霧雨の弟   作:ぐろさん

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第4話

私達はお喋りを楽しみながら紅魔館まで歩いてきた。ここまでの道のりがあっという間と思えるほど楽しんでいたのは間違い無いだろう。

 

「ようこそ、紅魔館へ」

 

私は門の前まで来ると、一度繋いでた手を離し、恭しく礼をする。客人を招き入れる為の当然の作法だ。

 

「お、お邪魔します」

 

そんな私の態度に緊張したのか、辿々しく返事を返してきた。可愛い。

 

「咲夜さん、あの人は?」

 

そう言って門の方に指を向ける。そこには

 

「…」zzz

 

傘をさしたまま器用に立って眠る我らが門番殿、紅美鈴がいた。

 

コイツ…客人が来ると伝えていたのに。

 

いつもなら直ぐに粛清するところであるが、客人の前だ。面白い、お前は最後にしてやる。

 

「気にしなくて良いわ、というか気にしないで」

 

「立って寝る人初めて見た。凄いね」

 

それはそうだろう、私だって彼女以外に立って寝る人…妖怪は見たことない。気を取り直して案内を開始する。

 

「では建物の中へ、お嬢様のもとへお連れしますわ」

 

「お嬢様?」

 

「私の主人であり、この館の主人よ」

 

「どんな人?」

 

「それは会ってからのお楽しみ」

 

そうはぐらかして、雅貴ちゃんを連れてお嬢様の待つお部屋へ歩いていく。

 

「あっ、まっちゃん!」

 

1人のメイド妖精が声をかけてきた。その声を聞いた他の妖精メイド達も集まってくる。

 

「なにしにきたのー?」

「今から遊ぼうよ!」

「仕事手伝ってー」

「…好き」

「愛してるぞー」

「結婚してー」

 

急に騒がしくなってしまった。というか最後の方おかしくないかしら?

 

「あなた達、今から客人をお嬢様のところに連れて行くから後になさい」

 

私がそう言うとみんな仕事に戻っていく。

 

「へぇ、みんなここで暮らしているんだ」

 

「雅貴ちゃん、彼女達とどこで?」

 

「いろんなところ!」

 

よく妖精メイド達はどこかへサボりに行ってしまうものだから、どこかで会うみたいね。とりあえずお嬢様のところへ連れて行かなければ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「失礼します。お嬢様、雅貴様をお連れしました。」

 

そう言ってお嬢様の待つ部屋へ入る

 

「ご苦労様、咲夜。その子が…ね。それにしてもまぁ、仲がいいのね」

 

なんのことかわからなかったが、直ぐに気がついた。ここまでずっと手を繋いだままだ。

 

直ぐ手を離し、お嬢様の後ろへ着こうと思ったのだが、

 

「咲夜さん…」

 

と子犬が捨てられそうな目で私を見ながら繋いだ手を離さないとばかり体全体で抱きついてきた。

 

ここまでされて手を振り解くなど、出来るはずもない。むしろこのまま居たいと思っている自分がいる。

 

「咲夜、そのままでいいわ、こんにちは小さなお客さん。私はレミリア、レミリア・スカーレットよ。あなたの名前は?」

 

「…こんにちは、僕は雅貴です。本日は急な雨の中、困っているところを咲夜さんに助けていただきました。ありがとうございます」

 

緊張しながらも自己紹介をし、さらには丁寧な言葉使いでお礼まで言った。私の腕に抱きついたままだけれど。

 

「これはご丁寧にどうも。見た目の割に紳士的じゃない」

 

そう言うとお嬢様は雅貴ちゃんに近づいていて握手を求める。

 

その手をおずおずと握り返す雅貴ちゃんを見ながらお嬢様は満面の笑みでこう言った。

 

「歓迎するわ。あと、私はこう見えて500歳の吸血鬼なの、よろしくね」

 

逃げられないように握手しながら人外宣言だなんて、流石お嬢様。小さい子にも容赦がない。あんな至近距離で妖怪だなんて言われては発狂ものね。

 

そうなったら雅貴ちゃんを落ち着かせないといけないわね。やっぱりここはだきしめて安心させるべきなのでは…

 

「僕、吸血鬼とお友達になれるの!?やったー!」

 

ズルっとお嬢様も私もずっこけそうになった。

 

「咲夜さんも吸血鬼なの?」

 

「いいえ、私は普通の人間ですわ」

 

お嬢様からは普通ではないだろ!と言いたげな視線を感じるが無視だ。デキる従者は時に主人を無視するものだ。

 

「レミリアちゃん、よろしくね!」

 

眩しい笑顔で言う雅貴ちゃん。こう見ているとお嬢様に弟ができたみたいだ。あと、その笑顔を私にも下さい。

 

「あなた、ほんとに…いえ、なんでもないわ、ゆっくりしていきなさい」

 

お嬢様は天使スマイルから逃げるように顔を背ける。あ、照れてるな。顔が少し赤い。流石のお嬢様もこの天使に向けられる笑顔には勝てなかったようだ。

 

「雅貴、少し濡れてるじゃない。咲夜、直ぐお風呂の準備をなさい」

 

「既に完了しておりますわ」

 

「…そう、じゃあお願いね」

 

「かしこまりました。雅貴ちゃん、こっちへ」

 

そう言って手を差し伸べると自然と握ってくれる雅貴ちゃん。こうやって握ってくれるだけで心がポカポカしてくるわ。

 

お風呂も一緒に入ってしまおう。まだ勤務中だけどいいわよね?私も雨の中歩いてきたんだもの。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

1人部屋に残った私は先ほどまでここにいた小さな訪問者のことを考えていた。

 

めちゃくちゃ可愛いんですけどぉぉぉ!!

 

なにあの笑顔、あんな笑顔向けられたら誘拐した罪悪感に押しつぶされそうじゃない!

 

咲夜もずっと手を繋いでたし、本人は気づいていないかもしれないけれど、顔がゆるゆるだったわ。

 

そういえば雅貴は男の子のはずよね?全然そうは見えないけれど。咲夜はずっと『雅貴ちゃん』って呼んでたけど女の子と勘違いしてるのかしら?でも行く前にちゃんと伝えたし…まあ、いいか。

 

それにしても綺麗な金髪だったわね。それこそあの子にそっくり…

 

もし弟がいればあんな感じだったのだろうか

 

「あの子がきっと貴女を自由にしてくれるわ。だからもう少しだけ我慢してね、フラン」

 

そういいながら私は地下室に閉じ込めたままの最愛の妹を想うのだった。

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