行動派七曜録   作:小鈴ともえ

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前回の番外編に比べればかなり短いですが年明けは時間も無いでしょうから5000字程度で

紅かぁ。今年も絶対白だと思っていましたが予想がかなり外れてしまいました


終端

パチュリーside

 

 

 師走ももう今日で終わりである。紅魔館では何もすることが無いので年末から年始にかけては楽でいいものなのだが寺や神社は今頃とても忙しくしているんじゃないだろうか。寺は一つしかないから競争にもなりはしないが神社は残念ながら二つある。

 総合的に見て今のところ優勢なのは守矢神社の方だろう。どちらも里からは遠いし人間にとっては行きづらいのは変わらないのだが、如何せん信仰を得ることへの積極性が段違いなのだ。

 

 守矢神社は祀ってある神やご利益が分かっているという事もあり、信仰が得られなければ神奈子たちの存続の危機になる。一方で博麗神社の祭神はわからずご利益も恐らくは妖怪退治だろう、という事くらいしかわからない。神棚はあるがご神体は行方不明だ。

 存続がかかっている守矢と生きるだけのお賽銭が入ればいい博麗、どちらの方がより積極的に行動するかなど火を見るより明らかである。結果として守矢側が優勢になっているわけだが元々博麗神社に行っていた人間が守矢神社に流れたというわけでもない。

 

 妖怪退治をご利益としているであろう神社の巫女が最も妖怪に好かれてしまっているという現状も博麗神社の参拝客を減らしている要因に違いない。霊夢も何とか参拝客を獲得するために手を尽くしているのだが現実はなかなかに厳しい。

祭りを開けば店を出すのは妖怪ばかり。境内で人間を襲ってはならないという規則があったとしても妖怪が集う場所に好んで行く人間は多くない。最近は華扇も色々手伝っているようだが効果は芳しくないと言えるだろう。そもそも霊夢が飽き性であるというのも問題の一つだ。

 

 真面目にコツコツやれば参拝客は徐々に増えていくだろうに、効果が表れる前に努力を止めてしまう。華扇の苦労もわかる気がする。褒めれば調子付くのではなくそこで満足してしまい、説教をしても右から左へと流されてしまう。厳しい修行もそれが終わってしばらくすれば元通りという有様だ。霊夢は意志が弱そうに見えて実はかなり強い。本当にやる気になれば案外多くの人間が神社に訪れるようになりそうである。

 でも現状がああなっているという事は霊夢も本気で客寄せをしたいわけではないのかもしれない。これは完全に私の意見だけだというわけでもなく、レミィが神社に遊びに行った時も追い返す格好だけして結局は神社に残ることを容認しているらしい。

 

 彼女自身自分が人外に好かれる体質であることを分かってはいるのだろう。妖怪退治を生業としてきた巫女として里の人間に顔向けできないから否定する素振りを見せているだけで、集ってくる妖怪たちを明確に拒絶するような雰囲気はない。だから余計に妖怪は寄ってくるし人間は神社離れしてしまうのだ。

 だが幻想郷の調停者として異変時以外の時に無差別に妖怪を退治するわけにもいかない。あまりにも図々しい時はあの子の堪忍袋の緒が切れて()()()()()退治をするようになるのだが、それもそうそう起きることではない。

 

 そんな背景もあって博麗神社は里の人間に妖怪神社と認識されている。そして霊夢も妖怪巫女だと認知されているのだ。実際妖怪も恐れ怯む少女であることは間違いない。だが真面目に妖怪退治をしていることも多いのにそう思われてしまっているのはかなり可哀そうである。易者もそれを指摘しなければもう少しマシな死に様になっただろうに。

 まあこの世界ではまだ易者は復活していないのだけれど。事前に阻止することも可能だがこれは小鈴にとっても重要な学びにつながる。私が介入すべきことではないのだ。だから易者には大人しく頭を割られてもらうとしよう。仕方ないね。

 

 逆に早苗ちゃんと言えば人里の人間からは評判がいい。よく里に下りてきては人々の話を聞きながら()()()()()()()()()()()解決案を提示するのだ。商売敵である霊夢からはずるい奴だと言われているが普通に考えれば宗教家として当たり前の事をしているだけである。

 事実白蓮からの同じ宗教家としての評価は霊夢より早苗ちゃんの方が高い。戦闘面での評価は霊夢が圧倒的に高評価を得ているのだがその大半が人外からである。妖怪と戦う力を持たない普通の人間にはあまり理解できない部分であることも確かだろう。

 

 神社までの道も守矢神社は整備する気があるようだし。まだできていない架空索道(ロープウェイ)の完成もそう遠くないだろう。遅くとも数年後にはできていそうである。そうなればもはや守矢神社は行きづらい場所ではなくなる。妖怪の山を通る分危険は伴うがあの高い山を登らなくてもよくなるのは随分とありがたい事だろう。

 そうなることによって余計に博麗神社は人間が訪れなくなる。結果として霊夢が困る。うーん、宗教戦争のきっかけってこんなのだったっけ。なんだか違う気がするけれど思い出せない。またその時が来ればわかるだろうから今は気にしないでおこう。

 

 それにお賽銭が今よりも減ったところで霊夢が餓死するはずはない。紫がちょくちょくお賽銭箱に生活費を奉納しているというのを教えてくれるからだ。そして博麗神社の大きな特徴は外の世界にも存在することである。それゆえ守矢神社と違って外の博麗神社でお供えされた御神酒や食べ物がこちらに来ることも珍しくはない。

 これも妖精に盗られたりせずに上手く確保できれば霊夢の生活は大して困らないだろう。それでも餓死しそうになったら紫が直接何かを食べさせに行くんだろうけど。博麗の巫女が餓死したなど宴会で話すネタにもなりはしない。

 

 

「なんだパチェ、ここにいたのね。いつも通り図書館にいると思っていたのだけれど」

 

「たまには開放的な場所で本を読むのも良いでしょう? それにここは考え事をするのにも丁度良いもの」

 

 まあバルコニーだと今のように昼間にレミィが来た時には場所を移さなければならなくなるのだが。それでも自分の生み出した光の下ではなく日光の下で本を読んだ方が気分がスッキリするのだ。本が日に焼けないように防護魔法もかけてあるし。

 今でこそ防火、防水、防塵などの防護魔法を使えるようになったが昔はそうではなかった。だから昔から持っているような本は謎空間に入れていた物を除いてかなり日に焼けてしまっているし、かなり埃っぽくもなっている。喘息持ちの私にこれは辛いのでそのような本は半分封印状態だ。

 

 初期の本なんて古書の中の古書。希少価値など測れない物も多いので泥棒(魔理沙)対策も兼ねて私の空間にしまってあるわけだ。紫ならいつでも取り出せるのだが彼女に限ってそんなことはしないだろう。紫がそんな奴だと知ったのなら今ここでショック死してしまうかもしれない。

 

 

「確かにパチェにとってはそうかもしれないけど私には少し眩しすぎるわ。咲夜……少し前に使ったビーチパラソルがあったでしょう。あれで良いからここに立てて頂戴。そしてお茶の準備をそうね…四人分、お願いできるかしら?」

「かしこまりました」

 

 四人か。私たち二人の他に誰か来るみたいだ。美鈴は門番に立っているのが今見えているから除外。咲夜とこあも当然除外、となるとフランドールか? それでも三人だが。

 

「あと二人、誰が来るのかしら?」

 

 

「さあて。でもパチェにも今にわかるさ。招かれざるお客様方がもうじき来るだろうから。それも別々に、ね」

 

 ますますわからん。招かれざる客という事でフランドールの線は消えただろう。となるとあとこの館に来そうなのは霊夢と魔理沙かね。たまーに内輪だけのパーティー会場に紛れ込んでいることがあるし。あれこそまさに招かれざる客だろう。

 

 

「はぁい、パチュリーにレミリア嬢。年末もお元気そうで何よりですわ」

 

 

「やめろやめろ、その気持ちの悪い呼び方は。そもそもお前は冬眠中のはずではないのか? どうしてこのタイミングでここに来るかね……あぁ、そしてもう一人もご到着のようだ」

 

 紫だったか。まあ紫も冬眠するけど全く起きていないというわけでもないからねぇ。間欠泉が湧いたときも月に行った時も冬だったのに紫は元気に活動していたし。

 紫に関しては自分の物差しで測らない方が良い。すぐに想定外の動きをするし、紫が絡むとこちらの思う通りに物事は進まなくなる。そういうところを気にしないのが一番だろうね。

 

 

「何やらこそこそと怪しい動きをしていたので捕まえてみたのですが…お邪魔でしたら摘まみ出しますがいかがなさいますか?」

 

 

「おいおい、人をいきなり捕まえておいてそれか? まったく悪魔のような人間だぜ、お前は。私はただ図書館に本を借りに来ていただけじゃないか。それを怪しい動きと言うか? 普通。私と同じ人間とは思えないよな」

 

 もう一人は魔理沙か。いつもの咲夜なら気づいてもスルーしているはずなのに今日は捕まえてきたという事はレミィが何かしたに違いない。いかにも悪魔っぽい悪い顔をしているし。まあこれが普通の吸血鬼の姿なんだろうけどね。スカーレット卿も当主時代はこんな感じだった気がするし。この前地底で会った時は随分丸くなっていたようだけれど。

 

 

「摘まみ出すには及ばないよ。茶会への参加者は魔理沙も含めて四人なのだから。さ、席に着きなさい。早くしないと咲夜が作ってくれた菓子の味が落ちてしまう。…なんだ八雲紫、折角の()()()菓子だよ。お前が普段食べるような外の駄菓子とは違って繊細な味を楽しめる」

 

 やけに咲夜の菓子であることを強調するのは紫への嫌がらせだろうな。レミィって確か紫の事を好いていなかったはずだし。

 別に咲夜が作った物でも気を落とす要素にはならないと思うけどねぇ。私や美鈴が作るよりははるかに美味しいのだし里で、いや外でも最高級品として扱われるだけの味は保障されている。ただ単純に現在はレミィの作った物の方が美味しいというだけだ。これから先咲夜が長く生きるのならば確実にレミィを越えられるだけのポテンシャルはある。

