今日は異変解決を祝う宴会がここ、博麗神社で執り行われる。対峙する側とされる側が何隔たりなく酒を飲み交わす場である。
「あはは!まてまてー!」
準備も滞りなく完了し、早く到着したまー君と妖精や妖怪たちとの追いかけっこを魔理沙と縁側に腰掛けながら眺めていた。
「和むなぁ」
「和むわねぇ」
妖怪と子供を遊ばせていいのかと突っ込まれそうだがここは博麗神社。そして博麗の巫女である私の目の前でトラブルをおこすような低俗ではないはず。
まぁ、今遊んでいる妖精や妖怪たちはみんなまー君を好いているようだし、その心配もないだろう。ほんと、不思議な子ね。、
「おっ、ようやくきたみたいだな」
鳥居の方に目をやるとそこには吸血鬼姉妹とその従者達がいた。
「レミリアちゃーん!」
レミリア達がきたことを知ったまー君がそのままレミリアに近づいていきそのまま抱きつく。
「久しぶりね雅貴。元気だったかしら?」
「うん!」
なんとも羨ましいことだ。異変の首謀者でまー君の誘拐犯なのにあれだけ懐かれている。
私とレミリアの目が合う…ッ!こっちを見てまるで勝ち誇ったかのような顔を…あら?急に顔を青くしてる?…それもそうか、私の隣には魔理沙がいる。私に勝ち誇ったかのような顔をすれば当然、魔理沙にも勝ち誇ったかのように見える。
私も魔理沙がどんな顔をしているのか気になって見てみると、そこには笑顔の魔理沙がいた。笑顔なのに全く笑顔に見えない。右手には八卦路が握られ、ギシギシと音を立てている。
レミリアは急いでまー君から離れるがもう遅いだろう。
「久しぶりだね雅貴」
「フランちゃん、久しぶり!」
フラン…あの子もなかなか油断できない。何やら訳ありのようだが、かなりまー君のことを好いているようだ。
レミリアと同じようにまー君とハグして…!?あいつまー君のほっぺにキスしやがった!しかもこっちを見ながら!
この間こっぴどく魔理沙にボコられたと言うのに凄い行動力ね。姉とは大違い。
これには魔理沙も怖い笑顔に青筋ができていた。
折角の宴会なのに、空気が重いと言うかなんというか…
「雅貴くん、久しぶりね」
ここで変態メイドの登場か、やばい予感しかしないわね。
咲夜はまー君に身長を合わせるようにしゃがみ、レミリア達と同じようにハグをした。そして流れるようにまー君の唇にキスを!!??
「マスタースパークッ!!!」
とはならなかった。流石魔理沙。針の糸を通すようなコントロールで変態だけを見事に撃ち抜くなんて。さすまり。
「さてと、宴会始めようぜ」
そして、何もなかったかのように宴会は始まった。
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宴会が始まってから随分時間が経った。酔いが回りやすいのか、遊び疲れていたのか、まー君と遊んでいた妖精や妖怪は、既に酔い潰れていた。
「ねぇねぇ、霊夢お姉ちゃん達は何を飲んでるの?」
「お酒よ。まー君にはまだ早いから飲んではダメ」
「あら、いいじゃない。別に飲ましてもバチは当たらないでしょ?」
レミリアがそう言って持参してきた…ワイン?だったかしら。それをまー君に飲ませようとする。
「いいの?いただきまー「だ、ダメだ!」…お姉ちゃん?」
魔理沙が慌てて止めに入る。何をそんなに焦っているのだろう。
「なによ、いいじゃない少しぐらい」
「だ、だめったらだめだ!まぁぼぉはまだ子供なんだよ」
「そんなこと言ったら貴女も似たようなものでしょ」
「ぐっ…そ、それはお前ら妖怪目線での話だろ」
なんだろう。いつになく魔理沙が必死だ。こんな姿を見るのは初めてかもしれない。
「とにかく、飲ませるんじゃないぞ!いいな!絶対だぞ!」
そう言うと魔理沙は立ち上がって母屋の方へ行ってしまった。
「…さ、雅貴、飲みなさい」
いなくなった途端にワインを勧めるレミリア。本当に大丈夫なのかしら?
「お姉様いいの?あんなに魔理沙が念を押したのに」
「いいのよ。あれは振りと言って『どうぞやってください』って意味なんだから。そうでしょパチェ?」
「…確か前に見た本にそう書いてたはずよ」
一体どんな本なのか非常に気になるがあれは飲ませろと言う意味だったらしい。それにしては随分慌てていたように見えたけど。
「いただきまーす。……酸っぱい!美味しくない!」
「あらあら、口に合わなかったかしら」
「うー…口の中がやな感じ…」
「調理場で咲夜が片付けをしているだろうから、何か飲みものをもらってきなさい」
「はーい」
まー君は小走りで母屋の方へ駆け出していった。
「…おかしいわね。あれだけ盛大に振りをしていたのに何も起きなかったわ」
「まぁ、いいじゃない。それよりさっきの話の続きを聞かせなさいよ」
魔理沙がなんであんなにも焦っていたのかを、私たちは身をもって知ることになるのであった。
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博麗神社の調理場で、私は1人宴会の片付けに追われていた。ちょっと雅貴くんにスキンシップしようとしただけなのに、魔理沙からマスパを撃たれ、変態メイドとか言う不名誉な2つ名をつけられ、罰として宴会の片付けをしている。
「咲夜さーん」
そんな時、私の前に天使が、もとい、雅貴くん歩いてきた。頬が少し赤いみたいだけど大丈夫かしら?
