった。