地下室から出てきて大きな図書館を通ってきた。途中あのなくなった部屋のことをお姉様に聞いてみたのだが、「後でゆっくり話しましょう」とはぐらかされた。
そして、1つの部屋の前に着いた。
「フラン、開けてみなさい」
先行していたお姉様が前を譲ってくれる。
「う、うん」
戸惑ったけどそれも一瞬の事だった。ゆっくりと扉を開けていく。
「「「妹様、おめでとうございます!」」」
…なにこれ?お姉様の方を振り向く。
「おめでとう、フラン」
お姉様、お前もか!なにを祝ってくれてるのか全く分からない。雅貴の方を向いてみる。
「おめでとう?フランちゃん」
この子もわかってないな。小首を傾げながらも笑顔で空気を読んで祝ってくれてる。可愛いなぁもう。
「今日は貴女の誕生日よ」
「えっ?」
誕生日?私の?知らなかった。物心つく前からあの部屋にいたから。
「さあ主役は早く席に着きなさい」
そうお姉様に急かされ、椅子を引こうとすると、銀髪の綺麗なお姉さんに席を引かれた。
「お掛けください、妹様」
「あ、ありがと」
座ると恭しく一礼し、一瞬でお姉様のもとへ戻っていった。びっくりした。人間って瞬間移動が出来るんだろうか?雅貴に聞いてみようっと。それと、あのお姉さんの匂い、なんだか嗅ぎ慣れている気がする。
みんなが席に着く中、あのお姉さんだけお姉様の後ろから動かない。
「咲夜さんは一緒に食べないの?」
雅貴が聞く。私も気になった。
「咲夜、貴女も掛けなさい」
「私はメイドでございます。従者が主人と同じ席に着くわけには参りません」
メイドさんなんだ。もしかして、地下で食事の準備とかしてくれてたんだろうか。部屋が綺麗になった時に残ってる匂いのと同じ気がする。
「咲夜さんは僕と一緒にご飯食べるの…いや?」
いつの間にかメイドさん…咲夜の横に雅貴が詰め寄っている。ちょっと泣きそうな顔でせがまれてる。あんなの見てたら断れないだろうなぁ。あ、落ちたな。
「咲夜、そのまま上目遣い攻撃で沈む前に席についた方がいいんじゃないかしら?」
お姉様が顔を茹でたこのように紅くしてしまった咲夜へ揶揄うように言う。
「はい…お言葉に甘えて」
そうしてみんなが席に着いた。
「誕生祝いをする前に、みんなのことをフランに紹介しないとね」
お姉様がそう言うと紫の髪をした女の人とその隣の赤髪の女の人が席を立つ。片方は悪魔かな?
「私の親友にして、さっきの図書館の司書で魔女のパチェよ」
「初めまして妹様。パチュリー・ノーレッジよ。知りたい事が有ればいつでも図書館に来なさい。歓迎するわ」
「パチュリー様の身の回りのお世話をしています。小悪魔です。こあとお呼びください」
パチュリーに小悪魔ね。あの大きな図書館の本は是非読んでみたい。
「うん、よろしくね」
次に立ったのが赤髪…と言ってもこあより明るい色をしてる人、すごく大きい、もちろん身長のことだ…ちょっとだけ自分の胸元と見比べてしまった。
「初めまして妹様、紅美鈴と申します。門番の任に就いております」
「あー!立ったまま寝てた人!」
急に雅貴が声を上げる。立ったまま寝てた?そんなこと出来るんだ美鈴って。
「あ、あはは、やだなー。あれは寝てたんじゃなくて、瞑想を、って待って待って咲夜さん!その大量のナイフをしまって下さい!」
咲夜の方を見ると大量のナイフをその手に持っていた。あれ銀のナイフじゃないよね?なんかあのナイフ見てると身体がゾワゾワしちゃう。
「言い訳は終わったかしら?神様にお祈りは?