それに…なんか色っぽいというか、凄く魅力的に見える。いや、普段から魅力的なんだけどね。
私のすぐ目の前までやってきて、しゃがむように手を子招いてきたので、しゃがんで雅貴と目線を合わせる。
「咲夜さんは偉いよねぇ。偉い偉い」
そう言われながら、私は何故が頭を撫でられている…ちょっと待って。ちょっと状況が飲み込めない。
「ま、雅貴くん?」
「みんなワイワイ騒いでるのに、咲夜だけお片づけしてるんだもん。凄いすご〜い」
こんな小さな子に頭を撫でられるなんて考えたこともなかったけど、何故だろう。凄く気持ちがいい。気恥ずかしさもあるが、それを遥かに超える言葉になし得ない幸福感が、私を包み込んでいた。
「だから、咲夜さんにはご褒美がないとね」
そう言うと、彼は私の頭から手を離す。
「あっ…」
名残惜しく、思わず感嘆の息が漏れてしまった。もっと撫でて欲しいのに。
「目を閉じて?」
言われるがまま、目を閉じる。そして数秒の沈黙の後、唇を柔らかい感触が襲った。
直ぐに目を開けて、彼の方を見る。彼はイタズラが成功したような顔をしていた。
「…みんなにはナイショだよ?」
そう言い残して、彼は去っていき、ただただ状況が飲み込めない私だけが、母屋に取り残されてしまった。
だって、キス…されてしまったのだ。彼の方から。やばい。やばすぎてやばい。これは既成事実なのでは?(いいえ違います)
混乱した私はただただ呆然としゃがみ込むしかなかった。
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「おーい咲夜、追加の酒を…何やってんだお前」
便所からの帰りに酒を持って行ってやろうと調理場に寄ったんだが、そこにはボーっと突っ立っているレミリアご自慢の変態メイドがいた。
「魔理沙…いえ、お義姉さん」
「あ?お前に義お姉さんと呼ばれる筋合いはねぇぞ」
またこいつは訳のわからないことを…もう一回マスパぶちかましてやろうか。
「だって雅貴くんの方からキスしてきたんですもの。これは既成事実と言っても過言ではないでしょ?」
…こいつ今なんていった?まぁぼぉとキス?
「お祈りは済んだか?奥歯をガタガタ振るわせてぶっ飛ばされる準備はOK?」
懐から八卦路を取り出して変態の顔面に突きつける。
「ちょちょちょ、待ちなさい!」
「うるせぇ!私の弟に手を出してタダで済むと思ってんのか?」
「だから雅貴くんの方からキスしてきたの!私だって状況が飲み込めてないのよ!」
「なんだと…」
まぁぼぉが自分からそんなことをするとは思えない。だが…ひとつだけ可能性がある。
「なぁ、まぁぼぉの様子はおかしくなかったか?」
「え?うーん…ちょっと顔が赤かったかしら。あと凄い甘やかされた?」
それを聞いた私はすぐに調理場を飛び出した。
「アイツら…あれだけ念を押したのにまじでやりやがったのか!?」
まぁぼぉにお酒を飲ませてはいけないのだ。それは幼いとか、そんな理由ではない。
「霊夢!無事…か…」
宴会場に戻るとそこには、弟にと濃厚なキスをする親友の姿があった。すぐそばにはレミリアやフラン達も転がっていた。みんな、幸せそうな顔を浮かべている。
「遅かったか…」
まぁぼぉにお酒を飲ませてはいけない理由。それがこれだ。人をひたすらに口説き倒し、キス魔と化す。
これは私しか知らなかったことだ。小さい時に興味本位でまぁぼぉとお酒を飲んだ。そして、これでもかと言うぐらいに口説かれ、『恥ずかしがってるお姉ちゃんも可愛い』とかなんとか言われ…これ以上は、思い出したくない。
「あっ、お姉ちゃん〜」
私に気付いたまぁぼぉガタガタこちらへ寄ってくる。甘ったるい声だ。その声を聞くだけでゾクゾクしてしまう。
「ど、どうしたんだまぁぼぉ」
「えっとね、その…ね?」
上目遣いで赤くなった頬を隠す仕草をしながらそんなことを言われると、こっちの理性が耐えられなくなる。いちいち行動が可愛すぎる。
「お姉ちゃん、大好きだよ」
不意にそう言われて、唇に柔らかい感触。簡単に崩れゆく理性の中で、私はこの上ないほどの快楽に身を任せるしかなかった。
これにて一旦完結です。かなり不定期な投稿となりましたが、ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
次回からは異変関係なく東方キャラと雅貴の絡みを書いていこうと思います。