 

 きっと今のレミィの言葉が普通の誉め言葉として聞こえるようになる日が来るだろう。いつなるかはわからないけど。だからまあ紫も気を落とすことは無い。今の咲夜のお菓子の味を知れるということ、それはそれで良いことだと思う。成長もわかるしね。

 

 

「おぉ、なんだかわからんが貰える物は貰っておくぜ。それにしても咲夜のお菓子は絶品だなぁ。霊夢の奴に自慢してやれば動揺して今度こそ本当に明星が勝つかもしれんな。にっしっし」

 

 悪い顔をしてらっしゃる。でもきっとそんなことをしても霊夢は失敗しないだろう。魔理沙が三妖精を使って遊んでいたことはあったけれど、集中の切れまくっていたあの時でさえも成功させている。そんなことがあったから妖怪の年になる気がしないのだ。

 霊夢が失敗する未来が見えない。レミィたちは妖怪の年になってほしいらしいが正直私はどちらでもいい。人間との関りも結構多いし、妖怪の年になれば中級妖怪クラスも調子に乗り出す可能性があるしで面倒も増えそうなのだ。

 

 

「そんなもので霊夢は失敗しませんわ。残念ながら、ね。パチュリーたちは初詣なんかに行くのかしら? 神がお嫌いなようですが」

 

 

「馬鹿言え。私が嫌いな神は唯一絶対神だけよ。八百万は然して嫌う理由があるわけでもないさ。初詣は……まあ博麗神社の方に行こうかね。あっちの方が居心地がいいからね」

 

 守矢神社の方は神域を隔て、神を封じるための注連縄による結界が強いからだろうか。博麗神社と比べて異常に太い注連縄。恐らくは日本でも有数の太さを誇るであろうそれの効果はかなりのものだ。実際に神もいるし守矢神社が妖怪にとって居心地悪いのはうなずける。

 むしろ神社であるのに妖怪に居心地がいいと言わしめる博麗神社が異常でしかない。これを霊夢に聞かれたら夢想封印が飛んできそうな案件である。幸い霊夢はいないがチクりそうな魔理沙はいる。魔理沙は悪い子ではないんだけど信頼できる子でもないからちょっとばかし心配だ。

 

 

「それは言えてるな。霊夢(あいつ)は嫌がるだろうが妖怪に好かれちまってるもんなぁ。ならいっそ今夜は神社で何かするか? 賽銭さえ入れればあいつも文句は言わんだろ」

 

 

「それは妙案。最近の霊夢は少し疲れているようだから丁度良さそうですわね」

 

 おうおう、紫の腹黒いところが出てるなあ。年末の大事な時期に妖怪が境内を占領したら追い払う分余計に疲れるだろうに。まあでもこれは霊夢の気を紛らわせるにはいいかもしれない。今年は白蓮の復活や非想天則は……あれは楽しんでいたな。主に早苗ちゃんが。

 総合的にイベントが多かったわけではないが疲れる年ではあっただろう。守矢に続いて強力な敵対(ライバル)宗教組織が出てきたのは精神的疲労を招く。さらに一年と少し経てば今度は道教の一派が追加されるがそれについては知らぬが仏だろう。

 

「でも流石に今から屋台を出すのは不可能でしょうから前のとは別案を考えなければならないわね。レミィは何かあるかしら?」

 

 

「パチェも分かっているくせに。神社ですることと言えば一つしかないでしょう? ほらせーの」

「「「「宴会」」」」

 

 ついこう答えてしまったが普通に考えて不謹慎極まりない。だって神社ですることと言えば参拝やお祭りなどが一般的な回答だろう。しかしこの四人で出てきた答えは全員一致で妖怪だらけの宴会だ。神社ですることとしては異常でしかも妖怪退治をする巫女のいる神社である。

 霊夢のキレた顔が容易に想像できるがそういう時は妖怪の賢者様に何とかしてもらおう。仮にも彼女を育てた幻想郷最強の妖怪だ。まともにやれば霊夢をなだめることなど赤子の手をひねるが如く容易くこなしてくれるだろう。

 

「じゃあ私は連中に声をかけに行くか。神奈子のとこもどうせ来るだろ。あんな危険な山の上にある神社、霊夢のとこ以上に人は来ないぜ。パチュリーたちは宴会の準備をしておいてくれ。勿論霊夢には気づかれないようにな」

 

 その辺りは紫がいるから何とかなるだろう。料理も今から作れば十分間に合う。今年最後で新年最初の大宴会。今日はいつもより気合を入れて料理してみようか。結局宴会風景はいつもと何も変わらないんだろうけど。

 まあそれも幻想郷の醍醐味だろう。非日常すら日常に置き換えられる愉快な妖怪たちがここにはたくさん棲んでいるのだから。




2020年度初頭に執筆を始めて2020年末に終わる
もうスッパリとこの小説は切ろうと思います

ここまで読んでくださりありがとうございました
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