最期の晩餐を前に命乞いをする準備はOK?」
咲夜は冷酷な瞳で美鈴を睨みつけ、美鈴は顔を青くしている。止めないでいいのかなと思ったけど、お姉様はため息をつき、パチュリーは本に目を落としている。こあさえ愛想笑いを浮かべている。
これって、もしかしなくてもいつものことなのだろうか?
「雅貴くんを招き入れた時に、どれだけ恥ずかしかったか、貴女に理解できるかしら?できないから寝てたのよね?そうよね?」
「いや、あの…その…」
あちゃー、完全に怒ってるな。もうこれは止められない。さよなら美鈴。貴女のことは忘れないわ。会って数分の関係だけど。
「咲夜、その辺にしておきなさい」
「…お見苦しいところをお見せしました」
あれだけ持っていたナイフを一瞬でしまい、何事もなかったかのように振る舞う咲夜。一体どこにあの量のナイフをしまったんだろ?
「メイド長を務めさせていただいております。十六夜咲夜と申します。何かお困り事がございましたら、なんなりとお申し付け下さい。何事も一瞬で解決してご覧にして見せます」
「…地下の食事を作ってくれてたり、お人形を元に戻してくれたのは咲夜なの?」
「はい、その通りでございます」
「あの…いつも美味しい料理をありがと」
地下でつまらない生活をしていたが食事だけは別だった。今日はどんな料理なのか心待ちにしていたから。
「喜んでいただけたのなら、メイドとしてこれ以上の幸せはございません」
「あとデザートのプリン。とっても美味しかった」
そう伝えるとなぜか咲夜の顔が引きつった。私、何かまずいことを言っちゃったかな?
「…フラン、その話詳しく」
お嬢様がいきなり真剣な顔で聞いてきた。
「え?毎日デザートでプリンが付いててそれが美味しかったからお礼を言おうと…」
私が最後まで言うことなく、お嬢様は両手で机を叩き、勢いよく立ち上がる。
「咲夜!なんで私にはないのにフランにはプリンがつくのよ!しかも毎日!」
唖然とした。え?お姉様は食べてなかったの?
「妹様は、お嬢様と違って残さず食べてくれますので」
「貴女が私の嫌いなものばっかり出すからでしょ!」
「お嬢様は好き嫌いが多すぎます!ちゃんと食べてくれた時には、お出ししてるではありませんか」
…なんだろう、私の姉ってこんなんだったっけ?物心はついていなかったけど、お姉様は優しくてかっこよかったと思うんだけどなぁ。あれはお母様だったのかな?
「レミィ、その辺にしなさい」
本を読んでいたパチュリーが諭す。
「せっかくの料理が冷めちゃうわ、それに、これは誰のなにを祝う為なのかしら?」
「…わかったわよ、じゃあみんなの自己紹介も終えたことだし」
お姉様がこちらを見る。
「フラン、誕生日おめでとう。こうして家族みんなで貴女の誕生日を祝う事ができて私は、本当に嬉しく思うわ」
「あ、ありがと」
あれだけ咲夜と言い争っていたのに急に真面目にそんなことを言うから、ちょっと返事に戸惑ってしまった。
「じゃあフランからも一言お願いね」
「え?ええっ!?」
そんな!そういう振りをするなら先に言ってよ!えーとえーと…
「きょ、今日は私のた「きゅう〜」めに…?」
…なんか隣からとても可愛らしい音が聞こえた。みんなも私の隣を見ている。
それに釣られてか、私も隣に目を向ける。そこには、恥ずかしそうに顔を赤くした雅貴が、お腹を抑えて俯いていた。
きっとみんな同じことを思っているに違いない。
か、可愛すぎる!!
「…そ、そろそろ食べましょうか!フラン、乾杯の音頭を」
「えっ?あ、乾杯!」
「「「「かんぱーい!」」」」
「…かんぱい」
楽しい食事が始まったのだった。