「大丈夫かしら?」
「う、うん。平気だよ」
咲夜の手伝いで厨房に居ると聞いて、もしやと思ったが、全くうちのメイド長はいつからあんなんになってしまったのか。
「雅貴、フランが私と三人で寝たいといってるのだけど、どうかしら?」
本当は1人で寝たいのだが、妹からの初めての我儘だ。付き合わないはずもない。だがそこに彼も入ってくるとは思わなかった。
まあ、フランを救ってくれたのは彼だし、一緒に寝るのが嫌ってわけじゃないのよ?あんな可愛い子と一緒に寝れるなんて役得…っ、て何考えるのかしら私。まだ彼の返事もきいて
「うん!いいよ」
…とりあえず、香水でもつけよう。1番いいやつをね。
部屋に帰ってすることが決まった私は雅貴と手を繋いで自室に向かっている。こうしていると弟ができたみたいだ。フランと同じ金髪だからだろうか?
そんなことを考えていると、部屋まで到着した。扉を開けるとそこには
「お姉様、おっそーい!」
フランが私のベッドで寝そべっていた。
「…なんで私のベッドで寝てるのよ」
「え?一緒に寝るって言ったじゃん」
まさか私の部屋だとは思わなかった。普通誘った本人のベッドじゃないの?
「わぁ、すごい!フカフカだぁ!」
「でしょ?このフカフカはたまらないよね」
いつのまにか雅貴も私のベッドに入っている。フラン、貴女のベッドも同じはずよ?
2人をみながら、わたしはそっと香水をつける。うん、悪くないわ。
「お姉様、何してるの?この香りは?」
さっきまでベッドで寝転んでいたフランがすぐ側まで来ていた。いや、本当にいつの間に!?
「あ、安眠用の香水よ。これを付けるとよく眠れるの」
「ふーん、で?本当は?」
「え?だから安眠…」
「ホントウハ?」
フランが掌を開いて聞いてくる。ちょっと!それは反則でしょ!
「…彼に、いい匂いがするって思われたかったから、その…」
くっ!妹に脅されるなんて。というかフラン、そのニヤニヤをやめなさい!
「…へえ、これで誘惑しようと?」
「別にそんなつもりじゃないわよ、早く寝ましょう」
話を切り上げてベッドに向かう。そして私は気づいてしまった。ベッドを3人で使うには川の字で寝ることになる。問題は誰が真ん中になるか。
もし、真ん中がフランだった場合、雅貴とは離れてしまい、香水をつけた意味がなくなってしまうということに。
直ぐにフランの方へ振り向く。そこには既に気づいたフランがニヤリとこちらを見ていた。不味い!
「じゃあ私が真ん中でねようかなー」
そう高らかに宣言するフラン。
「じゃ、ジャンケンの方がいいんじゃない?そっちの方が公平よ」
そう、ジャンケンなら公平だわ、客観的に見ればね。だが私の能力を持ってすれば
「…お姉様、能力使ってずるしそうだからダメ」
読まれていたー!…流石フラン、やりよる。だが譲れない。ここでフランに真ん中を譲るわけにわっ!
「僕、真ん中じゃダメ?」
この吸血鬼姉妹のベッド真ん中争奪戦は、天使の一言で丸く収まってしまったのだった。
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「雅貴、狭くないかしら?」
「う、うん。平気だよ」
「雅貴、もっとくっついてもい〜い?」
「ふ、フランちゃん。もう十分くっついてるよね?」
雅貴の一言で決まった順番で私達は寝ていた。
フランが必要以上に彼にくっつこうとするため、寝返りをうつように彼がこちらを向いた。顔が近い。ほんの数センチで鼻が当たりそうな距離だ。それに、彼からとても良い匂いがする。とても柔らかい。温かみのある感じで、それでいて抱きしめたくなる衝動に駆られるような香りだ。
こんな匂いにずっと晒されているとおかしくなりそうだった。
「レミリアちゃんから、なんか良い匂いがする」
そう言って彼は顔の距離を近づ、ち、ちか、ちかすぎぃぃ!!
人間は暗いと目がよく見えないらしいが、私達吸血鬼は暗くてもよく見える。彼の整った顔がすぐそこで見える。サラサラとした金髪にそっと鼻腔をくすぐるような香りが漂う。
そんな中で、彼は私の胸元へと顔を持ってきてスンスンと匂いを嗅いでいる。ヤバイ。
「ちょっと、レディにそういうことをするのはいただけないわよ」
なんとか離れさせようと怒ったフリをしてみた。
「ごめんなさい、でもとっても良い匂いだったから」
そう言って距離をとってくれるが、良い匂いなのはあんたの方よ!やっぱり距離を取らなくてもいいわ!
「いけないなぁ雅貴は、イケナイコトした子にはお仕置きしないとねー」
そういいながらフランは彼の後ろから首元に自分の歯を、ってやめなさいフラン!
「いたっ」
そのまま噛み付くかと思ったが、直ぐにフランは離れた。少し犬歯で彼の首筋にキズをつけただけみたい。よかった。そのまま吸血するかと思ったわ。、
「もう、ビックリするじゃないフラン。…フラン?」
注意しようと思ったのだが、フランの様子がおかしい。急に顔を紅くして目はうつろ、というかトロンとして、息も荒くなっている。
「お姉様、やばい。雅貴の血…」
そう言って彼女は自分の身体を弄り出している。
血?そういえばさっきからとても甘い匂いが漂っている。まさか、彼の血をひと舐めしただけで発情してしまったの!?
「お姉様も感じてみる?」
「なにをっ!?」
フランは私の口に舌をねじ込んできた。口移しに彼の血を無理やり飲み込まされる。ねっとりと妹の舌と一緒に流れてくる甘美な味わい。
「へへ〜、どう?お姉様?」
フランに問いかけられたが反応できない。
どうしようもなく身体が熱い。先ほどまで耐えていた彼の香りが物足りなく感じてしまうほどに。もっと、もっと雅貴を感じたい。
「どうかしたの?レミリアちゃん、フランちゃん」
少しおどおどしながら聞いてくる彼。その表情は少し怯えているようにも見える。だがそんな彼の表情すら愛おしく感じてしまう。もっといろんな表情を見せて欲しい。
「雅貴は寝てていいわよ。私たちが堪能してあげるから」
一度飛んでしまった理性は制御できない。それは気高き吸血鬼でも同じことだ。
私とフランは彼の身体を求め、貪るだけのだった。